ユーザーリサーチの8つの柱

翻訳元:The Eight Pillars of User Research | by Emma Boulton | researchops-community | Medium

ResearchOps(リサーチオプス)を始めるには、まずユーザーリサーチャーにとって重要なことは何かを理解する必要があります。ユーザーリサーチャーにとって大事なことは何か、以下を読むことで知っていただけます。

2018年、@TeamReOps#WhatIsResearchOpsプロジェクトで世界中を巡り、1つのフレームワークができあがりました。

#WhatIsResearchOpsフレームワーク

フレームワークは、300以上の回答が集まったアンケートデータと33のワークショップからの洞察に基づいて作成されました。ワークショップ参加者に文脈を提供したかったので、次の質問に対する自由記述の回答を使って分析を始めました。

「あなたの組織でリサーチを運用するうえでの課題は何ですか」

その結果できたのが、ワークショップでの洞察をタグ付けすることができる分類体系とタグでした。

ワークショップの後は、ResearchOps(リサーチオプス)とは何かについての私たちの理解をマッピングすること、そして私たちなりの定義をつくることに集中しました。

「ResearchOps(リサーチオプス)とはユーザーリサーチを運用するための仕組みと戦略である。それは役割、ツール、そしてプロセスを提供する。これらはリサーチャーが組織全体にリサーチのインパクトを届けスケールさせるのを支援するために必要なものである」

#WhatIsResearchOps — 定義

この定義とフレームワークをカンファレンスやミートアップで共有するなかで、たくさんの質問が寄せられました。その多くは「実際にはどのように実践されるのか」や「どうやって始めるのか」といったものでした。

一言でいうと、それは状況によります。

組織がどれくらい成熟しているか、どれくらいの大きさのチームか、どのようなリサーチャーがいるか、どのくらいのリサーチが行われているかといったことによって異なります。また、幹部の賛同、スコープ、リソースによっても異なります。

Slackや対面でこれらのトピックについて話し合うなかで、さらなる理解を助けるデータが私たちの手元にあることに気が付きました。今年初めにこのデータを見直し、さらなる分析を行いました。共有されるべきことはまだあったのです。

ユーザーリサーチの8つの柱を紹介します。

ユーザーリサーチの8つの柱

これらの8つの柱はそれぞれ、ユーザーリサーチの中の広範な領域を示します。これらの柱の下には、ユーザーリサーチャーや「リサーチを行う人々 — People who do research」(PWDR)が関心を持つ要素のまとまりがあります。これらの多くは、リサーチを運用するときの課題です。

環境

第一に環境、これはリサーチ運用における課題として最も多く話題になる柱でした。常に耳にする課題です。

スコープ

第二にスコープ、つまり仕事の大きさです。いつどのようにやるのか、プロセスやメソッドです。

リクルーティングと管理

第三にリクルーティングと管理。あらゆるリサーチャーが直面して、しばしばResearchOps(リサーチオプス)について考えるきっかけになるものです。

データとナレッジマネジメント

第四にデータとナレッジマネジメント、非常にホットなトピックです。チームが成長し変化するにつれて、貴重なインサイト失われることがしばしばあります。どうすれば、同じリサーチを繰り返すことを防げるのでしょうか。

第五にです。リサーチを行うのはユーザーリサーチャーだけではありません。デザイナーやプロダクトマネージャーもリサーチを行うことがあります。リサーチ活動をサポートして成長させるための実践コミュニティをつくることができるでしょうか。成長するキャリアパスはどのようなものでしょうか。

組織の文脈

第六に組織の文脈です。組織の成熟レベルはどうでしょうか。外的な制約は何でしょうか。

ガバナンス

第七にガバナンス。私たちの仕事に影響する、法的・倫理的に考慮すべき事柄は何でしょうか。

ツールとインフラ

最後に、ツールとインフラです。かっこよくて新しいツールはやっぱり魅力的ですよね。

多い!

多くのユーザーリサーチャーがプレッシャーを感じるのも無理はありません。こんなに沢山の追加業務があると気が散ってしまいます。

多い!

これらの柱を理解することで、どうすれば組織内でリサーチを運用できるか考えることができます。どこでResearchOps(リサーチオプス)のレイヤーを入れることができるかを考えることができます。ResearchOps(リサーチオプス)をレイヤーとして入れると、以下のようになってくるでしょう。

ResearchOps(リサーチオプス)レイヤーを追加する

一部の仕事は上のほうに移動して、「ResearchOps(リサーチオプス)」と呼べるようになります。これでタスクをトラックしてして、どれくらいの時間がかかるか測ることが可能になります。そうすることで、サポートを求めるための手段ができます。もしかしたら、チーム内でタスクが共有されるだけで終わるかもしれませんが、明確な権限とスキルを備えたResearchOps(リサーチオプス)のスペシャリストを呼ぶことも可能になるかもしれません。これがビジネスケースを作る出発点になります。ビジネスケースができたら、フレームワークを使ってResearchOps(リサーチオプス)レイヤーをより詳細に可視化することができます。UXRConfでケイト・タウジーが述べたように、「ResearchOps(リサーチオプス)の人材を採用することで、リサーチャーは得意なことに集中できる」のです。

ResearchOps(リサーチオプス)のケイパビリティを育てる

このゴールを念頭にResearchOps(リサーチオプス)フレームワークを詳しく見て、どの部分がそれぞれの柱に関連するか確認していきます。

まず環境です。これはリサーチ実践の成熟度に関わってきます。この領域での私たちの初期の議論はChris Avoreのデザインリサーチ成熟度モデルを参考にしています。

Chris Avoreのデザインリサーチ成熟度モデル

最近では、Leah BuleyのInVisionでの仕事にも影響を受けています。

Leah BuleyのInVisionでの仕事

そのレポートでLeahは「チームがレベル2の繋ぎ手(Connectors)からレベル3の建築家(Architect)になるときに、デザインをスケールさせることを可能にするインフラを実装する。ここがオペレーションの入ってくるところだ。具体的には、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーなど、システマチックなアプローチに関する役割を担う半専属か専属の人を雇って、大きなスケールでデザインを行うためのシステムを作ることに専念させるのだ」

組織でのリサーチ実践がどのくらい成熟しているかを理解すれば、何が達成できそうで何が次のステップになりそうか、現実的に考えることができます。

次にスコープです。

スコープ

ガイドラインとテンプレートはResearchOps(リサーチオプス)を始めるシンプルな方法です。あらゆるテンプレートやガイドラインを1つの場所にまとめます。これは沢山の非リサーチャーがリサーチを行うような場合は特に重要で、教育やコーチングも必要になってきます。

第三にリクルーティングと管理です。

リクルーティングと管理

リサーチのオペレーションを考えるうえでのペインによくなるポイントです。リクルーティングと管理をハンドルすることは、リサーチャーが多大な時間を費やす要素になります。リサーチ実践の成熟度と流れによって、組織ごとに異なる対処をする必要があります。

成熟した組織において、良いリクルーティングデスクは社内外から参加者を集める方法を提供し、デザインやユーザーリサーチのプロセスやニーズを理解し、サンプリング、スクリーニング、スケジュール調整から、謝礼の支払いまでをハンドリングし、回答者や参加者とのやり取りを一貫して行います。

第四に、データとナレッジマネジメントです。

データとナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントは、いかにリサーチから得たナレッジを実行可能で、事業文脈と関連させ、理解可能にするかに関わってきます。これは非常に複雑な問題で、ユーザーリサーチライブラリが作られたりしています。アセットマネジメントは、生データや加工データをいかに管理して保管するかです。

ナレッジマネジメントに関連するのが、どのようにリサーチを伝えれば、リサーチにインパクトを持たせられるかという問題です。

第五にです。

ResearchOps(リサーチオプス)では効率だけでなく、サポートやデータにも関わります。

人と関係性は鍵になります。「ケイパビリティを育てること」は#WhatIsResearchOpsワークショップを通して聞かれた強力なテーマでした。

リサーチャーは明確なキャリアパスを求めており、経験、スキル自信機会に関するサポートを求めています。

第六に、組織の文脈です。

予算

予算をトラックしてシステマチックに使うことで、オペレーションが助けになります。

リサーチの空間

リサーチの空間はフレームワークのなかの面白い部分です。リサーチを行うためのラボや物理的な空間だけでなく、協働的に仕事をするために集まる(物理的またはバーチャルの)空間のことも指しています。

第七にガバナンスです。

ガバナンス

安全で合法的、そしてとても重要なのが倫理的なリサーチを行うためのフレームワークをリサーチャーに提供することに関わってきます。

最後にツールとインフラです。

ソフトウェアやハードウェアの調達、ライセンス、管理は、IT部門だけに任せることのできない時間のかかる作業です。

この作業の一部を他の誰かに任せることが、リサーチャーが彼らの得意とすることに集中することを助けます

リサーチャーがリサーチに集中することを助ける

これらの8つの柱を理解することで、リサーチャーとResearchOps(リサーチオプス)スペシャリストの両方にとって何が重要なのか把握することができます。

ResearchOps(リサーチオプス)コミュニティは現在、2,300人以上の熱心なリサーチャーが参加する大きなコミュニティです。みなリサーチをスケールすることや、それに対応することと格闘しています。

私たちはリサーチオペレーションをいかに職業として発展させるかに関心をもつコミュニティでもあります。ResearchOps(リサーチオプス)の実践家は、組織においてリサーチをスケールさせ成長させられるようにすることで、リサーチの力を広めていくことに身を捧げています。

8つの柱はリサーチャーとResearchOps(リサーチオプス)が共通の目標に向かうときに、両者の間の足場として機能します。

ResearchOps(リサーチオプス)コミュニティは、これらの柱に関して私たちが持っているデータをグローバルなプロジェクトと一緒に吟味し続けます。私たちの考えは時間を経るにつれて間違いなく進化するでしょう。

もしResearchOps(リサーチオプス)コミュニティに参加されたい場合は、こちらからSlack参加フォームをご覧ください。他にも、ぜひ以下のリンクからResearchOps(リサーチオプス)の始め方に関する記事を読んだり聞いたりしてみてください。

ResearchOps(リサーチオプス)を始める:

  1. Explore the framework: https://bit.ly/2EmQun7
  2. Explore the Kumu visualisation: https://bit.ly/2ZD8rEK
  3. Kate Towsey, User Interviews podcast: https://bit.ly/2X2M6nl
  4. Aaron Fulmar from Microsoft: https://bit.ly/2Yahcpt
  5. Lucy Walsh from Spotify: https://bit.ly/2PuWETK
  6. Hana Nagel’s Research Ops Owl
    Part 1: https://bit.ly/2J4ZTzI
    Part 2: https://bit.ly/2LdFN93

この記事はエマ・ボールトン氏が2019年のUser Research Londonで行った講演に基づいています。オリジナルのスライドはケイト・タウジー氏によって作成され、デザインはニシタ・ギル氏によるものでした。その後、ブリジェット・メッツラー氏、エマ・ボールトン氏、ホリー・コール氏、トモミ・ササキ氏が加筆しました。

その他沢山のオーガナイザーやCheese Boardのメンバーからの貢献にも支えられています。

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