企業文化が生むキュレーションメディアの「質」の違い
VOYAGE GROUPのメディア担当者がメディアについて書き綴るメディア『edism』にようこそ。コンテンツメディア事業本部の伊藤です。
前回の記事ではキュレーションメディアの躍進の背景について書きましたが、今回はメディアごとの違いに焦点を絞って見ていきたいと思います。
トラフィック内訳から分かる意外な事実…
前回の記事で、メディアへの新規ユーザーの主要な流入経路は以下の3つに分けられることを説明しました。
- 検索流入
- ソーシャル流入
- リファラル(参照)流入
主要キュレーションメディアについて、これらの割合をグラフにしてみたのが以下のグラフです。
こうして見ると、一見同じようなメソッドで記事を書いているキュレーションメディアにおいても、流入経路は異なっていることがわかります。
思い切ってこんな感じで線を引いてみるとより分かりやすくなると思います。
こうやって線引きをしてみると、検索経由中心にトラフィックを稼いでいるグループと、ソーシャルから中心にトラフィックを稼いでいる2グループに分けて考えられることがわかると思います。
特に僕が面白いと思ったのは、複数メディアを運営し、プラットフォーム化を標榜しているDeNAとサイバーエージェント(以下CA)で、綺麗に特色が分かれていること。
一口にキュレーションメディアといっても生まれるこの差。ここにはDeNA, CAの企業文化が色濃く反映されているなと思ったので、今日はそのあたりについて書いていければと思います。
堅調に、ロジカルに。検索流入で伸ばすDeNA
DeNAのキュレーションメディアといえば、2014年10月に発表されたPalette構想。
mery, iemo, find-travelの既存3メディアを買収し、プラットフォーム化したことで話題を呼びました。
その上で見てほしいのがこのグラフ。
買収から半年くらいのタイミング(2015年5月くらい)で、3メディアとも一気に検索流入を伸ばしているのが分かります。
meryに関しては下がっていた時期もあるものの今年の8月に過去最高数値を出していますし、iemoでは買収発表時の約5倍、FindTravelに至っては買収発表時の49倍の検索流入を生み出しています。
また、上のグラフはiemoのトラフィックソースの割合を時系列にしたもの。
買収のタイミングでは完全にソーシャル中心タイプのメディアであったところを、買収半年で検索中心に生まれ変わらせていることが分かります。
語弊を恐れずに言えば、記事メディアでのSEOのコアコンピタンスとなるのは、狙うべきキーワードをしっかり洗い出すロジカルシンキングと、それぞれのキーワードに対して着実に記事を書いていくオペレーション能力だと思います。
ロジカルシンキングの得意なコンサル出身者が多いDeNAだからこそ、SEOを徹底的にやりきり、このように伸ばせているんだと思います。
また、DeNAのSEO戦略については、以下の記事で少しだけ垣間見ることができます。
南場氏「全力で反対したけど玉砕して」 DeNAの“何でもあり”戦略を支える3つの質問
例えばSEO得意な人は全てのサービスのSEOを見てます。例えばソーシャルマーケティングが得意な人は、全てのサービスのソーシャルマーケティングを見ています。
キュレーションメディアという事業構造を因数分解し、メディアごとではなく、機能・職能ごとに役割を設け人員を配置する極めてロジカルな組織体制を垣間見ることができます。
トレンドを作りバズコンテンツを巧みに生み出すCyberAgent
一方でソーシャルに強いCyberAgent。
特にSpotlightは推定月間約2000万PVのうち、半分以上をSNSからのトラフィックで稼ぐ、まさに「化け物」メディアです。
タレント事業や代理店事業を長くやっているだけあって、トレンドをつかみ、さらに作っていくのはお手のものといった感じでしょうか。
例えば事例として面白いのはこの記事。
【前編】「月曜から夜更かし」で話題になった“ももち”に根掘り葉掘り聞いてみた!
「マツコの知らない世界」で紹介されたももちさんという芸人について、まず速報記事として取り上げ3700いいねを獲得。すごいのは、その1ヶ月後、ももちさんに実際に会いに行ってみた記事もあげてさらに多くのいいねを獲得しているところ。
トレンドになったものをいち早くキャッチして速報記事をアップするというのは、なかなかシステム化しづらいところ。それを可能にしている編集体制は見事です。
また、芸能関係は、普通のメディアでは権利の関係などで記事化しにくいところですが、長年のタレント・ブログ事業などで、芸能界と実績と関係性のあるサイバーエージェントだからこそ、この迅速な記事化が可能になっているといえるでしょう。
また、アイキャッチ画像に編集部の女性ががっつり登場しているのもサイバーエージェントらしいところ。あまりライターの顔が出ないDeNA系のキュレーションメディアとは対照的です。
まとめ:企業文化が生み出すメディアの「色」
一口に「キュレーションメディア」といっても、企業の色が強く反映されるということを見てきました。
一時期コンサル業界から人材を集めていることで話題になったDeNAは、ロジカルに事業構造を分解し、ロジカルに進めやすいSEO領域に強みを持つ。
一方で、代理店・タレント事業に強みを持つサイバーエージェントは、その資産を活かしてトレンドを掴み、ソーシャルからの流入を中心にトラフィックを稼ぐ。
まだまだ勢いを衰えることを知らないキュレーションメディアですが、2016年さらに伸ばすのは検索型かソーシャル型か、どちらなのでしょうか。
僕の次回更新は来週金曜日です。お楽しみに!
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