自己否定から見つかるイノベーションのヒント―ワークショップレポート

# Borderless 4/4

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「Borderless。価値創造のための境界線の溶かし方」と題して行われたセッション(全4回)の4回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 長田 英知氏:Airbnb Japan 執行役員
  • 豊田 慧氏:WeWorkJapan Design Director
  • 月森 正憲氏:寺田倉庫 専務執行役員
  • 小池 弘代氏:渋谷区観光協会 事務局長
  • 光村 圭一郎氏:三井不動産 ベンチャー共創事業部統括 BASE Q運営責任者 /モデレーター

旅行、コミュニティ、物流、渋谷のまちづくり、オープンイノベーションをテーマにしたワークショップスタート

光村 はい、ここから、各登壇者がそれぞれのテーブルに散らばっていきます。そこでも色々聞いたり議論を深めたりしながら形にしていきたいと思います。

進め方を簡単にご説明します。今こちらに5つのテーブルが用意されています。それでこれから登壇者のみなさんがそれぞれのテーマを出します。そのテーマに対して、みなさんが「どれであれば自分も関心があるかな?」「当事者性をもって議論に関われるかな?」をぜひ選んで分かれてください。

そのときに、大人の事情であまり人数が偏ると切なくなるので(笑)、なんとなく周りを見ながら空気を読んでいただけると助かりますが、まずある程度自由にやりましょう。

ワークショップは、35分間。まとめ方はそれほどフレームにはめようとは思ってはいませんが、各テーブルにA3の用紙を1枚用意します。なんとなく各テーブルでこういう話があってこういう方向性に見えてきましたよ、というところを最後に発表の時間を設けるでお話いただきたいです。

それぞれのテーブルのテーマは、長田さんが「旅行」、豊田さんが「コミュニティ」、月森さんが「物流」、小池さんは「渋谷のまちづくり」、私は「オープンイノベーション」です。

レベル感や粒度にばらつきがあるのですが、このものズバリということだけではなく、みなさんがこういうテーマに対して持ち込める課題感や知見をうまく接続していただきながらテーブルを作ってやりたいと思います。それでは簡単に1・2・3・4・5とテーブルの番号を振っていきますね。

そこに社会的意義はあるか? 境界線を溶かす前に考えるべきこと

(35分後)

光村 はいみなさん、各テーブルどんな議論があり、どんな方向性が見えたかをご共有ください。残りの時間は20分ありますので、1テーブル3分で話していただいて、最後登壇者がまとめたいと思います。では、1番から行きます。

参加者1 テーブル1番です。ユニオンテック株式会社の大林と申します。

ここは旅がテーマでした。Airbnbさんの「旅するように暮らす」から、旅と暮らしの境界線について話しました。

結論としては、旅と暮らしの境界線が結構曖昧になってきていると思います。理由は、何を所有して何を所有しないかを選択できることが大きいです。これまでは「家を継がなければいけない」ということや、「家を所有しているから旅はなかなかできない」ということがありました。

そういうバリアがあったところを社会的仕組みで取り除いて選択肢を用意してあげることで、今後もっともっと旅は深くなって多様化してくるのではないかという話になりました。

以上です。

光村 はい、ありがとうございます。私、不動産会社なので理解できます。実は、所有することと利用することの大きな差があるんですよね。所有してしまうと選択肢が狭まり、利用になると選択肢が無限に広がっていく話で、そこがまさに資産の考え方を変えていく話だと感じました。

では2番で豊田さんのテーブルお願いします。

参加者2 リビタの太田と申します。テーブル2番は「コミュニティ」というテーマでディスカッションしました。

基本は発散の話しかなかったのでなかなかまとめにくいですが、人と人との関わりの話をしていく中で、教育の話や人と人とのコミュニケーションにおいて境界線を溶かしていくことは非常に重要です。

やはり人と人とのつながりはすごくアナログですが、最近SNSも含めてデジタルなつながりも色々あります。アナログなコミュニケーションの間を埋めていくことで、アナログな接点があるところをより強固にしていく可能性もあるのではないかという話題も出ました。以上です。

光村 まさにアナログとデジタル。コミュニティはどちらも重要だと思いますが、ちょっとアナログ側も最近旗色が悪いと思っていますが、まさにこういうおもしろさもある感じがします。

それでは3番の月森さんのテーブルお願いします。

参加者3 はい、3番発表させていただきます。株式会社ユニティの石本と申します。3番のテーマは物流でしたが、「境界線を溶かす前に、まず社会的意義がないとダメ」という話になりました。

物流というテーマだと、究極の目標として物を運ばない世界が一番価値がある・意義があるという結論に行き着いてしまいました。しかし、例えば究極の物を運ばないといっても、「実際に消費者に届く過程で、物を作る工程を運びながら作ってしまえばいいではないか」という話になりまして、「作りながら運ぶというのが、実際に運ぶのですが時間短縮になるよね」ということになりました。

例えばキッチンカーで料理を作りながら運ぶのは結構イメージが出ていたと思いますが、さらにその先。例えばこのペンを3Dプリンターで車の中で作りながら、要は生産機能つき物流をすると、すごくムダが省けるという話で盛り上がりました。こんな感じでよろしかったでしょうか。

光村 はい、ありがとうございます。すごいですね、物を運ばないのが究極の形という自己否定から入る(笑)。ドキッとしましたが、ちゃんと落ち着かせていただいたので安心しました。

それではテーブル4番の小池さんのテーブルいかがでしょうか。

参加者4 LIFULLの子会社で代表をしている奥村と言います。

テーブル4はまちづくりです。大きくは「まちづくりは何だろう」「何が重要だろう」という話と、「目指すべき点はまちづくりはどういう姿がいいのだろう」という話、「境界線は実は関係ないという意識が大事ではないか」という話です。

結局はブレストして盛り上がっていく途中に終わったので、「まちづくりプロジェクトもここで発足します?」という状態の話をしていました。

まちづくりにとってやはり大事なものをフレームワークで考えると、ヒト・モノ・カネ・情報で。やはり人が意志を持ってコンセプトを定めて、そこに協賛した人たちが集まってきて、モノとしてはやはりそこのコミュニティが活動できる場所があったほうがまちづくりにとって重要だといえます。

例えば渋谷だと「どんな人が来るのか?」「どういうニーズがあって、そこにどういうコンセプトがあると人は盛り上がるのだろう?」と。渋谷だとやはり仕事で集まってくる人やショッピングや食事に来るのがありますよね。

色々なエリア・地方の方もいて、意外にみんながどういう目的を持って街に来ているかがわからないという話になり「それではどういうコンセプトを立てたらいいかわからない」という話していたら、「それではまず考える会をやりませんか?」という話題で盛り上がりました。

ありがとうございます。

光村 街のことをみんなで考えることが大事で、街のオーナーシップはみんなです。ビルや不動産で見ると、「街は誰のものでもない。みんなのものです」という話になったときに、こういう主体的な動きができるといいなと感じました。

それでは私のテーブルです。

参加者5 AGCの内田と申します。

このグループはどう境界線をなくすか・越えるかというところの話を最初していたのですが、外と内よりもどちらかと言うと社内の大変さの話題が出てきています。社内を越えていくのがまず大事だよね・大変だよね・そこが最初のステップだよね、という話です。

具体的にどんな大変さがあるかと言うと、やはりみんな似通っていて「すごく長い稟議」「やっていいのかどうかはっきり言ってもらえない」「根回しがすごく大変」といったことが多かったです。

では「なぜそういうことになってしまうのだろう?」というところでいくつかキーワードがあって、1つは「知らない・わからない」で、わからないのは怖いしやはり拒否したくなってしまうことです。

いわゆる大企業と言われる会社のメンバーも多かったのですが、同質なメンバーが集まると何か異質なものに対し、それを適当に扱う・拒絶してしまう、もしくは上から見てしまってコントロールしてしまうような立ち位置を取ってしまい、交わることが難しいのではないかという話をしました。

そこをどうやって越えるか。1つはわからないこと・知らないことにおいては、みなさん何か色々な危機感ややらなければいけないという思いを持って取り組まれます。ただし、背景やなぜそう思っているかを、抽象的なままだとなかなか伝わらないのでそれをしっかり具体化して伝えるようにすればいいのではないかということです。

あともう1つは体験させることです。例えば自分の上司にこういった会に連れていってその場をすごく楽しんでいただく、子供を遊園地に連れていってちょっと遠足させて「よくできたね。頑張ったね」と言って子供の自己肯定感を高めてあげてできたと思わせることを、上司にもして仲間を増やしていくことをやってもおもしろいねという話も出ました。

光村 はい、ありがとうございます。ちょうどこのテーブルは大手企業の人ばかりになったので、結構グチの言い合いからスタートしたのですが(笑)、ちゃんと解決法も考えましたので共有させていただいております。

LivingTechは私たちの生活全てに関わっている

光村 はい、各テーブル発表ありがとうございます。正直これは結論はない会です。ですが、テーブルに集まっていただいた方々が何らかこれからもご一緒いただけるきっかけになれば、うれしく思うところであります。

それで最後に、各テーブルに今散っています登壇者に一言ずつコメントをもらってこの会を締めていきます。

長田 みなさんのプレゼンのお話を伺っている中で、今世の中の仕組みやシステムが変わってきていると改めて感じました。

やはりその中から新しいビジネスモデルや新しい仕組み、「住む」「物流」や「まちづくり」などで、様々な企業がコラボレーションしながら新しい価値観を生み出せればいいとお話を伺いながら思いました。

豊田 ありがとうございます。

こういう集まりの中で感じるのが、みなさんの業種やビジネスは違いますが、達成しようとしていることは結局似たことだということです。これからどんどん競争より共存して、分野を越えて・業種を越えてコラボレーションでサポートしあいながら、街を日本を活性化したいと思います。

月森 今日1つ気づきがあって、自己否定から入るとおもしろいことが考えられるということです(笑)。

こういったワークショップこそがみんなが集まって溶かしあっているという活動がもっともっと広まればいいなと感じました。

小池 まちづくりのパートの小池です。一言で言うと全然話し足りなくて、結論にも至ってないので、最終的には「to be continuedでまたもう1回話します?」となりました。

渋谷だけが良ければいいというものでもなくて、、やはり日本の魅力をどう考えるか・日本の価値を考えるか、その中で境界線はどこにあるかを、どこのテーブルのみなさんもお考えになっていたと思います。LIFULLさんで、渋谷だけではない都道府県会館ともまた全然違う、全国のみなさんが集まれるコミュニティスペースを作っていただけることを期待して、プロジェクト化していきたいです。

光村 それではちょっとご定例ながら最後コメントしたいと思います。

まずこのイベント全体はLivingTechという名前になっているわけではないですか。LivingTechは狭義に捉えると暮らしや住まいになる、LIFULLさんやリノベるさんが実行委員会メンバーなのでそういうことかなと思うこともあります。でも、Livingって要は生活ですよね。

つまり我々の生活にまつわるものはすべてという感覚かなと実は捉えています。去年も私は別のセッションを登壇して似たような感想を持ったのですが、今日改めてここに旅行・物流・コミュニティ・まちづくりという多岐にわたるテーマがあって、それでもみなさんが同じ時間を共有して1つの方向性に向かって議論をしていけることが、まさにLivingTechの1つの表れかなと感じた次第です。

ぜひこのテーブルで出会った縁・またこのスペースで時間を共有した縁を大事にして、また明日に向けて頑張っていきましょう。ありがとうございました。

(終わり)

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