noteを再開したとき、自分はTwitterで次のようにつぶやきました。
すると、そんな森のツイートを、Shoko Ogushiさんが次のように引用RTしたんですね。
Medium?? お恥ずかしいながら、そんなSNSがあることを知りませんでした。そこで気になって、Medium。始めてみたんですが、これがもう本当に目からウロコというか、設計発想が素晴らしいSNSなんです。これと比べるとnoteがいかにダメかがよくわかる。というわけで、今回はその話をしようと思います。SNSの設計発想としてnote全然ダメじゃん!っていう話。
Mediumとは何なのか
と、その前にMediumとは何なのか、という話なんですけど、一言で言えば「主に中長文主体、テキスト中心のSNS」です。
・長文、写真、動画を投稿=「ストーリー」(という)できるSNS
・文字数制限なし(Twitterとの違い)
・レコメンド=Twitterのリツイート、ブックマーク=Twitterの「スキ」に近い機能がある
・noteでいう「マガジン」のような機能=「パブリケーション」がある
・下書き、ドラフトを公開する前に指定したユーザーと共同ライティング/編集できる
・文章の一部を「ハイライト」できる(本に下線を引く感覚)
・文章の一部に「レスポンス」できる(特定の箇所にコメントできる)
と機能だけで説明していくと「文字制限のないTwitter」のような感じです。ゴシックにした点が特徴的ではありますが、機能から説明すると「長文も投稿できるTwitterね」「友達以外にも広く世界に公開しているFacebookね」って理解になるでしょう。事実、そのように使っているユーザーも多そうです。
世界でのユーザー数はかなり多い様子で、英語圏の投稿を見ていたら、相当数のブックマークやレコメンドが人気投稿にはついています。日本語圏ではまだローカライゼーションが完璧に済んでないこともあり、ユーザー数は少ないと感じます。
Mediumのすごさ
だけれども、このMediumの記事が非常に優良で高品質なものが多いんですよ。ちょっと試しにいじってみようとしましたけれど、見ていて思わず、どんどんブックマークが増えていきました。英語も堪能なら、いい記事集め放題なんじゃないでしょうか。たとえばこんな記事。
思わず読みふけってしまいました。しかも、読んだストーリー(=投稿)に、ハイライトできる。レスポンスできる。つまり、ほうほう!と言いながら、本に線を引っ張っていったり、メモを書いたりする感覚に非常に近い。また、これがPCでもスマホでもやりやすいんです。
自分で文章も試しに書いてみました。書きやすい! インターフェースがとにかく洗練されているんですね。スマホからすべての操作を完結させることができます。
このMediumには機能やユーザビリティで見ても非常に優れた点がたくさんありますが、何よりも素晴らしいのは、その設計思想、フィロソフィーです。
詳しくは次回書きますが「パブリッシング(出版)革命」という思想の元に、①Webとは1つの巨大な本である。②「書く」とは「読む」であり、「読む」とは「書く」である。③「書く」は孤独な作業ではない、という3つのコンセプトがきっちり実装されています。
これを「数あるSNSのうちの一つ」と考えると、本筋を外すと思います。SNSとしてその機能を言語化して考えていくと「毛の生えたTwitter」「今の所煩わしさのないFacebook」くらいになっちゃうんですね。そう捉えている人がたくさんいると思う、というか、基本そのようなものとして、心地よいSNSの一つとして受け止められている感じがします。だけれど、本当は違うんですよ!
で、このMediumの素晴らしさ、インパクトについては次の機会に、稿をあらためて詳述したいと思いますが、これと比べたときのnoteの貧弱さ、時代錯誤さ、って話なんですよね、まずは。
noteの機能の貧弱さ
noteの機能やユーザー特性、設計思想のマズさは、Mediumと比べるとすごくクリアーに見えてきてしまいます。丸裸。
①シェア機能がない。だから情報をnote内で拡散させるのがすごく大変。かつ、わかりにくい
Mediumもそうらしいですが、他のSNSなどからのリンク流入が実は結構少ない。つまり「Medium内で情報が相互に共有されてこそ、活性化するSNS」という性格があります。だからこそ、レコメンドやブックマーク、ハイライトといった機能が充実しているのですが、noteにはこれらに相当する機能がありません。いいノートがあっても共有できないんですよ。
とはいえ、他のSNSに「こんなん書きました〜」とnoteの宣伝をしても、フォロワー10万人レベルの深爪さんとかならまだしも、多くの人は見てもらいすらしないでしょう(深爪さんでもnoteでのフォロワー数は4900人です、たったの)。本来であれば、note内で相互に言及して盛り上がっていかなければならないところ、相互言及がとにかくしにくい構造になっています。
言ってみれば、ボケばかりの漫才のようなもの。各ノートへのツッコミが【機能的に】入れにくくなっています。これはnote用語で言えば「全員がクリエイター」なのだが批評家不在、という状況だと思います(もちろん、批評家やレビューはありますが、機能的にそうしたことをしにくくしている、という意味です)
②有料ノートは購入しないとコメントできない
③相互にノートを引用しにくい
これも①と同様の効果を果たしています。有料ノートは買わないとコメントできない。確かに全部読んでないのにコメントできてしまう、というのもおかしな話ではあるのですが、当然のことながら、購入者の数は、ユーザーの数からすると圧倒的に少ないですし、購入者=コメントするユーザーになるとも限りません。結果、コメントの数が極端に減ることになります。
ユーザーからすれば、ノートを書く報酬、インセンティブには2つあります。リアクションとお金です。ここでユーザーは、有料にするとリアクションが減る、無料にするとお金が減るというトレードオフを突きつけられてしまうのです。
ノートにはシェア機能がありませんから、リアクションとしては、ほとんど何の機能も果たさない、昔のブログの「拍手」みたいな機能しかない「スキ」か、コメントしかないわけです。有料にすると、このどちらも減ります(でしたよね?)。SNSでリアクションが減る、というのは致命的でしょう。
③の引用がしにくい、というのはmediumと比較すると、その「残念さ」が際立ちます。mediumでは、誰の投稿に対しても、選択してタップするだけで、当該箇所にフォーカスした形でコメントをつけることができます。というか、コメントというより、他人の投稿を元にして、そこから新たな投稿を書くという感覚に近い。これに比べると、いちいち本文をコピペして、さらにURLをコピペしなければ引用すらできないnoteは不便です。
テキストノートであれば、一応、他人のnoteを引用する方法はありますが、これって引用された人に通知いくのかなあ。通知、行ってくれ。通知も行ってほしいし、「XXさんが引用しました」と、相手のノート内に「スキ」と同じように表示されてほしいですね。mediumでは(ハイライトとして)表示されます。
④誰がどのノートをどれだけ購入したかが本人にしか分からない
たとえばTwitterなら、スキよりもリツイートが、リアクションとしては「強い」と考えられます。一応何のツイートにスキしたのか、当人のページまで見にいけばわかりますが、リツイートなら、フォローしてるだけで、自分のタイムラインに自動的に出てくるわけですから。「強い」リアクションのほうが拡散性が高いのが、SNSの一般的な設計になっています。
mediumでも同じです。ブックマークよりもレコメンドのほうがリアクションとして強いですし、そのほかにもハイライト、レスポンスという特徴的なリアクションがそろっており、一つの投稿に対して、原理的には無数のリアクションをつけることができます。これがmedium内での拡散性、情報流通速度の高さにつながっています。
ところが、noteでは「リアクションの強さ=拡散性」という理屈が成り立ちません。スキをすれば、ノートを書いた本人以外にも、そのノートを見た全員にスキしたことが見えますし、スキからユーザーのページまでリンクが貼られていて、クリックしたら飛べる仕組みになっています。つまり、スキするほど、他のユーザーからフォローしてもらいやすい仕組みになっています。
他方、どう考えても、スキよりもそのノートを「購入」するほうが、リアクションとしては「強い」でしょう。身銭を切って特定のノートを「買う」のですから、無料でボタン一つで、実際は読まなくても押せる「スキ」に比べるとリアクションとして相当「強い」と言うことができます。
ところが、この、非常に「強い」、言いようによっては、全SNSの中で最も「強い」だろう「購入」というリアクションが、noteでは一番拡散性が低いという設定になっています。買ったはいいけど、買ったことが通知もされない、本人以外誰にも見えない。
人は他人の行動を模倣します。周囲がお金を使っていれば、自分も使おうとなるし、使ってもいいかとなる。みんなが家を買い始めたら、みんなが子どもを塾に入れはじめたら「ウチもウチも」と焦るものです。ところが、周囲が何に、どのくらいお金を使っているのか、noteではまったくわからない。これが致命的だと思います。
⑤アプリから有料ノートを購入できない
⑥アプリから有料ノートを作成・編集できない
今更ですが、これは本当に致命的です。medium見るとよくわかります。mediumではほとんどの機能がアプリでも使えます。ゆえにいつでも好きなときに投稿を書ける、読んでレスポンスできる。この快適さを知ったとき、noteアプリでのノート更新はないなと思いました。いや、mediumはほんとストレスフリーです。それに比べてnoteはどうだ。
人を待っている間、ちょっとした隙間時間に、いざおもしろいノートを読もうと思っても、有料のものはその場で読めません。おもしろそうなのを見つけたけど読めないって、それ一番のストレスです。結果、Twitterやmediumのような他のSNS、FeedlyやPocketで保存していたブログを閲覧するでしょう。Wi-Fiさえあれば、Kindleでその場で本購入して読むことさえできます。
現代において、結局取り合っているのは、お金ではなく時間です。お金は持ってる人は持ってます。ユーザーがつけるnoteの価格もほどほどに良心的ですから、あまり大した考えもなく、300円ならポチ、みたいな感覚はあってもおかしくありません。
ところが時間は24時間有限です。そしてそんなところにSNSやブログが無数に乱立しているのが現代です。スマホはいまや単なるコンピューターではなく、読書デバイスでもあります。「積読」した本すら読めてしまう。それなのにnoteだけ「有料のものは家に帰って、またあとでパソコンで見てね」で勝てるわけがないでしょう。
さらに悪いことに、noteの有料コンテンツはその場で読めないどころか、
⑦「あとで読む」「カート」機能がない
ために、面白そうなノートを見つけても、それを一時保存しておく術がありません。無料ノートなら「スキ」をつけておけば、あとで自分の「スキ」リストを覗いて、発見したノートにもう一度たどり着くことができますが、有料ノートだと、その「スキ」すらつけられません。そこで、その有料ノートを書いてるユーザーの他の無料ノートや、トークにスキしておいて、あとでそのユーザーをチェックする、とか、画面をキャプっておいて、あとで検索するとか、URLだけコピーしておいて、後ではりつけるとか、結構めんどくさい工夫、努力が求められます。
今、自分はどうしているかというと、おもしろそうなノートを見つけたら、Pocketに一度突っ込んで、それを後で見たり、Feedlyに登録することにしています。が、これをやるとPocketやFeedlyを閲覧する時間が増える。ますますnoteアプリを開く時間が短くなるため、結果的にnote離れしていってしまいます。また、無料の記事が最近はクオリティ高くて。とにかくおもしろい。
あと、過去に購入したノートもアプリからは一覧として読めないみたいなんですが、これってぼくの気のせいでしょうか? アプリの「ライブラリ」からは「スキしたノート」しか見られない。間違ってますかね??
このほか、note内についてるリンクをタップしても、アプリだと開けもしないのですが、これってバグ?? 自分のは開けませんでした。
⑧ノートにタグ付けしたり、ノートをカテゴリー分けして整理できない
そして、購入したマガジンやノートも含め、リスト化したり、自分でタグ付けして整理したりできませんから、結局、読んだらそれっきり、です。何度も見返したりしにくいですし、結果、一回読めば大体OKといった内容に適しています。情報がフロー的というか。TwitterやFacebookのように「流れていく」イメージになると思います。
そんなわけで、いろいろと弱点が多く見えてきたnoteです。ただ、総じて見えるのはその「拡散性の低さ」です。でも、逆に言えば、これは拡散こそ命!なSNSにあって、結構貴重な性格なのではないでしょうか。そんなところを見据えながら、欠点がそのままnoteの強みになる視点もありうるでしょう。今後機会があれば「noteの拡散性の低さのおもしろさ」について考えてみたいと思います。
※このストーリーは、noteにて投稿したテキストノートを一部修正したものです。