越境型ゼミをやってみて vol.1

皆さんこんにちは。東工大EDP2016年度参加者の奥出です。東京では緊急事態宣言が続いており、外出も制限されている今日この頃。外出はできないものの、なんと僕は最近とても週末を楽しめてしまっています。なんで楽しいかって?その答えは阿多くんの記事に書いてあります。

阿多くんの記事にはいろいろ書いてありますが、今回紹介するのは越境型ゼミについて。そう、東工大のプロジェクト型授業“Engneering Design Project”(以下EDP)で出会った仲間たちとそれぞれの専門性がある領域について学びを紹介するというなんとも素敵なゼミをしてしまっているのです。(卒業から3年経ってもこのように集まってゼミを開ける素敵な関係に感謝…!)

本記事では主に越境型ゼミを通じて参加者が意識しているコツを紹介しながら、多分野の方々と集まったゼミっていいぞぉ…!って話をしていければなと思っております。駄文ですがぜひゆるゆるとお読みください。

越境型ゼミって何?

簡単にいうと、異なる専門性の人が集まってそれぞれの専門分野について紹介/議論しようねってゼミです。

僕たちは毎週土曜に、一人40分の時間を取って発表を行っています。15分発表の質問・議論25分みたいな構成。議論では自分には知識がないとかそんなこと気にせず、疑問に思ったことは自由に発言しています。(小4のときに算数で挫折した、と語る女の子が量子力学について発表しているメンバーに次々と発表するなどみんな恐れず発言している…!)

そんなゼミの発案者、山村さんに発足の経緯、思いを聞いてみました!

山村さん「こんにちは!山村です!武蔵美の視覚伝達デザイン学科出身で、現在慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の修士2年になりました。学部3年次(2017年度)に東工大EDPに美大生Research Assistant(RA)として所属し、その経験が大きな契機となり『テクノロジーが組み込まれるモノ・コトにもっとデザインも混ぜ込まれたら、もっと良い世の中になっていくのでは!?』との思いから修士に進みました。

ゼミの始まりについてですね!実は、個人的な話ですが、大学院の交換留学でアメリカのニューヨークに滞在していた3月中頃に、新型コロナウイルスの影響によって帰国を余儀なくされてしまいました。以降5月中旬の学期修了までの2ヶ月間、日本の自宅で現地時間の授業を遠隔で受講する日々を送りました。

たくさんの準備や勉強をして掴んだ留学が、予定されていた形、私たちが信じていた形での続行が不可能となってしまい、虚無感と焦燥感に見舞われていました。そんな中、たまたま流行りのオンライン飲み会をEDPメンバーに誘われ参加。顔を合わせたのはとても久しぶりだったと思います。基本は缶ビールを開けてゲラゲラ笑っていただけですが、内心で、異分野の学問を極めようとしている皆さんから受けた3年前の刺激を思い出していました。ずいぶんとクセのある…否、個性の強い性格の皆さんと話す謎の高揚感も(笑)。 3年前、自分の視野に多彩な興味が生まれた興奮をありありと思い出させられました。大げさに言えば、一度止まった学ぶことへの意欲も、楽しい人たちとならまた継続できるなと思ったのです。

飲み会の数日後、留学に関して近しい境遇にいらした阿多さんに、ゼミ的なことをやってみませんかと持ちかけた時、ものの数分で「似たこと考えてた!やろう!」と一つ返事で賛成してくれたのが最高でした。集まってくださったみなさんは、普段は学業やお仕事がある中、同じ(もしくはそれ以上の)温度感で非常に専門性の高い発表をしてくださっています。みんな自分の専門が大好きなんだなあとニヤニヤしながら楽しんでいます。」

ゼミで大事にしていること

そんなゼミは毎回学びがたくさん!まず、自分の発表では、全員がわかるように内容を考えていくと、自分の理解も深まり思考が整理されていきます。また、他分野の発表も素人でもわかるように説明してくれるので知識の幅も広がる!時には自分の専門分野との共通点を見出すなど新たな発見も生まれ、また新しい分野を学ぶきっかけにもなっています。

とまぁこんな感じで知識の深さも幅も広がる素晴らしいゼミになっていますが、そんな僕たちの知的好奇心をくすぐるゼミですが、なぜこのようにうまくいっているのか振り返ってみました。

①シンプルなルール設定

まず、このゼミのルールはいたって単純。「子供でもわかるような説明を心がけること」、「自分が楽しめる発表内容にすること」の二つだけ。楽しくなきゃ続けていられないけど、楽しんで学べるのは本当に最高!とにかく気軽に学べる場をつくることだけ意識していました。子供でもわかるように説明するのがルールなので、もし説明がわからなくてもそれは自分の知識不足のせいじゃない、発表者のせいだ!と割り切れることから質問や議論も活発化。いつも議論の時間は少し足りないくらいで終わって、その後もslack上で情報交換が行われるほど熱を持った会が開かれています。

②とにかく「えいやっ」とはじめたスピード感

「それ面白そうじゃん!やってみようよ!」ってなったその週末には最初の発表を迎えるスピード感で始めました。学びの熱が高いうちに始める。

「どういう発表形式にしようか?」、「最初は誰が発表する?」、「内容はどうやって決める?」とかそんな話し合いは最初はなし。発表したい人が、それぞれ好きな形で無理のない程度に発表をしてみようとだけ話して開始してみました。

発表を繰り返すごとに、他人の発表形式を参考に資料を作ってみたり、発表人数を最適化したりと走りながらチューニング。最初にきちんとしようとしたって無理なんだからまずは始めてみよう!と思えたのがよかったかなと思います。

(わからないなら現場に行け!というEDPの教えがこのようなスピード感を持った実施につながったかもしれないとしみじみ)

③似たような分野の人がいる

全員が完全にばらばらというわけではなく、ざっくりとグルーピングしているので発表者以外にも少し説明できる人がいるというのも良かった点かなと思います。その人から質問が出やすいので論点がわかりやすい。

どのくらいざっくりとでいいかというと、例えば「理系」と「芸術系」の2グループがいるので、科学の分野を話していると理系が、美術史の話をしていると芸術系が議論を進めてくれたりもします。議論の盛り上がりがこの回を楽しむうえで必要不可欠な要素なので、論点の各調整を担保しつつ、とはいえ整理ができる程度の専門性の被りはあったほうがいいかもしれません。

④他分野へのリスペクトを忘れない

これが一番大事。この空気感が作れているかが成否をわける分岐点になるのではと。

というのもシンプルな話で、「自分にはわからない、関係のない分野だ」というスタンスを絶対に取らない空気作れるかどうか、って話です。前述しているように、このゼミでは子供でもわかるように説明するのがルールなので、もし説明がわからなくてもそれは自分の知識不測のせいじゃない、発表者のせいだ!と割り切れるので、みんなが途中で諦めることなく発表を聞き入っています。そのような他分野理解に対する心理的安全性が保てている状態を作っていくことを意識していくことをオススメします!

⑤インタラクティブな発表を心がける

後の議論への参加障壁を下げる意味でも、先に問いを投げかけながら発表をしていくこともポイントになっているかと思います。実際に僕たちのゼミでも、発表の序盤にクイズやディスカッションポイントを設けて、参加意識を高めた状態で発表を進める方が多い傾向にあります。

⑥発表で全て語り切らない

各自が自分で一週間かけて学んできたことですから、全てを語ろうとしては時間がいくらあっても足りません。なので、全てを語り切らず、重要なポイントに絞って話しています。そうすることで結果として活発な議論も起こり、インタラクティブなゼミの実現にもつながっているように感じます。

最後に

本記事では、越境型ゼミを進めていく上でのノウハウについて、ここまで二ヶ月ゼミを続けてきた経験を踏まえながら紹介させていただきました。もちろん、ここで紹介されている方法/ルールは「正解」ではないと思います。参加しているメンバーや人数によってもあるべき姿は変わっていくと思います。もちろん私たちもまだ実験段階として行っている状態です。 実際に参加してくれたメンバーが感じたことは別の記事で紹介させていただこうと思うので、そちらもぜひご参考いただければと思います。

この記事を読み同じように分野を跨いだ活動に興味を持ってくださる方、似たような活動を始める方がいらっしゃったらとても嬉しいです。そして私たちもただお互いの知を紹介していくだけでなく、ここから新たな価値を社会に出していけるような、「意味」のあるコミュニティにしていけたらなぁと思います。こんな密かな野望を持ちながらこれからもとにかく楽しんで学んでいこう!

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