北京ベンチャー訪問:創業公社とその経由のベンチャー3社

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創業公社とそこに入居しているベンチャー3社
北京創業公社は、北京市と金融や不動産などの会社が集まって立ち上がった組織です。かつては電気街として知られ、今は地価の高騰からシャッター通りになりつつある中関村に位置しています。
公式サイト:http://www.vstartup.cn/

つぶれたショッピングモールを居抜きでさまざまなスタートアップやインキュベータに貸していて、内容としてはSeedステージ(起業してすぐか、まさに起業する段階)というより、小さい会社になっていて仕事はもう請け負ってる段階の人たちを入居させ、宣伝の補助や資金調達の補助を行っているようでした。
見学できたのは以下の3社です。簡単な感想をつけます。

VR教育 T-Sence VR

教材を作っているT-Sence VR

VR化した教育コンテンツを作っています。マルチメディア教科書のVR版、HMDをかぶると「機械の教科書で、目の前にエンジンがあるように見えて効率的に学習できる」など、三次元の教科書+HMD+システムを作っています。
特にこの会社しか持ってない技術やコンテンツがあるとは見えませんでしたが、
・こういうVRを使った教育プログラムはこれから伸びていく
・細かい部分の作り込みやフィードバックになるので先行者利益が出そう
・複数の学校に売っても原価が変わらないので伸びそう
・学校に入り込んでいって売るものなので、「世界市場でゲームを売る」みたいなビジネスより安定していそう

Shelter (大学内の研究、特に化学の成果を市場化する会社)

Shelterは中国科学院(日本でいう理化学研究所のような国の化学研究機関)からスピンアウトした会社で、大学内の研究、特に化学の成果を市場化するビジネスをしています。研究はすべて「今解明されていないものを解明する」もので、それが1年後に何かのビジネスを生むのか100年後に生むのかは予測できづらいものがありますが、この会社は化学分野を中心に、「近い時期にビジネスになりそうなもの」をビジネス化できそうな企業と繋ぎます。
たとえば特殊な繊維であるゴアテックス(水蒸気は通すが水は通さないので、蒸れないレインコートが作れる)やケブラー(防弾チョッキなどに使われる耐久性の高い繊維、同じ重さの鉄に比べて5倍強い)はアメリカで特許が取られている素材ですが、「分子構造がちょっと違うので特許の範囲からは外れてるけど、物質の特性は近い」ようなものはいくつかあり、日本でも○○テックスみたいな名前で商品化されてます。そうしたプロジェクトは大学内にいくつもありそうですが、市場化(たとえばユニクロみたいな会社に売るとか)しないと利益になりません。
市場と大学内の技術の両方に詳しくないとならず、誰でもできるビジネスではないですが、確実性の高いビジネスに思えます。
同行した研究者の福本さんによると「日本のこういうのは、制度としてできたから仕方なくやってる試みばかりでだいたい失敗してるけど、中国のこの試みは儲ける気バリバリの人にインセンティブをちゃんと与える仕組みができてそう」とのこと。

Populele(インテリジェントギター)
Xiaomiグループから支援されている(その意味ではすでにスタートアップでなくexit済みと言えるかも)この会社は、Bluetoothでスマホと連携して、フレットを押さえる場所を教えてくれたりするインテリジェントなギターやウクレレを作っています。中国国内のクラウドファンディングの他、Indiegogoでも50万ドル近くを集めたキャンペーン

価格はウクレレだと6000円ほどと、高くないです。それでいて楽器としての品質は気をくばっていて、オモチャっぽく見えなません。こうした新製品は、よくオモチャっぽく見えてしまいがちですが、ここのウクレレやギターはそうじゃない。

機能の加わった楽器を作ろうとしていて、楽器でない何かを作ろうとしているわけではないことが製品から伝わってきます。
メイドインチャイナのギターやウクレレは、品質が良くてもあまり高く売れそうにないですが、この会社のアプローチなら、品質に見合った値段で楽器が売れるように思いました。個人的には見た3社の中でもっとも楽しめました。中華クラウドファンディングの時点から注目してた会社でした。

Xiaomiのマウスを作っている米物科技

創業公社には、他にもいろいろなベンチャーが入っている。偶然前を通りがかった米物科技という会社は、Xiaomiブランドで販売されているマウスを作っている。コンパクトなデザインでBluetoothとドングルをきりかえることができるいいマウスで、僕も使っている。

創業公社を見て思ったこと
・さまざまな業態のベンチャーが入ってる。特に何かに特化してなさそう。(つまり、インキュベートしてる方も特にspecialなノウハウはなさそう)
・どこのベンチャーも、それなりに流行っている儲かりそうなことをやっている
・中国はまだ成長市場で、特に新しいものの普及は勢いがついているので、ここに入ってるような業態はどれも伸びるだろう。
・その意味でわかりやすい補助金詐欺みたいな会社だけスクリーニングで弾けば、安定した利益が上がりそう

・いきあたりばったりで見たのに、Pokulele, 米物科技と2つも知ってる会社が出てきた。この2つはHAXにいても見劣りしないレベル

成長市場なら、たとえばAIが伸びると思ったら、今投資できるAIの会社にぜんぶ投資した方が最終的なリターンは大きい。競馬やルーレットと違い、パイが拡大していくなら手当たり次第にやる意味があります。
成長市場でのベンチャーってイージーモードだなあ、と(他のところの感想と同じだが)感じました。

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