エンジニアリングデザインプロジェクトの目指すもの

2015年度から東京工業大学にて「エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)」というProject-Based-Learning (PBL)型の授業を開講しています.この記事では,「エンジニアリングデザインプロジェクト」の目指すものについて触れたいと思います.

エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)とは?

この授業は,協力企業と策定したテーマに基づいて,チームで課題を発見し,解決手法をエンジニアリングの手法を用いてプロトタイプで提案する授業です.東京工業大学のエンジニアリングデザインコースの科目であり,東京工業大学EDGEプログラム(CBECプログラム)の指定科目でもあります.

東京工業大学ではクォーター制のカリキュラムを採用しており,EDPもEDP-A(第一クォーター), EDP-B(第二クォーター), EDP-C(第三クォーター)の3つが開講されています.実は,カリキュラムの中で,EDP-Aは「本番に備えた練習」的な位置づけなので,以下,特に言及しない限り,EDP-B,Cを合せてEDPと称します.

エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP-B,C)概要

東京藝術大学や武蔵野美術大学,大田区産業振興協会などがパートナー団体として参画し,さらに,(主にソフトウエア技術者の)社会人受講生も加わり,非常に多様なメンバー構成になっています.1チーム6名程度の人数で,2016年度は,8つの協力企業に参画いただき,8チームが課題にチャレンジしています.

協力企業と教員チームが策定した(最初は,かなりざくっとしている…)テーマに基づき,デザイン思考の「共感(Empathize)」「問題定義(Define)」「発想(Ideate)」「プロトタイプ(Prototype)」「実験(Test)」のサイクルを回しながら,問題の核心にせまります.(プロトタイプの種類は,「プロトタイプで遊ぼう by 角特任講師」に詳細な説明があります.)

最終的には,「ユーザー体験」に対応するユーザーシナリオと「プロダクト」に対応するプロトタイプの実現を目指して,半年間にわたりチームは奮闘します.

授業風景@東京工業大学デザイン工房

EDPが目指すもの

EDPが目指すものは一体何でしょうか?例えば,EDP-Cの講義目標は,こんな感じです…

「異なる分野からの参加者によりチームを構成し,デザイン思考を核として与えられた問題を解決するためのハードづくり・コトづくり・ソフトづくりを具体的な目標に対して実践し,成果物による価値の創造を演習する.問題解決にあたって,技術シーズに基づく発想ではなく,問題解決や利用者の視点に立ったデザイン思考の設計手法について具体的な目標に対し実践し,その成果の価値を表現する.また,異なる分野からの参加者をまとめ,プロジェクトの運営管理についても実践する.」
- Tokyo Tech OCW 「エンジニアリングデザインプロジェクトC」シラバスより -

ちょっと長いですね…それに,何だか,少しわかりにくい?

もう少し,端的に表すと…

協力企業と共に確認した実社会問題意識…から
ユーザーの潜在的なニーズの発掘…を行い
新たなユーザー体験デザインによる新しい価値の創造…を経て
タンジブルなプロトタイプによる新しい価値の表現…を実現する
…ための一連のプロセスを学ぶ.

まだ,よくわかりませんか?…では,もっと,端的に…

ユーザーからヒントを得て,新しいアイデアを実装し,デモの現場で「マジ,これいいね!」という顔をさせる(≠言わせる)

…これなら,わかりますね(まあ,言うのは簡単なんですが…).

EDPでは,デザイン思考を活用したPBL型授業の中でも,アイデアの実装を重視しているところが特長として挙げられます.これは,筆者が多くを学んだスタンフォード大学の名物授業ME310と同じ特長で,「タンジブルなプロトタイプ」とはまさに,DirectorのProf. Larry Leiferが,常にその重要性を強調しているものです.(その詳細は後日.今は「体感できるプロトタイプ」くらいで理解しておいてください.)

EDPでは,受講生に「問題の核心にせまり,新たな価値を創造するプロセス」をタンジブルなプロトタイプを通して体験してもらうことを講義目標にしているのです.