技術書典5に参加してみて振り返り (miyaoka)

前回の記事で技術書典というイベントで書籍を出すという話を書きました。

本記事ではイベント終えての振り返りをしたいと思います。

出した本

soussuneというサークルtrkwくんと二人で初めて技術書を書いてみました。フロントエンド技術とマイクロサービスで構築するJAMstackと呼ばれるアーキテクチャの解説本です。

結果

最初に結果から言うと

  • サークル被チェック数は最終的に100ちょい
  • 印刷は80部
  • 冊子は自分たちの保存用を除いて15時に完売
  • その後DL版も少し売れたのでトータルだいたい80部
  • soussuneというポッドキャストをやってるので聴いてくださってる方がちらほら購入してくれた

という感じでした。

予測と現実

開催前に言われていた情報を総合すると、

  • 被チェック数は直前になって倍増する
  • チェック数の1.5倍くらい売れそう

という感じでした。我々は入稿時点で40くらいのチェック数だったので、100冊にするかどうかというところでしたが、無難に80冊にしておきました。売れ残りが20冊出たとして、各自10冊ずつ持って帰るのは肉体的にも精神的にもつらいという合意を形成したのです。

まあ人気サークルからしたら100も80も誤差みたいなものですが、初参加でなにもかも未知数だったのでちゃんと想定通りになったのは良かったです。前回まではチェック数より実売のほうが上回りやすかったようですが、今回は一般参加者以上にサークル参加者の割合が増えたため、そこまで伸びなかったのかもしれません。

いったい何を売っているサークルなのか

soussuneブース

途中売り子から抜けて会場を見回ったのですが、そんな中で自分のサークルを見てみると、JAMstackというのがいったい何なのかさっぱり分からないなと改めて思いました。

売り子側の視点からすると、お客さんは立ち止まってもなかなか見本誌まで見てくれる人は少ないし、見本誌を読んでも「そっ閉じ」なケースはけっこうありました。

それぞれのお客さんごとに何かが引っかかって、何を期待したのかというのがあると思うのですが、そこがちゃんとマッチするようにするべきだなあと感じます。

対人商売の難しさ

エンジニアはふだん要件定義だのKPIだのそういうところでビジネス的な価値を論じているのでは無いかと思うのですが、こうしたイベントでの対面販売においては圧倒的に営業力が必要なのだなと感じました。

つまり、

  • 流れ行く人にこちらから声をかける
  • こちらを見たら、見本誌どうぞと差し出す(誰か読んでいるときに後ろで待ってる人などは特に)
  • 見本誌を読み始めたら、お節介でも内容を解説して対話する
  • 残り○冊なんでぜひ買ってくださいと言う(終盤のtrkwくんはこの営業が連続で決まりまくっててすごかった)

というのが大事だなと思いました。

僕が客として周ったときには何を買えばいいのかぼんやりしていたので、こうして売り手側から積極的に声をかけてくれてその魅力を解説してもらえるのであれば思わず買ってしまうだろうと感じたわけです。

もちろんそれが余計なお世話に感じるほうが多いとは思います。ただ、別途立ち読みスペースもあったので、ブースでは著者といろいろ対話しながら読むというのが内容を理解する良い機会になるのではと思いました。

でもそうは分かっていても僕は特に声掛けはしませんでした。一人で売り子していたときには2冊しか売れなかったのでつらかったです。

ニッチなテーマ

当サークルで執筆したのはJAMstackというフロントエンドのアーキテクチャの話です。こう説明するだけでは、それが誰向けなのか、どう役に立つのかがさっぱり見えてこないと思います。これには当初から悩みました。

売れるテーマであれば、Web系においてはやはりReact、Vue、Nuxt、Firebase、GraphQL、AWS、サーバーレスなどのサービスやライブラリはいまどきの大多数にとっての関心事であり、それについての解説本というのが鉄板ではないかと思います。(JAMstack本でも実際はReact、Vue、GraphQL、Netlifyなどモダンフロントエンドを前提に使っているのですが、それ自体の解説本ではありません)

また、しがないラジオさんの完全SIer脱出マニュアルだと、転職という誰もが直面する人生の関心事がテーマです。特にターゲットは「いまよりもっと楽しく働きたいエンジニア」なので、もはや全員が当てはまると言っても過言ではない(楽しく働きたくない人は居ない)というのがすごいなと思いました。

それに比べるとJAMstackというのは既存のWebアーキテクチャの課題を大きく解決する概念ではあるのですが

  • そもそもWebパフォーマンスが課題として意識されにくい(ユーザーの離脱率やUXを比較して初めてビジネス的に意識される。エンジニアリング・ビジネス両方の視点がプロダクトオーナーに必要)
  • 構築するだけならモノリシックなほうが楽(モノリシックでつらくなる運用をJAMが解決してくれる。だけど運用よりは構築のほうが多数のエンジニアにとっての当面の関心事)
  • アーキテクチャであり、具体的なライブラリやサービスの使い方ではない(本を買う人は使い方を一から知りたいはず)
  • JAMstackというタームが流行ってない(信頼できない)

などなど、ターゲットとなる対象はだいぶ限られる感じはしました。

(本当にニッチなのか?)

しかしニッチかというと実はそんなにニッチでもなく、今月末にはサンフランシスコでJAMstackのカンファレンスが開かれるほど勢いはあります。

主催はNetlify、スポンサーはGitHub、Contentful、Gatsby とJAMstack企業が揃い踏みですし、登壇者もGoogleやMSなどの人たちです。いやまあ、JAMstack企業が揃い踏みってのが身内感強いかもしれませんが…。

しかし「これから来る技術なんですか?」と聞かれると、どうなんだろうなと思うところではあります。技術的な不安というよりは、既存の仕事的にこれを採用するに至る合意形成がなされるイメージがしづらいのかもしれません。

(と、書いていたらちょうどこんな記事が↓)

Netlifyが3000万ドルの増資を受けたとのニュース。

“Our goal is to remove the requirement for those servers completely. We’re not trying to make managing infrastructure easy. We want to make it totally unnecessary.”

JAMstackはNetlifyの作るWebの未来であり、

「インフラ運用を簡単にするのではなく、駆逐するのが目的」

ってくらいだからもはや来てると言っていいんじゃないでしょうか。

訴求する顧客を定める

JAMstackのターゲットをより具体的にするのであれば、おそらくWordPressユーザーが数的には一番の対象になるのではないかと思います。

(↑WordPressからJAMstack構成にしてサイトが10倍速になった具体例)

そう考えるとJAMstackなどという言葉を使わず、

  • WordPressサイトを10倍速くする本
  • WordPress運用を辞めて開発者体験を向上させる本

などと言っていたほうがテーマ的に響くお客さんは多かったかもしれません。

しかし、

  • WordPress自体が10倍速くなるわけではなく、WordPressとは違う構築をすることで10倍速くなるので、普通にWordPress案件を改良したい人にはソリューションにならない
  • 既存のWordPress利用者はおそらくわざわざマイクロサービス化しない
  • WordPressに速度をそれほど求めない
  • 自分はWordPress案件やってないのでそのへんの気持ちを汲み取れない
  • JAMstackだと非開発者はプレビューしづらい。また、ビルドに時間がかかる

などの理由で人を問わずオススメはできないなと思いました。

なにがしたかったか

というわけでまとめに入りますが、ニッチなテーマという難しさはありつつも自分なりの課題を共有できる本を書けたのではないかと思います。

振り返ってみると JAMstackの公式サイト を見てもなんだかはっきりとは分からないぞと感じたので、じゃあ人に説明できるくらいちゃんと調べようというのがそもそもの動機だったと思います。

あとがきにも書いたのですが、

ですがこうして本としてまとめてみると、さまざまな背景、要因というものが自分とし
ても明確になったように思えます。
わりと過渡期的な技術かもしれませんが、この本を読んでいただくことで「そのサイト、JAMstack でやっていきましょう」と話が通じるようになると幸せかもしれません。

というように、自分がいいぞと思う新しい技術の理解者が増えてくれると、自分の仕事もしやすくなるというのが一番の目的であり報酬ではないかと思います(まとめた)。

次回

そんなわけで今回は一通り終わりました。

終わりがあれば始まりがあるということで次回なのですが、soussuneの二人で共有している技術話だとあまりネタが無いのでまたなにか書きたいことができるまで待つか、もしかしたら各自で書くかもしれません。

自分はSTUDIOというVue.js製のWeb デザインプラットフォームの開発に携わっているのですが、現在コア機能から作り直しをしていて次回のメジャーアップデートではいろいろと進化する予定です。

そんな中で

  • GUIエディターのレンダリングコストの削減
  • D&Dインターフェースの改良
  • ホスティングの最適化

などなど、普通のサイトでは要求されないレベルの機能を追求しています。GUIアプリケーションとして日々めっちゃ良くなってるなーと感じるところがあるので、そういう知見をまとめていくかもしれません。

二次元と融合