堺市の工場夜景で、SF映画のような世界観を楽しむ。

小林哲朗
フレーズクレーズ
5 min readDec 24, 2015
(c) Tetsurou Kobayashi

身近に楽しめる異世界として、工場の夜景を見る、写真に撮るという趣味が広まりつつある。 夜、工場に灯る明かりは点検整備用のもので、決して演出しようとしているものではない。それでもなお美しいと感じる人が増えているのは、とても興味深い。

私は10年間にわたり全国の工場風景を撮影し続けており(「工場ディスカバリー」「工場ディスカバリーZ」(いずれもアスペクト刊)などの写真集がある)、今回の記事では、広大な堺泉北臨海工場地帯の写真とともに、身近にある工場夜景の楽しみ方について紹介したい。「工場夜景」という言葉に興味を持たれた方はもちろん、写真や工場・巨大建造物が好きな方はぜひご一読を!

大阪府にある堺泉北臨海工場地帯は工場ファンのみならず、一般にも認知度が高い。その理由は、関西国際空港と大阪の都市部を結ぶ阪神高速4号湾岸線から見える景色だ。広大な工場地帯の敷地に沿って走るエリアがあり、壮大な景色は誰の目にも止まる迫力がある。昼景も夜景も魅力的だ。この景色を見て工場撮影、鑑賞を始める人も多い。ここ数年は他府県や関東ナンバーの車で撮影に来ている人をよく見かけるようになった。

鑑賞するのに向いた工場の種類がいくつかある。製紙工場、製鉄所、化学工場、セメント工場などがそうだ。堺市には、夜景の美しさで特に人気が高い、石油精製工場が2つある。石油精製工場は蒸留塔という塔に散りばめられたような明かりがあり、要塞のようなその外観からはまさにSF映画のような世界観が楽しめる。その他にも、発電所、ガスタンクなどもあり、工場好きを飽きさせない。街から少し移動しただけで、このような異世界を感じられるのは非常に魅力的だ。

(c) Tetsurou Kobayashi

堺市の工場地帯は広大で阪神高速湾岸線から見ると迫力があるが、実際に工場に近寄ると、工場の周りには植木や高い塀などがあり、見る場所は限られる。そのような条件だからこそ、車で足しげく回り撮影スポットを見つけたときの喜びは大きい。実はスポット探しが、工場夜景撮影の大きな楽しみの一つでもある。ただし、夜の工場地帯には人気がないので、安全には十分に配慮したい。また、よく撮影許可関係の問い合わせを頂くが、公道から撮影する分には、法的に問題はないので、ご安心頂きたい。私有地、工場敷地内への侵入は言うまでもなくNGだ。

(c) Tetsurou Kobayashi

広大な工場地帯を回るには車があると良いが、その手段がない場合はバスツアーなどを利用すると良い。工場が良く見えるスポットに案内してもらえる上、大勢で行くので安心感がある。不定期ではあるが堺市の工場地帯を回るバスツアーもある。

(c) Tetsurou Kobayashi

工場の外観の建築美、迷路のように複雑に入り組んだ配管や、キュートな丸いタンクなど、生産効率を追求し完璧に設計された機能美を堪能する。演出の無い、本物の質感が人気の理由だろう。

季節や時間帯により工場は姿を変える。冬は空気がクリアで、水蒸気もよく上がるのでお勧めだ。また、巨大船が工場に横付けしていたり、排ガス処理の炎が勢いよく上がる日があったりと、様々な姿を見せてくれるので一度ならず何度も訪れたくなる。

本メディアは、堺市シティプロモーション認定事業として助成を受けています。

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小林哲朗
フレーズクレーズ

牛乳を飲んだらお腹をすぐにこわします。 フォトグラファーとして独立しました! となりの人間国宝さん。 著作は写真集「廃墟ディスカバリー」など。 廃墟、工場、地下、巨大建造物の写真をとっています。