フィンランドに住む準備(1年間の在外研究)1:在留許可の申請

Hiraku Sakamoto
Happy Mom, Happy Family
9 min readApr 19, 2020

Happy Mom Junonのオットです。日本の大学に所属する研究者です。

2020年4月現在、新型コロナウィルスによりフィンランドも日本も緊急事態宣言が出され、外出自粛要請が出ている状態です。収束後の生活がどうなるのか、そもそも本当に収束するのか先が見えない時期ではありますが、記録のために、今回から数回にわたって「日本からフィンランドへ1年間駐在する経験」に関する記事を書き残しておきます。

2019年夏にフィンランドへやってきました

日本で大学教員である私は、2019年夏から、大学のサバティカル(在外研究)の制度により、1年間の予定でフィンランドAalto Universityに滞在しています。単身ではなく、家族(妻、子供2人)を同伴してフィンランド(ヘルシンキ)へやってきました。私の場合は日本の大学からの派遣という恵まれた状況での滞在ではありますが、それでも、日本からの出国準備の時と、フィンランドへ入国してからしばらくの間は、いろいろとわからなくて困ったことがありました。

そこでこの記事では、サバティカル滞在の準備~入国後しばらくの期間に私たちが特に困ったこと、どう解決したかの記録、を記しておきます。

フィンランドは社会のヒエラルキーがたいへん低く国内の各セクターが柔軟に連携できる、効果的な投資をしている、女性が活躍している、特徴的な教育をしている、などの理由で、小国ながら、世界的インパクトのある研究開発の拠点となりつつあります。実際、フィンランドに来てから、この地での研究や産学連携の勢いに驚いています。

したがって今後、私と同じようにサバティカルで滞在したり、ポスドク、研究員、教員などのポジションをフィンランドで獲得する日本人が、ますます増えると思います。むしろ、日本の研究環境がより多様になるように、もっと多くの研究者がフィンランドと日本を行き来するようになってほしい、と私は切に願います。

本記事がそのような研究者を後押しする一助となりましたらと思います。

今回は、在留許可(Residence Permit)の取得体験について。上述の通り、私(大学教員)と同伴家族3名(妻、子供2名)の1年間の在留許可証を取得しました。3か月を超えるフィンランド滞在については、在留許可申請が必要です。

結論から言うと、私の場合は受け入れ大学からのHosting Agreementレターが得られ、特にトラブルなく粛々と手続きを進めるだけでした。手続きの過程で唯一戸惑ったのは、提出する戸籍にアポスティーユ(Apostille)承認が必要で、さらに公式な翻訳が必要だったこと、です。経験ある方には常識的なことばかりだとは思いますが、私は当時とても戸惑ったので、自分の経験を記録しておきます。

(なお、本申請は(新型コロナウィルスの問題がなかった)2019年夏の入国時点であり、変更される/されている可能性があることにご注意ください。)

ステップ1: 受け入れレター入手

フィンランドの受け入れ大学と滞在時期などについて(メールで)打ち合わせ、Hosting AgreementのレターをPDFでもらいました。在留許可申請に紙版は最後まで不要でした。

Hosting Agreementにはフィンランドからの給与と、日本からの給与の見込み額が書かれています。(私の場合はフィンランドからは0ユーロ。ここの額により、フィンランドでの医療保険・納税などの手続きが左右されると思われます。)

私は渡航の10か月前にすでにHosting Agreementを入手していました。滞在許可の手続きは急いでも早められるものではないので、可能な限り早期に着手することが重要と思います。

ステップ2:電子申請開始

在留許可(Residence Permit)の電子申請サイトにてとりあえず入力を開始してみて、必要書類を確認。この時点で、書類の準備に時間がかかりそうなことにようやく気付きました。

プロセスはフィンランド大使館HPの情報を参照:https://finlandabroad.fi/web/jpn/ja-residence-permits-to-finland

書類はすべてスキャンや写真を撮るなどして、ホームページhttps://enterfinland.fi/eServicesから電子的に提出ができてとても便利でした。後述の面接の際に戸籍などの原本を持参しました。

フォームに入力する以外に、添付書類として以下を準備しました。

・自分(研究者)用に添付: パスポート、日本の職場からの給与証明、受け入れ大学Hosting Agreement、博士号の証明書・家族用として添付: パスポート、婚姻 ・誕生・親権の証明としての戸籍全部事項証明書(原本へのアポスティーユ、および公式翻訳文書+アポスティーユ付き)

なお、子供2名のぶんは自分(研究者)のアカウントから入力が可能ですが、妻は別の妻自身のアカウントを作成して別途申請することが必要でした。婚姻の証明として戸籍を添付。

ステップ3:戸籍のアポスティーユと翻訳

戸籍全部事項証明書を区役所(地区サービス事務所)にて入手しました。しかし在留許可申請には、(i) 戸籍原本へのアポスティーユ(外務省による証明)、および(ii) 公式な翻訳(英語またはフィンランド語。私は英語を選択)とその翻訳へのアポスティーユ、が求められています。どうすればいいのか途方に暮れました。

とりあえず、あちこちの業者さんに電話したりメールして、見積りを取りました。すべての手続きを代行をしてくれる業者もありますが、戸籍原本のアポスティーユについては自分で取得しても大きな手間ではなさそう。一方で、翻訳文書については法人印があることが望ましく、自分で翻訳するとリスクもあるし手間もかかりそう、とわかってきました。

結果、以下の方法を取りました。

(i) 戸籍の原本へのアポスティーユを、自分で外務省窓口を訪問して申請(郵送でもできるようです)。https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/shomei/index.html

レターパック封筒を渡しておけば、申請の翌日には発送してくれました。

(ii) 翻訳会社に、「戸籍全部事項証明」英文翻訳の作成・翻訳認証(公証人役場+法務局)・アポスティーユ付与、を発注。(翻訳文書は、翻訳者名、翻訳事務所名・住所および社印が必要なのでそういう対応をしてくれる会社を選定した。)要するのは4日営業日、価格は3万2400円でした。

戸籍のスキャンデータを翻訳会社に送って、氏名の読み方を伝え、先方が訳案を作ってくれたらチェックしてOKを出す、というプロセス。公式翻訳文書+アポスティーユ付き、をレターパックで納品してくれました。

書類にアポスティーユ(割り印がある)がつくとスキャンしづらかったので、スマホで撮影して、ようやく添付資料が揃えられ、電子申請が完了できました。

在留許可の申請料は、大使館訪問時に払うこともできるようでしたが、私たちは電子申請時にクレジットカードで支払いを済ませておきました。大使館訪問時の時間短縮のためこうしておいて良かったと感じています。

ステップ4:フィンランド大使館訪問予約

電子申請を送ったらすぐにフィンランド大使館にメールをして、面談日程を調整しました。必ず渡航者全員が行かないといけないので、家族の予定を合わせるとなると行ける日が限られ、ここも時間がかかるプロセスだと思います。

私たちの場合はフィンランド大使館にメールした翌日には返信をもらって1週間後の予約がアサインされたのですが、家族の都合が合わず、結局約3週間後に予約を取りなおさせてもらいました。

ステップ5:フィンランド大使館を訪問

港区南麻布のフィンランド大使館へ。のんきに入口で記念撮影などしてから、窓口に伺うと「全員の証明写真が必要」と言われ、私たちが準備していなかったことが発覚しました。せっかく来たけど再訪問か…とあきらめかけましたが、ちょうど私たちの後の予約枠が開いていたということで、面談開始時間を遅らせるという対応をしていただきました。感謝です。いそぎ、近くの写真館へ駆け込んで証明写真を撮影。

左:家族4人で面接のためフィンランド大使館を訪問(2019年春)、右:慌てて証明写真

というわけで、面談の際には証明写真をお忘れなく。証明写真の要件は、下記HPに詳しいようです。https://www.poliisi.fi/passport/passport_photo_instructions

面談では、書類の原本の確認と、全員分の指紋データを採取されました。在留許可カードをレターパックで送ってくれるということで、返信用封筒に住所を書いて返送料を支払いました。

ステップ6:在留許可証の入手

面談から1か月ほど経ったころ、電子申請のサイトからメールで通知が来て、ログインしてみると申請が了承された旨のドキュメントがアップロードされていました。レターパックで家族4名全員分の「在留許可証」のカードも届き、無事に手続き終了です。

これでいよいよフィンランド滞在が実現です。

2019年夏よりフィンランドAalto大学(エスポー市)にて在外研究中

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Hiraku Sakamoto
Happy Mom, Happy Family

Associate Professor; Engineering Sciences and Design (ESD) Graduate Major, Department of Mechanical Engineering, Tokyo Institute of Technology, Japan.