FinTechとLivingTechの融合で訪れる近未来―「アレクサ、値上がりしそうな銘柄を教えて」

# FinTech 2/7

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13個のセッションの中から、『FinTechを活用した新規事業開発』と題して行われたセッション(全7回)の2回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 伊藤 充淳氏:KDDIアセットマネジメント 営業企画部部長
  • 松永 亜弓氏:カブドットコム証券 イノベーション推進部 ビジネス・デベロップメント
  • 木本 雅也氏:じぶん銀行 決済・商品開発ユニット IT戦略部 調査役
  • 吉田 知広氏:アビームコンサルティング 金融・社会インフラ ビジネスユニット シニアマネージャー/モデレーター

『kabu.com API』の解放で、金融サービスのオープンイノベーションを加速する

吉田 続きましてカブドットコム証券の松永さんにお話を伺おうと思います。

松永亜弓氏(以下、松永) カブドットコム証券の松永と申します。

松永 亜弓:カブドットコム証券 イノベーション推進部 ビジネス・デベロップメント。2007年4月より、中堅対面証券にて資産運用アドバイス業務(リテール営業)に従事。2010年10月より、外資系FX/CFDプロバイダーにて、トレーディングサービスおよびセールス業務に従事。個人投資家向けWEBセミナーや、口座開設・注文取次ぎ等ミドル・バックオフィス業務も行う。2013年9月より、現職のカブドットコム証券にて営業企画・webマーケティングを経験後、スマホアプリの開発統括やトレーディングツールの上流設計、外部パートナー企業との連携による新規事業立上げや事業開発に従事。現在は主に、企画開発・事業モデル構築等Fintech関連サービスの開発や、オープンイノベーション基盤である証券APIを活用した外部パートナー企業とのアライアンス推進を行う。その他、業登録や広報やイベント企画等。

簡単に自己紹介をさせていただくと、2007年から金融・証券業界で仕事をはじめまして、対面証券で資産運用のアドバイスをお客様に直接行う業務や、外資系のFXやCFDのプロバイダーでトレーディングサービス業務を経験し、2013年から現職であるカブドットコム証券で、Webマーケティングやスマホアプリ開発の統括、投資教育の推進を行ってきました。

直近では、冒頭に吉田さんからもご紹介がありましたが、MUFGのアクセラレータープログラムにカブドットコム証券として社長の齋藤がメンターとして参加させていただいていることもあり、FinTechスタートアップと協業し個人投資家向けのサービス開発をしたり、また証券APIを活用した異業種企業とのコラボレーションによるオープンイノベーションを加速・推進する取り組みを行っています。

個人や異業種大企業のFinTech参入を容易にした、APIエコノミーの功績

従来の証券会社のビジネスモデルは、株式売買の仲介手数料や金利収入による手数料ビジネスでした。しかしテクノロジーの普及によって、従来のビジネスモデルではスピード感を持ったツール開発等を自社のみで対応することが厳しくなってきたこともり、当社では2012年から証券APIを公開しています。

スライドをご覧ください。これまで取引所とお客様の間に立って株式の売買を仲介するのが証券会社の役割でした。証券会社はライセンス業でもあり、取引所の参加者資格でまとまった資本金が必要だったり、金商業を取得したり、そのために社内のコンプライアンスの体制や顧客管理の体制、監査などもあるのでその体制を築いて、さらにシステムを自社でオンプレミス(情報システムのハードウェアを自社で保有する形)で開発してということをしてきました。

この管理体制で運営をしているとどうしても勢いのあるFintechスタートアップの開発スピードについていけなかったり、自社のみではお客様にスピーディにサービスを届けることが難しくなってきていました。そこで当社では、この機能を一貫してAPI化してしまおうということで、相場情報や執行系の機能も含めて証券システム自体をAPI化し、またトランザクションが増えてもすぐに対応できるよう昨年8月にクラウド上に基盤を刷新しました。

これによって、例えばゲーム開発会社やメディア企業、個人でシステムを開発されている方、FinTechスタートアップ企業との協業がしやすくなり、個人で証券業をやるのは非常に難しいことですが、当社のAPIを使うことで証券サービスの提供が容易にできるようになりました。

証券会社としてはシステム基盤を提供し、UI・UXの洗練されたツール開発が得意なプレイヤーと協業することで、さまざまなユーザーニーズに応えられるサービスをスピーディに提供することが可能となったのです。

今日来ていただいているみなさんはおそらく金融業界以外が多いと思いますが、もしご興味ございましたら当社のAPIを使ってこれまでになかったサービスを一緒に創ってゆければと思いますのでぜひよろしくお願いいたします。

FinTech×L¡ivingtechが見据える未来は、スマホすら不要の極限まで身近な投資

APIを活用し、短期間での開発を実現させたものの例として、コンセプトモデルをいくつかご紹介させていただきます。

まず、これは少し飛び道具的なものですが(笑)、VRで仮想空間上にトレーディング環境が表示されるVR-Staionです。

このVR-Stationは、マルチモニターのトレーディングシステムを設置するというような物理的な制約に捉われずに、スライドにあるようなVRセットを被っていただくだけで、360度、株式投資に関する情報を一覧性高くご覧いただけるものとなっています。また専用のコントローラーで操作が可能ですので、例えばリビングでソファに座りこのVRセットを被るだけで、株価情報の閲覧やニュースなどの情報収集、注文の発注まで行っていただけます。

次に、今回LivingTechがテーマということで暮らしとどれだけ身近に証券投資を感じていただくかという観点で一番利用シーンの想像が容易なものとして、音声で操作できるアレクサのスキルがあります。

これは実際にサービス化しているものですが、朝起きてその日に盛り上がりそうな銘柄をアレクサに話しかけることで答えてくれます。スマートフォンやパソコンの画面を開かなくても情報を得られることで、より株式投資を身近な日常のものとして感じていただければなと思っています。

最後にスライド右下の、AR技術を利用して株価情報を提示するAR-kabuCameraです。こちらは、例えば手に取った商品が気になるなと思ってスマートフォンをかざしていただくと、その企業の株価情報や株主優待情報を、かざしているスマートフォンの画面上でご覧いただけるというものです。そこから更に株主優待情報が気になれば、その画面をタップすることで詳細情報を閲覧できたり、また株価が気になれば発注までシームレスに行える動線を加えることを、APIで連携することで実現に向けて動いています。

インターネット証券といえばデイトレーダー向けのマルチモニター画面の取引ツールや板情報や株価チャートが表示されるスマートフォンアプリ等を想像される方も多いかと思いますが、こういった、生活の中で身近なものから投資に興味を持っていただけるようなサービス開発も行っています。

吉田 ありがとうございました。

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