南砺市内企業の副業活用事例紹介セミナー@富山県南砺市

Fumina Nakazaki(中﨑史菜)
Matosen blog
Published in
7 min readFeb 28, 2019

「正社員を募集しても、募集がない」
「優秀な専門人材を採用したいが、コストがかかりすぎる」

そんな悩みを持った南砺市内企業と、

「転職は考えていないけれど、自分のスキルを今の会社以外で生かしたい」
「東京で働いているけれど、故郷に何らかの形で貢献したい」

という願いを持った都市部企業勤務者をつなぐ取り組みが、南砺市で始まっています。

副業プラットフォーム「Skill Shift」(スキルシフト)を運営する株式会社grooves・富山県南砺市・南砺市商工会の3者が、地域の中小企業と都市部で働く優秀な人材を副業マッチングする「南砺市『副業』応援市民プロジェクト」が昨年発足。
2019年 2月21日(木)に開かれた「南砺市内企業の副業活用事例紹介セミナー」はこの一環で開催されました。
(昨年9月に行われた第1回目の説明会についてはこちらをご覧ください。)

株式会社groovesの鈴木秀逸さん

今回のセミナーには約20名が集まりました。中には事例を聞くため福井県から参加された方もいらっしゃり、副業採用への関心の高さが伺えます。

第一部では、株式会社groovesの鈴木秀逸さんからSkill Shiftを活用した副業採用について講演があり、参加者は時折質問を挟みながら熱心に聞き入りました。

そもそも人材確保はなぜ必要なのか?

「人材が確保できない」が問題なのではなく、人材が確保できないことで「イノベーションが起きない」ことこそが本当の問題である、と鈴木さんは指摘します。

いまだにFAXで受注を受けている・出勤簿を手書きしているなど、時代錯誤の仕事がなされているのは、イノベーションが起きていないから。
経営学者・シュンペーターが「イノベーション」を「新結合」と表現している通り、人材の流動性がなければイノベーションは起きません。

しかし、ハローワークで募集をかけても「そもそも応募がない」「応募があっても求めていた人材とかけ離れている」という声が多く聞かれます。
そこで、今回新しい採用方法として推進されているのが「副業採用」なのです。

副業採用とは?

そもそも、人材は「正社員」として採用しなければならない、という固定概念が諸悪の根源であると鈴木さんは指摘します。

例えば、WEBマーケティング人材を正社員として採用しようとすると最低年間600万円はかかり、経験豊富で実績のある人材ともなると、さらにコストがかかる上、見つかりづらくなります。
採用する会社としても、大きなリスクをとるのは避けたいところ。

そこでSkill Shiftが提案するのは、都市部で働く人材と地方の中小企業のマッチング。
地方企業での副業が「腕試しをする場」「地方貢献・故郷貢献をする場」となれば、副業人材が見つかるのではないかという“新しい副業のカタチ”です。

熱心に話を聴く参加者

人材確保における大きな壁は「応募」がないことと「カネ」の不足。

新卒採用・転職のタイミングで採用をかける(正社員採用)と、なかなか募集が増えません。将来性や立地で選択されることが多いので、地方の中小企業は都市部の大企業と比較されると負けてしまうのです。

これまでの副業には「低所得者のお金稼ぎ(カネのため)」という悪いイメージがつきまとってきました。
しかし最近では、大企業に勤め、優秀で、お金に困っていない方が「実績を積むため」や「地域貢献」「趣味や移住検討」などのために副業をやりたいと考えるようになってきています。

そこで、優秀な人材のスキルを副業という形で提供してもらう、「ジョブ型雇用」でマッチングしようというのが「Skill Shift」。
このプラットフォームで募集をかけた企業はなんと100%応募(平均応募人数8.22人)があります。ハローワークで数年間エントリーがなかったとある企業も、数日で募集を打ち切るほどの応募があったそうです。

Skill Shiftでの採用、実際どうなの?

第2部では、実際に南砺市内で「Skill Shift」を活用し副業人材とのマッチングに成功した南砺市内の企業2社に登壇いただき、パネルディスカッションが行われました。

スタジオパールの得永さん(左)と福光タクシーの武田さん(右)

今回パネルディスカッションに参加したのはスタジオパール株式会社福光タクシー株式会社
実はこの2社、9月の第一回説明会の際には説明を聞く側として参加されていました。

スタジオパール株式会社は、4人の応募があり全てを採用しました。
「報酬は4万円に設定しましたが、それ以上の価値があります。毎日連絡をとりあっています」と代表取締役の得永丈博さんは言います。
「博打的なところはありますが、とりあえずやってみたらいいと思います」と参加者にアドバイスされました。

福光タクシーの武田隆啓さんは「応募はたくさんありましたが、対話をする中で想いを語ってくださった1人に絞りました。関西在住で業態も違う方を採用したところ、スピード感が違うな、勉強になるな、と多くの気づきがあります」とお話しされました。
12月に採用してから2回富山にきてもらい、頻繁にメールのやり取りをしているそうですが、「採用して後悔した」ということは一つもないと言います。

質問する参加者

会場からは下記のような質問が出ました。

Q「採用した副業社員が単なる『ご意見番』になっていないか?」

Aスタジオパール:

「新規販路の開拓を目的に副業社員を募集しました。その結果、東京への出店が決まり、さらにスポンサーまでも決めてきてくれました」

A福光タクシー:

「金沢から観光客を連れてくるためのツアーを企画しています。売り込みのために旅行代理店をつないでもらったり、英語版のアンケートや契約書の作成などをしてくださいました」

Q「『スキルを生かしたい』と『地域貢献したい』という方、どちらが多かったか?」

A福光タクシー:「応募してくださった12名の中では地域貢献の方が若干多かったです。地域貢献をしたいので、無償でもいいです、という方が何名もいらっしゃいました」

Q:「Skill Shiftや、副業社員採用後に目指すものはなんですか?」

A鈴木さん:「地域が元気になることです」

Aスタジオパール:「実は副業社員と一緒に会社を作ろう、という話も出るくらいの関係性になっています。今後一緒にやりたいことがどんどん膨らんでいきそうです」

A福光タクシー:「南砺市をもっと活気づけるためのお手伝いができたら嬉しいですね」

最後に、鈴木さんからは「副業採用をすると、頭の中が整理できるメリットがあります。副業者の方とじっくり話したことで、「本当にやるべきこと」が明確になった会社が多いのです。コンサルタントは大きなお金が動きますが、副業社員の方からは「無欲なアドバイス」が得られるとも考えられます」とお話しがありました。

まとめる専門家・谷内さんによるグラフィックレコーディング

地方の中小企業だからこそ、採用できる人材があるー
そんな可能性に気づかせてくれるセミナーでした。

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