セッションレポート:Pivotal Labs パネルディスカッション〜実践者が語るリーンXPの価値〜

実践チームの作り方、実践チームにおけるプロダクトマネージャーの役割とは?

Mario Kazumichi Sakata
Product Run
9 min readAug 28, 2019

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2019年7月10日に、弊社主催のイベント「Pivotal.IO 2019」が開催されました。「デジタルの力でビジネスに変革を」をテーマに、弊社のクラウドプラットフォームである「Pivotal Cloud Foundry」などの導入や、私が所属している「Pivotal Labs」と一緒にソフトウェアを開発したユーザー企業様の事例が紹介されました。丸1日がかりのイベントで、各セッションが常に満席になるほどの大規模なイベントとなりました。その内の「Pivotal Labs パネルディスカッション〜実践者が語るリーンXPの価値〜」というセッションにて、僭越ながらオブザーバーという立場としてパネリストの方々と共にディスカッションに参加させていただきました。当記事ではその時の様子を振り返ってみたいと思います。

(左からモデレーターのインプレス 田口潤様、パネリストのJR東日本 松本貴之様と日本事務器 松島政臣様、そして私の4名で行われました)

イントロダクション

まずはじめに、東日本旅客鉄道様と日本事務器様よりそれぞれのプロダクトの簡単な紹介と、Pivotal Labs と一緒にソフトウェアを開発した当時のエンゲージメントの振り返りからセッションは始まりました。

東日本旅客鉄道様
Pivotal Labs とのエンゲージメントを開始したのは2017年6月頃で、Pivotal オフィスに来たメンバーはプロダクトマネージャーが1名、デザイナーが1名、エンジニアが2名のバランスチームで参加しました。プロジェクト開始時には D&F(Discovery & Framing の略)を約4週間実施し、正しい課題を発見し、正しい解決案を発見してから実装・実現していきながら2017年11月6日に MVP(最小限で実用可能なプロダクト)となる「GO! by Train」をリリースしました。

Pivotal Labs でのエンゲージメントが終わり、自社に戻ってからも開発を続けているとのこと。そして2019年4月10日に JR 東日本アプリをリニューアルしました。

日本事務器様
Pivotal Labs と一緒にプロダクト開発を開始したのは2018年の3月頃。メンバーはこちらも同じくプロダクトマネージャー1名、デザイナーが1名、エンジニアが2名の計4人でした。開発したのは「fudoloop」という生産者と青果流通業者が出荷数などの情報をいち早く交換でき、食品ロスや価格の暴落を防ぐためのプロダクトで、Lean XP を実践しながらゼロから立ち上げました。

MVP をリリースしたのは2019年5月28日。これもサプライズだったのですが、2019年6月4日に NHKニュース「おはよう日本」の1コーナー「ビジネスに求められる“アート”」で日本事務器様の「fudoloop」が紹介されたそうです!残念ながらオンデマンドしか視聴することはできませんが、プロダクト開発の様子が一部映っています。

パネルディスカッション

さて、ここからは後半のパネルディスカッションの様子を Q&A 形式で振り返ってみたいと思います。話題は「実践チームのつくり方」「実践チームにおけるプロダクトマネージャーの役割」の二つにフォーカスされました。

— 田口様(以下、敬称略):日本事務器様が Pivotal と一緒に仕事を進めるときにハードルはありましたか?

松島様(以下、敬称略):今までとは異なるアプローチをやろうということで、いまいる新しい部署を立ち上げたので、アプローチから変えようという想いは既にありました。そのため、ハードルはそんなになかったように思います。

— 田口:これまでのお話にありました Lean XP を実践してみて、実際どうでしたか?

松島:とにかく検証を続けて、価値があるかどうかを調査しながら開発を続けるので、とても腑に落ちました。これまでのウォーターフォール型開発みたく、一気につくるのではなく、検証できたものからつくるという点が新鮮でした。実感を得ながらつくっていけるのはよかったですね。

— 田口:なるほど。今度はお二人に伺いますが、プロダクトマネージャーになったのは、会社から任命されたからなのか、あるいは自ら名乗り出てチームをつくったのか、どちらですか?

松本様(以下、敬称略):自分で切り開いていった、というところでしょうか。元々 JR 東日本アプリをゼロから開発し始めたときから、実務面のリーダーをしていましたが、これは会社から任命されてでした。アプリリリースの数年後に、アプリが抱えていた技術的、デザイン的な課題を解決したくて Pivotal Labs との協業を始めることを会社に提案したのは私で、それまでアプリ開発を担当していたチームの中から一緒に常駐してもらう人を選んだのも私でした。もちろん、上司や同僚のサポートがあって実現したことです。Pivotal Labs のエンゲージメント後も常駐したメンバーに加えて新しいメンバーも増員し、チームを維持し続けています。

松島:私が所属する新規事業の Team Finches が立ち上がったのは2017年でした。その頃からビジネスシードを育てていて、そこで固めたコンセプト MVP のようなものを展示会で出展したところ、製品化を望むポジティブなフィードバックを多くいただいたことがきっかけで、2018年に本格的にサービスをつくるための「fudoloop 開発プロジェクト」が会社で立ち上がりました。いまはその時の4名と新たに加わったメンバーで開発を続けています。

— 田口:これまでのプレゼンテーションでバランスチームの話が出ましたが、デザイナーとエンジニアの役割はイメージしやすいのですが、この場合のプロダクトマネージャーは何をするのでしょうか?また、何を重視して取り組んでいるのでしょうか?

私:私が考えるプロダクトマネージャーの代表的な取り組みは二つあると思っています。まず一つはチームを成功へと導く取り組みです。チームをまずは構築するところからはじまり、中長期的に同じチームを維持できるようにコントロールをすること。そしてチームをいつスケールするか、どれくらいスケールさせるか、といった組織マネジメントも求められます。加えて、お互いが気持ちよく仕事ができるコミュニケーションを心がけたりと、ソフトスキルの側面も求められると思います。

そしてもう一つはプロダクトを成功させるための取り組みです。「このプロダクトならではの提供価値はなにか?」「成し遂げたいことはなにか?」といった本質的な問いに対する答えがチーム内で共有できている状態をつくり、みんなが同じ方向を向くようにすること。そして、プロダクトを成功に導くためのロードマップが描けていて、それに向けて社内のステークホルダーをうまく巻き込むこと。この二つでしょうか。

— 田口:その二つを成功させるためには、ありとあらゆることをなんでもやる、という印象を持ったのですが、かなりエネルギーが必要そうですね(笑)松島さんはどうですか?

松島:プロダクトマネージャーのカバーエリアは確かに広いですね。デザインに関するナレッジもある程度必要ですし、ビジネスのフレームワーク構築もやらないといけない。そしてチームに還元することもやります。プロダクトマネージャーは何をやっているんですか?と聞かれると困ることがあります(笑)

— 田口:JR東日本の場合はどうでしょう?

松本:バランスチームで言われている通り、デザイナーはユーザーを代表する人、エンジニアは、テクノロジーを代表する人。そしてプロダクトマネージャーはビジネスを代表する人なんですよね。会社が何をしたいのかを理解していて、どう進めていくかを決めるのがプロダクトマネージャーだと思います。最終的にはビジネスのためにプロダクトをつくっているので、プロダクトマネージャーが最後に決めなければなりません。

— 田口:なるほど。そのためにはユーザーのことだったり、ビジネスフレームワークを理解しなければいけないですし、最終的にはビジネスの成功に直結するような取り組みを推進していくのがプロダクトマネージャーなんですね。時間が来てしまいましたので、ここで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

まとめ

私がお話を伺っていて素直に嬉しかったのは、両社とも自社に戻ってからも同じメンバーで開発を続けているということでした。東日本旅客鉄道様はメンバーが増え、専用のプロジェクトルームをつくられたそうです!

それからと言うのも、私自身もとても驚いたのですが、iOS アプリと Android アプリでそれぞれ約2〜3週間に一回のペースでアプリのアップデートを繰り返されていたとのこと。

これまでの開発と比べてかなり早いペースで進めることができています。身につけた開発スタイルを愚直に続けることが大事なんですね。

という松本様の言葉がとても印象的でした。

松島様のチームも、戻った後も開発を続けていらっしゃいます。イベント後の懇親会ではステークホルダーの方もお見えになって、今もプロダクトの成功のためにチームをサポートされていると聞き、感動しました。

Pivotal Labs が大切にしているのは、Lean XP を実践しながらプロダクト開発を支援するだけではなく、チームを育てることです。なぜなら、ソフトウェアを作ったとしても、そもそも開発を続けなければ、ユーザーに価値を提供しつづけることは困難だからです。それを実践されている両社のプロダクトの今後から目が離せません!

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Mario Kazumichi Sakata
Product Run

Staff UX Designer based in Tokyo. Born in Brazil, raised in US. Father of two.