「生きる」と「働く」の境界が溶け合う時代に、私たちは何を考えるべきか?
#WorkAsLife 1/6
2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「Work As Life」と題して行われたセッション(全6回)の1回目をお届けします。
登壇者情報
- 山口 周:コーン・フェリー・ヘイグループ パートナー , 一橋大学 経営管理研究科非常勤講師
- 柳澤 大輔:面白法人カヤック 代表取締役CEO
- 林 宏昌:リデザインワーク 代表取締役社長
- 石川 善樹:Campus for H 共同創業者
- 武井 浩三:ダイヤモンドメディア 代表取締役 /モデレータ
Work As Life ―人生としての仕事を語る60分
武井浩三氏(以下、武井) 面白い4人の方々に面白い話をしていただくので、ぜひ楽しんでください。このセッションは、Work As Lifeというコンセプトで皆さまにお話をしていただきます。まず最初に、sli.do(編注:当日このサービスを使って会場から質問を募った)にアクセスしていただいて、好き勝手に質問を投げてください。
この登壇の最後にQ&Aの時間も取っておりますので、そこでそのあたりも拾って、ここで扱いたいなと思っております。参加型という感じで、ぜひラフに投稿していただければと思います。
それでは改めまして、僕がすごく尊敬する4名をご紹介させていただきます。
面白法人カヤック代表の柳澤さん。鎌倉に本社を置く唯一の上場企業として、ITのサービスやスマートフォンのゲームを作っていらっしゃる会社をやっていらっしゃいます。ちょうど20年ですね。
有名なのが、サイコロで給料を決めるという、サイコロ給。これは僕もすごく好きな制度で、まさに面白法人という感じですね。
柳澤大輔氏(以下、柳澤) ありがとうございます。
武井 これ、どうしましょう? もうちょっとお話しますか、ご自身のこと。特にない?
柳澤 特にはないですけどね。
武井 (笑)。
柳澤 でもサイコロはやっぱり、外国の方が来ると「お前らクレイジーだ」ってみんなびっくりしますね。
武井 ありがとうございます。それではお二人目、コーン・フェリー・ヘイグループのシニアクライアントパートナー、山口周さんです。
山口さんは最近、著書『劣化するオッサン社会の処方箋』という本がめちゃくちゃ売れていて、その前の書籍の「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」という本。
これは僕も読ませていただきましたけれどもめちゃくちゃ面白くて、今アートが世界から失われていると。そういったかなり独特な切り口というか、歯に衣着せぬ語り口調が僕はすごく好きで、本日お声がけさせていただきました。よろしくお願いいたします。
山口周氏(以下、山口) よろしくお願いします。
武井 そして三人目がリデザインワーク代表の林さんで、もともとリクルートで働き方変革推進室室長をされていた、まさに働き方のプロフェッショナル。
今はそれを事業化して、会社を立ち上げて事業を行っていらっしゃるということです。楽しみにしております。よろしくお願いいたします。
林宏昌氏(以下、林) よろしくお願いします。
武井 そして最後に、予防医学研究者の石川善樹さん。
健康に関する書籍をたくさん書かれていらっしゃるのでご存知の方も多いかと思いますけれど、働くというか生きるというか、人間とは何なのかとか、掘っていくと哲学になってしまうのかもしれませんけれども、そういった領域の第一人者だと僕は思っております。本日はよろしくお願いいたします。
ということで……僕の紹介を忘れていた。僕自身の紹介を簡単にさせていただきます。ダイヤモンドメディアの武井と申します。
このWork As Lifeのセッションを、なぜ僕がモデレーターとしてやらせていただいているかというと、去年ホワイト企業大賞という賞を会社でいただきまして。
これは働いている人とか関わっている人がいかに幸せに生きるかという、経済的な指標ではない指標で選ばれています。
ホワイト企業。自分たちで言うのも恥ずかしいのですけれども、うちの会社は「働く時間」「場所」「休み自由」「給料」全部オープン。上司部下なし。そんなことを10年以上やっている会社です。
ということで、この豪華な4名と私とでWork As Lifeのセッション、始めてまいりたいと思います。改めましてよろしくお願いします。
(会場拍手)
なぜ今、Work As Lifeが叫ばれるのか
武井 では早速、問1。全体で4つの問があります。1つの問を大体15分ぐらい、皆さんで好き勝手に言いたいことを言っていただきたいなと思っております。
問1。「生きる」と「働く」を区別する時代から融合する時代に変わるのはなぜか。
山口 難しいね。
武井 Work As Life、今まではワークライフバランスと言われていたと思うのですけれども、バランスをとるんじゃなく、そもそも一つじゃないかって、そんな考え方に近づいている昨今だと思います。
このあたり、どなたに口火を切っていただくのが良いかな。ぜひ林さん、よろしくお願いします。
林 そうですね、じゃあ口火を切らせていただきます。
まず僕が思っているのは、働くことが本当にバラバラになってきているから、こういうことになっているんだと思います。
具体的にどういうことかと言うと、働くことの場所とか時間とか、どれぐらいの量を働くのかということが、これまでは割と一律だったものが、それをバラバラに設計していける社会になってきたと思っています。
そうすると、まずどう生きていきたいのかが本質的にあって、その中でどれくらい働くのかとか、どこで働くのかとか、そういうことを自分の中で決めていくことになると思うんですね。
だから、とにかく報酬を上げていきたいという考え方もあるでしょうし、地域で生きていくことでいけば、生活コストも下がるので、そんなにたくさん頑張って働かなくても良いじゃないかとか。
あるいは今の一時期は思いっきり働くんだけど、将来的にはもっと子育てしながら働くとか、あるいは大学に行って学び直すとか、人生デザインの中でどう働くのか。
つまり働くということの量、バランス、時間、どういうことをやるのか、どこでやるのか、みたいなことを描いていくというか、区分するよりはそういうことになると思います。
これまでは割と一律だったので。朝行って夜帰ってきて、仕事以外の時間の土日あるいは平日の夜がライフだった。
だいたい夜遅くまで働いていると、飯・風呂・寝るみたいなことしかなかった生活から、どういう生活をしたいのかがまずあって、じゃあどれぐらい働くの? どこで働くの? みたいなことを考えられるぐらい、働くことが流動的で自分で選択できるような社会になってきたというのが僕の感覚です。
武井 ありがとうございます。
林 口火を切らせていただきました。
Work As Lifeは人生100年時代の必然である
武井 続いて、今のお話に被せたい方とかいらっしゃいますか?共感なのか、はたまた違う切り口なのか。
石川善樹氏(以下、石川) 違うかどうか分からないですけど、ほとんどの人って、そもそも働きたくないんですよ。
働くことが生きがいでありやりがいである人って、意識高いって言うんですか? 分からないですけど。そういう人って少数だと思うんです、そもそもが。
ただそういう人も含めて、なぜWork As Lifeに向かう時代になってくるのかということを考えると、おそらくそれは人生100年時代が到来していることと関係しているんだろうなと思います。
全ての人が転職前提で生きなきゃいけない時代だと思うのです。一つの会社に勤め上げることがもう難しい。
人生100年時代ってやっぱり、70とか75ぐらいまで働かないといけないので、そうなると転職を何度かしないといけない。
つまりどういうことかと言うと、日中働いていることに加えて、転職の機会を常に探さないといけないという、辛い時代が到来しているんじゃないのかな。
僕は普通の人の普通の感覚がどうだろうかって思うと、僕はそういうふうに思いますね。
Work As Lifeは、意識が高くてジーンズをはいている我々のような人の話でもあるし、そうでない人にとっても、本業とは別のいわゆる余暇の時間にも、副業というか転職先を探さねばならぬという、そういった天国と地獄が両方混ざっているということじゃないですか。
そもそも「働く」の意味することが変化している
柳澤 なんか皆さんが考えていないことを言った方が良いんだろうなと思ったけど、何も思いつかなかったので(笑)。似たようなことしか言えなそうだったので、ちょっと違う観点で話したいのですけど、鎌倉に「まちの社員食堂」といって、市内で働く人だけが利用できる食堂を、市役所と鎌倉の会社と共同で作りました。
でも「働く」という形態がそもそも多様化しているなと改めて気づいたんです。きっと働くことの定義を捉え直さなきゃいけないんだろうなと思ったんですね。
何かを一生懸命、職能を突き詰めることはおそらく誰もがやったほうが良いと思っていて、ニートならニートを突き詰めるとか。
その中で人間が昇華されていくというか、僕はそういう本が大好きで、図書館の本を盗み続けた男の本(編注:『古書泥棒という職業の男たち』もしくは『本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂』)とか、馬券を偽装し続けた人(編注:『馬券偽造師 』)の、あれ勧めたけど、すごく面白かったでしょ。
武井 プレゼントされて。
柳澤 今は馬券が電子化されたから無理なんですけど、紙の印刷会社の社長がずーっと馬券を偽造し続けるノンフィクションがあるんですよ。20年間ぐらいやったのかな。馬券が電子化されるまで。
月から金まで、朝から晩まで規則正しく馬券を偽造し続けて、偽造した当たり馬券を使って土日に換金して、また競馬に突っ込むんですよ。それを延々やってるんですよ。
その繰り返しを読んだときに、これも一つの職業だなと思ったわけです。
武井 完全にフロー状態に入っていますね。
柳澤 だからやっぱり何かを突き詰めるというのは、おそらくやったほうが良いんだけど、働くの定義を変えなきゃいけない時代になったというか、そうなったほうが面白いと思っているだけなんだけど。そういうことなのかなって感じです。
武井 なるほど、そうですよね。確かに、貨幣を稼ぐことだけが働くなのかという話ですね。