1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記

12部シリーズの第7部。

Norimichi Kawakami
The New RC Soaring Digest

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If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの 第6部 を読むことをお勧めします。

製作その27 座席シートとコクピット床板

三田式の座席とコクピット床板

三田式3型改1はタンデム式複座なので、前後に2つの座席があります。座席は鋼管を溶接したフレームに板を張った「座」と、布製で長さと角度の調節が可能な「背」で成り立っています。今回はこの「座」を作りました。

コクピット床板は軽量化の為に最低限の範囲に設けられています。即ち、前席は操縦桿より前にアルミ板製の床が、後席はラダーペダルから座席迄の間の両脇に細い2枚の木製床板が貼られています。図面にするとこんな感じです。(図面37)

図面37 座席の「座」とコクピット床板

座板は上から見て長方形では無く、後側が前側より狭い台形をしています。更に横から見ると平面ではなく凹型に湾曲しています。足は前足が後ろ足より長くなります。これは座席が取り付く胴体下部の鋼管が、後ろへ行くほど高くなるからです。更に、前席の前足は後ろに傾いています。これは前足を受ける胴体側の構造が適当な位置に無いことから取られた措置と思われます。

前席は単純に4本の短い足が出ているだけですが、後席は前席搭乗員の頭越しに前方を見る為に、足は長くなっています。このため剛性を確保する目的で前後の足の間に斜めのブレースが入っています。

トラス構造の胴体鋼管に穴を開けて座席を直接取り付ける訳にはいきません。どのように処置されているのか興味があったのですが、足の先端に小さな耳金を取り付けて、対応する胴体構造側の位置に「耳金受け」を取り付けて固定していることがわかりました。足は構造の鋼管に接して体重を支え、座席の固定はこの耳金で行っています。模型でもこの方式を踏襲することにします。

製作

座席の鋼管部は湾曲させる為にカーボンが使えません。そこで4㎜Φの竹ひごとしました。竹ひごを一晩水に漬けてから画像136の治具に挟んで乾燥させて曲げました。

画像136 竹ひごを曲げる治具

座板は1.6㎜厚のシナベニアを水に漬けてから湾曲した筒に沿わせて縛り付け、乾燥させて曲げを付けました。竹ひごとシナベニアを画像134の組立治具に載せてエポキシ樹脂で接着させて、凹型の「座」を作りました。

画像137 座板と竹ひごの組立治具

「座」に足を取り付け、更に耳金を取付けますが、構造側の「耳金受け」との位置関係をしっかり合わせる必要があります。そこで先に「耳金受け」を構造側に取り付けました。(画像138)

画像138 胴体構造に取り付けた「耳金受け」

これには2mmの爪付ナットが下側から取り付けられています。これに「耳金」だけを取り付けその上に足の付いた「座」を載せて瞬間接着剤で仮付けします。その後「耳金」ごと外して接着部にエポキシ樹脂を塗って固定しました。最後に鋼管相当部を白色に、座板部分をメープル色に塗装しました。

前席床板は先述の通り実機ではアルミ板製ですが、電波障害を避ける為に模型では1.6㎜厚のシナべニア製としました。実機のアルミ製は剛性を確保するために周囲を折り曲げていますが模型では省略しました。後席の床板は4㎜厚のバルサでそれらしく作りました。

完成した「座」と床板

これが完成した「座」です。(画像139)

画像139 完成した「座」

座板が湾曲し、前席の前足が傾いているのが判ります。「耳金」も付いています。上から見るとこのように台形をしています。

画像140 上から見た「座」

座板の後部に付いた白色の金具は、ショルダーハーネス受けです。

床板と一緒に胴体に取り付けてみました。(画像141)

画像141 機体に搭載した「座」と床板

後席を付けるとエレベータサーボが隠れて、グッと実機らしくなってきました。

製作その28 車輪覆いと胴体アクセス扉

車輪覆い

実機には主車輪の上半分に覆い(FRP製?)が付いています。当初模型ではこれを省略しようと思っていましたが、主脚を覆う布製のカバーの下端がこの覆いに縛り付けられると言うことを静岡航空資料館の方に教えて頂き、急遽取り付けることにしました。脚周りを図面にするとこんな感じです。

図面38 車輪覆い

布製脚カバーの上端は構造にネジ止めされます。実機の車輪覆いはFRP製と思われますが、模型では1.6㎜厚シナベニアの側板と1㎜厚バルサの外周で製作しました。実機では側板は主脚の前方支え板の内側に位置しますが、主脚模型を製作した段階では車輪覆いを省略する積りでしたので、前方支え板と車輪の間の隙間を狭く作ってあり覆いの側板が入りません。そこで模型では支え板の外側に側板を貼りました。出来上がった車輪覆いは画像149に示します。

画像142 完成した車輪覆い

実機では布製の脚カバーを車輪覆いの下部に縛り付け、その紐を覆いにネジ止めしてカバーが上方へずれるのを避けています。模型ではネジ止めするスペースが無いので覆いの下端より少し上に竹ひごのストッパーを貼りつけました。布製カバーの下部は紐で縛る代わりにゴム輪を通す計画です。

車輪覆いを作っている過程で、覆いは脚カバー固定の役割だけでは無いと思えてきました。脚カバー固定の役割だけなら円周部の覆いは不要ですし側板も下部だけで済みます。どうやら気流の内部侵入防止の役割があると思われます。覆いが無ければタイヤの隙間から侵入した気流が機体後方へ流れます。尾翼付近は隙間が多いからです。この内部流は抵抗になってグライダーの性能を劣化させる筈です。その定量的大きさは判りませんがグライダーとしては極力抵抗を減らしたく、この覆いを設けたのではと思い至った訳です。濡れたタイヤの水滴飛沫が機体内に侵入することを防ぐ意味もあるとも思われます。

胴体アクセス扉

三田式3型改1には胴体左側の中央翼直下にアクセス扉が設けられて内部機構の保守点検の便を図っています。扉はアルミ板製で下辺にヒンジを設けて下側に開きます。模型では電波障害を避ける為に1.6㎜厚のシナベニアで扉を作りました。実機の扉は機体表面に被せてあるので、扉の板厚分機体コンターから飛び出しています。実際には薄いアルミ板の剛性を上げるために扉の周囲にRを付けて少し曲げてありますので、板厚以上に飛び出しています。模型では極力抵抗を少なくするために、扉は機体コンターと一致して飛び出さないようにしました。画像143が完成した扉です

画像143 胴体アクセス扉

本当は扉が下まで下がって欲しいところですが、採用したヒンジ金具の開度が此処までなので止むを得ません。

実は平板な扉の塗装が中々厄介でした。平滑なアルミ板の感じを出すためにサンディングシーラーを塗って乾燥後400番紙やすりで磨く作業を3回繰り返し、その後白色サーフェーサーを吹いてから塗装しました。それでも凹凸が目立つので、パテを埋めて再度ヤスッテからサーフェーサー及び塗装と言う工程を余儀なくされました。

ダミー・エルロンサーボの装着

操縦桿にダミーのエルロンサーボを取り付けました。

1/3模型の操縦桿の作動

製作済の操縦桿ジンバル機構はエレベータサーボと繋がっており、サーボの動作で前後に倒れます。しかしエルロン方向はサーボを主翼に装着した為に何もなくフリーです。その為何か支えを設けない限り、このままでは操縦桿の左右方向の位置が定まりません。そこで支えが必要ですが、折角なので操縦桿専用のダミー・エルロンサーボを装着して、エルロン操作に伴って操縦桿も左右に傾くようにしました。

装着

後席操縦桿のジンバル取付軸を50㎜の長いボルトに交換して軸の先端にホーンを取り付け、このホーンをミニサーボで動かすことにしました。これがその装着状況です。(画像144)

画像144 ダミー・エルロンサーボの装着状

隣の大きなサーボはエレベータサーボです。操縦桿は未製作で取付け用パイプが見えています。機構は後席の下ですので、外からは殆ど見えないので実機感を損ないません。因みに機構はサーボテスターで作動させ、問題がないことを確認しました。これで3舵全ての操縦系統が実機のように動くこととなりました。

製作その29 ウインチ曳航用リリース機構

三田式の曳航索リリース機構

実機の三田式3型改1にはウインチ曳航用と飛行機曳航用それぞれの索リリース機構があります。前者は主輪直前の胴体下部に、後者は機首スキッドの直前に装着されています。私や私の所属するRCクラブではグライダー用のウインチや曳航機を所有しませんので、当初はこれらのリリース機構を設けないつもりでした。しかし製作途中で、機会があれば自動車曳航をトライしてみたい気が起こりました。そこで取りあえずウインチ曳航用索リリース機構を製作することにしました。実機のウインチ曳航用索リリース機構は上記のように胴体下部にありますが、ケースに覆われてその内部機構は不明です。但し取付状況は判りますので静岡航空資料館にお願して、写真を撮って頂きそれを元に内部機構を想像しながら製作することにしました。

リリース機構は前後席の左側にある球状ノブを引くことでフックが開錠します。ノブとリリース機構の間はワイヤーで繋がっています。写真から判る機構の概要は次のようなものです。

  1. 機構上部のプーリーで開錠用のワイヤーが90°下側に曲げられて機構に入る
  2. ワイヤーを引くとフックは前側に回転して開錠する。
  3. フックの下側には円形のリングが取り付けられ、曳航索が機軸から外れた時にフックに過剰なサイドフォースが掛らないようになっている。
  4. 機構の後部に機体構造側から伸びる2本の牽引ロッドが取り付き、曳航索の荷重を機体に伝える。牽引ロッドの他端は「八」の字に開き、胴体の下部主要縦通材に取り付く。

面白いことに機構は機体中心軸上に無く、約100㎜程左側に取り付けられています。これは機構が取り付けられている前胴下部の中心軸には後席操縦桿やエルロン及びエレベータ操縦ロッドがあり、これとの干渉を避ける為です。グライダーの元所有者であられるK氏によると、この曳航索オフセット装着の為に離陸開始時には大きく左ラダーを踏む必要があるそうです。

リリース機構の設計

当初、深く考えもせずにこんな機構かな?と思って2mm厚鉄板を削ってリリース機構を作ってみました。ワイヤーで上側のレバーを引き上げると、カム機構で下側のフックが開く構造です。(画像145)

画像145 リリース機構の試作 左=閉 右=開

この試作で設計の要点が判ってきました。試作品には次の問題があります。

  1. 1. フックに曳航索を付けて張力を加えるとフックが開く方向に荷重が掛ってしまう。
  2. 1. ワイヤーでレバーを引き上げるのは良いが、フックを閉めることができない。

これらの問題の解決策は次のとおりです。

  1. の問題を解決するには曳航索がフックに掛る位置と円周状のフックの中心を結ぶ線上にフックの回転軸を配置すること。
  2. の問題を解決するにはレバーかフックにスプリングを設け、どちらかが戻れば他方も戻るように組み合わせること。

以上の条件を考慮して機構を考え直しました。まず最初に考えたのは試作品と同じカム方式のリリース機構です。(図面39)

図面39 カム形式リリース機構

2.の条件を満たすためにカムは歯車状になります。これならばレバーにスプリングを取り付ければフックも一緒に戻ります。しかし、小さなカムにそこそこの精度が要求されます。これを手作業で製作することは大変そうです。そこで次に考えたのがリンク方式のリリース機構です。(図面40)

図面40 リンク方式リリース機構

レバーとフックは小さなリンクで結ばれます。レバーは上部にあるプーリーを介してワイヤーで上方へ引き上げられ、リンクを介してフックを時計方向に回転させることで開きます。レバーには小さなスプリングを取り付けてワイヤー張力が無くなった時にレバーを元の位置に戻します。

これらのメカ部品は左右の2枚の側板に挟まれて組立てられます。側板はこれらを内包すると共にフックから入った曳航索の張力を機体に伝える役割を持ちます。そのために、側板の後部は耳金状でそこに機体側から伸びる2本の牽引ロッドが繋がります。フック回転軸と耳金の間には帯状の補強板を側板の表に貼り付けて牽引荷重に備えます。フック下側にはリングを取付けます。これならばカム方式より手作業でも精度が確保できそうです。そこでこの方式を製作することにしました。

製作

まず部品を切り出しました。(画像146)

画像146 リリース機構の部品

レバーとフックは3mm厚の硬質アルミ板から切り出しました。それらを繋ぐリンクは2mm厚のアルミ板です。これらの取付穴にはジュラコンの軸受を挿入します。プーリーは手近にあった9㎜Φのものを取付ます。側板は1.5㎜厚アルミ板で作りました。2枚の側板は5.5㎜の隙間を設けて組立てるので同厚のMDF板でスペーサーを作りました。リングはホームセンターで見つけた鎖の先端に付いていた直径25㎜のスチール製のものを使用します。太さは3mm程度です。

組立完了

上記の部品を組立てましたが部品の切出し自体が手引き鋸とヤスリでの製作、加えて穴開けもハンドドリルで行いましたからどうしても精度に限界があります。そのため、始めて組んだ状態では至る所が当たってレバーもフックも殆ど動きませんでした。当たり個所を注意深く見つけてヤスリで少しづつ修正する作業がかなり続きましたが、ようやくスムーズにフックが開閉するようになりました。画像147が最終的に組み上がったリリース機構です。

画像147 組上がったリリース機構 左=側面 中=下部 右=後面

後面にプーリーとスプリングが見えます。スプリングの両端形状が並行なのに、取付けの都合上90°捩じったためにスプリングが多少捩じれてレバーも左に傾いています。この辺は後日修正しましょう。

フックの開閉状況です。(画像148)

画像148 フック開閉テスト 左=開 右=閉

その後機構を取り付ける前にリングが外れ易い不具合が見つかったので改修しました。機構の側板はアルミ製の為リングを半田付けできません。金属接着剤で側板に接着しようと接着剤も購入しましたが、接着してしまうと機構を分解できなくなります。内部はリンク機構なので不具合時には分解することも覚悟しなければなりません。そこで、側板の外側に1㎜厚の真鍮板の袴を穿かせ(画像149)、それにリングを半田付けしました。これで分解可能な条件は維持されます。製作に大分苦労しましたがほぼ期待通りの機構が出来上がりました。

画像149 真鍮板の袴を履かせたリリース機構

取付図面

リリース機構はこのように取り付きます。(図面41)

図面41 ウインチ曳航索リリース機構の取付図面

機構は後席の操縦桿ジンバルが取り付けられたトラスに、中心線から30mm強左に寄った位置に取り付けます。機構の先端は機外に突き出します。機構後部はカーボン製の取付金具に取り付けられます。取付金具からは2本のロッドが「八」字状に伸びて、胴体下部の左右縦通材に取りつきます。これがウインチの牽引力を伝えます。上部はジンバルが取り付けられているトラス横棒から出ているもう一つの取付金具に固定されます。

フックを開くサーボは前席の後部下に設置します。機構との間はワイヤーで結びますが、取付け取外しの便の為に中間に実機には無いミニターンバックルを付けます。

機体小改修と機構取付構造の製作

機体はリリース機構を搭載しない積りで組み立ててあるので、若干の改修をしてその後取付構造を組み込みました。まず機構取付部の邪魔な部材を取り去ります。そのために画像150の後部ジンバル取付軸に向かう斜め部材と、その部材の下部から後方へ伸びている部材を取り去ります。

画像150 取去る部材

そこへリリース機構の取付構造を組立てました。(画像151)

画像151 リリース機構取付構造の組立

上の写真では判りにくいので機体をひっくり返して下側から撮った写真が画像152です。

画像152 リリース機構取付構造の裏側

リリース機構の取付

ような準備をしてリリース機構を取り付けました。(画像153)

画像153 取付けられたウインチ曳航索リリース機構

サーボとの位置関係はこのような状態です。(画像154)

画像154 リリース機構とその開閉サーボ

リリース機構を付けると途端にメカ染みてきてなかなか良い感じです。

尚、サーボはスポイラーに用いたものと同じで下記仕様です

製作その30 脚カバー

三田式の脚カバー

三田式3型改1の主脚周りにはズック(帆布)製のカバーが取り付けられています。カバーの上端は細いアルミ板で押さえて機体構造にネジ止めされ、下端は車輪覆いの下部に紐で結び付けられています。

図面38にその様子を示しました。

製作

実機のカバーはズックで作られていますが、1/3模型には厚すぎるので古くなったチノパンを切リ裂いて用いました。カバーは立体的な山形をして、頂上が長方形、裾野が9角形をしています。しかもその裾野は同一平面にありません。激しい起伏があります。これにピッタリ沿う形状を一枚の布から切出すのはかなり厄介なことです。

最初に図面からその展開図を作図して、屑布でその図面形状を切出して機体に沿わせてみましたが、製作精度の問題もあって中々シックリとは合いません。実物から実寸を出して展開図を修正してから布を切り出しました。それでも最初に切出した布は一部の長さが不足して形を成すことが出来ませんでした。再度修正して何とか完成した写真がこれです。

画像155 車輪カバー

頂上は周囲を袋状に作って、中にゴム紐を通して車輪覆いの下部に縛り付けています。袋状の部分は折り返して縫い付けましたが、小学生以来針を使ったことが無いことから針目が不揃いで汚らしいので、接着方式に変更しました。裾野の周囲は薄いアルミ板を5mm幅で折って布を挟んでから構造側にネジ止めしています。真上から見るとこのような形をしています。(画像156)

画像156 上から見た車輪カバー

全体形状が良くわかります。裏側(機体内部側)から見るとこのようになります。(画像157)

画像157 機体内側から見た車輪カバー

裾野をネジ止めするために構造のカーボンパイプに細木を貼りつけてあります。三次元形状を布で作るという初めての試みでしたが何とか製作できました。

機首カウリング図面の作図

機首のFRP製カウリング製作に着手しました。私にとってFRP部品作りは初めての経験です。ネットで種々の情報を集めつつ進めます。

カウリング製作には立体形状の作図→木型製作→雌型製作→FRP樹脂貼りの工程が必要です。まず、3次元立体形状の作図を行いました。

三田式の機首

実機の三田式3型改1の機首はFRP製のカウリングで覆われています。カウリング後部の胴体構造に接続する部分は、構造と同じ8角形の上にキャノピーの半円形が載った断面形状をしていますが、先端は楕円形です。つまり、カウリングは断面形状が複雑に変形する立体構造です。製作に当たってはその図面が必須になります。

これまで製作した胴体構造は8角形をしており、平面図と側面図から断面形状を作り出すことができましたが、カウリングではそのような訳にはいきません。平面図、側面図情報に手を加えて断面形状を創出する必要があります。3D CADが使えればこの作業は比較的容易なのかも知れませんが、私は2D CADしか使えないので、それでカウリングの外形形状を作図します。

1次断面形状の作成

まず側面図でカウリングを数か所輪切りにしてその部分の断面形状を想像しながら作図しました。平面図と側面図から構造の幅と高さが判る部分を拾い出し、その間を想像しながら結線します。カウリングに包まれるモーターやマウントに接触しないように注意して線を決めます。カウリングの後端は平面では無く、屏風状に折れ曲がる面になっているので、その部分の断面図(断面A-A)も描きます(図面42)。

図面42 機首カウリング1次断面形状図作図風景

断面形状のうねりチェック&修正

そのようにして作図した断面形状はスムーズに繋がっている保証はありません。そこでこれらを重ねて、前から見て30度毎の放射状の縦割りにして、断面図との交点を求めて縦割り図を描きました(図面43)。この縦割り図にうねりがある箇所は断面図を修正します。このようにして縦割り図にうねりを生じない断面形状を探し出しました。

図面43 断面形状のうねりチェック

完成したカウリング断面形状図

このようにして、ようやくカウリングの断面形状が完成しました(図面44)。

図面44 完成した機首カウリング断面形状図

出来上がった機首カウリングの3次元形状図を用いて、木型の骨格となる部品をバルサ板から切出しました。機首を輪切りにした11断面と、縦切り90°間隔の4断面です。骨格は縦方向に2分割して各々を組立ててから貼り合わせることにしました。これは断面部品を直角に立てることを容易にするためです。それらの部品を組立てて骨格を形成しました(画像158)。

画像158カウリング木型の骨格

外表面の貼りこみと整形

外表面の製作には骨格の間を発泡スチロールで埋める方法や、粘土で埋める等色々な方法があるようです。当初発泡スチロールが簡単かと思い、スチロールを求めに行きましたが適当なものが見つからないので粘土を購入して来ました。しかし、この骨格の間を埋めるには大量の粘土が必要です。中心部分にダミーの詰物を詰めて粘土を盛る方法も考えられますが、粘土は扱った経験も無いので乾燥でどれだけ収縮するのかも判らず、不安が生じてきました。そこで扱いなれたバルサで骨格間を塞ぐことに変更しました。その後表面を荒削りしてから大きな穴にパテを埋めて整形しました。

画像159 外表面の貼りこみと整形

此処までは比較的順調にきましたがこれからが大変な作業でした。木型として使う為には表面が滑らかで凹み等が皆無でなければなりません。骨格間を多数のバルサ板で埋めた多角形から最終形状を作り出すものですから、ヤスリかけ、パテ埋め、サンディングシーラー塗りの繰り返し作業が何回も続きました。大分できたと思ってラッカーサーフェーサーを掛けると、細かい傷や凹み、表面のうねり等が鮮明に浮かび上がってきます。再度ヤスリかけからやり直し、と言う工程が続きました。

何とか出来上がりに近づいたものがこれです(画像160)。

画像160 完成に近づいた機首カウリング木型

まだ、細かいデントが幾つかありますので、それを埋めてから1000番程度の耐水ペパーで磨き上げようと思っています。

この後、石膏で雌型を作ろうと思いましたが、まずもっと簡単な中央翼フェアリングで製作の経験を積んでから機首カウリングに取り掛かることにしました。それと言うのも、調べてみると「石膏型から木型が上手く抜けず木型を壊した」、という例も散見されます。折角苦労して作った木型です。FRPカウリングが胴体としっくり合わない場合は木型に戻って修正する必要があるかも知れません。

実は胴体構造との合わせ面の木型寸法を、出来上がっている胴体構造の実寸に合わせて作りたかったのですが、モーターマウントが邪魔で実寸が上手く測れませんでした。仕方がないので木型を図面寸法通りに製作してありますので、製作精度が不味ければカウリングか構造側の修正が必要になるからです。

というわけで、まだ木型製作が続きます。

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