ローコスト・アーバニズム その文脈と展望を巡って

連載 [ 都市論の潮流はどこへ “ローコスト・アーバニズム” ] イントロダクション/Series [ Where the urban theory goes? “Low-Cost Urbanism” ] Introduction

目次

01 馬場正尊 インタビュー 工作的都市へ

02 矢部恒彦
「都市のロマンス化を乗り越えて ポートランドのDIYアーバニズム」

03 青木彬
「これからの都市とアートを語るために」

04 寺井元一 インタビュー

イントロダクション

近年、20世紀の都市計画に対してタクティカル・アーバニズムやプレイスメイキング、ソーシャルデザインなど、ボトムアップの都市計画が盛んになってきました。地方都市においても地域アートやコミュニティデザインを軸とした都市政策が多くみられるようになっています。共通するのは、都市計画(都市政策)もしくは「都市の作り方」が、縮退都市に対峙したことで、ローコストを志向している点でしょう。

本小特集は、かつての都市計画と相対するアーバニズムを「ローコスト・アーバニズム」として括りながら、21世紀に個別に浮き上がってきたように見える、都市のキーワードの関連性をマッピングする試みとなります。ローコスト・アーバニズムがどのような文脈にあるのかを探り、ややもすると表層的に拡がる新しい潮流を、本質的に理解する手助けになることを目指します。また時期尚早ではあるものの、ローコスト・アーバニズムの有効性も垣間見てみたいところです。

今回インタビューと執筆いただいた方々は、前述のような現場に身を置いいている、または把握する実践者の方を念頭に置きました。都市計画の専門家ではない方が中心となっています。構成としては2本のインタビューと2本の寄稿からなり、随時本サイトで公開していく予定です。


1本目はインタビューで、東京R不動産の運営やリノベーション、公共空間での社会実験などを通して、建築家の領域を拡張してきた馬場正尊氏。様々な実践の中で得てきた知見から、海外の動向、メディアとの関係、組織論に至るまでローコスト・アーバニズムの背景を概観するインタビューとなりました。

次に公共空間やソーシャリーエンゲージドアートも含め、メインストリームからオルタナティブまで横断的にアートプロジェクトの企画・運営に関わってきた、キュレーターの青木彬氏。アートによる都市の再編という切り口で原稿を依頼しました。日本のアート政策を一巡しつつ、アートと都市の本質的な接点を考察していただきました。

もう一つの寄稿は、ポートランドに滞在調査を行った矢部恒彦氏。イアン・ボーデン 『スケートボーディング、空間、都市』の訳者の一人であり、スケートボードパークや都市公園の菜園の研究者でもある矢部氏の視点から、全米一住みたい街におけるDIYアーバニズムを通した、都市の諸問題に対する考察をいただきました。

2つめのインタビューは、松戸を中心にエリアブランディングや不動産のリノベーションを手がける、まちづクリエイティブ代表の寺井元一氏。政治学を修了し、ストリートアートなどの支援を行ってきた寺井氏の出自から、現在の都市の作り方、作られ方をインタビューさせていただきました。


ローコストを切り口に、4つの記事を通して見えてきた状況は、単なるコストの安さを意味しません。もとより本特集は金額の大小を明らかにすることも意図していません。一面的には、都市計画における金の使い所に、選択肢ができただけとも言えるかもしれません。しかし、「都市の《作り方》」の選択肢が、カルチャーのなかで行われてきた「都市の《使い方》」に辿り着いた先に、自ずと現れた状況なのではないでしょうか?ローコスト・アーバニズムは都市にどのように実装されつつあり、どう違いがうまれつつあるのか?ボトムアップで発展したローコスト・アーバニズムが、トップダウンに回収されずに、新たなオルタナティブを描くことは可能でしょうか?

笠置秀紀(都市論小委員会/mi-ri meter)

連載 [ 都市論の潮流はどこへ “ローコスト・アーバニズム” ]

> 01 馬場正尊 インタビュー
「工作的都市へ」

> 02 矢部恒彦
「都市のロマンス化を乗り越えて ポートランドのDIYアーバニズム」

>03 青木彬
「これからのアートと都市を語るために」

>04寺井元一 インタビュー
「ストリートから学ぶ都市の作り方」前編

>04寺井元一 インタビュー
「ストリートから学ぶ都市の作り方」後編