書籍「プロトタイプシティ」 第37回大平正芳記念賞 特別賞を受賞

高口康太・高須正和ほかニコ技深圳コミュニティのメンバーが中心になって執筆され、2020年06月にKADOKAWAより刊行された「プロトタイプシティ」は、この度第37回大平正芳記念賞 特別賞を受賞しました。(リンク
6月に東京で行われる授賞式には、高口康太が出席します。
また、6月13日に受賞を記念してオンラインイベントを行います。

大平正芳記念賞は、環太平洋連帯構想を提唱した大平元首相の遺志を反映して、大平正芳財団が認定するものです。選考基準(リンク)には
・「環太平洋連帯構想」の発展に貢献する政治・経済・文化・科学技術 に関する優れた著書・共著・編著
・特別賞は文献的、百科事典的、啓蒙的著作などの環太平洋構想の普及に貢献した作品
とあります。

自然発生的に始まった、現在もボランティアが興味本位で集めることで行われている、ニコ技深圳コミュニティのアウトプットが、こうして評価いただけたのはありがたいことです。
ニコ技深圳コミュニティは、多くの書籍やブログ、イベントや事業・事業支援などのアウトプットや、アウトプットのきっかけを生む場所になっています。

ニコ技深圳コミュニティ 5年間の活動紹介 2014–2019

受賞コメント:手を動かすことを主体にした集団思考

『プロトタイプシティ』は、起業家、ソフトウェア/ハードウェアのエンジニア、イノベーションや中国の研究者など、さまざまな経歴の執筆者が集まって書かれた書籍です。

まだ理論化されていないものを、各人が自分の手を動かし、体験と共有を通じて集合知で体系化するのが我々コミュニティのアプローチです。これまでの社会になかった新しいものは、そうした手を動かすことを主体にした集団思考を行うことで、初めて読み解いて身につけることができると考えています。そして本書の主題となった深圳という都市や各種イノベーション活動自体も、まさにそうした実践を通じて構築されてきたものです。

「プロトタイプシティ」は、実践を通じた著者たちと対象との共振の産物だと考えております。そして活動の一方的な観察や分析、見学に留まらず、深圳の起業家やエンジニアとの共同プロジェクトもいくつか生まれつつあります。本書はその共同プロジェクトの一つでもあります。

また、本書に限らず、今Facebook上に3000人を超えるメンバーや、メンバーのアウトプットに反応してくれる人々すべてが、ニコ技深圳コミュニティの集団思考を構成する要素だと考えています。

今後も多くの人々と共に活動していくつもりです。

(この文章は高須・山形が中心になって他著者にレビューしてもらいながら書きました)

各著者・編者コメント(順番は書籍での登場順)

多次元的で非言語的な現象を、体験と集団思考で読み解いていくアプローチが評価されたことは大変うれしく思っています。環太平洋の取り組みとして評価いただいたことも、深圳・シンガポール他南洋を活動地域としている身として、とても誇りに思います。今後も「ブロックを積み上げたり叩いたりするように、手でものごとを理解する」ことに取り組み続けてまいります。(高須正和)

長い歴史を持つ大平正芳記念賞特別賞をいただいたことを大変うれしく思います。全世界で大きなうねりとなっているプロトタイプ駆動、新たなイノベーション都市の勃興ですが、日本からはなかなか見えにくいのが現状です。こうした世界の“今”を読者の皆さんに少しでも伝えたいと考えて本書を執筆しました。今回の受賞を励みにし、さらなる取り組みを続けて参ります。(高口康太)

本書が栄えある大平正芳記念賞をいただき、心より光栄に存じます。デジタル・イノベーションがこれまで以上に注目を浴びる中、こうした変化の最前線にある深圳に身を置いた経験を読者の皆さまと共有することができたことは大変貴重な機会となりました。これからもイノベーションの最前線から多くのことを得ていこうと思います。(澤田翔)

今回の受賞を深圳にて耳にし、大変うれしく思っております。
深圳のイノベーションと発展は、若者のパッションと好奇心によって、ここ数年急激に伸びてきました。この地でその力を感じながら、本書に参加 し、かつ多くの方に届けられたことを誇りに思いますと共に、今後も深圳の魅力を伝える活動をしていきます。(藤岡淳一)

本書の受賞を心からうれしく思います。各著者の専門分野やバックグラウンドは異なります。しかし過去数年にフィールドワークを共にし、未知の現象に足と顔を突っ込むメンタリティを共有してきました。異分野協働を地で行く活動から、これからも学び続けます。(伊藤亜聖)

プロトタイプシティ 書誌情報

プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション
高須正和(編著)/ 高口康太(編著)/ 澤田翔(著)/ 藤岡淳一(著)/ 伊藤亜聖(著)/ 山形浩生(著)

まえがき (高須正和・高口康太)
第一章 プロトタイプシティの時代 (高須正和)
第一節 インターネットが変えた新興国
第二節 「ユニコーン現象」が生んだプロトタイプ主導経済
第三節 イノベーションのグローバル化と日本のハマった落とし穴
第二章 中国イノベーションと「安全な公園」 (澤田翔)
第一節 超高速ビジネスの作り方
第二節 アタリショックを避けるために
第三節 バックラッシュの時代
第三章 「ハードウェアの聖地」深センの秘密 (藤岡淳・高口康太)
第一節 深センとはどんな街か?
第二節 深センができるまで
第三節 山賊たちのポストモダン
第四節 公権力とプロトタイプシティ
第五節 深センの未来
第四章 次のプロトタイプシティ(伊藤亜聖・山形浩生・高口康太)
第一節 先進国と新興国、それぞれのデジタル化
第二節 プロトタイプシティ成立の条件
第五章 プロトタイプシティ時代の戦い方 (ナオミ・ウー・GOROman・高口康太)
第一節 あなたの仕事はなんですか?――ナオミ・ウー
第二節 どうして今の自分になった?――GOROman
第三節 STEMとメイク、オープンソースが導いた現在――ナオミ
第四節 レガシー世界との戦い――ナオミ、GOROman
第五節 次のチャレンジは?――ナオミ、GOROman
あとがき(高須正和・高口康太)

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