1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記

マルチパートシリーズの第6部。

Norimichi Kawakami
The New RC Soaring Digest

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If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの 第5部 を読むことをお勧めします。

製作その19 垂直尾翼の完成

垂直尾翼は2018年6月に木地完となっていましたが、その後実機写真を良く見ると垂直安定板下部の形状が製作したものと若干異なることが判明したので、修正を施した上でカバーリング・塗装・マーキングを行って完成させました。

カバーリング、塗装及びマーキング

絹目調のオラカバ(オラテックス)でカバーリングしました。その後全体を艶消し白色のアクリル塗料で塗装し、ラダー上部は赤に染めました。JAナンバーは参考にした元東海大学が所有していた実機と同じJA2103としますので、尾翼には末尾2桁の03のシールを作成して貼りつけました。

こうして、垂直尾翼が完成しました。(画像111)

画像111 完成した垂直尾翼

かなり実機感があります。完成重量は胴体への2本の取付ボルトを含めて222gでした。予想重量を10g超過しました。因みに木地完状態での形状(画像21 第2部)と比較すると安定板の下部形状の違いがわかるかと思います。実機では、新たに取り付けた部分に水平尾翼との交点に跨る樹脂製のフェアリングの後部を挿しこむようになっています。

製作その20 胴体下部張出構造

胴体下部張出構造とは

三田式3型改1の胴体は断面形が矩形の主要構造の上下に、細い鋼管で張出構造が取り付けられています。その内今回は下部張出構造を製作しました。図面29に示します。前胴の下部は前後席間の操縦桿連結棒や主車輪が取り付けられますので、それらをカバーする為に張出構造は台形形状をしています。これに対して後胴部分の張出構造は単なる三角形状です。この張出構造は強度部材ではなく、単なるフェアリングの役割しか持ちませんので、当初これらはΦ4mmの木製の丸棒で製作しようと考えました。木製ならば電波障害の心配も無い上に軽量且つ低コストだからです。

しかし一部部品を作り取り付けてみると、剛性が不足することが判明しました。これではカバーリング時に表皮の張力で丸棒が撓んでしまう恐れがあります。そこで同径のカーボンパイプで製作することに変更しました。

図面29 胴体下部張出構造

製作

カーボンパイプでの製作となると、胴体主要構造の製作と同じ手順を踏むことになります。まず、前胴下部用の台形部材の一部となる部品を、下のような治具を作ってその上で製作しました。

画像112 前胴下部構造用部品

この部品は一見すると平面形状ですが、中央付近で折れ曲がっていますので、治具が必要だった訳です。写真では判りにくいですが、治具は山形をしており向かって右側が下り坂になっています。

この部品と後胴張出構造の組立は中心線を正確に出す必要があるので、簡単な組立治具を作りました。組立治具の上で張り出す構造を組んでいる状況が画像113です。胴体をひっくり返して下部を上にしています。写真では簡単な作業に見えますが、数十本の部材をカーボンパイプから切出して長さを合わせ、端面を組み合わせ形状に加工するのは意外に面倒な作業でした。

画像113 胴体下部張出構造の組立

下部張出構造の完成

何とか全部品を切り出して組立を完了しました。

画像114 完成した胴体下部張出構造 左=前胴 右=後胴

実は主車輪周りの構造は未だできておりません。この部分の構造の詳細が良く判らず図面が書けない状態だからです。静岡航空資料館に支援を依頼して詳細写真を送っていただくお願いをしました。

製作その21 胴体上部張出構造

胴体上部張出構造の図面

前胴にはコクピットが在りますので、上部張出構造は後胴にしかありません。構造は下部張出構造に比べてずっと単純です。

図面30 胴体上部張出構造

羽布を被せた完成形では下部張出構造と同じように三角形を形作りますが、下部構造が前後に走る梁を胴体主要構造から伸びる2本対の斜め部材で支えているのに対して、上部構造は一本の垂直な柱で支えるだけです。但し、梁の先端はL型チャンネルで組んだ山形のトラスに支えられます。中央翼に被さるフェアリングの後部がこのL型チャンネルに挿しこまれて固定されます。

また後端は、水平尾翼にきれいに繋がるように形状が三角形から矩形に変化します。そのため梁の後端は木製の矩形形状フレームで支えられます。三角形状から矩形形状へ連続的に遷移させるために、この矩形フレームの前には胴体主要構造の上部2本の梁上に三角形の木板が前後方向に載せられています。

製作した上部張出構造

先端の山形トラスはアルミのL型チャンネルで作りました。

画像115 胴体上部張出構造の前部

後部の木製矩形フレームと三角形の木板は4mm厚バルサで作りました。ついでに水平尾翼と胴体の間を塞ぐ板も作って取り付けました。

画像116 胴体上部張出構造の後部

前後に走る梁は下部構造の製作と同じように位置決め治具を作って梁の位置を正確に保ちながら柱を建てました。こうして上部張出構造が完成しました。

画像117 完成した胴体上部張出し構造

治具のお陰で梁が真っ直ぐに通りました。張出構造を付けると一段と実機形状に似てきてテンションが上がり、側方張出構造の製作が楽しみになりました。

製作その22 胴体架台

三角形状をした下部張出構造を取り付けた為に胴体が自立できなくなりました。このままでは側方張出構造の製作がやりにくいので胴体を支える架台を作りました。

胴体架台の設計

架台は今後の作業に使うだけではなく完成後の保管や運搬にも使えるように、主脚を取り付けた状態でも胴体を支えられるように設計しました。

図面31 胴体架台

前胴と後胴の2か所を支える構造です。前胴下部は台形、後胴下部は三角形なので受け構造の形状を変えてあります。できるだけ軽く且つ充分な剛性を有する構造様式になるように配慮しました。また、架台に載せた状態で機体が水平になるように設計しました。材料は主に4㎜厚のシナベニアで、持ち上げ易くするために15Φの丸棒の取っ手を長手方向に付けました。

完成した架台

構造が簡単なので容易に部品切出しや組立ができました。こんな感じで胴体を載せます。

画像118 完成した胴体架台

製作その23 胴体側方張出

三田式3型改1グライダーには胴体の側方に木製の細い張出部が在って、一つのアクセントになっています。張出は機首のFRP製カウリングの直後から胴体最後尾まで、左右各一本づつ通っています。上から見たときは前胴部分は曲線を描き、後胴では略直線形状をしています。側面図では二か所で折れ曲がった3本の直線形状です。因みに厚さは4㎜程度を想定しました。

図面32 胴体側方張出

側方張出の製作

製作にあたって材料を何にするか迷いました。当初はシナベニアを考えましたが重いのが難です。一旦はバルサに決めましたが、張出なのでぶつけることも覚悟しなければなりません。バルサでは凹んでしまう恐れがあります。ホームセンターの木材売り場を物色していたら手ごろな材料を見つけました。桐の集成材です。30×6×900のものが一本100円程度で売っていました。これならば軽く適度な硬さもあり、何よりも安いです。只、若干厚いのでこれをカンナで削って4㎜強に仕上げることにしました。

図面から型紙を作って桐板に貼りつけてカッターナイフで切出しました。胴体構造に貼りつけるのに少々手古摺りました。正確な位置決めがやりにくいのです。そこで簡単な位置決め治具を作ってその上に張出構造を載せてから、瞬間接着剤で胴体トラス構造に貼りつけました。(画像119)

画像119 簡易位置決め治具による側方張出の取付作業状況

このようにして胴体左右に貼りつけて完成!と思ったのですが、そうは問屋がおろしませんでした。張出構造は薄板で且つ長いので直線に通すことがかなり困難です。位置決め治具は両端の位置を決めているだけで、中央付近はフリーです。後胴部分に取り付ける部分は幅が10㎜にも満たないのに、長さは900㎜近くあってどうしても曲がってしまいます。出来上がったものを後から透かしてみると、直線であるべきところがカーブを描いています。仕方がないので折角作ったものを取り外して、今度は糸を張ってそれに沿って取付直しました。

完成

手間取りましたが何とか完成させました。(画像120)

画像120 胴体側方張出の

4㎜厚の張出板をカーボンパイプに突合せ接着しただけでは少々不安なので、バルサの小さな三角材で上下から押さえています。尚、大きな三角材が見えるところはアクセスドアが付くところです。胴体左側の中央翼直下にアクセスドアがあって、内部の整備点検ができるようになっています。後日ドアの製作を行います。これが2018年最後の工作になりました。

動力システム再考

以前検討し一旦結論を出して購入も済ませていた動力用モーターについて、検討不足が気になり再検討しました。

パワー対重量比

先に動力システムを検討した時に必要なパワーを重量1Kg当たり130Wとしました。しかしもう少しこの値について調べてみると少々不安になってきました。サイトでいろいろ調べてみると国内には余りデータが見つからないのですが、海外では沢山の報告があります。しかし、サイト毎に微妙にデータが異なります。或るサイトAでは次のように述べています。

Rule of Thumb for power weight ratio (パワー対重量比の目安)

  • 25 Watt/lb = minimum for level flight, with a reasonably clean plane.(55Watt/Kg = 充分抵抗の少ない機体の水平飛行に必要な最低値)
  • 50 Watt/lb = Trainer/Casual/scale flying(110Watt/Kg = 練習機/カジュアルな機体/スケール飛行)
  • 75 Watt/lb = Sport flying and sport aerobatics(165Watt/Kg = スポーツ飛行およびスポーツアクロバット飛行)
  • 100 Watt/lb = aggressive aerobatics and mild 3D, effortless loops from level flight(220watt/Kg = 果敢なアクロバットおよび穏便な3D飛行、水平飛行からの容易な宙返り)
  • 150 W/lb = all out performance.(330Watt/Kg = 全性能を発揮できる)
  • 200 Watt/lb = Unlimited high-speed vertical flight(440Watt/Kg = 無制限、高速、垂直上昇飛行)

他のサイトBでは次のように述べています。

  • 50–70 watts per pound; Minimum level of power for decent performance,park flyer/slow flyer models (110–150Watt/Kg, パーク飛行機/低速飛行機がまともに飛べる最低レベル)
  • 70–90 watts per pound; Trainers and slow flying scale models(150–200Watt/Kg,練習機および低速飛行のスケール機)
  • 90–110 watts per pound; Sport aerobatic and fast flying scale models(200–240Watt/Kg,スポーツアクロバットおよび高速飛行のスケール機)
  • 110–130 watts per pound; Advanced aerobatic and high-speed model(240–290Watt/Kg,高等アクロバットおよび高速機)
  • 130–150 watts per pound; Lightly loaded 3D models and ducted fans(290–330Watt/Kg,低翼面荷重の3D機およびダクテッドファン機)
  • 150–200+ watts per pound; Unlimited performance 3D and aerobatic models(330–440Watt/Kg超,無制限3Dおよびアクロバット機)

グライダーについて直接の言及はありませんが、サイトAによれば110~165Watt/Kg程度で良さそうに見えますが、サイトBによると少なくとも150~200Watt/Kgが必要に見えます。つまり、サイトAに従えば先に設定した130Watt/Kgで良いが、サイトBでは不足と言うことなります。重量も当初の目標重量よりかなり増えることが確実なので心配になり出しました。

所有するグライダーのパワー重量比

そこで、私が所有するグライダー等のうち、比較的大型の1/5スケールクラスの機体のデータを纏めたものが下表です。

表9 所有するグライダー等の搭載パワーデータ

概ね160~190Watt/Kgのパワー重量比(比パワー Specific Power)にあります。これらの機体はパワー的に問題なく、一番パワー重量比の少ないASK-18が若干弱めの上昇率ですが、他はGrob G109を除いて実機のウインチ曳航のような離陸が可能です。

因みに参考のために実機モーターグライダーのGrob G109Aのパワー重量比も載せました。実機モーターグライダーは非常に非力で、80Watt/Kgを切ります。当然、離陸も穏やかな上昇でグライダーのウインチ曳航のような上昇率は望めません。

これらのデータから、静穏な大気での離陸に限れば130Watt/KgでもOKであろうことが予想されます。先に選定し既に購入済みの動力システムは1300Watt級なので全備重量10Kg程度までカバーできそうです。今のところ全備重量は9Kg程度が見込まれますから、140Watt/Kg程度となります。しかし、RC機では風の中での離陸や、前方障害物の回避、旋回中の翼端失速による急激な姿勢変化からの回復等では、モーターを廻して対処する必要があり、充分なパワー余裕が欲しいところです。問題は140Watt/Kgで十分なパワー余裕があるか否かということです。

余剰パワー(Excess Power)と比余剰パワーPs (Specific Excess Power)

実はパワー余裕とは余剰パワー(Excess Power)と称し、航空機の場合は利用可能な最大パワーと水平飛行に必要なパワーの差分を言います。単にパワーの差分だけでは、同じ差分でも重たい機体と軽い機体では余裕感が異なり同一に評価できないので、重量で割って1Kg当たりどれだけの余剰パワーがあるかを用います。これを比余剰パワー(Specific Excess Power)と言いPsと記します。単位はWatt/Kgで、正に上で検討しているパワー重量比と同じです。パワー重量比から重量1Kg当たりの水平飛行に必要なパワーを差し引いたものがPsです。

比余剰パワーPsが0では水平直線飛行しかできませんが、Ps>0ではパワー余裕が生じて、加速や旋回、上昇等の運動が可能になります。Psが大きければ大きいだけ激しい運動が可能になります。

比余剰パワーPsの単位はWatt/Kgですが、1 Watt=0.102Kg・m/secですからPsの単位は実はm/secとも書けます。これは上昇率の単位と同じで、実際Psが上昇率を表します。実際には余剰パワーを上昇に変換するのに航空機の効率が100%では無いので、Psの80~85%が実際の上昇率として実現されます。

つまり、パワー余裕とはPsで表すことが妥当で、どの程度のPsがあれば良いのかと言うことが興味の対象になりす。

1/3三田式のPs予想

Psを求めるには水平飛行に必要なパワーを知る必要がありますが、それは性能予測で得られた降下率(沈下率)から略算できます。

降下飛行では、降下による位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)の減少率即ち、降下率×重量がその速度で降下飛行をするのに必要なエネルギー(パワー)を供給しています。沈下率に等しい上昇率を与えれば水平飛行になりますから、降下飛行に必要なパワーにその上昇率を与えるパワーを加えれば水平飛行に必要なパワーが求められます。上昇に必要なパワーは位置エネルギーの増加分ですから、上昇率×重量で求められます。上昇率と降下率が同じですから、結局水平飛行に必要なパワーは降下率×重量の2倍で略算できます。実際にはプロペラやモーターの効率がありますから、上記で計算されるパワーを効率で補正した値が必要なパワーになります。

以上のことを用いて、1/3三田式の比余剰パワーPsを計算したのが下表です。

表10 1/3三田式3型改1の比余剰パワーPs

重量は10Kgを、プロペラ&モーターの効率を0.5と仮定しました。流石に揚抗比の良い機体なので、水平飛行に必要なパワーも82~133W程度と極めて少ない値です。Psはパワー対重量比が180W/Kgの場合と140W/Kgの場合で計算しました。180W/Kgの場合にPs=8.3m/sec程度、140W/Kgの場合にPs=6.3m/sec程度と見込まれます。

必要なPs

6.3m/secのPsは有人機では充分大きな値ですが、RCグライダーではどのように感じるものでしょうか?これを確認するために、手持ちの1/5三田式でパワーを落として実験してみました。1/5三田式は4セルで通常は36A程度を流して520W程度で飛ばしていますが、これを電流制限して400Wまで落として飛ばしてみました。Psは520W時で8.6程度、400W時で6.4程度と計算されますので、上に述べた1/3三田式の検討条件にほぼ一致します。尚、テストパイロットはクラブのベテランSさんにお願いしました。

520W(Ps=8.6m/sec)ではいつも通りウインチ曳航のような離陸上昇をしますが、400W(Ps=6.4m/sec)ではずっとマイルドで恰も飛行機曳航のような上昇です。ドーリーを用いての試験も行いましたが400Wでもドーリーを引っ張って離陸は可能でした。Ps=6.4m/secでも通常は何ら問題が無いように思え、更にパワーを落とした飛行を試みようと思いましたが、Sさん曰く「これがパワーの下限」とのこと。これよりパワーを落すと何か異常が発生した時の対処に不安を感じるようです。

結局1/3三田式は1300W級の動力システムで飛ばすことは可能だが、異常時の対処に余裕が少ないという結論が得られました。折角作った機体がパワー不足で緊急操作ができず墜落!と言うような事態を避ける為に、もう一回り大きなモーターに変更することにしました。

再選定したモーター

上記の検討結果によれば1/3三田式に適当なモーターは1,700~1,800Wクラスとなりますが、同クラスの適当なモーターが見つからないので、大は小を兼ねるの精神で2,000WクラスのFUTABA FMA-5065 KV300を選定しました。

このモーターは8セルで2,000W程度が得られます。手持ちのESCは6セルまでしか対応しないので、このモーター用の12セル、100A迄対応したESC(アンプ)と、同アンプ用のプログラマーユニットも購入しました。これが購入した3点セットです。

画像121 再購入した動力システム

これでパワー不足の心配も無くなりました。実はこの検討で動力システムのパワーアップを図ったことが初飛行での危機一髪を救ってくれました。それは初飛行のところで改めて説明します。

製作その24 モーターマウント

早速、同モーター用のマウントを設計・製作しました。

設計

図面はモーター再検討前から検討していたものの小改修で済みました。

図面33 モーターマウント

モーターはバックマウントで搭載します。胴体主構造である4本の7mmΦ縦通材の先端に5mmΦの支柱を張出し、その前面に4mm厚シナべニアを2枚重ねてエポキシ樹脂で接着したモーター取付板を設置します。縦通材と支柱の内部は長さ50㎜の3mmΦ鉄棒をエポキシを塗って挿しこんで止めます。上面支柱の間には4㎜厚シナベニアを渡してあります。この上にESC(アンプ)を載せる予定です。支柱とモーター取付板との間には斜めに補助支柱を通してあります。これらの補助支柱がモーターの反トルクを受けます。更に、支柱先端とモーター取付板に渡って8枚の1㎜厚カーボン板製の3角形補強板をエポキシ樹脂で取り付けて、トラス構造の剛性を確保します。

モーターは保守点検の為に胴体内部方向へ取外しができるようにしました。このため、モーター取付板には直径50㎜のモーターより若干大きい直径52㎜の穴が開けてあります。モーターの取付は付属の十字マウントでは52㎜の穴に対して長さが足りないので、8.5㎜厚シナベニアで製作した四角形のベッドをモーター後部に取り付け、そのベッドを3mmボルト4本でモーター取付板に後方から取り付けます。

モーター取付板とベッドをシナベニア製にしたのは、マウントや胴体構造がカーボンパイプの接着構造の為に構造減衰が殆ど期待できないからです。プロペラやモーターが発生する振動を減衰させるために厚いシナベニアにしました。

製作

モーターマウントは製作済の胴体主要構造から突き出して取り付けるので、組立治具が無ければ正確に取り付けられません。そこでまずこの写真のような治具を作って胴体に取り付けてみました。

画像122 モーターマウント組立治具

治具の最先端にある板にモーター取付板を取り付けて、胴体構造との間をカーボンパイプで繋ぐ構想です。しかしこの治具を取り付けた段階で大きな問題が発生しました。治具が素直に胴体構造に取りつかないのです。無理に取り付けるとモーター取付板が斜めに曲がってしまいます。原因をいろいろ調べているうちにどうやら前胴右側パネルが正確に取りついていないようです。2本の上側縦通材の先端間の距離が図面より微妙に長い様ですし、右側パネルの上下縦通材間を繋ぐ部材の取付角度が、若干開き気味のようです。胴体構造は組立治具を用いて組んであるのでそれなりの精度は確保されているものと思っていましたが、思わぬ不具合の発生です。

実はこの部分は数か月前、床に置いてあった時に誤って踏みつけてしまい、部材が数本分解してしまったことがありました。そのとき治具に載せずに外れた部材を再組立した経緯があります。このことが原因の一つであることは間違いないと思いますが、それだけでは説明がつかない狂いがあります。

仕方がないので、原因究明はそこまでとして、右側パネルのトラス構造をバラして組み立て直すことにしました。

しかし、トラス構造は既にエポキシ樹脂で固めてあるので分解するのも大変でした。エポキシ樹脂にはラジコン仲間に使わせて貰っている下の写真にあるカーボン繊維を含んだパウダーを混ぜ込んであるので、非常にガッチリ固まっています。

画像123 カーボントラス構造の接着用エポキシ樹脂に混ぜたカーボンパウダー

何とか苦労してトラスを分解しましたが、せっかく作った側方張出構造は割れて使えなくなってしまいました。再製作が必要です。次にもう一度正確にトラス構造を組み立てなければなりませんが、前回使用した胴体組立治具は、胴体下部張出構造を取り付けてしまった今となっては使用できません。そこで次のような、部分治具を作って形状確保を図ることにしました。

画像124 簡易組立治具

前側治具がコクピット前部の幅を正確に押さえると共にモーターマウントの位置を定めています。後側治具はコクピット中央部の幅を正確に決めるために設けました。前側治具には既にモーター取付板とそれを支える4本の支柱が取り付けられています。胴体右側パネルの部材も仮組立されていますが、コクピット中央上で前後席の間にあるべき台形部材や、右側側方張出は未だ取りついていません。モーター取付板もまだ4㎜板が一枚取りついただけです。この前にもう一枚をエポキシ樹脂で貼りつけます。

モーターマウントの完成

このような苦労をしましたが、何とかモーターマウントを完成させることが出来ました。(画像125)

画像125 完成したモーターマウント

ひっくり返すとこのようになっています(画像126)。モーターはこのように取りつきます(画像127)。

一番気にしたモーターシャフトの機体中央軸上への配置も略上手くいきました(画像128)。斜め部材と三角形の補強板のお蔭で、非常に剛性の高いマウントが完成しました。

製作その25 ラダー操縦系統

三田式3型のラダー操縦系統

三田式のラダーはその最下部にあるラダーホーンを、前後操縦席のペダルから伸びる両引きワイヤーで操作します。ワイヤーの長さ調整用に後席ペダルの前側と後席ペダルとラダーホーンの間の2か所の左右に合計4個のターンバックルが装着されています。前者は前後席間の長さ調整に、後者は後席ペダルとラダーホーン間の調節に使われます。図面はこのようになります。

図面34 ラダー操縦系統

まずペダルの製作から着手しました。実機のペダルは短い鋼管を溶接して作られていますので、模型では3mmΦの真鍮パイプを半田付けして製作しました。

画像129 製作したラダーペダル

上の2つが前席用、下が後席用です。前後席間のワイヤーは胴体基本構造鋼管の外側に張られますので、後席用ペダル上部のワイヤー取付部が外側に伸びています。実はこのペダルは再作したものです。実物の大きさの実感がつかみにくく、当初は勝手に長さ15cm程度と考えてその1/3大のものを製作して取り付けてみると、如何にも大きすぎることが判りました。それで当初の2/3の大きさに作り直したものです。実機を見たときにその大きさが予想より小さかったことに驚いた経緯があります。どうもボリューム感のある機体イメージから、全てのものを実物より大きめに想像してしまうようです。

取付

ペダルを所定の位置に取り付けて、ワイヤーを張りターンバックルも取付けました。

画像130 ペダルの取付 左=前席用 右=後席用

後席用ペダルにはターンバックルが取り付けられています。このターンバックルはエレベータ操縦系統で用いたものと同じで、金属加工の得意なクラブ仲間に製作して貰ったものです。後席より後方の主輪近くにはもう一つのターンバックルが取り付けれれています。

画像131 後部ターンバックル

このターンバックルから後ろに伸びるワイヤーがラダーホーンに繋がりますが、胴体の表皮を貼る邪魔になりますので未だホーンとは繋いでいません。ワイヤーを張っているときに、胴体構造とワイヤーが交差する部位が意外と多いことに気が付きました。私はもっと注意して構造にぶつからないようにワイヤーを通す場所を設計するものと思っていましたが、三田式ではその辺は割り切って、構造と交差する場所にはプーリー状のもの(詳細不明)を取り付けて擦れを避けています。模型でプーリーは面倒なのでノイズレスチューブを当該場所に貼りつけて擦れを避けました。

ラダーサーボの取り付け

ラダーサーボは機首に設置しました。サーボで前席ペダルを動かす構造です。コクピット側から見てサーボの手前には計器盤が取り付く予定ですので、サーボは大半がその陰に隠れて見えないことが期待されます。

図面35 ラダーサーボリンケージ図面

ペダルに取り付けた板とサーボ間をリンクで結んでいます。これが謂わばパイロットの足になります。

サーボの取付方法は一工夫しました。最先端にモーターが取り付いた機首はFRP製のカウリングで覆われ、モーターはコクピット側からしかアクセスできません。その際サーボが邪魔になります。そこでサーボに足を付けて斜め45度方向のネジで固定しました。これが完成したラダーサーボ機構です。

画像132 ラダーサーボの搭載

(注)この時点では機首のFRP製カウリングは1/5模型と同じように取り外しできないものに考えていたため、このようなラダーサーボの取付方式にしました。しかしその後カウリングを取り外し可能に変更したので、結局その必要はありませんでした。

因みにサーボはラダー、エレベータ、エルロン共同じサーボを用いています。サーボの仕様は下記です。

製作その26 主脚周りの胴体下部構造

胴体下部張出構造を製作した時に、その構造形状が判らないために放置してあった主脚周りの構造について、静岡航空資料館にお願いして写真を送って頂きました。その写真を元に構造を想像して設計しました。

図面36 主脚周りの胴体下部構造

この構造は台形形状の前胴下部張出構造の中央付近から出て、三角形状をした後胴下部張出構造の中央付近に繋がります。側面から見ると一直線ですが、平面図でみると大きく「く」の字に曲がっています。これは横幅が大きい主脚の前方取付部材を覆うために、その部分だけ横幅を広くしているためです。

この構造より下側は布製の車輪カバーが取り付けられます。今回はトラス構造部分を作りました。

製作した構造

4㎜Φのカーボンパイプで前後に走る「く」の字部材を作りました。治具上で2本のパイプを正確な角度で繋ぎました。つなぎ目にはステンレス線を中に入れエポキシ樹脂で固めてあります。それを位置決め治具で左右対称性を確保して胴体に取り付け、支え部材を接着しました。このようにして出来上がった写真が画像133です。

画像133 主脚周りの胴体下部構造

「く」の字に大きく曲がって飛び出していることが判ると思います。しかしここで大きな不安が生じました。前胴下部から後胴下部に渡って形状変化が余りに激しいのです。前から透かして見るとトラス部材の傾き角度が急変しています。これでは胴体に羽布を貼った時に皺が生じるのではないかと不安になりました

羽布の試し貼り

そこで、形状変化の激しい部位に羽布を試し貼りしてみました。使用したのは絹目調のオラカバであるオラテックスです。結果は画像135のように心配無用であることが判明してホッとしました。

画像134 前から見た主脚周り構造 | 画像135 羽布の試し貼り

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