SFPC Fall 2018: 1週目

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13 min readSep 25, 2018

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by Neta Bomani and Tomoya Matsuura

1日目: イントロ/質問/歴史/ヒューマン・ファックス・マシーン

“どんな質問があるかな?”

ちょうど夏と秋の境目のような少しだけ雨の交じる曇りの日、SFPC 2018年秋クラスの生徒に投げかけられたのはそんな質問だった。

9月10日、オリエンテーションはそれぞれ自己紹介と、どうやってSFPCまでたどり着いたか(物理的な意味でも、これまでの人生的な意味でも)を話すことから始まった。

講師かつ今年のオーガナイザーのLauren Gardner, Taeyoon Choi ,Zach Liebermanの3人による温かい歓迎から第一週目がスタートする。

Zachはまず自分が今抱いている疑問をとにかく全部書きだしてみようという。授業でよく「なにか質問ある?」と聞かれるけれどそれはあまり意味がなくて、より大切なのは「どんな質問がある?」ということ、自分がなぜここに来ているのか、自分が何をやりたいのか、今の社会に抱いている疑問、もっとテクニカルで具体的な質問でもいい、と。

生徒は30分の間静かに自分と向き合い、その後4〜5のグループに別れてそれぞれの疑問を見せあい、分類して、最後に全体でそれをシェアした。

それぞれ出てきた質問をみんなで話し合う。

例えばこんな疑問が出てきた。

  • 未来のコーディングはどんなものになっているだろう?
  • どうしたら自分の貴重な時間を商売道具にされてしまうことをうまく避けられるのだろう?(SNSとか)
  • テクノロジーは持続可能なのだろうか―でなければ、地球は電子廃棄物の山になってしまうのだろうか?

“そもそもなんでここに来たかったのかを理解するのにとても良かったと思うし、私達の持ってる疑問の多くは共通していたり、交差する部分があることも学べた。”

生徒のひとりElizabeth Linはそんな感想を挙げた。

その後TaeyoonからSFPCの入っている建物、Westbeth Artists’ Communityの歴史についてのレクチャーを受ける。この建物は元々ベル研究所という真空管やトランジスタを生み出した歴史的な研究所を70年代にアーティストとその家族のための住居とスタジオ施設として改修したもので、かつてはダンサー・振付家のマース・カニングハムが長くスタジオを構えていた。記号的にもアートとテクノロジーの交差点というわけである。

この日の締めはTaeyoonによるHuman Fax Machineワークショップ。4~5のグループに分かれ、壁で隔てられた向こう側に音だけを使って絵を伝えるというもの。音を出すのに使っていい道具は木片、金属の定規、タッパー、その中にジャラっと入れられた小豆、PVCパイプの切れ端、ダンボール、etc…

それぞれのグループがどうやって絵を伝えたか実演する。

生徒は送信者・受信者を決めてどうやって絵を送るかのルールを話し合う。はじめは直角だけ使う絵柄から、それができたら45°を使うもう少し複雑なもの。

少しの練習時間のあと、それぞれのグループがどういうルール付けで伝えたかのデモンストレーションを行った。前後/左右に分けて進行方向を伝えるもの、三角形を書いて合図を鳴らした数だけ45°ずつ回転させていくもの…もちろんうまくいく物ばかりではない。受信したらそちらから合図を送り返すとうまくいきやすいねという気付きもあった。そうした体験からコンピューターの中で信号がどうやってエンコード・デコードされているか、―プロトコルについてを体で体感したのだった。

Day 2: 音としての画像/コンディショナル・デザイン/バイナリ

“考えるな、ルールに従え”

Zachはこの日コンディショナル・デザインについてのレクチャーとその実践から授業を始めた。

Conditional designとはデザインの手法の一つで“参加者同士のコラボレーションの刺激と予測不能な出力を生み出すようにデザインされた規則と条件付け”と定義される。

生徒は3~4のグループに分かれて大きな紙にドローイングを描いていく。はじめは直線をそれまで書かれたどれかの端くっつくが、どれとも交差はしてはいけない、というルールで、とにかく考えずにどんどん線を引く。全部の紙を集めてみると、あれだけ何も考えずに描いたけれど4枚の絵は共通した雰囲気を持つ。

もう一度別のルールで試してみて、今度は自分たちでルールを設定してどんな絵が描けるか試してみる。

最初のドローイングを終えて、みんなでディスカッション

午後は引き続きZachが画像編集ソフトPhotoshopと音声編集ソフトAudacityを使ったデモをした。Photoshopで描いた簡単な画像をRAWフォーマットで書き出し、AudacityでRAWフォーマットで読み込み、映像のフォーマットがどう音声と対応しているかを見せてくれた。コンピュータの中では映像も音も等しく1と0の配列としてすべてを処理していく。その実感を得てからバイナリ―2進数とは何なのかについてレクチャー。もちろん、ただ学ぶだけではなく「どうやったら2進数を簡単に理解できるかを教えるツール」を作るという課題とともに。この日の残りはその制作時間となり、翌日の朝それぞれデモをした。

それぞれの課題発表の様子。
Ilona, Josh, Tomoyaによる木のブロックを使ったツール。物理的にスライドさせるとビットシフト(2倍、1/2)が直感的にできる

Day 3: コミュニティ/Code of Conduct/ タコス

“どんなコミュニティにいたい?”

Laurenの午後の授業はSFPCという場で、それぞれがどう行動するべきか(設備的にも、理念的にも)、企業やコミュニティにおける行動規範、Code of Conductについて話した。

このCode of ConductはMerce Cunningham StudioでJohn Cageによって―そして元々はSister Corita Kentによって作られた“生徒と先生のための10の規則"にインスパイアされている。

1.自分の信頼したい場所を探し、そしてしばらく信頼してみること
2.生徒は教師や先輩からすべてを引き出すこと
3.教師は生徒から全てを引き出すこと
4.すべてのことは実験だと考えること
5.自己規範的であること。これは賢いと思った人についていくことである。自己規範的であるのは良い道を進むことである。自己規範的であるのはより良い道を進むことである。
6.リーダーについていくこと。失敗など一つもない。勝ちも負けもなく、作ることだけがある。
7.手を動かすことだけがルール。手を動かせばそれがどこかへ導いてくれる。常に手を動かした人だけが最後に結果にたどり着く。ファンのことはごまかせても、作り手には通用しない。
8.制作と分析を同時にやらないこと。それは別物。
9.できるだけいつもハッピーでいること。あなた自身を楽しむこと。考え込むよりは簡単。
10.私達は全てのルールを、自分たち自身のルールさえも壊している。どうやるか? ここに”x”個分の空きを残しておくことで。

生徒は今あるCode of Conductから更に自分たちが学んだり、共同していくためにどういう場であってほしいかを話し合ってドキュメントを更新した。

その後は、毎週水曜日に行われるFamily Dinner(今週はLunch)の準備をTaeyoonを中心に、野菜を切ったりテーブルをセットしたりと手分けして作業。今週は具材たっぷりのベジ・タコスをみんなで食べた。

食後にはケーキも。

それから、みんなで集合写真。

Day 4: Teaching/SFPCサロン

Taeyoonはこの日art of teachingというレクチャーをした。SFPCの着想の一つにもなっている、“勉強と芸術の実践は生徒のリベラルアーツ教育一般に不可欠なものである”という信念のもとに作られたBlack Mountain Collegeについて学んだ。

Black Mountain College, 1933–1957

そこからレクチャーはTeachingとEducationの違いや、教えることとしての学び、習慣(habit)を作ることとしての学び/生息地(habitat)を作ることとしての教え、教えられて得た知識を再構成し、自分で組み立て直すこととしての学び―へと発展した。

TaeyoonによるLearningがどういう形で進んでいくかの手書き解説イラスト

その後はゲストを招いてのSFPCサロンがあった。今回のゲストはNelly Ben Hayoun, Emilie Baltz, Exonemo, Blacki Li Rudi Migliozziの4組。

それぞれ自身の活動や研究について以下のようなテーマに接続する形で話してくれた。

  • Poetic Computationとはなにか?
  • 学校はどうあるべきか、どんなものになっていけるか?
  • どんなプロジェクト、ツール、プラットフォーム、アイデアについて我々は考えていくべきだろうか?
  • 離れているもの同士を新しい方法でつなげることは何を意味するだろうか?
  • どんな段差(Gap)があり、どうそれを埋めればいいのだろうか?
  • 特にアクティビズムの文脈の上で、アーティストは今どんな役割を担うべきだろうか?
Nellyのプレゼンテーション

Nellyは体験デザインの観点から“公的管理としてのカオス"という方法論についてInternational Space Orchestra, the University of the Underground, Disaster Playgroundなどの関わってきたプロジェクトについて話してくれた。

Exonemoのプレゼンテーション

メディアアーティストユニットExonemoは現在山口情報芸術センターで開催されている、共同キュレーションした展示“メディアアートの輪廻転生”での取り組みを中心に、メディアアートのメンテナンスやライフスパン、作品の死についての問題について話してくれた。

Blackiのプレゼンテーション

New York Times の気象学者かつデータビジュアライゼーションの専門家、BlackiはNY TImesでの仕事の一つ“あなたの故郷はあなたが生まれた時からどのくらい暑くなったか?,などの実例を交えながら、気象モデルというものが如何に計算コストの高いものであるか、けれども如何に必要なものであるかについて語ってくれた。

Emilieのプレゼンテーション

Emilieは幅広いプロジェクトのなかで多感覚な体験のデザインから人間の感覚の可能性を広げる取り組みを紹介してくれた。Junk FoodieLickistraプロジェクトのように食べ物を多感覚的な体験のデザインの要素として使うことなどを見せてくれた。

サロンのライブストリームはこちらから。

Day 5: Meet the Students

TaeyoonとLaurenからSFPCとMeet the Studentsのイントロダクション。

最初の週最終日は生徒による自己紹介プレゼンテーション、meet the studentsイベント。この日は昼から集まってそれぞれプレゼンの練習をしたり、スライドのアドバイスを受けたり、直前には突発的なエクササイズが始まったりして緊張を和らげたり。

それぞれ4分ほどで自分が何をしてきたか、これからしたいのか、何が好きなのかをプレゼンしたり、あるいは自己紹介以外は客の椅子の下に仕込んだカードに書かれた質問に時間の限り答え続けたり。

左上から: Lynne, Marcus, Neta, Soniaによるプレゼンテーションの様子。

2018秋クラスの生徒は: Edgardo Milla Gallardo, Eli Muro, Elizabeth Lin, Galen Macdonald, Ilona Brand, Joshua Shao, Kate Chanba, Lynne Yun, Marcus Brittain Fleming, Meghna Dholakia, Neta Bomani, Patrick Steppan, Sonia Boller, Susie Fu, Thor B. Jakobsen, Tim Burcham ,Tomoya Matsuuraの17人。

Meet the students のストリーミングの記録はこちらから。

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School for Poetic Computation—since Fall 2013.