デザイン思考におけるユーザーインタビュー

ユーザーリサーチの手法としては、まずすべての手法の基本としてインタビューがあります。ユーザーリサーチでは、相手が話した内容をその言葉のまま受け取るとは限らず、その背後にあるユーザーの感情や状況などを探っていきますが、相手が何を言ったのかは依然重要です。また、インタビューするときは、相手と濃密に向き合ってやりとりをするので、そこには言葉以上の相互理解が生まれます。ユーザーに直接インタビューできない場合も関係者にあたってみるなど、何らかの形でインタビューはおこなったほうがよいです。

誰にインタビューするかは非常に重要です。既にあるものの改良ならば現在のユーザーに聞けばよいのですが、新しい何かを生み出すときは、そもそもユーザーは誰かというところから発想しなければならないことが往々にしてあります。誰に聞いたらよいかわからないときは、潜在ユーザーがどのような人々なのかについての大まかな仮説をチームでブレインストーミングしてみてから、最初は場当たり的でもよいから何人かに会ってみます。インタビューに行き始めると気づきがあるもので、次はこんな人と会ってみたいとチームで話が出てくればしめたものです。とにかくチームメンバーが会いたいと思ったタイプの人に次々と会いにいきます。ユーザーリサーチでは市場調査とは異なり、事前に厳密に計画することは難しく、偶然の要素が大きく作用して構いません。ユーザーリサーチでインタビュー相手を選ぶ判断基準は、自分達の発想に刺激を与えてくれるのは誰かということです。(Matsumura Shokoさん「誰にインタビューするかではなく、誰が誰とインタビューをするか」

ユーザーはだいたい決まっているけれども、今までにない発想の製品・サービス、使い方を提案したいというときは、エクストリームユーザー法を使ってみるのもよいでしょう。平均的なユーザーは既存の製品・サービス、使い方を当たり前と感じているため、デザインする人の発想に刺激を与えるようなことをなかなか言ってはくれません。そこで、現状に不満を持っていたり、普通の人とは違う視点を持っていたりすると考えられる、極端に使用量が少ない人や多い人、特殊な嗜好やスタイルを持つ人に会いに行ってインスピレーションを得るという考え方です。

注意が必要なのは、エクストリームユーザー法は、ただ極端な相手を探して、そのニーズに応える発想をすればよいというわけではないことです。極端なニーズは通常は市場が小さく、常に将来の市場を先取りしているというわけでもありません。むしろ、極端なユーザーの嗜好や行動から発想を連想ゲームのように膨らませていくことが大事です。

インタビュー項目は、チームで相談してあらかじめ大まかには作っていきます。しかし、ユーザーリサーチで重要なのは、予定のインタビュー項目をこなすことよりも、相手が何か興味深いこと、予想外なこと、違和感を感じることなどを言ったときに、すかさずそこを深くつっこんで聞いていくことです。そのため、インタビュアーは発想の種になるような刺激を感じるセンサーを張って、常にスタンバイしておきます。

相手がセンサーにひっかかることを言ったら、なぜそうなのか、その言動の背景には何があるのかを追求していきます。Whyを5回重ねるという方法も提唱されていますが、ある時EDPの学生がまじめになぜなぜと聞いてインタビュー相手に嫌がられたと報告してきたことがありました。これはむしろインタビュアーが深い問題意識を持つべきだということであって、インタビュー相手に直接答えてもらうということでは必ずしもありません。普通の人は5回分のなぜまで突き詰めて考えていませんので、相手が答えに詰まったら、周囲の状況やそこに至るまでの経緯など客観的な事実やその時何を感じ考えたかを質問していくことで背景を浮かび上がらせていきます。インタビューされている本人も気づかないことに気づけたらインタビューの達人に一歩近づいたことになります。(「ユーザーに答えを求めてはいけない」

インタビューは、相手の都合やテーマにもよりますが、インタビュー相手のホームグラウンドに出向いて聞き取るのが基本です。相手の都合に合わせて現場に赴くと、インタビュー相手の発言の背景、普段の環境などを観察することができ、相手もリラックスして答えてくれることが多いからです。インタビュー相手の了承が得られるのならば、相手の顔と周囲の環境の写真を撮りましょう。チームメンバーに雰囲気を伝えるのに役立ちます。

インタビューは、何人かで行くのがおすすめです。インタビュー相手の迷惑になったり緊張させるような大人数は避けるべきですが、何人かで行くと、大事なことの聞き漏らしを防ぐことができ、誰かが質問している間に他の人がメモをとったり次の質問を考えることができます。後でインタビュー結果を検討するときも、チーム内に何人も生の声を聞いている人がいると、理解の共有がスムーズになります。

インタビューで聞き取った内容は、まずはなるべく相手が話をした通りに記録します。箇条書きは避けます。大事な情報を落としてしまい、後で忘れてしまったり、チームの他のメンバーに内容が伝わりにくくなったりするので良くないからです。インタビュー相手が気にしないようであれば、ボイスレコーダーで記録して文字起こしするのが良いですが、相手が録音をいやがる場合や、文字起こしをするだけの時間的、費用的余裕がない場合は、インタビューしながらメモをとり、インタビュー後記憶が薄れないうちにメモを見ながら元の言葉をなるべく忠実に再現します。一人でインタビューする場合、再現可能なだけのメモをとるのは初めなかなかハードですが、だんだん効率的にメモをとる方法を自分なりに編み出していけるものです。