人口減少、少子高齢化、そこから生じる人の「孤独」。LivingTechはこれからの社会課題を解決しうるのか?

#WorkAsLife 6/6

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「Work As Life」と題して行われたセッション(全6回)の6回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 山口 周:コーン・フェリー・ヘイグループ パートナー , 一橋大学 経営管理研究科非常勤講師
  • 柳澤 大輔:面白法人カヤック 代表取締役CEO
  • 林 宏昌:リデザインワーク 代表取締役社長
  • 石川 善樹:Campus for H 共同創業者
  • 武井 浩三:ダイヤモンドメディア 代表取締役 /モデレータ

LivingTechへのポジティブな期待

武井 4つ目の問いにいきたいと思います。

テクノロジーに繋がりますけれども、このLivingTechという領域で、いろんな社会課題が同時多発的に生まれてきています。

人口減少、少子高齢、過剰供給、価値観の多様化などの社会課題に対して、このLivingTechが解決策となり得るのか。

すでに解決策みたいな話が出ていましたけれども、他のいろんな社会課題も頭に置いてお話していただきたいなと思います。

山口 これ僕は全部プラスだと思っていて、東京ってみんな子供を産むのが大変で。なぜかというと、子供一人のスペースを作るのがすごく高いんですよ。東京で。

うちは子供三人いるんですけど、端的に言うと、子供三人に個室を与えてマンションに住もうとするとむちゃくちゃ高いんです。

それをテクノロジーの力でどこにでも住めるとなると、スペースの制約が飛躍的に少なくなるので。少子化の問題もそうだし人口減少の問題もそうだし、あとコミュニティがすごく作りやすくなって。

鎌倉もそうだけど、葉山も老人のコミュニティが活発なんですよね。パブリックスペースがすごくあるので。

(東京は)スペース代が高いからパブリックはできない。全部プライベートになるわけです。できるだけプライベートな空間を。

(東京ではなく)土地の安い地域にある程度行くと、パブリックスペースも大きくなるのでコミュニティも出てくる。

いろいろなところで、これって実は効いてくるんじゃないかと直感的に思います。

大人になってから友達って作れる?

石川 僕が思うことですけれども、LivingTechがどういうことなのか分かっていないですけど、これまでってどちらかというと会社にしろ家にしろ、その中でいろいろ完結するように発達してきたと思うんです。

例えば外でやっていた洗濯を家の中でとか、外でやっていた買い物を家に届くように、というふうに家の中で完結するように。あるいはさっき4つの仕事の話をしましたけど、会社の中で完結するようにと。

そういうことだったんですけど、いま何が起きているかと言うと、これも社会課題ですけど、やっぱり孤独です。家の中で完結してもらっちゃ困ると。寂しいんです。

だから家の中でやっていたことを、逆に外でやるようになっていますよね。ランドリーカフェもそうですし、若い人はジムでお風呂に入ったり。

これがどういう課題かというと、人口減少とか少子高齢化っていわれると正直よく分からないんですけど、「大人になってから友達って作れますか?」ということだと思うんですね。

今までは会社の中で友達を作ったり地域で友達を作っていたのが、転職前提だったり地元がない中で、大人になってから友達どう作るんでしたっけというのが、たぶん一番の課題だと思うんです。

それに対して、「Techは何かできますか?」ということだと思います。

ちょっとした寂しさを埋めるのはTechはできますと。エンタメがあったり、電話はちょっとした寂しさを埋めるものですけど、大きな寂しさですよね。

働き方の自由がもたらす、二極化問題

深いですね。今の話もそうだしこの話もそうなんですけど、どっちかというとここで書いているテーマって、偏在。偏った在り方の問題だと思っています。

人口減少も日本で捉えると減っているんだけれども、グローバルで捉えると増えているし、少子高齢化というと、日本はそうだけど、アジアでいうとものすごい若い国がどんどん勃興してきている。

過剰供給も僕らは余っているけど、国によっては足りないという問題がある。

これは日本の中で、東京でいうと人は多いしみたいなことになっていて。僕はこのへんのテーマだと、二極化していくと思いますね。

結局、どこでも住める話になったときに、葉山とか鎌倉はこういうような問題がどんどん解決されていくかもしれないけど、なんの特徴もない地域はどんどんそういう問題になっていく。

いま僕、地域の人たちとお仕事をしています。彼らの側で今後起こってくるのは何かというと、地域にそもそも住んでいた人たち、当たり前ですけど地元の仕事をしていた人たちがもはや東京の仕事をする構造にもなるわけで。

そうすると、地域に住んでいて労働力だった人たちが、もはや労働力じゃなくなることが加速する可能性が結構あります。

そうなってくると、プラス面を捉えがちなんですね。移住してきてくれて、こっち側で何か仕事をしてくれたらいいなってことはみんな考えるんだけど、逆に地域の人たちが東京の仕事をするようになるとか、僕の会社のロゴデザインだって徳島の人がクラウドソーシングで出してくれているわけで。

そういうことになってくると、地元の人が地元の仕事をしない構造になっていく。そうなったときの働き手の問題はもっと深刻になる地域もあれば、外から人が本当に来てくれて潤っていく地域も出てくることで、実は二極化がもっと進んでいくというのが僕の感覚ですね。

だから働く場所とか時間とかが自由になるぶん、偏在の問題がより深刻化していくというのが感想です。

ある部分では(Technologyが)解決策となるけど、ある部分はより深刻になるという感覚です。もうちょっとポジティブな話をしたいですけど。

“コミュニティ”に参加することで得られるもの

武井 これから会場のQ&A、ちょっとだけでも扱いましょうか。

では、sli.doに質問がきているのと、実はこちらから2つ質問を立てていて、できたらお答えいただきたいんですけど、今問いを立てました。

「2つ以上の組織に属して仕事をしている方いらっしゃったら、ぜひお答えください」

(スクリーン上で回答が集まる)

例えば働くにしても、働くとプライベート、それを融合すると言っていましたけど、それの実態を聞いてみたいなという意図だったんですが、やっぱり7割。

こんな感じ。ここからあまり差は出てこない気がしますけど。ありがとうございます。じゃあ次、もう一個質問があります。

「どちらかと言うと、仕事とプライベートの境目があやふやだ。イエス、ノー」

あやふやな質問ですみません。意外と、この会場に来ている人たちは、いわゆる意識高い系が多いんですかね。

石川 プライベートがないんじゃないですか?

武井 (笑)。仕事ばっかりしている。確かに。なるほど。こんな感じ。ありがとうございます。

柳澤 さっきのと同じような比率だね。

武井 そうですね。これで何だってことはないんですけど。

柳澤 ないんだ。ちょっとコメントのしようがなかった。何か質問をいただいていますか。

武井 あ、面白そう。

「仕事を全うする環境でも人と人との関係性は、いつの時代も解消されない。未来的に3時間しか働かなくなると人は暇に耐えられないと話していたが、暇を感じる前に考えることはたくさんあるだろう」

これ質問じゃなくて意見でしたね。人と人の関係性が解消されない。

僕、石川さんの話で、孤独つまり繋がりがないという状態。ここに対して、たぶんここにいる方々はすごくお考えがあったり、すでに実践されていると思うのですけれども、いかがですか。

石川 孤立はしてないんだけど孤独感を感じる場合があるんです。

予防医学でいうと、孤独はタバコと同じくらい健康に悪いというのが分かってきて。だから僕はその孤独にすごく興味を持っているんです。

それで特に何が焦点かというと、やっぱり大人になってから友達ってできましたかってことなんですね。これはかなり深い問いな気がしますね。

柳澤 逆に僕も言語化していないことで皆さんにお訊きしたいんですけど、世田谷で武井くんにやってもらっている「せたコン」、鎌倉では「カマコン」という地域コミュニティがあります。大人になってからコミュニティに参加して、マブダチができるんです。

何となく年齢も下から上までいて。これがもし学校とか会社だったら、そんなに友達にならなかったかもなという人なんです。

だけど、一つの共通のプロジェクトをやることによって仲良くなる。

おそらく共通の目的で共通のことを一生懸命やって仲良くなるって、グロービスさんがやっているG1サミットというイベントも、セッションだけでなく、最近レクリエーションやアクティビティが入って、経営者同士で一緒に雪合戦したりすると、超仲良くなるじゃないですか。

だから何となく、損得抜きに共同のプロジェクトでやると仲良くなる感覚があるから、本来仕事はまさにそういうものなんじゃないかと。仕事の仲間とコミュニティの仲間が劇的に違うとしたら、それって何でなのかまだ言語化ができなくて。

もしかしたらお金の評価が存在しないから意外と良いのかとか、そういう意味でいくと、そこらへんが何なのかは解があれば聞いてみたいです。

あと、いくつかあったほうがいいというのはあるんですけど、家族はもちろん、会社の仲間もそういうプロジェクトを一緒にやっている仲間だと思いますけど、地域の仲間もあって、そこに優先順位がないほうが仲良くなれる感じがする。

石川 友達ってどうやってできるんだろうってかなり考えたんですけど、やっぱり、くだらないことを一緒にやるのは、くだらないことなんだけど、一生懸命やるのは大事な気がしていて。

柳澤 やっぱりそうですよね。

石川 最近コミュニティらしきものがいっぱい出てきて、例えばサロンとか、それこそネットワークビジネスもそうですし、宗教も。

仕事以外でみんなで寄り添ってやっていることって、やっていること自体はくだらないことが多いんです。

武井 生産性があるものではないですよね。

柳澤 そっちのほうが仲良くなれるんですかね。

石川 そっちのほうがたぶん仲良くなる。何か意義ある目的に向かってやるのは、それは仕事になるというか、仕事仲間にはなるけど、友達にはならないんじゃないのかな。

武井 この後ももう少し話したいのですけれども、お時間になりました。ここでこのセッションを終わりにさせていただきたいと思います。

僕があまりにも楽しくて、喋るよりも聞きたいモードに入っちゃって。本当に楽しかったです。

石川 今日ノートに書いたのは、「老人は痒い」だけ(笑)。

武井 といったところで、柳澤さん、林さん、山口さん、石川さん、本当にありがとうございました。

会場の皆様も、ご静聴いただきましてありがとうございました。

(終わり)

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