アメリカ最大の産業・不動産業界で見え始めている変化の兆しとは?

# GlobalTrend 4/6

--

『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「アメリカVCから学ぶ、世界の不動産テックトレンド」と題して行われたセッション(全6回)の4回目をお届けします。

第1回から読む

登壇者情報

  • Brendan Wallace:Fifth Wall Co-Founder & Managing Partner
  • 斉藤 晴久:リノベる 執行役員
  • 杉谷 武広:リノベる 執行役員 /モデレータ

不動産テクノロジー全盛時代の幕明け

杉谷 ここまでのおさらいですが、日本の不動産市場の中古比率は世界と比べて圧倒的に低いという課題があります。不動産先進国のアメリカ、そこで活躍するFifth Wall社のBrendanさんのお話につなげていきます。

Brendan Fifth Wallは、アメリカで最大級かつ最も活発なベンチャーキャピタルファンドであり、不動産や建設、ホスピタリティに関するテクノロジーと定義したBuilt World technology領域の企業に投資しています。

Built World technology領域は、アメリカ国内外での大手不動産所有者や事業者、建設事業者とのコラボレーションをすることで、変革する非常に大きなチャンスがあることが特徴と言えるでしょう。

また、新興テクノロジー企業は、顧客や住宅購入者、テナントのために不動産会社との関係を日々革新したり改善しようとしたりしています。

アメリカの不動産は最大の産業です。アメリカのGDPの13%を占めていて、最大の市場規模で、最大の資産クラスで、最大の個人資産を占めています。それなのに、歴史的にアメリカで最も技術導入が遅れている産業の一つです。

しかし、近年変化の兆しを見せ始めています。その変化は、設立されている不動産テクノロジー企業数や、それらの企業の成長や牽引力、その領域に流入するベンチャーキャピタルの量などからわかります。

また、最高情報責任者(CIO)を雇用したり過去最高のIT予算を確保したりする不動産会社が現れはじめていることからもわかります。このようにとても貴重なチャンスがあります。

この変化の流れで、不動産テクノロジーの全盛期が今後やってくるでしょう。新たなベンチャーキャピタルの多くがこの領域に流れ込んで、非常に多くの取引も行われています。

不動産テクノロジー企業の数と規模は急速に拡大しています。

この表は、10億ドル以上の企業価値評価を達成したテクノロジー企業であるユニコーン(Unicorns)と呼ばれるものの数の一覧です。

そして、右軸はユニコーンと評価された年のタイムポッドです。見てわかる通り、設立されて数年しか経っていない新しいユニコーンが不動産領域に多く存在します。

このスライドから、Fifth Wallファンドを組成した理由の一つがわかると思います。現時点でまだ実現していない大企業と新興企業とのコラボレーションによるチャンスがあるからです。

不動産テクノロジー全盛時代を切り拓くのは、人間関係?

Brendan たとえば、アメリカのホテル業界です。2つの画期的で破壊的なイノベーションによってホテル業界に激震が走っています。

1つ目は、PricelineやExpediaなどのオンライン旅行代理店であるOTAが、顧客とホテルの所有者や運営者との間に障壁を効果的に置いていました。そして、MarriottやHiltonのような大きなブランドは、顧客との関係を失ってしまいました。

加えて、供給側であるホテルがAirbnbエコシステムである短期賃貸需要に対応するのが非常に遅かったです。ホテルはまだAirbnbエコシステムとのコラボレーションのチャンスを見つけることができていません。

しかし、このような破壊的なテクノロジートレンドをホテル業界にできる限り早い段階で紹介できれば、コラボレーションとパートナーシップの機会が生まれると我々Fifth Wallは考えています。

不動産テクノロジーの特徴の1つは、他のベンチャーキャピタルの領域よりも技術リスクが低いことです。

その一つの理由は、業界がITとテクノロジーへの投資が長い間、不十分だったからです。同時に、非常に高い流通障壁があります。というのも、(無数にある会社の中から)非常に限られた数の成功した不動産会社にテクノロジーを売り込むことができる必要があるからです。

つまり、人間関係こそが不動産テクノロジーにおいて非常に重要です。

不動産テクノロジーに積極投資するVCが不在の今こそ、チャンス

Brendan もう一つの重要な理由として、アメリカだけでなく日本にも当てはまる事があります。それは、不動産テクノロジーに積極的に投資している組織的なベンチャーキャピタルが存在しないということです。

私たちはそこにチャンスを見出しました。

我々が見出したチャンスは、新しいテクノロジー企業の発掘を促進し、大手不動産会社に助言を与えるために、不動産テクノロジーに焦点を当てた最大のベンチャーキャピタルファンドを作ること。

最初のファンドでは、まず8つの大手不動産会社にファンドのLPになってもらいました。

アメリカ最大の住宅建設会社であるLennar社。アメリカ最大の不動産投資信託会社であるEquity Residential社。アメリカ最大のオフィスディベロッパーの一つであるHines社。アメリカ3位の小売モール事業をもつMACERICH社、世界最大の産業REITを持つPROLOGIS社、世界最大の仲介会社であるCBRE社、そして、アメリカ最大のホスピタリティ企業の1つであるHOST Hotels社などです。

こちらは我々の事業モデルの核心です。

我々は、ベンチャーキャピタルファンドと法人向けアドバイザリー・サービスを提供する会社です。

今日までに、約250億円の初期ファンドを26の企業に投資してきました。我々のコーポレートパートナーと投資先企業を接続させ、ビジネスが拡大したりコラボレーションしたりすることを支援してきました。

もう一つの事業は、我々に法人向けアドバイザリー・サービスを提供することです。多くの法人は彼らが本来すべき速度でテクノロジーを革新し適用させることに苦労しています。

だから、このサービスの一部は情報提供であり、彼らのビジネスに役立つと思うテクノロジーを適切に公開します。

別の側面では、彼らの既存事業を良くしたり、劇的に変革させうるテクノロジーの導入に向けた特定のパートナーシップを構築し実行するのに役立っています。

我々の事業モデルは、(情報の)流通に非常に注力しています。

そのため早期に企業を特定し、パートナーである不動産会社に情報を流通することで、その成長を加速できます。

同じカテゴリの多くの企業と仕事をしているため、圧倒的な情報流通網を持てるのです。したがって、例えば、アメリカの新しい居住用戸建住宅の場合、売却されたすべての新しい家屋の27%がFifth Wallと戦略的提携をした企業によるものです。新興企業にとって、これらの情報流通網またはチャネルが非常に重要です。

杉谷 非常に興味深い話をどうもありがとうございます。

--

--