見えないものが見えるって何だ!? デジタルテクノロジーで飛躍するアーキテクチャの可能性

#BuildingTech 1/7

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「デジタル時代のものづくり」と題して行われたセッション(全7回)の1回目をお届けします。

登壇者情報

  • 秋吉 浩気氏:VUILD 代表取締役CEO
  • 藤村 祐爾氏:オートデスク Fusion 360 エヴァンジェリスト
  • 齋藤 精一氏:Rhizomatiks Creative Director / Technical Director
  • 野城 智也氏:東京大学生産技術研究所 教授 /モデレータ

Rhizomatiks / VUILD / AUTODESKが見据える、未来のものづくり

野城智也氏(以下、野城) 皆様、今日は朝早くからお越し頂きましてありがとうございます。「デジタル時代のものづくり」ということで、まさにデジタル時代のものづくりでご活躍されている3人のスピーカーにお話を頂きます。

野城 智也:東京大学生産技術研究所 教授。東京生まれ。小学校では野球・サッカー、中学高校は陸上競技、大学ではラグビーに興じる。大学院時代には、ラグビー公認レフリーとして、河川敷など東京近郊のグラウンドで笛を吹いていた。大学院修了後、建設省建築研究所研究員、武蔵工業大学及び東京大学で教員を歴任。この間、インドネシア、英国でも勤務。1980 年代後半より、ストックの時代が到来することを見通し、サステナブル建築に関する研究分野を開拓。建築産業がモノの供給者から、サービスの供給者に転換していくための各種プロジェクトを手がける。住宅履歴書、部材・部品のトレーサビリティ、BIM、IoTなど、建築分野におけるDigital Transformationを推進している。大学院ではイノベーション・マネジメントも講じており、その著書は2017年日本公認会計士協会学術賞を受賞している。

皆さん非常にご活躍なさっているのでご存じだとは思いますが、それぞれどういうお仕事を今日のテーマに即しておやりになっているかをご紹介頂きます。

皆さんに現在進んでいること、あるいは未来の可能性を感じて頂いた上で、もう一度、今度は齋藤さんに「それを確からしい未来にするためにはいろいろ課題がある」ということをお話頂きます。

そして3人で議論して頂くという構成で進めていきます。まず齋藤さん、次に藤村さん、そして秋吉さんの順番でお話い頂きます。

それではよろしくお願いいたします。

リサーチ、デザイン、アーキテクチャまで手がけるRhizomatiks

齋藤精一氏(以下、齋藤) おはようございます。Rhizomatiksの齋藤です。

Rhizomatiksを知っている方・知らない方がいらっしゃるかもしれませんが、自分の自己紹介を5分でさせて頂きます。

齋藤 精一:Rhizomatiks Creative Director / Technical Director. 1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍後、2006年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009年より国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、京都精華大学デザイン学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員、2014年カンヌ国際広告賞Branded Content and Entertainment部門審査員。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター、六本木アートナイト2015にてメディアアートディレクター。グッドデザイン賞2015–2017審査員。2018年グッドデザイン賞審査委員副委員長。2020年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。

いろいろなことをやらせて頂いていて、今年のグッドデザイン賞の副審査委員長をやらせて頂きました。あとは今2020年のドバイ万博の日本のクリエイティブアドバイザーが今年から新設されました。国やJETRO、経済産業省側についてちゃんと日本館ができているかをクリエイティブ的に見ていく役割です。

ちょうどこの前発表されましたが、(日本館の設計をするのは)永山祐子さんです。これもコンペでやらせて頂いて、これは日本館のイメージですがこういうことがこれから繰り広げられます。2020年のオリンピックが終わったちょうど10月20日からドバイで行われます。

万博は、前の2015年のミラノも海外で話題になるが日本ではならなかったことが気になっているので、日本国内でも存在感を出していく万博にしたいと思っています。

うちの会社は今回の会場からもうちょっと恵比寿寄りにあるのですが、リサーチ・デザイン・アーキテクチャという(3つの領域に分けて活動しています)。

リサーチはうちの真鍋・石橋がやっている表現領域で、アート作品の制作やステージの演出などをやらせて頂いています。デザインは広告や、最近だと結構いろいろな企業さんのコンサルが多いのですが、そういうことをやらせて頂いています。

プロダクトアウトまでやる場合があるので、JINSさんのセンサーがついた眼鏡「JINS MEME」や、あとは洗濯自動折り畳み機「laundroid(ランドロイド)」や、最近だとそういうのから車などいろいろをやらせて頂いています。

もうひとつがアーキテクチャ。今日LivingTechなのでアーキテクチャをちょっと深めにと思っています。

元々僕は建築のバックグラウンドで、最近だとICTやスマートシティや何だと言われていますが、結局それが(社会に)実装できていないのがすごくもどかしいので、そういう部分を重点的にやっています。

ただ僕たちの強みとして、表現領域も扱えるし比較的難しいシステム領域も扱えるので、いろいろなところに派生して仕事をしています。

これはうちがやっているドメインですが、何屋さんかよくわからないのです。

イベントもやりますし、最近はCMは作っていませんが、コマーシャル映像もやるし、舞台もやるし、あとは先ほどお話した万博系もやりますし、メディアも作っています。

最近だと経済活性化文脈で議員立法の支援に有識者で入ったり、行政さんと一緒に遊休資産の有効活用、例えば新宿御苑の夜間活用をやらせて頂いたり、あとは災害復興もやらせて頂いています。

デジタルクリエイティブで深化するものづくり

それでせっかく今日は、オープンしたばかりの渋谷ストリームでやるので、例えばやっていたのが3Dマップ。

なぜ地図は3次元ではないのか、というプロジェクト「Shibuya 3D Underground」です。経済産業省と一緒にやったプロジェクトです。

Webにつらつらと書いていますが、なぜ地図が3Dにならないのかをいろいろ掘り下げています。法律的な観点・行政的な観点・地権者的な観点などいろいろなところを掘り下げているのです。

実験的にやったのがもう2年前になりますが、渋谷の地下街をスキャンしました。

これは土木的なカッチリしたスキャンというよりは、バーッと終電から始発の間4日ぐらいを撮ったやつなので粗々ですが、スキャンしたものを映像作品風に仕上げたのです。

「その可能性は何だろう?」というのを、これで皆さんに感じて頂けたらいいなと思っています。

あとは、このデータ自体をオープンデータにしているので、実際に3Dセルという先ほど言ったWebサイトに行って頂くと、これは解像度がちょっと高いですが、10cmのポイントクラウドでダウンロードできます。

これもこういう表現でも使えるし、もしくは最終的にはICT・BIM・CIM(※)という文脈に引っかかるといいなと思っているところをやっています。

編注:簡単にいうとデジタル時代の主要なものづくりツールや名称。
・ICT=Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーション。

・BIM=Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略で、3次元のデジタルモデルに属性データを追加した建築物のデータベース。海外ではCADよりも主流。

・CIM=Construction Information Modeling / Management)は、調査設計段階から3次元モデルを導入し、施工・維持管理の各段階での3次元モデルに連携・発展させることで、一連の建設生産システムの業務効率化や高度化を目指した取り組み。

もうひとつ渋谷で最近やっていたことは「1964 TOKYO VR」です。

https://www.youtube.com/embed/yfjP17D64Kc

これもほとんど表現文脈ですが、それこそ(同じセッションに登壇している藤村さんが所属する)AUTODESKさんにものすごく支援して頂いたやつですね。

何をやっているかと言うと、1964年の写真を集めて、写真が一杯集まるとフォトグラメトリーと言って、この1個のものを3点以上から見ると、実はそれが立体になるということです。

どういうことをやっているかと言うと、その1964年の写真をバカバカ集めていって、これは渋谷区さんにもご協力頂いていますし、東急さんにもご協力頂いていますし、これをやっているのが日テレのT部長という、電波少年を作っていた土屋さんと一緒に進めながら写真を集めて3D化しています。

これは映像ですが、これもWebサイトに行って頂ければ見られます。どういうことをやっているかと言うと、これは昔の渋谷駅ですね。

これはフォトグラで作ったやつをMaya(編注:3Dモデリングソフト)の中に並べてもう1回再現しています。

最近もInterBee(編注:日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展。LivingTechカンファレンス2018の1週間前に幕張メッセで開催)でVRのPCを背負って、これを歩きながら体験できるということをやったのですが、今はもう渋谷の1964年の状態を再現するというのをやっています。

これをなぜやっているかと言うと、僕が見たいからです。そうするとまた会社に怒られるのですがそれは置いておいて。

ただいろいろ、今日もたぶんディスカッションの中で出ると思うのですが、せっかく今そういうテクノロジーがあるのであれば、昔のものをもう1回今のテクノロジーを介してあげると新しい表現になる、もしくは見えないものが見えるようになるのであればやるべきだと思っているので、こういうデジタルクリエイティブをやっております。

野城 はい、ありがとうございます。

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