ブロックチェーン事業の事例とマネタイズ手法のリアル

先日、ニュースアプリ等を手掛けるGunosyの子会社として設立された株式会社LayerX。代表取締役の福島さんはビジネスとしてのブロックチェーンについて以下のように宣言しています。

LayerXはテクノロジーの会社です。そしてインターネットの黎明期と同様、テクノロジーの世界では、R&Dへの圧倒的コミットと商業的成功を両立させた会社が世界を変えていきました。GoogleやAmazonは年間1兆円を超える研究開発費を投じており、それを支えるのは彼らのテクノロジーから生み出された莫大なキャッシュフローです。そしてそのキャッシュフローが次のテクノロジーの進化を促す、というサイクルが回っています。ブロックチェーンの世界でもこれと同様のことが起こると我々は考えています。ですので我々は「テクノロジーの会社である」と宣言することは同時に、未だマネタイズ領域が狭いと考えられているブロックチェーンの世界での早期的な商業的成功にもコミットするという宣言なのです。そしてそこで生み出したお金とそこに集まる情報から、日本発のテクノロジーの進化、プロトコルを出していくことでこの世界にコントリビュートしていきたいと思っています。

参考:LayerXを設立しました

今のブロックチェーン界隈の熱狂具合はインターネット黎明期の1990年代中盤に似ていると言われます。ここ数年で優秀な技術者たちがブロックチェーンの世界に流入しています。いわば黎明期とも言える現段階ではビジネス面もそうですがプロトコルレイヤーでの議論が重要です。

しかし、会社の事業としてやっていく上でキャッシュフローの観点は不可欠です。ブロックチェーンの分野ではプロダクトでマネタイズできている企業はまだまだ少なく、資金調達を行ったり既存事業からの売上でオペレーションを回しているといったところが多いです。

そこで本記事では、2018年8月現在におけるブロックチェーン事業の事例とそこでのマネタイズの手法を考察していきます。

▼ビジネスモデル

ブロックチェーン事業の中にもどのようなものがあるのか整理します。

・取引所
・マイニング
・ウォレット
・コンサルティング
・メディア
・サロン運営
・DApps開発

取引所はブロックチェーン事業の中でも一番認知度が高くかつ収益をあげているビジネスモデルです。取引所のマネタイズの手法としては取引時や入出金時の手数料徴収が主流です。

今や世界最大の取引所となったBinanceは2017年7月創業の若い企業です。代表のCZ氏は2018年の純利益が550億円から1100億円になると見込んでいます。また国内取引所のCoincheckも2018年3月期の営業利益が537億円だったことを開示しています。

人類史においてもこれだけのスピードで成長を遂げているビジネスモデルは稀有です。資金決済法に基づいた金融庁の取り締まりが厳しくなっているので、これから日本での新規参入のハードルはかなり高いです。

マイニング事業は中国で積極的に行われている印象です。安価な電気代と広大な土地、そして大量のASICをつぎ込んでいると聞きます。日本でもGMOやDMMが参入している分野です。安定した収益を見込むには中国のように莫大なリソースが必要となります。

ウォレット事業は取引所等で入手したコインを保管するためのハードおよびソフトウェアのいずれかを提供するモデルです。ソフトウェアのモバイルウォレットは規模の小さなスタートアップでも開発が盛んになってきています。
モバイルウォレットの分野で圧倒的なシェアを誇っているTrustはBinanceに、ToshiはCoinbaseに買収される動きが見られています。ウォレットカンパニーが大手取引所に買収されてEXITするという流れはウォレットを開発するスタートアップにとって一つの指標となったのではないでしょうか。

コンサルティングで有名なのはConsensysBlockstream、国内ではAnypayやLayerXも該当します。開発チームなどに対しコード監査やICO時のサポートを提供するモデルです。Webアプリとは違いブロックチェーンの場合は、コードを一度デプロイしてしまえばそれを変更するのは困難なので初期のトークン設計やセキュリティ監査は重要になります。

他にもメディアを通して情報の発信を行ったり、月額制サロンで情報発信やコミュニティを形成し希少性の高い価値提供を行うというやり方もあります。これらは個人でもできる領域なので参入ハードルは低く低コストで始めることができます。

DAppsはDecentralized Applicationの略でイーサリアムなどのブロックチェーンプラットフォームを利用したアプリケーションです。

ゲーム、分散型取引所(DEX)、マーケットプレイスなどがリリースされています。DappRaderというサイトでそれらを確認できます。

DAppsで一番有名なのはCryptoKittiesやEtheremonでしょう。猫を育てたりポケモンを育てて売買するゲームです。

注目が集まるDAppsですが、DAUは一番多くてもIDEXやFolkDelta等分散型取引所の1000人ほど。知名度の高いCryptoKittiesやEtheremonも300人~500人といったところで、今リリースされているほとんどのdappsはDAU二桁台です。これからスケールしていこうというフェーズであります。

DAppsの収益手段としてまずICO(Initial Coin Offering)が考えられます。これはトークンの新規発行による資金調達方法ですが、持続可能な収益方法ではありません。

他にDAppsで考え得るマネタイズの方法として次のようなものが挙げられます。

・取引手数料
・サブスクリプション/プレミアム課金
・広告
・DApps周辺プロジェクトでのマネタイズ
・寄付
etc

取引手数料の徴収

代表的なものとしてCryptoKittiesが挙げられます。ご存知、仮想ネコの取引マーケットプレイスです。

CryptoKittiesのマネタイズモデルは以下の二つに分けられます。

・ユーザー間取引毎の3.75%の手数料
・運営元によるGen0(15分に1度生成される第0世代のネコ)の販売

なお、CryptoKittiesのホワイトペーパーには以下の記述があります。

A sustainable revenue-based model (as opposed to an ICO)

ICOに頼らない持続可能な収益モデルを構築することを目指すことを事前に宣言しているのです。

サブスクリプション/プレミアム特典

Netflixのように毎月定額を支払うことでサービスを享受できるサブスクリプション型サービス。DAppsで実現しようという動きがあります。

GitHubではサブスクリプションに特化したERC-948が提案されています。

ERC-948はサブスクリプション課金モデルをEthereumのチェーンを用いて実装することで月額課金をETH払いすることが可能になるというものです。

2018年3月ごろから提唱され始めた概念なので実現するのはまだまだ先と言えるでしょう。

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DAppのフロントエンドに表されるピクセル数をコントラクトで請求することができるというモデル。The Thousand Ether Homepageはその代表例です。

DApps周辺プロジェクトでのマネタイズ

DAppsそのもので収益を図るのではなく、周辺のエコシステムでマネタイズするモデルです。

OmiseGoはその代表例です。OmiseGoはオフチェーンの決済プラットフォーム「Omise」とオンチェーンの決済プラットフォーム、スマートコントラクトによる分散型取引所を統合したプラットフォームです。

OmiseGoでは異なるネットワーク間で決済を行うとき、Ethereumのブロックチェーンが利用されています。

ホワイトペーパーにも記述がありますが、マネタイズ手法は以下の通りです。

  • アプリケーションのバリデーションフィー
  • OMGトークンの保持
  • 関連企業(Omise)の成長
  • OmiseGO チェーンでサービスを実装する企業向けのコンサルティングサービス

他にもFactomという文書の存在証明を目的としたプロトコルを提供する企業もあります。この企業はtoB向けにFactomプロトコルを利用したソリューション提供やFactom Harmonyという住宅ローンデータを記録する製品を販売しておりそこで収益を獲得しています。

寄付

上記方法に加えて自身のETHアドレスをサイト内に貼り付けて置くのも一つの手ですね。

0xF3fa5f4D91beBa52bcae0c95Af9d55324E650974

貼っておきます(画像はWeiWallet)

▼まとめ

・取引所は交換や入出金にかかる手数料徴収、マイニング事業はマイニングによる利益。レッドオーシャン感あり。

・モバイルウォレットはスタートアップでも参入しやすい。マネタイズはしにくいがバイアウトの例が見られる。

・コード監査やICOサポートのコンサル業はニーズがある。

・DAppsはコントラクト手数料モデルが主流、周辺プロジェクトでマネタイズすることもできる。

目先の利益はまだまだかもしれませんが、これからも開発者、利用者ともに流れ込むことが期待されるのでそこまで辛抱ですね。先行者利益の世界だと思って楽しんで行きましょう。

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