原価も工場もすべて見せる『透明なブランディング戦略 ー EVERLANE』

Yoshiaki Yoshioka
TO NINE BLOG
Published in
10 min readOct 4, 2016

EVERLANE(エバーレーン)というオンラインストアでファッションアイテムを販売するアメリカの企業がある。

彼らはオンランストアに主軸を置くことで、様々なコストを省くことができ、製品価格を抑えている。

前回の記事で紹介したメガネブランド『Warby Parker(ワービーパーカー)』もそうだが、オンラインストアを利用して中間コストを抑えるブランドは増えてきているが、エバーレーンの最大の強みは透明性である。彼らは販売アイテムのコストと工場をオンラインストア内のページで明示しているのだ。

彼らのスタンスは『Radical Transparency=徹底された透明性』である。

https://www.everlane.com/

■Research Date

・創業者のMichael Pressmanは2007年にカーネギーメロン大学を卒業
・ベンチャー投資のアシスタントを3年務めて起業
・設立は2010年、場所はサンフランシスコ

・2013年1200万ドル、2014年3600万ドルの売上高
・2015年時点で会員数は100万人超
・ニュースレター登録者は35万人
・Tシャツは月に100万枚販売
・2012年の初めてのボトムス販売時は12,000人がウェイトリストに登録

・オンラインストアではハイクオリティな写真や動画を使用
・モデルとして起業家女性と男性が登場
・ニューヨークとサンフランシスコでは平日の営業時間内であれば1 時間以内に配送

・ショールミング型の店舗が2店舗
・店舗は予約制
・店内フィッティングして、店内からオンラインストアにて購入
・数時間以内に倉庫から配送

・最初はTシャツ1型でスタート
・現在はジャケット、ボトムス、セーター、ドレス、コート、バッグ、シューズなど200型以上
・白、黒、グレー、ベージュなどのニュートラルカラーが多い
・イタリア製のレザーやカシミヤなど高品質の素材を使用
・トレンドに左右されない10年着れる服 ”を目指している
・米国、中国、スペイン、イタリア、ベトナムの5カ国、13の工場で製造

・洗練されたスタイルを持つミレニアム世代がメインターゲット
・多くの起業家の女性と男性に支持されている

創業者のMichael Pressman
実際の店舗:http://www.remodelista.com/wp-content/uploads/2016/04/Everlane-headquarters-SF-Carlo-Chavarria-photo-Remodelista-4.jpg

■エバーレーンから学ぶ3つのこと

購買を決定するときに、誇大広告やステルスマーケティングに騙されていないか?と疑う人が多くなっている。日本国内でもヤラセやステマが社会問題となったが、多くの消費者はマーケティングという名のお化粧にアレルギーを持つようになった。

そんな時代に支持されるブランド『エバーレーン』から学ぶべきポイントは3つある。

1)徹底された透明性
2)小ロット生産/売切り型
3)ソーシャルコンシャス

1)徹底された透明性

・販売している洋服の原価や製造工場を公開
・材料費、縫製費、関税、輸送費の具体的な額を商品ページに掲載
・トラディッショナルリテール(従来の小売り)との価格も比較表示
・工場の場所や従業員の写真を公開
・工場の現時刻、天気、従業員数なども公開

原価金額を公開。商品ページごとに内容は異なる。
従来の価格との比較表示
工場の場所
工場の様子
リアルタイムの気温、時刻、従業員の数を表示

創業者であるMichael Pressmanは自分が着用している洋服の生産背景を知ることができないことに大きな疑問をもったことが、エバーレーンの誕生のきっかけになった。

実際に『MADE IN ITALY』というラベルが付いた高額の商品を買う顧客の裏で、その商品をアジアで製品を作っているケースも多くあり、その事実を知る消費者は関係者以外にもたくさんいる。

エバーレーンと同じく、製造に関するすべての情報を公開しているHonest by.(オネスト バイ)の創業者のBruno Pietersはこう述べている。

僕はそんな不正をしなくても、透明で持続可能な形で前に進めることを示したいと思った。我々はより善き存在になることができる、と示したかったんだ。100%の透明性というのは当たり前のサービスだと僕は信じているよ。人は自分が何を買っているかを知る権利があると思うし、それにブランドだって自分たちの行いに本当に自信があるなら全てを明らかにする事に躊躇する理由は全く無いはずだ。

引用記事
FREE MAGAZINE http://freemagazine.jp/honest-by-bruno-pieters/

2)小ロット生産/売切り型

・有名ブランドと同じ縫製工場で生産
・ハイブランド並みの品質を維持
・小ロット生産
・顧客からのレビューを元に改良を重ねる
・在庫は抱えない売り切りスタイル
・販売前のウェイトリスト登録が可能
・ほぼ毎週新作をリリース(業界ではシーズンごとにコレクション)
・トレンドに左右されないラグジュアリーベーシックな高品質な商品
・意図的にその需要予測より少ない製品を用意

Coming Soonページで販売前の商品のWAIT LISTに登録できる
New Arrivalページ。今の季節にマッチした商品が並んでいる。

店舗コストやプロモーションコストを極力を抑えて、製品価格に還元。
さらに少量生産で在庫管理コストを抑制し、在庫抱えることなく売り切る。休日の週末のプロモーションとして製品を割引しない。

これがエバーレーンが示す販売方法である。

3)ソーシャルコンシャス

顧客はエバーレーンをどうやって知るのか。
彼らはソーシャルメディアプラットフォームを通じて、顧客とコンタクトを取ります。

・Instagram、tumbler、Snapchatなどの様々なSNSを活用
・Facebookのmessenger botもいち早く活用
・他のブランドとは違いキャンペーンやファッションショーの写真は使用しません
・エバーレーンのスタンスはとても共感されやすいためSNSネットワークで広がりやすい
・ブロガーやカスタマーが商品をレビューするページを用意
・顧客とのより深いつながりを作ることに積極的である
・オープンスタジオというイベントではオフィスに招待して、商品のフィッティングしながら、食事やお酒を飲んで楽しんでいる
・講演活動も始めており、ビジョンやメッセージを伝えることにも積極的である

http://tumblr.everlane.com
https://www.instagram.com/everlane/
FacebookのBot for Messengerを利用したチャット接客
ブロガーやカスタマーによるレビュー
オープンスタジオの告知
オープンスタジオの様子

エバーレーンは、ソーシャルメディアやリアルなイベントを通じて、
顧客とのつながりを持つことに積極的である。

■隠し事がしにくい時代に求められるブランド

ソーシャルメディアによって、これまで企業が隠したかった事実は内部から漏洩してあっという間に拡散してしまう。隠し事がしにくい時代になったと言える。

逆を言えばソーシャルメディアによって、企業は自らのメッセージや活動を小まめに何度も直接伝えることができるようになった。

見せないのか、見せるのか。
この決断によって企業のイメージは大きく変わる。

エバーレーンのターゲットは、食品に対しても生産背景を気にかけているミレニアル層が含まれており、彼らの半数以上はラグジュアリーブランドよりも社会的に考慮された製品を好むソーシャルコンシャスと言われている。最適な販売価格と徹底された透明性をブランド・アイデンティティにして、顧客の心を掴む。彼らは裏表のない透明なブランドである。

顧客の支持されるブランドを1つでも多く増やすことが、僕らTO NINEのミッションである。

■10月6日 イベント お知らせ
『START-UPのためのBranding×Business #002 』
〜 急成長するネット生まれのブランドたち 〜

http://peatix.com/event/200141

日時:10月6日 19:30〜21:30(開場は19:00)
場所:ミクシィ本社
住所:東京都渋谷区東1–2–20住友不動産渋谷ファーストタワー7F
チケット:¥1,000
主催:株式会社TO NINE

■株式会社TO NINE
我々はブランドビジネスを創造する企業です

https://www.facebook.com/to9.inc/
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※問合せはFBでもメールでも

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