【イベントレポート】HEAD研究会総会シンポジウム2023「ひらかれた場づくりを目指して」vol.1 基調講演編

Sarana Koyama
HEAD Journal
Published in
Aug 29, 2023

2023年6月22日、HEAD研究会総会シンポジウム「ひらかれた場づくりを目指して」を開催。松村秀一新理事長のもと、『15年の成果の上に新たな時代を築く『築く〈「ひらかれた場づくり」のチームへ〉を新たに掲げ、取り組む。この記事では、vol.1[基調講演編]としてイベントを振り返る。

※本イベントレポートは2回に分けて掲載。

【日時】2023年6月22日(木)17:00–18:50

【会場】芝浦工業大学 豊洲キャンパス本部棟4階 阿出川シアター

【基調講演】松村秀一(HEAD研究会理事長)

【パネラー】

・山代悟(TF1/国際化TF委員長)

・山本想太郎(TF2/建材部品TF委員長)

・ 宮崎晃吉(TF4/リノベーションTF委員長)

・権藤智之(TF5/ビルダーTF委員長)

・倉内敬一(TF6/不動産マネジメントTF委員長)

・田村誠邦(TF7/制度改革TF委員長)

・三沢亮一(TF8/ライフスタイルTF委員長)

・竹内昌義(TF10/エネルギーTF委員長)

・山代悟(TF11/市民防災TF委員長)

・田島則行(TF12/コミュニティアセットTF委員長)

・荻野高弘(TF15/フロンティアTF委員長)

・ 水上幸子(TF16/オープンプロセスTF委員長)

【司会】新堀学(HEAD研究会)

(※TF=タスクフォース:テーマごとに継続して活動を進めるチーム。)

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-HEAD 研究会総会シンポジウムとは?

HEAD研究会とは、「日本の建築と部品の潜在能力を解き放つ」という目的のもと2011年に設立された一般社団法人【HEAD (Home&Environment advanced Design)】。

これまで、建材部品のポテンシャルを再発見する「みらいのたね賞」、全国で活動を広げるリノベーションスクール、断熱展、賃貸DIYガイドラインなど、多様な取り組みが生まれてきた。

総会シンポジウムとは、その社団法人で年に一度開催するイベント。その年の社会背景や課題感をテーマに、トークセッションを行う。今回はコロナ禍を経て、3年ぶりに実現することとなった現地での開催。本年はHEADオリジナルTシャツも作成して、参加者約90名、うち学生20名の盛り上がりを見せた。

(当日の様子)

-ひらかれた場づくりを目指して

コロナ禍を経た今、人々はどこに”場”を求め、そこで何を求めるのか。

松村秀一代表理事による基調講演と各TF委員長による発表を経て、HEAD研究会としての「場づくり」のあり方を社会情勢と活動展開から再確認する。

各TFの方向性と活動から、HEAD研究会として目指す「場」への結びつきの関係性を明らかとすることを目指した基調講演では、HEAD研究会では、どのような人がどのような活動をしているのか、それがどこを目指しているのかについて一挙紹介。

(当日のアーカイブ動画はこちら)

-基調講演:HEAD 研究会理事長 松村秀一

松村理事長からは、HEAD研究会としての活動動向を中心に、法人化前の2010年から、現在に至るまで社会情勢と併せて概観した内容となっている。これまでの活動展開を追憶することで、これからのHEAD研究会の「場づくり」のあり方を再確認する。

(2023年度 方針趣旨文)

2023年度は松村秀一代表理事の新体制となり、新方針を掲げた趣旨文が公開された。

住宅・建築・不動産 ・建材等の〈専門家〉技術が、どのように発揮されるべきなのか。

生産者の〈非専門家〉が入り込める場、活動の重点が〈専門家/非専門家〉の両者が同じ方向に向いてくる形態を〈ひらかれた場づくり〉としている。

〈15年の成果の上〉に活動展開を築くため、どのようにHEAD研究会が創立し、何を目指していたのかをタイムラインで確認する場が今回の基調講演を用いて設けられた。

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2010年

2010年6月5日付でHEAD研究会が創立。

住宅着工数が最高レベルの水準で30年ほど続いていた。世界的にも異常な事態に溜め込んだ産業力と、その稀な状況下で築かれてきた建材・住宅・不動産産業の力をどこで発揮するのかを重要視している。

この背景から、ストックに向かっていく方向性と国境を越えて活動を広げていく方向性の主な二つのフィールドが設立当初のターゲットとなり、4つのTF(国際化タスクフォース、建材部品タスクフォース、情報プラットフォームタスクフォース、リノベーションタスクフォース)でスタートした。

2011年

一般社団法人化し、アーツ千代田3331にて設立記念シンポジウム開催。

日本の建築界全体が建築関係投資が半分となる状況に大転換期を迎えている。

日本の建築と部品の潜在能力を解き放つことが当初からの大きな目標であり、建築及び都市に関連する業界に溜め込んできた能力である知的資産・技術的蓄積・人材能力をより豊かに発揮させる有効な方法を見いだそうとし、調査、研究、プラットフォームの構築、広報などの事業を行い、産業的環境の形成に寄与することを目的としている。

建築家という職能のあり方、あるいは建設業、住宅産業、建材産業としてのあり方がテーマであり、産業がここから起こる〈新たな産業インキュベーション〉は HEAD研究会が元々思考していたことであり、新しいビジネスが生まれてくるような活動に結びつけていけることを構想している。この動きがその後、「リノベリング」「エネルギーまちづくり社」などの事業体に展開していくことになる。

2012年

HEADにおける連続シンポジウムをまとめた 『2025年の建築7つの予言』を出版。

中央にテーブルを置き、4つのスクリーンを立て、周囲に観客がいる劇場的な形式を当時の学生事務局の発案で設定。〈HEADシンポスタイル〉とその後呼ばれるようになった。

2013年

東京ビッグサイトにて開催された「賃貸住宅フェア」にて、HEAD研究会がパネリストとして登壇。この時、〈社会構造そして産業の大きな転換期を迎えるにあたって、建築・建材・不動産という既存の産業が持つ潜在能力を解き放ち、新たな産業の想像に資する壮大なチャレンジです。〉というスライド資料が残っている。2013年には、「ハコの産業から場の産業へ」というテーゼの元に更に9つのTFが立ち上がり、現在のHEAD研究会の体制に近づいている。

HEAD研究会が行っている〈新しい”場”の創出とその継続〉とは一体何なのか

[その1] 業種や立場の壁を取り払った横議の場

業界団体は、企業の壁を取り払い、お互いの共通利益のために生かすべく働きかけようとすることは、少なくないことである。HEAD研究会が最も違うのは、業界として日頃別の団体にいる人々が同じ場を囲んで集まり、学生も大人も混ざって議論する点だ。

[その2] 未来の仕事を見出す発見の場

(箱の産業から場の産業)

[その3] 自発性と創発性を刺激する活力の場

[その4] 実り豊かな方策の糸口がつかめる頭脳の場

2017年

オープンプロセスTFキックオフの講演会にて、〈ひらかれる建築「産業論」から見たその必然性〉と題した松村氏当時の資料が残っている。

我々の産業、不動産、建築、住宅建材等全て合わせてこの高度経済成長期に構造が決まり、60年代の日本の産業の形ができたものは文化財として保存対象になってきている。”空き家は皆で作ってきた豊かな空間資源”という捉え方が必要である。十分なストックを人の生き方の実現に利用する構想力が問われる時代と言えるのだ。利用の構想力は作るということではなく、利用の構想力が大事な時代に加え、人の生き方が最もテーマに適している点が全く過去とは違う。これがオープンということにかけた主な部分だ。

そして2023年:HEAD研究会のこれから

HEAD研究会創立からの構想を受け継ぎ、時代の状況が転換期以後から定常的となった今、新しい事柄を起こす時期と言える。より開かれたものを求め、『「専門家/非専門家」が関係なく、「ワーク/ライフ、しごと/あそび」の境界が混ざり合って新しい価値を育む。そんな「場(産業)」を創り出す「場」』として機能するHEAD研究会として、時代の現況認識と建築・知識・技術のストックを人の生き方の実現に利用する構想力を踏まえ、活動展開を繰り広げていくと言う。

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-レポート後記

本イベントレポートは、総会シンポジウム2023 vol.1[基調講演編]として執筆いたしました。

基調講演を通じて、HEAD研究会がどこに向かっていこうとしているのか、これまでの活動展開を追憶する形で会員全体が再確認できる場となり、またコロナ禍を経て3年ぶりに叶った現地開催では、リアルに様々な分野の人々、学生と大人の交流を体感できる場ともなりました。今後の新たな時代を築くひらかれた場づくりの社会実装に向け、今後の活動展開に繋がるのではないでしょうか。

本イベントレポートは次回、vol.2【各タスクフォース活動報告編】として続編が引き続き掲載されます。後半編はこちら

(執筆:小山更菜/芝浦工業大学M2)

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