1/3 スケール三田式 3 型改 1 製作記

マルチパートシリーズの第3部。

Norimichi Kawakami
The New RC Soaring Digest

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If you prefer you can read the English translation of this article, which was provided by the author. この記事に進む前に、このシリーズの 第2部 を読むことをお勧めします。

製作その5 後部胴体

いよいよカーボンパイプ製後部胴体の主要トラス構造組立の製作開始です。

後部胴体の構造

図面10が後部胴体の構造図面です。

胴体を輪切りにカットした時、長方形の形状をしている部分が主要構造トラスです。強度、剛性はこの部分が受け持ちます。これの上側と下側に縦にそれぞれ一本の縦通材が走ります。上側縦通材は長方形上辺の中央から立ち上がる一本の支えで支えられ、下側縦通材は長方形の下側両隅から伸びる支えで支えられて三角形のトラス構造になります。長方形の左右2辺の中央よりやや下には、板状の縦通材が走り、カットした時に張出となります。これらを外皮が覆いますので、断面形状は8角形となります。

図面10 後部胴体構造図

側面図と上下面図でみると、主要構造トラスの4隅を構成する4本の縦通材が前後に走り、略等間隔で縦および水平の部材がこの縦通材を繋いで梯子状のトラス構造を構成しています。これで後部胴体の上下・左右曲げ強度と剛性を確保しています。梯子の各ステップの間には斜めの部材が一本ずつ入って捩じり強度と剛性を受け持っています。

後胴主要構造トラスの材料

主要構造トラスは全てカーボンパイプで製作することは基本構想の策定時に決定しています。一番の強度メンバーである縦通材は7×5(外径7㎜、内径5mm)のパイプで、上下、左右の梯子のステップに相当する部分は5×3、斜め部材は3.5×2のパイプを採用することにしました。

カーボンパイプの切断

私にとってカーボンパイプでの工作は初めてです。その切断方法に多少迷いがありましたが、ミニルーターに百均で購入したダイヤモンド丸鋸を取付けて万力で咥えたミニカッターを作り、これでパイプを廻しながら切ると、割と簡単にカットできることが判りました。但し、カット中はカーボンの黒い切り粉が飛び散りますので屋外で行います。

画像29 カーボンパイプ切断用ミニルーター

カット面は接合相手が円形ですので、これまた百均で購入したダイヤモンド粉を塗布した丸ヤスリで整形しました。これは屋外ではやりにくいので掃除機の吸い込み口を近くに置いて切り粉を吸引させながら行いました。

上面パネルの製作

まず最初に後胴の上面パネルの製作から始めました。原寸大で焼きだした図面を平板の上に広げ、その上に薄いポリエチレンシートを被せて接着剤が平板に垂れるのを防ぎます。その上で、縦通材の外側線に沿って細いヒノキの角材を平板に釘で固定します。これで縦通材の位置決めをするためです。

次いで、梯子のステップに相当する部材を切出して端面を一本一本丸ヤスリで縦通材にピッタリ合うように整形して配置します。2本の縦通材の間に嵌め込んでいく訳ですが、余りきつく嵌めると枠から外した時に反る可能性があるので慎重に長さ調整をして嵌め込みます。ステップ材はΦ5、縦通材はΦ7ですのでステップ材の下には1㎜厚のヒノキの細棒を敷いて高さ調整をします。

全てのステップ材を嵌め込み終わったところで浮きなどが無いことを確認してから接合部に瞬間接着剤を垂らしました。これは仮留めで本留めは全てが組み上がってから接合部にエポキシ樹脂を盛ります。

画像30 後部胴体上面パネルの製作風景

ステップ部が済んだら斜め部材を同様にして取り付けます。斜め部材はΦ3.5ですので、下に敷く細棒も厚いものに替えます。同様にして後胴下部パネルも製作しました。画像30が上面パネルの製作状況です。

失敗その5 順調に製作できたと満足していましたが、思わぬ落とし穴がありました。組み上がった上部パネルを後方から透かして見ると、なんと直線であるべき縦通材が曲がっています。

ヒノキの細棒で位置決めして作ったのですからそのような筈は無いと、当初は原因不明で頭を抱えました。原因は意外なところにありました。図面が曲がっていたのです。私はA4プリンターしか持っていません。これは幅210㎜のコピー紙しか入りませんが、長さ方向はプリンターソフトのユーザー定義機能を使うと1,100㎜迄OKです。この上部パネルは最大幅が約120㎜、長さが1,230㎜ですので長いコピー紙を使えば一回の貼り合わせで原寸図が得られます。そこでA3紙を3枚、幅210㎜に切って貼り合わせて210×1,200㎜程度の長い紙にして1,100㎜弱の部分を印刷し、残りをA4紙に印刷してから慎重に貼り合わせました。この貼り合わせは注意して行ったので狂いは無いのですが、曲がりはA3紙3枚を貼り合わせて印刷した部分にありました。

長い紙をプリンターに入れると慎重に入れてもプリンターの送りロールに垂直には入らず若干斜めになってしまいます。そのため、1,100㎜も紙を送っているうちに左右どちらかに紙が寄ってきて紙送り装置の縁に当たります。そこで紙は左右どちらかへの寄りが制限されるため、直線が正しく印刷されないことになります。1,100㎜もある印刷物は一見したところ問題は発見できませんが、定規を当てて確認したところ最大1~2㎜のうねりを生じていました。このうねりに沿って、押さえの細棒を固定したので、当然出来上がったパネルもうねってしまった、と言う訳です。下部パネルは短いのでそのような不都合は生じていないことを確認しました。上部パネルは瞬間接着剤の仮留めですので、衝撃を与えると分解できます。折角注意して作ったものですが、分解しました。

組立順序の重要性

上部パネルを再製作する前に、2枚の下部パネルを組立てる治具を作るつもりでその材料も揃えたところで、またまたやり方がまずいことに気づきました。

下部パネル2枚は「く」の字型に角度を持って接続されますので、その角度を持った治具を作り、その上で組み立てることを考えていました。パネルが大きいので治具もかなり大型になると思っていました。しかし、図面をよく見ると側面は同一面上にあるではないですか!これは側面パネルを上面パネルと同じようにして2枚先に作れば、それを垂直な部材で繋ぐことで、下部の「く」の字型折れ曲がりも治具無しで作れてしまいます。何も考えず、上面1枚、下面2枚のパネルを計3枚作ってそれを組立てるものと思い込んでいた自分が恥ずかしくなりました。

教訓3 組立手順の良否で治具の要不要も変わる。手順検討が非常に大事

画像31 後部胴体サイドパネルの製作

そんな訳で、上面パネルの再製作は中止してサイドパネルを作ることしました。但し、下部パネル2枚は製作済みですので、今回は若干変則的なサイドパネル製作となります。画像31がその製作状況です。

左側が下面で手前が前方です。従って上が右サイドパネル下が左サイドパネルです。この写真は既に右サイドパネルは出来上がり下面パネルに組み付けた状態で、左サイドパネルを製作しているところです。下面パネルを平板に垂直に立てる治具を噛ませて組立てています。尚、今回の図面印刷はA3紙を210㎜幅に切ったものを一枚ずつ印刷して、印刷終了後に貼り合わせました。これですと印刷の長さは420㎜ですので曲がって印刷されるリスクも減ります。これも教訓3と同じ手順の話です。

完成した後胴主要トラス構造組立

このように失敗と反省を交えながら後部トラス構造が組み上がりました。

画像32 組みあがった後部胴体主要トラス構

今度はかなり正確に組み上がりました。前側から見たのが画像33の写真です。

画像33 後部胴体を前から見る

縦通材も真直ぐに通り、梯子のステップに相当する上下左右の部材も綺麗に揃って組み上がりました

製作その6 エルロン

続いてエルロンの製作に入りました。

設計

図面11が右エルロンの図面です。長さは約1,100mm、内側の翼弦長が90㎜、外側のそれが81㎜で若干テーパーしています。

図面11 右エルロン平面図

一見シンプルに見えますが、エルロンの設計は本機の設計で一番大変でした。リブが全て斜め方向に走っていることはラダーやエレベータと同じですが、エルロンでは片翼に26枚ものリブがあります。しかも最内端と最外端のリブは気流方向です。また、フリーズ式のエルロン前縁は翼の後桁に並行ですから、その断面は当然後桁に垂直に定義しなければなりませ。この形状を2次元CADで求める作業が大変でした。結局この作業に2018年6月の約一月を費やしました。図面12がその設計過程の図面です。

図面12 エルロンの設計過程

しかし、こんなことで文句を言うわけにはいきません。実機が製作された1960年代の後半では未だCADも電卓も無く、当然T定規、三角定規、雲形定規、コンパス、計算尺等でこの作業を行ったはずです。これは大変な作業であっただろうことは想像に難くありません。2次元とは言え、一応CADが使える我が身の有難さを痛感すると共に、先人の忍耐強さに敬意を抱きました。現代では3D CADが全盛ですから私の苦労も観方によっては徒労かも知れません。

設計で悩んだことは前縁構造とヒンジ形式です。フリーズ式前縁なので上面は桁にRを持って接続しますが、下面は桁より前方に約20mm程伸びます(図面13参照)。つまり、前縁断面は桁と上面、下面で囲まれた三角形状になります。因みに1/3の大型機とは言え、桁高さは約15㎜程度しかありません。これをどのように作るか悩みました。

方法は2種類です。一つはエレベータで採用した方法で、厚さ20㎜程度のムク材を桁に貼ってそれを整形する一体構造です。他の一つは、ラダーで採用した方法で、桁に垂直に小さなリブを建てて上表面を1.5㎜厚程度のバルサでプランクする組立構造です。

一体構造方式は剛性確保の上で有利ですが、1,100㎜もの長さで若干テーパーした上に下面は桁に垂直ではなく下方へ張り出した形状のものを、精度良く整形することに困難があります。組立構造方式では、リブは16㎜×13㎜程度の小さなもので、これで精度を保てるかが心配事項です。結局、決め手が見つからないまま、組立構造方式にしました。

ヒンジは当初ロバートソンの棒ヒンジ方式にすることにしていました。これは簡単で確実なヒンジですが、取付位置精度の確保に難があります。主翼後桁ウエブとエルロン前縁に穴を開けてヒンジ両端を挿し込んで固定しますが、今回のフリーズ式エルロンでは主翼上面から伸びて来る外板とエルロン前縁のクリアランスの精度確保が重要です。ヒンジ取付穴を多少大きめに開けておいて、組み建て時にクリアランスを観ながら固定することも考えられますが接着剤を付ける手が入りにくい形状のために困難が予想されます。結局、エレベータに採用したものとと同じようなヒンジを自作することにしました。これですと、比較的ヒンジ位置精度を確保し易い上にエルロンの取り外しができるメリットがあります。主翼翼端を取外し可能な構造にして、エルロンを外側から差し込んで翼端で押さえる構造としました。

フリーズ式エルロンと採用したヒンジの形状を図面13に示します。

図面13 エルロン装着図

製作

画像34が製作したヒンジです。

画像34 エルロンヒンジ

主翼から伸びるヒンジをカーボンと3Φの竹ひごで作り(画像34の上側)、エルロンに取り付けるヒンジ受けをアクリル板で作った(画像34の下側)こともエレベータと同じです。尚、エレベータでは片翼に2か所のヒンジでしたが、エルロンは長いので片翼に3か所のヒンジを設けました。それぞれ微妙に寸法が異なります。この写真では切出し用の型紙が貼りついたままの汚らしい状態ですが、これを外してしまうと、間違える恐れがあるからです。カーボンの切り出しが大変で手が真っ黒になりました。

リブと治具、桁、後縁材を切出してからいつものように最初に原寸図の上で組立治具を組立てました。次いで治具の上でリブを桁と後縁に挟み込みました。桁と後縁材には切込があり、リブを挿し込む構造になっています。すべてのリブを挟み終わったところで上にスチール製のL材を載せて、リブを治具に密着させてから瞬間接着剤で固定しました。それから、桁に前縁リブを垂直に挿し込んで固定して下部前縁プランク材を貼ります。その後、上部前縁プランク材を貼ってエルロンの組立が終わります。ヒンジ位置の前縁を幅12㎜切欠いて、アクリルのヒンジ受けを取り付けました。出来上がったエルロン組立が画像35です。

画像35 完成したエルロン組立

設計時点では幅80~90㎜、厚さ十数mmしかないのに長さが1,100㎜もある構造なので、曲げ及び捩じり剛性が心配でしたが、組み上がってみると三角形のフリーズ型前縁が閉じ断面を形成しているお蔭で、思いのほかガッチリとして剛性も確保できています。当初、剛性が不足する場合はサーボを片翼に二個用いて捩じれ対処することも考慮していましたが、その必要は無さそうです。リブの組立精度を見るために斜めに透かして見たのが画像36です。

画像36 エルロンリブ組み立ての精度チェック

未だ後縁の整形等が残っていますが組立治具のお蔭で綺麗にリブが揃っています。但し、小さなリブをプランクした前縁はその整形精度に若干の不満が残りました。後日紙やすりで整形して、歪みの大きいところはパテで補修しました。

エルロンの改修

後日、東海大学グライダー部OBのSさんを通じて、教官をされていたAさんから実機の構造図面を頂きました。詳細に図面を眺めていると製作した上のエルロンに間違いがあることが判りました。間違いは、ヒンジを挟むリブの取り扱いです。画像35では何もしていませんのでヒンジ位置では前縁が切り欠かれて、その部分の強度・剛性が著しく低下しています。実機の構造図面ではこの部分のリブ間に三角形の合板がプランクされてその低下を防いでいることが判明しました。1/3模型ではリブが小さいので、それを削ってプランクすることは困難です。そこでこのリブの間をバルサブロックで埋めて改修しました(画像37)。これで、ヒンジ部の強度・剛性も大きく向上しました。

画像37 改修後のエルロン

製作その7 尾翼取付機構等

外翼リブの切り出しを始めましたが片翼で36枚、両翼合わせて72枚にもなります。その組立治具部品と合わせると150枚程度になり飽きてしまいますので、気分転換に後部胴体の最後部に取り付く水平、垂直尾翼の取付機構と、エレベータのリンク機構およびテールスキッドを製作しました。

設計

まず図面(図面14)を描きました。

図面14 尾翼取付機構等

水平尾翼は取付ポイントとして中央に4mm厚のシナベニアが埋め込まれています。後胴上面に外径Φ7、内径Φ3の支柱を3本建てて、シナベニアに接するようにしました。水平尾翼上面からM3ボルトを挿し込んでシナベニアと支柱を貫通して、支柱下部に設けた爪付きナットに締め込む構造です。

垂直尾翼は桁を2本のM3ボルトで胴体最後部に設けた板に取り付けます。垂直尾翼は主翼と直交する必要がありますので、未だ主翼が完成していない現時点では後で取付角度の微修正が可能なように、一本のボルトだけにしてあります。

テールスキッドは実機と同じ構造にして板ばね部に2mm厚カーボン板3枚、地面と接触する摺動部は2mm厚アルミ板で製作します。

エレベータ作動用のベルクランクは実機は鋼管を組み合わせて溶接して作られています。当初、カーボンパイプで似たような構造を試作してみましたが、パイプに穴を開けるとパイプが縦に割れてしまいうまくいかないことが判りましたので、2mm厚カーボン板とΦ5のカーボンパイプで作ることにしました。エレベータ側のホーンとはRCヘリコプタの操縦系統で用いられている、嵌め込み式ロッドエンドを持つリンクで繋ぎます。

テールスキッドとエレベータ用ベルクランク

図面に基づいて製作したスキッドとベルクランクが画像38です。

画像38 テールスキッドとエレベータ用ベルクランク

スキッドは固い花梨の木に取り付けました。この写真には写っていませんが3枚の板ばねは最前方のボルトで友締めされますが、互いに滑ってスプリング効果を出せるように、中間付近は左右へのブレを抑える金具で纏めただけです

尾翼取付用支柱、他

画像39が後胴に取り付けた尾翼取付用支柱等とそれに仮取り付けした尾翼です。

画像39 尾翼取付用支柱等

支柱が長いのは大半が水平尾翼の中に納まるからです。写真には垂直尾翼取付ボルト用の爪付きナットと、エレベータ用ベルクランクを取り付ける受板も見えます。ベルクランクは受板に挿し込んだΦ3のジュラコン製軸受を通してM3ボルトで留めます。

スキッドとベルクランクも取り付けてみました(画像40)。

画像40 スキッドとベルクランク

製作その8 外翼リブ組み立て

漸く外翼のリブ切り出しが終わってそれを組み立てました。

外翼の図面

図面15が左側外翼の図面です

図面15 外翼図面

外翼はテーパーして最内端は中央翼と同じ400㎜翼弦長ですが最外端は180㎜になります。従ってテーパー比は0.45になります。長さは1,667㎜もあります。先端の70㎜は翼端になるので、リブを組立てる長さは1,600㎜弱です。この間に18枚のリブが配置されます。基本的にリブは2.5㎜厚バルサから切出しました。但し付け根付近の後桁より後方がプランクされない部分のリブは3mm厚としました。

平面形がテーパーしているため、桁も前進角を持ちます。前桁フランジは5mm角で内部にΦ4の空洞があるカーボンパイプで、後桁のそれは4mm角で内部にΦ2.8の空洞を持ったカーボンパイプで作成します。桁ウエブは1.6㎜厚のシナベニアとします。中央翼との連結用カンザシは前桁ウエブ位置に配しました。

中央翼は上反角がありませんでしたが、外翼は3.45°の上反角を持ちます。しかしカンザシは上反角を持たないようにする必要があります。前桁ウエブに切込を入れてそこにカンザシ受けのアルミパイプを挟みますが、前進角と上反角を持つウエブに水平なカンザシ受けを挟ませる切込の設計は注意深く行う必要があります。外皮は中央翼と同じ2mm厚のバルサ板で後桁より前方部分をプランクします。

切り出しを終えたリブ

切り出しを終えた片翼分のリブが画像41です。

画像41 外翼用リブ(片翼分)

一番リブから7番リブまでは全翼型形状をしていますが、8番リブより外側はエルロンが付くので後桁より前方部分だけです。12番リブと13番リブは前後桁間の部分が一枚づつ余分に切出されています。これはそのリブ間に設置するエルロンサーボアクセス用に下面外板を切欠き、蓋を取り付けるためです。

桁ウエブと前後縁材

画像42が切出された桁ウエブと前縁材、後縁材です

画像42 外翼用桁ウエブと前縁材、後縁材(片翼分)

桁ウエブや前縁は約1,600㎜の長さがありますが、材料のシナベニアやバルサ板は900㎜の長さで売られています。そのため、これらは2分割して切出してから繋ぎ合わせる必要があります。各部品に多数の切込が設けてありますが、ここでリブと噛みあわせるためです。前桁ウエブの根本付近の切込に注目してください。これが前述したカンザシ受けを挟む部分です。カンザシは上反角を持たないので上反角を持つウエブに対して斜めに切り込まれています。カンザシ受けの直径は21㎜で一定ですが、ウエブが前進角を持っているため、切込幅は外側に行くほど広くなるカーブを描いています。

組立治具部品

画像43は組立治具の構成部品です。

画像43 外翼組立治具部品(片翼分)

主要部分はリブと一体で切り出しました。これらを前後の枠で押さえて階段状の箱に組立てます。前後の枠材はやはり2分割して切出したものを接続します。主要部分の前後には突起を、枠には小窓を設けてあり突起を小窓に挿し込んで組立る方式にして、精度確保に期待しています。

以上が左側外翼の構成部品一式の切出し状況です。実際には右翼分も切り出しましたので部品数は倍になります。切り出しに2週間強かかりました。

工業製品ではないシナベニアやバルサはその板厚が一枚ごとに微妙に異なります。多くの場合公称板厚より若干厚めに製材されているようです。そのため、公称寸法で切込を入れた部品は、そのままではキツクてうまく噛み合わない場合がありますので、一枚づつ摺合せが必要となります。

外翼組立治具の製作

まず組立治具の組立から開始しました。切出し完了した治具部品を原寸大に焼きだした図面の上で組立たものが画像44です。

画像44 左側外翼の組立治具

これは左側の外翼組立治具です。この治具のリブを受ける部分は1度のねじり下げを持っています。治具にリブをきっちり合わせて組み立てれば正確にねじり下げが付いた外翼が完成します。

この治具を組み立てる途中で少々困ったことに気が付きました。切出された治具部品の長さと原寸大に焼きだした図面の長さがかなり食い違うのです。一番内側のNo1リブ位置に部品を正確に置き順次外側に向かって部品を組立てて行きましたが、図面のリブ位置と実際に部品が組み合わされる位置が徐々にずれてきます。図面のリブ位置が実際の部品位置よりも徐々に外側になって行くのです。最外側のNo18リブ位置では図面と部品の切込み位置に3~4㎜の違いが出ています。

原因は図面の伸びです。これを組み立てた季節は8月の盛夏です。高温ですので図面の印刷はクーラーの効いた室内で行いました。治具の組み立てはクーラーの無い私の工作室で行わざるを得ません。簡易湿度計でクーラーのある部屋と無い部屋の湿度を測ってみると20%程度は差があります。ネットで湿度による紙の伸縮率データを調べてみると10%の湿度でおよそ0.2%強伸縮することが判りました。外翼治具の長さは1,600㎜ありますから0.2%で3.2㎜になります。図面を印刷した時、治具を組立てた時それぞれの正確な紙の湿度は不明ですが、以上の考察から3~4㎜のズレが生じておかしくありません。

現作業環境ではこのようなずれは致し方ないものと諦めてこのまま作業を進めました。

リブと桁ウエブ等の噛み合せ

いよいよ外翼の組立です。最初にリブと桁ウエブ、前縁、後縁の噛み合い部分を噛み合わせました。

画像45が右外翼の噛み合わせ状況です。右端の金具は翼端を取り付けるための金具で、2mm厚のアルミ板から作りました。この部分を翼端に挿し込む計画です。

画像45 リブと桁ウエブ等の噛み合わせ

この状態では未だ接着剤は塗布していません。各部を噛み合せただけです。部品は噛み合い位置に正確な切込を入れてありますので、各パーツの位置関係は正確ですが、角度関係は不正確です。特にこの外翼のようにリブと桁が直交していない組立は、このままでは直交方向に大きくずれています。

リブと桁の角度調整および接着

この噛み合い状態のリブと桁ウエブを組立治具の上に置いて治具に合わせてリブと桁ウエブの角度を修正します。ほぼ正確な角度が実現できたらカーボン角材の桁フランジを埋め込み、上から重たいスチール製L材を2~3本載せて治具に密着させます。各部が十分正確に治具の上に載っていることを確認できたら、噛み合せ各部に瞬間接着剤を垂らして接着します。(画像46)

画像46 角度調整が完了した外翼リブ組立

外翼は3.45°の上反角を持って中央翼に取りつきますので、No1リブは垂直ではなく93.45°傾いています。対応する位置の桁ウエブもその角度で切り出していますが、治具を当てて角度を確認してから接着しました。(画像47)

画像47 №1リブの角度調整

カンザシ受けの取付

次いで、カンザシ受けを取り付けます。No1~No3リブには対応する位置にΦ21の穴が開けられています。また前桁ウエブにはカンザシ受けを挟むスリットが切られていますので、かなり正確に取り付けられますが、カンザシが上反角を決定しますのでカンザシを挿し込んで治具を当て、角度を確認してからエポキシ樹脂で接着しました。(画像48)

画像48 カンザシの角度確認

外翼骨格の組立完了

以上の工程を経て外翼骨格の組立が完了しました。組立精度も良好で、カーボン製の桁は真直ぐに通り、リブの頭も揃っています。(画像49)

画像49 完成した外翼リブ組立

左翼にエルロンを仮取付してみました(画像50)。エルロンヒンジが3か所あるので、組み付けが難しいかと危惧しましたが、それほど苦労しないで取り付けられることを確認しました。エルロンの作動もスムーズです。

画像50 エルロンの取付チェック

先に製作してある中央翼骨格と並べて記念撮影しました(画像51)。未だ翼端が無いので完成品より140㎜程度短いですが、半端ない大きさです。

画像51 完成した主翼リブ組立

製作その9 主脚組立

図面

図面16が主脚組立の図面です。

図面16 主脚組立

主脚は一輪式で、その車軸は前上方へ伸びる左右2枚の支え板と後上方へ伸びる2本の支柱で支えられています。支え板の他端は機体左右方向に向いた軸に固定され、その軸の両端に短いステーが固定され、ステーの他端は左右方向に走る下部胴体構造の受け金具に取り付けられます。支え板と軸の間には斜め方向の部材が固定されて、支え板および車輪の左右方向のブレを抑えています。

後上方へ伸びる支柱の途中には大きなゴムダンパーが取り付けられて着陸の衝撃を緩和します。ゴムダンパーから上に伸びる支柱は胴体内部に設けられた台形のトラス構造に取り付けられます。このトラス構造にはエレベータとエルロンの操縦系統のリンクも取り付けられますが、本模型ではエルロンは主翼内に設置したサーボで駆動させますので、エレベータ用のリンクだけを取り付けます。

部品製作

主車輪はデュプロ製の直径5インチのホイールにしました。それにΦ5mmの車軸を通して、支え板と支柱を取り付けます。車軸は金属加工が得意なラジコン仲間に製作して貰いました。支え板や支柱は2mm厚のカーボン板と5,6,7mmΦのカーボンロッドから作ります。支柱と車軸の取付には5mmの、ゴムダンパーより上の支柱と台形トラスの取付には3mmのベアリング入りのロッドエンドを用います。

まずこれらの部品を製作・購入しました(画像52)。

画像52 主脚構成部品

組立

全ての部品が揃ったところで組立を開始しました。部品点数が少ないので容易に組立られます。画像53が組み上がった主脚組立です。

画像53 完成した主脚組立

ゴムダンパーはΦ40㎜、長さ40㎜のゴム円柱をホームセンターで購入して、小型旋盤を所有している金属加工の得意なラジコン仲間に穴開けと、表面の加工をお願いしました。ダンパーの外側には2本のM3ボルトで押さえています。上下の抑え板とボルトの間は着陸時に多少の滑りを生じなければなりませんので、ジュラコンのブッシュを噛ませてあります。

かなり実物に近い主脚組立が完成し満足です。尚、完成重量は353gです。この重量は前胴の目標重量の内数になります。

製作その10 エルロンカウンターウエイト

実機のエルロンカウンターウエイト

エルロンのフラッターを防止すべく実機にはカウンターウエイトが取り付けられていて、下から主翼を覗いたときに一つのアクセントになっています。画像54がその写真です。

画像54 実機のエルロンカウンターウエイト

カウンターウエイトは、エルロン作動用のリンケージが取り付くホーンから伸びる腕に鉄アレイ状の錘がボルトで取り付けられています。この錘はエルロンを上げた時に翼下面から飛び出しますが、通常は翼内に隠れています。そのため、翼の下面には錘を収納できるように穴があいています。右側の写真が収納時を翼真下から見上げたものです。エルロンコントロールロッドも翼下面から突き出しますので、同じように穴が開けられています。このカウンターウエイトとエルロンホーン及びロッドの模型を作るのが今回の目的です。

図面

まずいつも通り図面を書きました(図面17)。

図面17 エルロンカウンターウエイトとリンク

この図面を書いているうちに疑問が発生しました。エルロンは上下に20~30°可動できるように取り付けるものだと思い込んでいましたが、それでは下げ舵の時にカウンターウエイトが翼上面に飛び出してしまいます。上下舵角に差を設けるエルロンディファレンシャルと言う方式も良く用いられますが、その目的は下げ舵の抵抗が上げ舵の抵抗より大きいことで起こるアドバースヨーの発生を避ける為に、下げ舵の舵角を上げ舵のそれより少なくする方式です。因みにアドバースヨーとは意図した旋回方向の反対方向に機首を向けようとするヨーイングモーメントのことです。例えば右旋回をしようとして、右バンクするために右翼のエルロンを上げ、左翼のエルロンを下げます。上下舵角を同じにすると、上げ舵の右翼より下げ舵の左翼の抵抗が大きくなって機首を左に振るようなモーメントが発生してしまいます。これは意図した右旋回とは逆方向の向きに機首を向けることになり、極めて操縦がし難くなります。これを避ける目的でエルロンの上下舵角に差を設ける訳で、私の1/5三田式のエルロンもそのように設定してあります。

しかし実機および今回の1/3模型のエルロンはフリーズ式です。このエルロン形式は上記のアドバースヨーを解消するために考案された形式で、上げ舵時にエルロン先端が翼下面から飛び出して抵抗となるようにしたものです。私はフリーズ式エルロンを採用した本機は最早アドバースヨーの心配はないのでエルロン舵角は上下同量と思い込んでいました。ところが翼内にカウンターウエイトを収納する本機では、上下同量の舵角とすると精々10数度の操作量しか取れません。

不思議に思って静岡航空資料館にお願いして実機の舵角を調べて頂いたところ、上下舵角に差があるディファレンシャルであることが判明しました。下げ舵が12~13°、上げ舵が30°近くあり、相当のディファレンシャルです。フリーズ式エルロンだけではアドバースヨー対策として不足なのでディファレンシャルも併用したものか、カウンターウエイトが翼上面に突き出すことを回避した結果ディファレンシャルになったものか、その真相は不明ですが、これで疑問点が解明でき設計が進められました。

図面18が1/3模型のエルロン作動範囲図です。尚、エルロンコントロールロッドは当然エルロン前縁に垂直ですが、カウンターウエイトの支柱は気流方向を向きます。エルロン前縁は外翼がテーパーしているために前進角を持っています。そのため、カウンターウエイト支柱は外側に開くように曲げられています。またエルロンコントロールロッドも主翼後桁下部にぶつからないように湾曲しています。これらを踏まえて作図しました。

図面18 エルロン作動範囲

部品製作

画像55 エルロンカウンターウエイト等の部品

カウンターウエイトはアルミ丸棒から削り出して中を中空にしてあります。この中に鉛を溶かして埋め込めるようになっています。これを支える支柱はΦ6の真鍮棒で、エルロンコントロールロッドは同じくΦ5の真鍮棒で作られています。これらは金属加工の得意な友人に製作して貰いました。支柱とロッドが取り付くエルロンホーンは0.5㎜厚の真鍮を切出して作りました。ホーンの三角形状の後部にはΦ2の穴があいたΦ6の真鍮スペーサーが取り付けられ、エルロンには同じくM2のネジが切られたΦ4のロッドを埋め込みます。スペーサー下部から長いM2ボルトを挿し込んでこのロッドに取り付ける構造です。

エルロンコントロールロッドの両端にはRCヘリコプターのリンケージに用いられる長さ調整が可能なロッドエンドを取り付け、サーボホーン及びエルロンホーンの両方に付けたΦ5のボールに嵌め込みます

組立完了

これらの部品を組立てて半田付けし、完成した組立が画像56です。

画像56 完成したエルロンカウンターウエイト等

未だ、アルミ製のカウンターウエイトの中に鉛を溶かし込んでいません。ほぼ期待通りのものが出来上がり満足していましたが、後日実際にエルロンに装着したところ不具合が発覚して再作を余儀なくされました。

失敗その6 不具合は回転方向の拘束力が弱く少しの力で回ってしまうのです。

原因は2つです。

  1. 全体を主に真鍮で製作したために重く、慣性力が大きいこと
  2. M2ビス一本で取り付けているので回転方向の拘束力が弱いこと

エルロンカウンターウエイトの再作

上の2つの原因に対して次の対策を施した改良設計をしました。

  1. 全体を主にアルミで作って軽量化する
  2. 3mmピアノ線に挿しこむ取付方法に変更し、イモネジ2個で固定する

新旧の比較を図面19に示します。

図面19 新旧カウンターウエイト比較

新しい図面に基づいて再製作したカウンターウエイトが画像57です。

画像57 再作したエルロンカウンターウエイト等

真鍮部分がエルロンに埋め込まれる部分です。この中に3mmピアノ線が固定されていて下方に伸びています。ピアノ線はカウンターウエイトが取り付けられているホーン後端のアルミ角柱の中を通り抜けています。アルミ角柱には2個のイモネジが見えますがこれがピアノ線を固定します。両端にロッドエンドが付いたカーブしたロッドがエルロンサーボに繋がり、カウンターウエイトと一緒にエルロンを動かします。

カウンターウエイトと言いながら慣性力軽減のために鉛を溶かし込むことは止めました。実機より遥かに低速なのでフラッターの心配は無いと踏んで、慣性力軽減を優先した訳です。穴はパテで埋めました。因みに完成した新カウンターウエイトの重量は1個19gです。旧カウンターウエイトは約35gでしたので46%軽量化できました。イモネジの回転拘束も良好でカウンターウエイトが回ってしまう不具合が解消できました。

©2021 Norimichi Kawakami

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