僕がサンフランシスコで学んだ5つのこと

Hiro Hasegawa
Ramen Hero 創業者のブログ
21 min readSep 11, 2018

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サンフランシスコで事業を立ち上げてから4年ほど、チャレンジしては失敗し、試行錯誤を本当に長いこと続けて、うまくいかずに悔しい思いやもどかしい思いもたくさんしましたが、Ramen Heroは現在成長しており、熱狂してくれる顧客も着実についてきています。

その中で、自分の中に溜まってきた学びがあるので、特に重要だと感じたものや、自分の行動や思考の原則につながった学びについて、まとめました。

今後米国で事業を立ち上げる人にとって少しでも似たような失敗を避け、事業の成功確率をあげることにつながればという思いで、書いています。

動機づけとはアイデンティティを与えること

事業を立ち上げていると、多くの人がチームビルディングの問題に直面します。事情はそれぞれかと思いますが、人が離れてしまうということは多かれ少なかれ、特に初期のスタートアップにおいては、かなりのインパクトがあります。

僕は当初、チームビルディングや、人をつなぎとめることにことごとく失敗していました。あるときはエンジニアをうまくモチベートする事ができず、ある時はいいチーム感を作ることができず。どうしてこうもうまくいかないのか・・・。それでも、事業は日々前へ前へと、心折れることなく、進めていかなければという状態。当時、胸が締め付けられるような思いとともに、暗中模索の日々を過ごしていたことは、まだ記憶に新しいです。

ある時、この「人に関する問題」を抱えている僕に対して、SFの兄貴分であるKiyoさんがこう言いました。

動機づけって、その人がチームにとって、どのような存在意義があるのかを感じてもらうってことだよね。言い換えると、アイデンティティを与えるということかもね。

その人は、何をしている時に自分がチームに必要とされていると感じられるか。やりがいや、生きがいを感じられるか。目標に向かって前進していると感じられるか — — 。一人ひとりにとって、存在意義を感じられる場所は違ってきます。それを理解した上で、会社のめざす方向に沿うような形で、動機づけをしていく必要があるということでした。

僕は当時、会社にジョインしたからには、当然自社の目指す方向性に対してすごく納得していて、高いモチベーションを持っていて、自発的に動いてくれるものだとばかり思っていました。今でこそ、そんな風に想定するのはとても未熟で、おこがましいと分かりますが、その頃は正直考えてみることすらしませんでした。

僕は、離れていった人たちの「動機」について考えることが、全くできていなかったのです。一人ひとりの動機が違うこと、そしてそれらそれを理解する努力をしない限り、長期的に続く強いチームをつくっていくことは到底できないと、その時はじめて理解しました。

またその時、Kiyoさんは加えてこうも言いました。「あと、一緒に働く人達の『なぜ、自分はこの会社で働いているのか?』の質問に答え続けるのも、経営者の仕事だよね。」

理想的には、「会社を大成功させたいから」という人のみで固めるのが良いでしょう。経営者としては、執着心を持って、その状態を目指すべきです。ですが現実的には、想いの強い・弱いは人それぞれですし、それ以外にも、様々なモチベーションを持つ人達が集まってきます。

特にこのサンフランシスコという地は、世界各地から色々な人が、それぞれの明確な目的をもって集まって来る土地です。「なぜこの人は他ではなく、うちで働くのだろう?」その、「なぜ」への答えとなるものこそが、その人にとっての存在意義を与えるものになります。今後の採用を考えても、この問いに明確に答えられるよう、意識して準備しておくべきなのでしょう。

この経験から分かったことは、合理的でいることのみが、会社経営におけるあらゆる問題を解決する訳ではないのだ、ということです。自分には、なんでもできる限り合理的に判断して、行動したいという思考のクセがあると自覚していますが、それだけではダメだと、心の底から痛感しました。

関連して思い出したのは、『会社は頭から腐る』という書籍の以下の部分です。

リーダーに必要なのは、「人間性×能力=人間力」であるが、そのベースにあるのは、どれだけ一人ひとりの市井に生きる人々の切ない動機づけや、喜怒哀楽というものが理解できるか、ということでもある。

人は、いろいろな思いで生きている。いろいろな生きる場がある。その時々で、人の気持ちはいろいろな方向に向く。もちろんその中で、人は自分の人生や自分の生活、家族を大事にしようと考える。そうしたリアルな切なさを、リーダーがどれだけ受け止められるか、である。ここの人間のさまざまなインセンティブの方向を理解しなければならない。マクロを見ながら、ミクロも見なければならない。

会社のトップとして、リーダーとして、素晴らしい人達に高いモチベーションをもって力を発揮してもらうことは、なによりも重要なことです。動機を理解し、「自分はチームにとってこういう風に貢献しているんだ」という、存在意義を感じてもらえるような仕事、事業の機会を作り出し、ミッションを追求すること。今もまだ道半ばですが、複数の手痛い失敗から学び、前よりも強いチームが作れてきているという自信があります。

わくわくする課題を設計する

Ramen Heroのリブランディングプロジェクトで、米国で初めてデザイナーを採用することなった時のことです。プロダクトやブランドストーリーをより魅力的に伝えていくために、経験・実績ともにすばらしいデザイナーを見つけ、運良く自分たちのコンセプトに興味を持ってもらい、一緒に仕事を出来ることになりました。

ところが、プロジェクトがスタートしてしばらくすると、徐々に問題が。どうも、こちらが想定したデザインとは違った方向性の物が出てくるのです。「しっくり来るものがあがってこないな」と思いつつ、具体的にこういうものがほしいなど、ひとまず自分の好きなウェブサイトをいくつかランダムに集めたり、相手の質問に答えるということを何度か繰り返していました。どの辺りがしっくりこないかを教えてほしいと言われるものの、それがうまく言語化出来ない。今思うと、それはこちら側のコンセプト固めが不十分だったからなのですが。

その後も状況は変わらず、相変わらずコミュニケーションがうまくいかず、相手が混乱しとまどっていることが手に取るように分かりました。とはいえ、こちらも望むものがなかなか出てこず、どうして伝わらないのだろうともやもやしながら過ごしていました。

振り返ってみると、僕は当初、こちらのやってほしいことを伝えようとしていました。具体的に「こういうデザインにしてほしい」と自分から伝えなければならないと思いこんでいたのです。ある時Kiyoさんに相談するタイミングがあり、この事を話してみると、こんな言葉が返ってきました。

「優秀な人材であればあるほど、前向きに楽しんで、100%以上の能力を発揮してもらいたいよね。だから彼らに、解いてみたい、面白い、って感じてもらえるような、わくわくする課題を設計することが大事だよね。」

たしかに、解決することが簡単そうな課題であれば、他の人でも簡単にできてしまうことなので、あまり燃えないのかもしれません。優秀で新しいチャレンジを求めている人ほど未知の面白そうな課題を設計し、提供してあげることが重要だと気づかされました。

この経験以降、もちろん自分のアイデアは出しますが、「今のRamen Heroにはこういうブランディング上の課題があると思うけれど、どうやったら解決出来るだろう?」と尋ねることを意識するようになりました。これが結果的に、多くの良いアイデアを引き出すことにつながり、よりよいプロダクト作りへとつながりました。

また、課題を設計する際の自分なりのコツを一点。それは、自分が大切にしたいことを3つくらいに絞って、その3つの中での優先順位もあわせて伝えることです。

例えば、今回のブランディングのプロジェクトでは、Ramen Heroがどういう価値観を大切にしているかという、レイヤーの高い部分で重視しているものを3つ出しました。それから、それらの中でも優先順位をつけて、「これをこういう順番で、我々のターゲットとする人たちに伝わるようなデザインを作って行きたい」というコミュニケーションをとりました。そして、これが実現できれば、その他の細かいdetailは任せるので、良いと思う案をいくつか出してもらえませんか?という方向に切り替えました。

そうすると、それまでとはうって変わって、相手からより活発にアイデアが出てくるようになり、互いのディスカッションもスムースで前向きなものになっていきました。

こちらがやってほしいことが明確に言語化できるものは、優秀な人の手はいらないと思います。ですが、まだ世の中にないものを作るスタートアップにとって、解決方法をうまく言語化できないことは、山ほどあります。

そんな時にこそ、優秀な人材の力が必要です。その時すべきことは、自分にも解決方法が分かっていないけれど、解くが面白そうな課題を与えることです。なぜなら、自分にできることは限られているし、自分の持っているアイデアがベストではないことがほとんどだからです。

ここから学んだことは、わくわくしてもらえる、よりチャレンジングな課題を用意し続けることが重要ということ。そしてもう一歩踏み込めば、それには経営者が大きなミッションとビジョンを持って、リスクを取り続けることが必須ということ。

より大きなことにチャレンジするには、今会社にいる人間たちよりも優秀な人を取り続け、良い課題を設計し、全社で解いていくぞ!という組織を作り出すことが大切です。最終的に責任をもって意思決定をするのは会社のトップである自分ですが、その過程では自分より圧倒的に優秀で、各分野の専門である人たちのアプローチを真摯に聞いて、一緒に考えていくことが重要です。

正しい人にすばやく聞く

事業を立ち上げはじめた当初、米国において複数のフード系のライセンスを取る時や、製造拠点となるキッチンを見つける時に、かなりの時間を費やしてしまいました。自分でなんとかライセンスの取り方や、良いキッチンを見つけようと、慣れない英語であれこれとリサーチをしていたのを覚えています。

今考えれば、1–2ヶ月かかっていたあの作業は、今なら1–2週間くらいで完了させることが出来たのかもしれません。これ以外にも、初期にはこういった莫大な時間のロスをしていた場面がいくつかあり、大きな反省点の一つです。

これが解決したのは、しばらくしてからのことです。
そういえば、とふと気づいたことがありました。それは、何か困ったことがありKiyoさんに相談をする時に「それは〇〇さんが詳しいんじゃない?相談してみたら?」と言われることがよくあるな、ということです。また、Kiyoさんが米国でスタートアップをしている日本人の起業家たちに情報を共有してくれることがあるのですが、それも特定のトピックに詳しい、現地の専門家から聞いた情報が多いのです。

当時の僕は、人にがんがん頼ったという経験がほとんどなく、どちらかと言えば、自分でなんとかしようという方に考えがいきがちでした。ですが、Kiyoさんのような経験のある人でも、ガンガン色々な人に質問をしている。もしかすると、自分ももっともっと外部の専門家にどんどん質問していくべきなのではないか?そう思ったのです。

それからというもの、思考パターンは「どこに答えが落ちているのだろう?」から「誰に聞いたら一番早いだろう?そして、その人はどこにいるだろう?」という発想に切り替わりました。

何か分からないことがある時に出来ることとして、人に聞く、本を読む、調べるなどがありますが、今の時代であれば、もっとも活用すべきは「人に聞く」でしょう。なぜかというと、とくにテクノロジーの絡む事業や、マーケットが成長していて、刻一刻と変化する市場での事業に取り組むスタートアップこそ、正しい情報というのはどんどん変化するからです。

数ヶ月前に正しい情報としてウェブに乗っていても、今正しいとは限りませんし、その変化を正しく捉えられないということは、あやまった方向に進むことになりかねません。特に、その答えの正確さが長期的に事業にとってクリティカルな影響を与えるものであればあるほど、ウェブに落ちている情報ではなく、正しい情報をもっている業界のインサイダーに尋ねることが重要です。

よく言われますが、スタートアップにおけるもっとも希少な資源は間違いなく時間です。この時間を短縮するためには、どのような努力でも払うべきです。そして、人に聞くということは、そこまで大変なことではありません。なので、絶対にもっとやるべきです。

今ボトルネックになっていることはなにか、そのボトルネックの原因になっているものは何かを冷静に考えて、ではその原因を解消してくれる人とはどんな人だろうと考えて、探し方を考えることです。

ちなみに、僕が人探しにおいて米国でよく使うのはLinkedInです。冒頭のフードライセンスであれば、もし今当時に戻るのであれば、自社と同じような冷凍食品を販売するスタートアップを立ち上げたことがある人や、そういったスタートアップで製造関係のポジションについていた人などをメインにリストアップして、LinkedInでかたっぱしからメッセージを送りまくって、教えを請うということをします。これまでの経験上、10通も送れば1通くらいは、その道でも相当経験豊富な人から、相談にのれるよと返事をもらえます。

それ以上に良いのは、すでに業界のインサイダーにつながっている人にいつでも聞ける状態を作ることです。Ramen Heroが現在入居している、SFベイエリアの選ばれたフード系スタートアップが30社入居するキッチン兼アクセラレーターであるKitchenTownでは、彼らがフード業界の豊富な人脈を持っています。様々な課題に対して、誰か力を貸してくれそうな人はいないかと尋ねると、だいたい解決策を知っている人にすぐにつないでもらうことができます。これによって、問題解消のスピードが以前よりも一段と早くなりました。

こういう、すぐに答えにアクセスできるつながりや環境を地道に作っていくこともまた、自分の母国ではない米国という地でスタートアップをやる上では、より一層重要だと感じます。

「得たいもの > 失うもの」を維持する

前回のブログで「失うものがないということは強い」と書きましたが、それについてKiyoさんやAnyplace内藤聡と話す機会がありました。その時の話で、強く印象に残ったのは、得るものと失うもののバランスの話です。

失うものがない状態は、確かに強いのですが、僕からその時に抜け落ちていた視点は、「失うものがない状態がそのまま続くことはない」ということでした。

ある日、なぜ日本で成功体験があるのに、米国に移住して、私財も投じて、フルスイングでリスクを獲り続けていけるのかを、Kiyoさんに聞いたところ、こう返ってきました。

「リスクを取り続けるには、常に「得たいモノの大きさ」が「失うモノの大きさ」を上回っている状態を維持することが必要だよね。誰にでも、人や金や世間の評価など、失いたくないものがあって、その大切なものを失うことは、みんな怖い。それらは、いま所有していて手元にあるし、自分が依存しているものも多くて、その大きさを小さくしようと頑張っても、なかなか小さくできない。だから結局は、自分が「得たいモノの大きさ」だけが、コントロールできるものだと思うんだよね。そして、自分が得たいものって、時間軸が未来のことだから、自分の頭の中にしか存在しない。だから、その「得たいモノ」がどのくらい大きいのか?なぜ、それが欲しいのか?を、自分の中で確認し続けて、大きさを維持することが大事だよね。もし、「失うモノの大きさ」が「得たいモノの大きさ」を上回ってしまったら、その瞬間に大切なものを失うのがすごく怖くなって、きっとリスクを獲るのを辞めてしまうんじゃないかな。」

リスクとは、得たいものと失うものを天秤にかけて、得たいものが大きい時に取れるものです。その天秤において、失うものの方が重くなってくると、人はリスクを取れなくなっていきます。そしてより重要なことは、「失うもの」は基本的には増えることはあっても、減ることは滅多にない、ということです。たとえば、年齢を重ねるにつれて家族が出来たり、健康上の不安が出てきたり。失いたくない、大切な仲間が出来たり。いろいろな制約が出てきます。また、何かがうまくいって、お金や名誉や自信が手に入ったとします。それは今まで「得たいもの」だったはずなのに、得た瞬間から即座に「失うもの」に転換します。

僕たちは、生きていればかならず失うものが増えていきます。そのような中で、どうやって自分の中でのリスクをとりつづけるための不等式「得たいもの>失うもの」を常に保ち続けるか。

自分にとって、米国でRamen Heroに取り組み、得るものは何だろう?考えてみると、やはりそれは、僕が米国に来た理由である、できる限り難しいことに取り組み、それを志をともにできる仲間を集めて一緒に解いて、喜びを味わいたいということでした。

得たいものの大きさは、自分のめざす事業の大きさや、実現したい世界観、喜ばせたいと思う人の多さなどによって、変化するのでしょう。今のところ、この得るものは今の僕にとって途方もなく大きいです。今後、ステージが更に進み、失うものは増えていくと思いますが、自分の志すものを定期的に見つめ直し、必要に応じてアップデートしながら、必要なリスクを冷静かつ勇敢に取り続けられる起業家でありたいと思います。

補足ですが、もし世界中に使われるような大きな事業を作りたいと思う方がいれば、出来る限り早くこちらに移り、スタートすることを薦めます。もちろん、米国でやることがベストかどうかは、取り組む事業の内容や人によってそれぞれで、唯一の解ではありません。

ですが、もしも世界中の人に使われるものを使いたいと本気で思うのであれば、決して無視できない場所であり、これまでのところ、圧倒的な数の実例を生み出している場所であり、それを実現した人達が最も集まっている場所であることには違いありません。

若い時期というのは、失うものが相対的に小さい時期です。年を重ねれば重ねるほど、また得たものが増えれば増えるほど、リスクをとれなくなる。多くの人達が米国でスタートアップを立ち上げ、成功することを心のどこかで夢見ながら、なんとなくうやむやにしているうちに、現状に満足していっているのではないでしょうか。

実際にやってみて分かることですが、テック系のメディアなどで見るスタートアップの華やかそうな一面とは程遠い、失敗や苦労の連続が待っています。ですが一方で、こんな自分でも事業を立ち上げ、正解のない問いを一緒に楽しみながら解ける仲間とともに、米国で熱狂的なカスタマーを見つけられる、というところまでは分かりました。

今後どれだけかかっても結果を残し、いずれ米国でやってみたいと思っている人達の背中を、もっと説得力をもって押せるようになろうと決めています。

繰り返しますが、もしも米国でいずれ事業に挑戦したいと考えているようであれば、失うものの小さいうちに実際にスタートしてみることをおすすめします。

リターンを最大化させるリスクを取り続ける

同じく前回のブログで「なぜ自分がこの事業をやるのか?その理由や大義があることが重要」という内容を書きました。なぜなら、自分に見えている将来のプロダクト、事業、会社の姿こそが、リターンの大きさを決め、リスクのとり方を決め、戦略を決めるからです。リスクとリターンの関係性、そしてそれらを踏まえた戦略の立て方について、学んだ内容を以下にまとめます。

リスク・リターンの考え方について。

一言で言うと「起業家の本質とは、リスクを作り出すこと」。もう一歩踏み込んでいえば、起業家がやるべきことは、大きなリターンを見出し、それに見合った適切な大きさのリスクを作り出すこと。そのリスクを取ることにコミットすること。そして、リターンを得るまでの道のりを徹底的に逆算して、リスクを一つ一つ潰していくことです。

では、これがなぜ起業家の本質なのか?それは、その大きなリターンは、それを心の底から信じ、やると決めた人にしか本質的には見えないものだからです。これはY Combinatorの創業者であるPaul Grahamの「悪いように見えて、実は良いアイデア」の話とも近い話でしょう。ほとんどの人からはダメなアイデアだと映るけれど、自分なりの観点で世界を見て、絶対に必要だ、これから大きくなると心から信じられるもの。そして、それが実際に良いアイデアだった場合に、大きなリターンがもたらされます。

有名な話ですが、いまや世界的なプロダクトとなったAirbnbも、当初はひどいアイデアだと散々言われ、多くの著名投資家に投資をパスされたことが、これを物語っています。Airbnbの創業者たちだけには、世界的なプロダクトになる未来と大きなリターンが見えていて、成功するまでの相応のリスクを設定することができ、そのリスクを取り続ける覚悟があったのでしょう。

リターンを最大化させるためのリスクを取り続けることこそが戦略」とKiyoさんは言いました。目先の数値の最適化ばかりに目が取られていると、短期的に成功するが長期的には成功しなかったり、小さな事業に収まってしまいます。また、長期的な目線をもって攻めてくる相手が出てきたら、長期的には太刀打ちできません。

これと対照的だと思うのがリーンスタートアップです。一時期もてはやされたリーンスタートアップですが、その場その場での最適化こそしていけるものの、最終的には小さいプロダクトに収まる可能性が非常に高いです。長期的には、戦略を持ってリスクをとってくる相手には勝てません。

「逆算せよ」とはビジネスシーンのあらゆるところで耳にする言葉ですが、それは裏を返せば出来ない人がほとんどという事なのでしょう。人は本来見たいものだけを見たい生き物で、逆算は得意ではないのかもしれません。ですが、起業家として大きなリターンを生み出すためには、将来の起こりうるリスクを徹底的に洗い出し、逆算することが決定的に重要です。

リターンを最大化させるためのリスクを取り続けること。これを意識して、自分の見ている将来のプロダクト、事業、そして会社を創っていきたいと思います。

最後に:成功確率をあげるために

スタートアップにおいて成功確率をあげていくためには、ただがむしゃらに走るだけではなく、学びながら走ることが重要だと考えています。

Kiyoさんから教えてもらったことの一つに、学びを常にため、定期的に見直して自分の中に蓄積していき、同じ落とし穴にはまらないようにするということがありました。今では、スプレッドシートに溜まった学びは小さいこと大きいこと、事業のことや自分の心身のあり方等に関するものも含めて200近くになり、その一つひとつが自分の実際に経験したことに紐付いています。裏を返せば、これまでに200近くの失敗をしたということになり恥ずかしいような気もしますが、確実に自分の血となり肉となっていて、成長できていると実感できます。

成功確率をあげるという点で、もう一つ、心に残っていることを。ある時、人のマネジメントがうまくいかずに、現在株式会社ムーンショットの代表をされている菅原さんに相談させて頂いた時に、こんな言葉をもらいました。

「自分がただの人間なら感情をあらわにして相手のせいにしていい。ただ自分が経営者の場合は別です。なぜならそうしてしまうと成功確率が下がるから。

自分が起業した理由を思い出してみよう。誰かと一緒に働きたいから起業した?お金が儲けたいだけ?そうじゃないよね。世界に何かを証明したかったからだと思う。もしそうなら成功するしかない。成功確率を上げていくことしかしてはいけない。世界をあっと言わせるまでは我慢だ。

じゃあ、どうして人のせいにしてはいけないのか?それは人というのが外部環境だから。起きた問題が自分のせいだと思ったら、全部自分を治すことで成功確率が上がる。

人のせいにしたらどうだろう?それは天気のようなものだから、コントロール出来ない。雨が降ったら売上が下がりました。と言っているうちは成功はしないのですよ。全てを手中に収めるためには、責任も全て持つ覚悟で、ね。

ヒロくんならそれが出来るから。頑張って。世の中に自分が証明したいことを証明しよう!」

スタートアップをやっていると、ありとあらゆる良くないことが起こりますが、どれもよく考えると事前に防げたり、備えておけばダメージを最小限に防げることが殆どです。また、失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないこともできます。実は、多くの部分で、自分でコントロールできることがあるということです。

今後も、学ぶことを止めずに、自分でコントロールできることを見つめ、成功確率をあげる努力を続けていきたいと思います。

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