コストゼロで運営される新国家―働かない・好きなことだけやる時代が訪れる?

#LivingAnywhere 4/6

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「Living Anywhere」と題して行われたセッション(全6回)の4回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 林 篤志 氏:COMMONS Co-Founder, Next Commons Lab Founder
  • 秋吉 浩気 氏:VUILD 代表取締役CEO
  • 北川 力 氏:WOTA CEO/Co-Founder
  • 井上 高志 氏:LIFULL 代表取締役社長 /モデレータ

既存テクノロジーの組み合わせで、理想とする国家はもうつくれる

井上 林さん、よろしくお願いします。

林 篤志:COMMONS Co-Founder, Next Commons Lab Founder。2016年、ポスト資本主義社会を具現化するための社会OSを実装するため、Next Commons Labを設立。2017年より、それぞれの幸せを基準に誰もが小さな社会をつくれる共同体プラットフォーム「COMMONS」を発足。Commons inc. 共同代表。「日本財団 特別ソーシャルイノベーター」(2016)、「Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人」(2017)に選出。

よろしくお願いします。Next Commons LabとCOMMONSという二つの会社をやってて、「ポスト資本主義社会の具現化」というビジョンを掲げてスタートしました。

僕10年間ぐらい、いわゆる社会課題の解決とかローカルの現場で仕事をしてきたわけなんですけど、いろいろやって2015年ぐらいにちょっと燃え尽きたんですね。

「ちょっとこれ変わんねぇな、いくらやっても」と。なので、一旦そこで社会を変えることを諦めたんですね。この図でいうと今の社会は国家と資本主義なわけですよ。

この巨大システム上でいろんなインフラの問題が出てきてるんだけど、ここに対して「社会を変えていこう」とか「課題を解決しよう」とか「良くしていこう」としてきたわけなんだけど、「ぶっちゃけやっても変わんなくない?」というのが僕たちの考え方です。

だったら今のテクノロジーを使って、社会そのものをゼロベースで作るというアプローチ、自律分散型のやり方があるんじゃないかということを考え始めたのがこの数年僕たちがやってることですね。

もっと踏み込んでいくと、インフラもそうだしあらゆるものがそうなんだけど、例えば分かりやすくいうと国家なんですよね。

国連に登録されている国家は200ぐらいあるんですけど、実は誰かが作ったものであって、我々が作ろうと思えば作れるものです。国家の3条件は臣民と領土と強制権と言われてます。これは用意できそうだなと。

ブロックチェーン技術を使って新しい国家そのものを誰もが作っていくような、自分たちが理想とする社会をゼロベースで作っていける、そういう時代になれば良いかなと思っています。

それは水のインフラとか、例えば木材とか鉄のセルフビルドみたいな、パーソナルに向かっていく方向性で、国家そのものも誰もが作っていける、そういう時代になっていくんじゃないかって考えてます。

今は日本のローカルでその種みたいのを蒔いてる状況で、自治体とか起業家とか企業を巻き込んで全国各地に拠点を作っています。

こんな感じで、これは岩手県遠野市ですけど20人くらいの起業家に集団移住していただいて、そこで地域資源を使った新しいサービスだったりインフラ作りに従事していただいてます。

地元のホップを使って新しいクラフトブルワリーができたり、こういうモバイルハウスのプロジェクトであったり、いろんなバックグラウンドを持ってる人たちが集まってきてるのが今全国10ヶ所、北は弘前、南は宮崎でやっています。100拠点ぐらい作っていこうって今動いてるところで、今は10。

29のプロジェクトが走っていて、65名の起業家をネットワーク化してるのがNext Commons Labです。

ですのでポスト資本主義社会の具現化と言いながら、地方創生のプロジェクトの事例として取り上げられることが現状は多いかと思ってます。

法定通貨を不要にする、共感を根底においたトークンエコノミー

一方でCOMMONSというプロジェクトをやっていて、先ほどの話で、誰でも経済圏を伴った小さな社会を作れる仕組みを提供しようということを考えていて、僕たちは「社会とか国を作れるOS」という表現をしてますけど、ひとつは通貨を発行できることです。

ブロックチェーンを使って、法定通貨ではない共感ベースのトークンエコノミーを誰でもつくれる仕組みを提供しようということで、現状導入先としてお声がけいただいてるのは国内外の自治体さん、いわゆる地域通貨であったり、独自の経済圏を作りたいと思ってらっしゃる方であったり、面白いところだと宗教法人さんだったり、数百万人の信者がいるような飛び地国家みたいなイメージですね。

東南アジアとかアフリカといった、国家システムや法定通貨があまり強くない国からお声がけいただいたりしています。

そのウォレットであったり、取引所であったり、ダッシュボードみたいなもので実際の社会国家的資本やトークンエコノミーの動きをビジュアライズできる状態になっていて、本当はお見せしたかったんですけど静止画になっちゃいます。

もうひとつが、「その先にどんな未来を見てるか」といった時に、インフラの話に繋がってくんですけど、人間が人間らしく生きていくためにはそんなに働かなくて良いかもしれない。もっと人間が人間らしく生きていくために営んでいくこと自体に価値があって、それ以上のことはみんな好きなことをやれば良い、そういう時代が来るんじゃないかって考えていて、食料であったりエネルギーであったり住空間であったり、こういったものが極めてコストゼロに近づいていくだろうと。

そういったインフラをちゃんと整備していくようなプラットフォーム作っていこうということで、これは我々だけでというよりはWOTAさんとかVUILDさんと一緒に連携をしてやっていかなきゃいけないことなんですけど。

それの実証実験として、これは年明けにリリースするんですけど、日本のある離島で……

井上 どの辺なんですか?

いや、ちょっとこれは……

井上 瀬戸内海っぽいですね。

あまり言っちゃ駄目なんですよ。人口は数十人くらいの島で。

井上 これもしかして毒ガスとか作ってるの?

(笑)。

想像していただければ結構です(笑)。

井上 有名なところ? じゃあいよいよ林さんの独立国家ができるわけですね?

そういうことを言うといろいろ問題があるので(笑)。

人口数十人で平均年齢80才ぐらいなんですけど、この島を拠点に……。

さっきリープフロッグ現象って言葉が出てきたんですけど、その10ヶ所の日本の田舎でプロジェクトをやっていて感じることというのは、未来ってすぐそこにあるんですよ。

手を伸ばせばあるんです。だってWOTAがあるじゃん。だけどみんな手を伸ばさないんです。VUILDがあるのにみんななかなか導入しないんです。

それはやっぱり既存の産業とかいろんなしがらみとか、「あるんだけど手を伸ばしたくない」って理由があるんですよね。それは致し方ないというか、徐々に変えていくしかないし、そこはNext Commons Labの役割だと思うんですけど、いかんせん遅いなと。

イマジネーションできる人であれば良いんですけど、なかなかイマジネーションできないのが問題なので、もう物理的に見せてしまおうと。「これが未来ですよ」ということを国内でも見せられる拠点を作りたいという思いがあって、この日本の離島、人口数十名の島で完全に外部依存しない自治経済圏、疑似国家を作っていこうとしています。

今数十名ですけど、そこに2年間掛けて300名の方に集団移住していただいて、島民300名のひとつの自治国家モデルを作っていく準備をしています。

発電であったり、ここにあるような物ですとか……あっ、WOTA入ってる。すみません、勝手に入れちゃいました。

北川 頑張ります。

(笑)。

井上 今日「はじめまして」で会ってるのに、勝手に入ってる(笑)。

実はさっきVUILDとかLIFULLのロゴも周りに散りばめてあったんですけど、さすがにアレかなという。

秋吉 入れてくださいよ。

でもWOTAは入ってたという(笑)。

いろんなプレイヤーの人たちに絡んでいただいて、新しい未来の国家モデルを国内外問わず作っていこうってプロジェクトをやっています。

ですのでブロックチェーンを使った新しい経済圏とか、いわゆる自治国家モデルをテクノロジーレイヤーでもやっていきながら、我々ってフィジカルに拠点を作っていくことが強みでもあるので、その両方向でやっていこうってことを考えてるチームです。

井上 ありがとうございました。

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