LayerX の事業紹介とカルチャー

mosa_siru
LayerX-jp
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16 min readDec 5, 2018

はじめまして、LayerX CTO の 榎本(@mosa_siru) と申します。

この記事は、LayerX が何をやっていて、どんなカルチャーか説明していきます。何をしている会社かよくわからないという声や、ブロックチェーンのリサーチだけしている会社だと誤解されることもあり、この記事が理解の一助となればと思います。(その結果願わくば、一緒に働く仲間が増えればいいなと考えております!)

LayerX って何をやっているの?

LayerX は、ブロックチェーン技術に 100%コミットする会社です。多くはエンジニアで構成されており、それぞれが強みをもって研究や開発を進めています。LayerX は、2018/08 に Gunosy 福島が代表をうつることで立ち上がった新しい会社です。元々Gunosyには2017年末に立ち上がったR&Dチームがあり、それをベースとして事業化した形となります。

会社の成り立ちや戦略については、設立時にCEO福島の書いたエントリが参考になるかと思います。

LayerX の活動は主に 2 種類に分かれています。1 つ目は、R&D による技術推進。2 つ目は、ブロックチェーンのビジネス適用と開発で、その両輪を進めています。

理想としては、両輪がうまく機能することです。研究開発があらたなビジネス機会を生み、それが生んだキャッシュを研究に投資できる ─── そんな Google のようなループを目指しています。

以下、その 2 つについて見ていきます。

R&D 事業について

ブロックチェーンはまだまだ発展途上であり、研究すべき余地がたくさんあります。
同時に、ブロックチェーンの研究は英語圏でさかんであり、まだまだ日本のブロックチェーンエンジニアの数もプロジェクトの数も、海外にくらべて遅れをとっているのが現状です。
僕たちは自らの知見を惜しむことなく scrapbox や medium に無料公開し、少しでも日本の技術発展に貢献していけたらと思っています。

Scrapboxでのリサーチ内容(一部)

ブロックチェーンの改善点は スケーラビリティ、セキュリティ、匿名性、オラクル、UX など多岐にわたりますが、現状(2018/12)ではその中でもセキュリティに注目したいくつかのプロジェクトを行っています。

ブロックチェーンは改竄耐性の裏返しとして、一度デプロイしたスマートコントラクトのコードの修正は容易ではない面があります。場合によっては、バグに気付いても修正できず、資産が盗まれていくのを指をくわえて見ているケースもあり、過去にもいくつか事件が起きています。そのためリリース前のチェックが肝要であり、セキュリティオーディット(コード監査)は国内外でニーズがあり、LayerX としても取り組んでいます。

しかし、理想はそもそもバグを起きにくくすることです。そこでLayerXのR&Dチームでは、安全なコントラクト開発のためにデザインされたプログラミング言語Vyperと、コントラクトの安全性を数学的に証明する形式的検証の分野に取り組んでいます。
Vyperはコントラクトをできる限りシンプル、読みやすくし、開発者の意図しないバグを混入させないように作られた言語で、Ethereumのコア開発者たち中での注目が高まっています。LayerX では、Vyper自体へのコントリビューションに加え、利用者の裾野を広げるためのVyperによるPlasma MVP の実装、Remix IDEのVyper Plugin開発などに取り組んできました。

形式的検証も、MakerDAOやGnosisなど大手プロジェクトで採用され、注目を集めている技術です。ブロックチェーンは性質的に従来のテスト手法で網羅的な検証を行うのが難しいのですが、形式的検証ではテストケースの代わりに、数理論理学的に仕様を記述し、コントラクトがその仕様を満たすか証明を行っていきます。LayerXではこの分野の理論研究に加え、形式的に検証されたVyperのコントラクトライブラリを開発するFVyperというプロジェクトに取り組んでいます。

長くなってしまったので割愛しますが、zk-S[NT]ARKs の研究も進めており、こちらはプライバシーだけでなく、スケーラビリティにも繋がる根幹技術だと考えています。

R&D チームの活動は、順次公開されていきますので、楽しみにしていてください。

事業開発やコンサルティングについて

R&D の内容はパブリックになっているため、そちらの印象が強い方もいるかもしれません。
しかしブロックチェーンの研究開発と同レベルに、実際にブロックチェーンをビジネスに適用することもミッションとしています。こちらは LayerX 単体というよりは、すでにアセットをもっている企業さんと一緒にすすめたり、お手伝いをすることが多いです。
推進の仕方は様々で、まずはブロックチェーンやそのトレンドに関する概要を説明することもあれば、特定のドメインにおける国内外の最新動向をレポートし、それをもとに適切な打ち手をコンサルティングしたり、その後の実証実験や長期的な開発にうつったりなど、お互いのニーズに合う形で進めています。協業で事業開発を行うこともあります。
Microsoft さんと提携を結んだことも、そういった実験や開発によるブロックチェーンの普及をさらに促進するためです。

ブロックチェーンにも相性の良い領域と悪い領域があると考えていて、現時点(2018 年)での仮説をもとに取り組んでいます。そのうちの 1 つは金融領域となり、実際に不動産に関するプロジェクト等を進めています。また海外のプロジェクトもあり、現地に出張して進めることもあります。

プロジェクトは多岐に渡り、順次発表していきますので、こちらも楽しみにしていてください。

それらを通して意識しているのは、「ドメイン知識がないと何もできない」ということです。それには biz も dev も関係なく、皆がその業界の知識を頭に叩き込みながら望んでいます。ブロックチェーン技術を知ることはもちろん、その業界/経済/法律のことを知らないと正しい打ち手を導くことができないからです。そのためこちらのチームでは、本当にフルスタックな技術や知識が求められることになります。

どんなカルチャーなの?

私達は、以下の 5 つの行動指針をもとに活動しており、それらがカルチャーの源泉となっています。

  1. Be Animal
  2. Bet Technology
  3. Trustful Team
  4. Fact Base

1. Be Animal

チーム内で一番使われている言葉です。
こちらは、「常に目的にとって、組織にとって最適な手を考えて、(自分の得意不得意とか関係なく)切り開いていこう」「不確実な状況下で積極的に動いて、情報をあつめて大胆に物事を進めよう」といった意味がこめられています。

例えば、STO の領域が注目を集めているなら、知識ゼロだけど金融分野を猛勉強してみるとか。とにかく海外に飛び込んで積極的に関係を築いてみるとか。バックオフィスが少ないなら自分から勉強をしてヘルプするとか。組織として採用が課題になったから、優先順位をきりかえてすぐに打ち手を考えて実行するとか。

またこういった十分成熟していない領域では特に、最先端の情報はネットに転がっておらず、生の情報や関係性が大事になっています。そういった中で貪欲に情報を集め、自ら考えて「動物的に」大胆に動くことを良しとしています。

日常会話での登場率No 1 です。

2. Bet Technology

文字通り、テクノロジーに「張ろう」という意味です。
投機ばかり注目されていましたが、ブロックチェーンの根底となるのはテクノロジーです。技術が進化し、社会がより良くなるという未来にベットする。
そのために、前述の通りブロックチェーンの研究開発を進めてるのはもちろん、その知見を惜しみなく公開し、エンジニアコミュニティの発達も目指しています。

意識していることとして、エンジニア・Biz ともに技術をずっとキャッチアップする文化にしています。例えば毎日の勉強会では、多様なプロトコルやプロジェクトを職種に問わず研究しています。(資料はほぼすべてscrapboxにあげられています)また、入社前の課題として、いくつかの理論的な課題をじっくり解いてもらっています。こちらも職種によりません。

こういった技術を大事にする風土は、経験上、会社が大きくなるほど薄れていきます。さまざまな職種の人やコミット度の人が入り混じるにつれ、だんだんと技術にベットしないチームが生まれることもあります。そういった状況に少しでも抗うためにも、この標語を掲げています。別に皆がエンジニアになる必要はないけれど、テクノロジーの未来を信じる人が集う会社にしたいと考えています。

3. Trustful Team

チーム全員を信頼して、コミュニケーションを重視し、透明性をもって進めていく文化です。

現代の経営で最も重要なことは、優秀なチームを揃え、「見晴らしのいい場所」で各々が毛細血管のように動き、情報を集めて共有しながら経営していくことです。

例えば透明性のために、Slack の Private Channel, Direct Message は原則禁止にしています。また、皆の集まる週次定例ですべての事業の構造や状況が共有され、意思決定もそこでオープンに行われます
会社の PL/BS/CF など細かい数字も共有され、誰もが自分の判断で動ける体制を構築しています。

ブロックチェーンでは「Trustless(悪意をもつ人がいても大丈夫)」な性質が重視されますが、むしろ僕たちは性善説で、お互いを信頼してスピード感をもって進められるチームにしようと考えています。(一般的に、性悪説になるほど、優秀な人が動きにくくなり、なにごとも遅くなると考えています。)その裏返しとして、チームには高い能力と、強い責任が求められることになります。そういった裁量を楽しめる人を求めています。

Slackの中の人いわく、相当優秀な数字みたいです。(なおDMは、自分宛のメモ用途が多かったことが判明しました)

4. Fact Base

その名の通り、事実に基づいて意思決定する文化です。

「Trustful Team」に被るところもありますが、そのためには透明性を重視し、ファクトを共有することが大事になってきます。その上で、勘や政治ではなく、再現性をもって数字をもとに意思決定すること。常に海外にもアンテナを貼り最新情報を入手すること。目まぐるしい環境変化のもと、その都度冷静に、柔軟に決定事項を変えていくこと。

私達は週次の定例 MTG で意思決定をしていますが、その中で頻繁に事業における軌道修正をしています。それほど外的環境が変わる領域であり、修正していなかったと思うとぞっとするものばかりです。

私達はブロックチェーンに張っていますが、だからといってブロックチェーンが銀の弾丸だとも考えていません。壮大な未来と、不確実な現状を繋ぐために、その時点での制約の中で「次に来る」領域を見極め、顧客に提供できるものを正しい順番で事業展開していくこと。そのプロセスを通して、ファクトが集まる「見晴らしの良い場所」にたどり着き、技術的なノウハウが蓄積しキャッシュが回る体制を目指しています

5. 徳

これだけ日本語です!w

組織というのは、KPI を追い求めると短期的な売上至上主義になったりして、「徳」の低い行動をしがちです。そうではなくて、もっと知識の共有やコミュニティ推進を通し、長期的なブロックチェーンの発展に貢献していく。そうして培った徳や信用こそが、まわりまわって自社の機会にもつながっていく。ブロックチェーンの文化はオープンソースに密接にリンクしており、貢献(Contribute)が重要なキーワードだと考えています。
ポエムにはなりますが、すべての行動が正しく評価されて信頼につながっていく社会、徳の高い行動と利己的な行動が一体化する社会が来ればいいなと考えています。

…と、なんだか色々かっこつけたことばかり書いていますが、普通にみんな温厚で仲がよく、Slack もいつも盛り上がっている、笑顔があふれる職場です 😇😇

仲間を募集しています!

上記までが、僕らの考えていることや文化となります。

僕らには、やりたいけれどやれていない事が沢山あります。
Microsoft さんを始めとする様々な提携もあり、やれることの幅も広がっており、リソースの関係で進められていない話もたくさんあります。
研究開発の面でも、今のテーマをもっと深掘りしてコミュニティに貢献したいですし、他にも深掘りしたい領域がたくさんあります。

もっともっと研究もビジネスも加速させていきたい。そのために一緒にやっていく仲間を募集しています。なかなかタフな領域ではありますが、めちゃくちゃ面白いことを保証します!

どんな人と一緒にやりたいか

平たくいうと、ブロックチェーンに興味があり、上記の文化を面白いと感じる、変化に強い人です。
片手間ではキャッチアップすら難しい領域なため、現時点のブロックチェーンの理解度は必須事項にしていません。現在いるメンバーも、元から詳しかったというよりは、チームにジョインした後にスペシャリストになっています。もちろん元々詳しいほど嬉しいですが、能力のある方が、強い興味と好奇心をベースにキャッチアップしていくことを期待しています。

また、変化への強さは特に重視しています。外的要因により容易に打ち手は変わってくるため、そういった変化をむしろ積極的に楽しみ、自ら乗り出していけるような アニマルな方を求めています。

また別の機会で話しますが、この 1 年を通して、事業としては本当に紆余曲折があり、変化を楽しめるチームじゃないとついてこれなかっただろうなと思います笑

また、語学力があるとかなり強いのは間違いないと思います。とはいえ今のメンバーも、バラツキはありますがアニマルにアクションすることでかなり英語は鍛えられてきました。

ポジションでいうと様々で、必要な能力は異なります。たとえば R&D チームでは、ブロックチェーンや周辺領域の研究開発にフルコミットすることになります。ブロックチェーンの知識はもちろん、そのテーマのアカデミックな知識があると強いです。分野自体が新しいこともあり、20 台前半など若い人が多いです。

また、ビジネス適用やコンサルするチームでは、前述の通り多様な能力が求められることになります。ブロックチェーン以外も含む総合的な技術力(ブロックチェーン技術だけでサービスが作れるわけではないのです)と、事業について考えられる視野、ドメインや法律面のキャッチアップ、企業さんとのコミュニケーションなどなど。こちらは 20 代後半以降の、比較的シニアなエンジニアやBizが多いです。

ただしポジションは明確に決まっているわけではなく(なんだか言い訳めいてきましたけど)やはり変化します。ですのでポジションに合わせて採用するというよりは、文化に合う方をとにかく採用していくのが現時点での方針となります。また正社員だけでなく、業務委託の方や、インターン生も歓迎しています。

このエントリを読んで、興味がある、少しでも話を聞いてみたいという方は、以下からご応募いただけると嬉しいです!

応募するにはハードルが高いかもという方は、毎月のblockchain.tokyo などのイベントで弊社のメンバーに声をかけていただくか、beerbashなど交流するイベントを設けていますので、お気軽にご参加ください。

ブロックチェーンは世界の天才たちが鎬を削って戦っています。トップエンジニア、アカデミック界隈、政府、金融界隈、各業界の大手企業、新しく台頭したベンチャー達…さまざまなプレイヤー達のうねりがあり、相場はどこ吹く風で、日々進化しています。

このチャレンジングな領域に身を投じてみたい方、ぜひともお話しましょう!

皆さんのご応募お待ちしております!!

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