緩やかなスタートアップへの道:清華大学のベンチャー支援システムとベンチャー2社(大学内)

北京ベンチャー訪問全体のまとめはこちら
この記事は全4記事の3つめ。

清華大学のベンチャー支援システム
清華大学の説明や、X-labを中心にした起業サポートの仕組みについては、同じく佐野さん (Wechat ID:Sanonas)の案内で清華大学を訪問した馬田さんが詳細なレポートをアップしています。
中国の MIT「清華大学」周辺のスタートアップエコシステムに圧倒されてきました
そちらを見ていただくのがいちばん良いと思います。簡単に説明すると、基本的には「まだ解明されていないものを解明する」研究者を目指す大学生に対し、「現在ニーズのあるサービスを提供する」起業家になるためのサポートとして、清華大は以下のような段階を踏んだサポートをしています。
初心者から順番に、
レベル1:授業でスタートアップとは何か、起業するとはどういうことかを教える(単位も出る)
レベル2:精華大学の中にある企業支援施設X-Labにて、投資家向けのプロポーザルを書いたりプロトタイプを作るといった起業の練習をする。(自由参加・単位は出ない)
レベル3:卒業生達が作ったTusStarというインキュベータが支援して起業
レベル4:TusStarが起業したベンチャーを集めてピッチイベントやキャンプなどを行い、資金調達などをマッチング
レベル5以上:TusStarがお客さんがついて利益を上げだしたベンチャーを集めて海外展開やIPOなどのサポート
などの段階を合理的に踏んだサポートを行います。

清華大学発:ZhenRobotics — — デリバリーロボット
ZhenRoboticsは清華大学発のベンチャーで、Crunchbaseに登録されていたり、Tech In Asiaで紹介されている企業です。(僕は知りませんでした)
手がけているのはデリバリーロボットのビジネスです。特に最後の1マイル、トラックから家のドアまでのところにフォーカスしていくとか。

デリバリーロボット。清華大学にてテスト稼働中

清華大学の生協から、買い物をキャンパス内のどこかに持って帰るところまでを実証ビジネス中で、一つ運ぶごとに2元と考えてペイするかどうかを実験しているとか。
・ロボットそのものの位置測位や、段差をどう乗り越えるといった駆動系など、ロボット単体の開発
・配送ルートの効率化など、複数のロボットを連動して動かす部分の開発
・人間が作業を依頼して回収するユーザーインターフェース
・いくら原価がかかっていくら回収できそうかのビジネスモデル
などの複数の要素を、大学内の環境でテストビジネスを行いながら検証しています。
アリババ、JDなどの中国の通販会社はそれぞれ自前のロボット配送を開発していますが、ロボット配送を専門で手がけてビジネスにしてる会社はここZhenRoboticsの他にあまりないとか。

本当に他にないかどうか、今のこのロボットが他の配送ロボと比べてアドバンテージがあるのかどうかは、プレゼンを聞いた範囲ではわかりませんでしたが、「実際にやった人が少ない分野を、小さいながらもビジネスをしながら対応していける」というのはプラス要素だと感じました。

Nums(会社名Luckey.inc) Macbookのトラックバッドをテンキーに変えるシール
清華大学のデザイン学部から出てきたベンチャーで、Macbookのトラックパッドをテンキーに変えるシールと、さまざまなジェスチャ機能を実現するソフトウェアを開発しています。

技術的に優れているというより、プロダクトのデザイン・品質とソフトのUIで差別化する製品です。Macbookのトラックパッドはモデルごとにサイズが変わるため、スピード勝負のコンシューマ向けプロダクトだと思いました。

X-Labのベンチャー2社を見て
ZhenRoboticsは、市場でお金になるのはたぶん数年後(もっと後かも)になりそうな研究開発寄りの、Numsは今一気に売り切らなければならないビジネスをやってるわけですが、どちらにせよ工学部やデザイン学部で、ロボットの専門家やデザインの専門家として学んできたバックグラウンドをうまく活かして起業しているわけで、馬田さんのレポートにあるシステムが、結果を生んでいる(どのぐらいの達成度かはともかく)一例だとは思いました。

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