[c] 転用されるロードサイド

038|201912|特集:福島、風景と注釈

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建築討論
4 min readDec 1, 2019

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国道6号線は、東京から千葉・茨城・福島をへて宮城(仙台)に至る一般国道であり、水戸から相馬まではいわゆる「浜街道」がもとになっている。原子力被災12市町村のうち、浜通りの7市町村を貫く動脈だ。

第一原発は7市町村の中央、双葉町・大熊町の町境に立地する。両町域は今もほぼ全域が帰還困難区域、つまり立ち入りができない状態にあるのだが、2014年9月より国道6号だけは「自動車にかぎって」一般の通行が可能になっている。30Kmほどにおよぶその区間は、道路境界にフェンスが立ち、車から出ることはできない。沿道の風景はたしかに「見える」が、しかし「ないものとせよ」、という命令が働いているようなものである。

photo c_01|国道6号線が帰還困難区域内の集落を貫く。|大熊町|2017年1月6日撮影 (A)

ふつう、街道筋の古い集落があるとき、国道はそこだけはバイパスするのだが、大熊町には一箇所、集落を貫く街道がそのまま国道へと拡幅・継承されている箇所がある(photo c_01)。

この集落を抜けるとき否応なく感じさせられるのは、国道6号はここではすなわちワープ航路のようなものだということである。

ところが、この2町の区間を出ると様相は一変する。南の富岡町や楢葉町、北の浪江町などでは、ロードサイド商業の空間がさまざまに「転用」されてきた。ゼネコン各社の詰め所(事務所)、スクリーニング場などがその主な用途である。おそらく、店舗空間が広くユニヴァーサルであるため簡単な内装で柔軟に使えるプランに変えられること、広大な駐車場を備えていること、国道6号線が無二の幹線であることなどがその理由だろう。

もっともロードサイドの店舗は氷山の一角。作業員の宿所や重機・資材置き場などまで含めると、原発事故にかかわる建設関係の事業を受けた企業・事業所は、それぞれに相当に大きな空間容積を確保しなければならなかったのである(編集部 A)

photo c_02| ドラッグストア→スクリーニング場。建物解体作業にかかわる被ばく検査が行われてきた。|富岡町|2017年1月8日撮影 (A)
photo c_03|ガソリンスタンド→建設会社詰め所。|楢葉町|2017年1月 7日撮影 (A)
photo c_04||自動車ディーラー→土木復旧事業の現場事務所。|浪江町|2017年1月7日撮影 (A)
photo c_05|自動車ディーラー→除染の駅。除染作業に関する市民の理解を深めてもらうこと、視察などへの対応、住民の休憩所などの目的でゼネコンが開設。|富岡町|2017年1月7日撮影 (A)
photo c_06|道の駅→警察署。富岡町に置かれた双葉警察署は除染が完了するまで楢葉町の道の駅を使っていた。|2017年1月7日撮影 (A)
photo c-07, 08|結婚式場、斎場などのホールも、各種の目的に転用されてきた。|2017年1月8日撮影 (A)

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建築討論委員会(けんちくとうろん・いいんかい)/『建築討論』誌の編者・著者として時々登場します。また本サイトにインポートされた過去記事(no.007〜014, 2016-2017)は便宜上本委員会が投稿した形をとり、実際の著者名は各記事のサブタイトル欄等に明記しました。