kindle unlimitedから考える その1

どうやら日本でも「kindle unlimited」近々オープンになりそうです。

八鍬兼二
電子書籍出版 MAGAZINE
6 min readJun 28, 2016

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昨日(2016.06.27)、このような記事が掲載され、関連する書き込みがネット上に広がっています。

今日は、新聞も関連記事をだしています。

また、今回の記事が掲載される10日前、Amazonは例によって、フライングを行っています。これは、米国でkindle unlimitedが正式オープンする前にも行われていました。

以上のことから、これはもう、カウントダウンに入ったと言えるのではないでしょうか?
ただ、各出版社との契約次第では、ずれ込む可能性もありますが……。いずれにせよ、もう少しで「読み放題」が日本で実現するのです!

米国で2014年に「kindle unlimited」が始まった頃、こんな文章をメルマガに書きました。

kindle unlimitedの、概要を紹介しておきます。
毎月9.9ドルの料金で、電子書籍60万タイトルとオーディオブック8000タイトルが読み放題・聴き放題になるというものです。残念ながら日本ではまだ始まっていません。これまでの流れで行くと、1年後から2年後のサービス開始でしょうか?

さて、ユーザー目線で考えればとても良いサービスです。毎月約1,000円で、読み放題なのですから、本好きにとっては最高です。

一方、電子書籍作家にとってはどうでしょう。作家目線で考えれば、不利? と思われたかもしれません。何冊読まれても、読者が支払う料金は一定です。沢山読まれても作家側の収入が増えることはなく、その分不利なように思えます。

でもご安心を。

実はこのサービス、電子書籍作家にとって有益なのです。何故かと言うと、AmazonにはKDPセレクトという仕組みがあるからです。従来からある、無料貸出プログラムに適用されていた、もともと提供されている仕組みです。

簡単に云うと、通常の印税支払とは別な方法で、電子書籍作家にコミッションが
支払われる仕組みです。売上とは別に、Amazonが資金を用意しそこから分配が行なわれます。今のところ、通常の印税支払を上回る率のことも多く、電子書籍作家にとってメリットが大きいのです。

読み放題会員となった読者は、何冊でもいいわけですから、気になったものは
どんどんダウンロードします。そうなると、個人で電子出版している電子書籍作家の電子書籍も気軽にダウンロードされ、結果的に従来より読まれることが多くなるでしょう。

Web上に掲載されていた「Kindle Unlimited」に関する記事の中で、このコミッションの仕組みに触れていたものはありませんでした。Amazonの印税体系を知っていれば、これはチャンスだとピーンと来ます。それなのに、誰も触れていないのです。

世間の人は、ネットに溢れる「Kindle Unlimited」の情報を見て、それが、電子書籍作家にとって大きなチャンスだとは理解出来ないでしょう。これは実に残念なことです。

実際に電子出版に取り組んでいれば、すぐに気付くことです。このことは“電子書籍”の本質を理解する人が、まだまだ少数だということを意味しています。

今回の一連の報道でも、出版社側の売上減少を懸念する声は上がっていますが、作者側の収入に関する意見は見られません。この2年間、本当に「kindle unlimited」が来たらどうなるのか、分析してこなかったということでしょうか?

職業作家側からみた、「kindle unlimited」

ネームバリューのある作家の書いた新刊が、果たしてこの制度で販売されるかどうかは、今のところ未知数です。しかし、出てから数年経った作品が、ズラッと並ぶことは十分可能性があります。

また、廃刊となった書籍が電子化され「kindle unlimited」に並ぶ可能性も大です。なにしろ在庫が必要ないので、出版社としては、ローリスクです。24時間365日、休むことなく販売してくれる、日本最大の訪問者数を誇る書店に並ぶのです。

自分の本棚にあるお気に入りの書籍を、電子書籍で常時全冊持ち歩きたいという読書家の欲求は、この「kindle unlimited」の登場で満たされることでしょう。たとえ、読まずとも古典と言われる本を、自分のスマートフォンやタブレットに保存しておきたいと考えるのは、読書家なら自然なことです。

紙の本は大事なコレクションとして保存し、ちょっとした空き時間や移動時間に、大好きな作家の本をいつでも読めるよう電子書籍で持ち歩くのは、今後の読書家の方向性として考えられることです。

つまり、一度売れた本が、「kindle unlimited」でもう一度買われることが、かなりの確率で発生することを意味します。これまで頑張ってきた作家ほど、読み放題の「kindle unlimited」になっても、大いに報われる可能性が大だということになります。

むしろ積極的に、「kindle unlimited」へ参加する方が、長い目で見てメリットが発生すると考えます。紙の本は、大事なコレクションとして、あるいは、とっておきの時間を贅沢に過ごすための本として所有し、常日頃は、電子書籍でいつでも、どこでも大好きな作家の本を読む……。このスタイルが遅かれ早かれ定着していくと考えるのは、無理な話でしょうか?

目次その2につづく

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