ルールは曲げても、プリンシプルは曲げない

ustwo Tokyo team
ustwo
Published in
Feb 9, 2021

こちらはustwo東京の、Lars Rosengrenの記事を翻訳したものです。

Photo by Ivy Barn on Unsplash

私たちは若い時、世界は守るべき規則でできていると学びます。ルールにはしっかりとした土台があり、私たちを良い方向へ導き、他の人たちとうまくやっていくのに役立つという考えのもと、両親や学校はルールを守るべきだと私たちを育てます。でもある時、ルールを曲げたり、破ることができると私たちは気づきます。

どこまでルールを守るかは個人の性格によるところが大きいですが、育った文化にもよります。おそらく日本では世界のどこよりもルールが大事な役割を果たしています。規則があれば快適な人々にとって、規則は不可欠なものであり、自分の周りの世界にある程度の秩序をもたらします。電車内でのふるまい、人とのコミュニケーションの取り方、職場での慣例や行動のしかたから、病院や公的機関が驚くほど細かいルールですべて管理されています。

日本は世界の中でもうまくいっている社会であると認識され、それはおそらく高度にルールに基づいた考え方がベースにあるからでしょう。同時に日本は世界でもっとも保守的な国とも見なされており、過去から続く日本の大企業は競争力の維持に苦労し、過重労働や男女不平等が標準的な状態になっています。世界でも日本の自殺率は高いです。これについてはさらに突っ込んだ社会的研究の余地があるでしょう。しかしなぜうまく機能している社会がこのような問題に直面しているのでしょうか。秩序社会を保つためのルールが日本が変化に対応することを阻む原因になっているのでしょうか?

日本に数年間住んでみて、ルールは変化に対処する能力を狭めるものだというのが私の考えです。一方、プリンシプルは変化に対応する柔軟性を与えつつ、問題についてフォーカスし続けることができます。

ルールではなくプリンシプルに基づいて行動した場合、どのような形で日本や日本企業が今よりもいい結果を出せるでしょうか?

これを深掘りする前に、文脈を正しく設定しましょう。ルールとプリンシプルの本当の違いはなんでしょうか?

ルールはラテン語のregular(まっすぐな棒)、regere(正直でいる、支配する)から来ています。

プリンシプルはprincipium(はじまりまたはプリンキピア)、土台に由来しています。

単純にこれからも二つの言葉のもともとの意味が明確にわかります。

違う説明をすると:

プリンシプルは、自分の内面に対し、良いこと正しいことを行うよう促します。プリンシプルに則っている人たちとともに過ごすことで自分のプリンシプルが育まれることこそ、そのような生き方の本当の恩恵です。

ルールは外からあなたを支配し、脅かし、罰します。他人が正しいと思ったことをするように仕向けます。人々はルールに従うか、さもなければ破るのです。

— Source: Quora

「ルールをよく知れば、うまくそれを破ることができる」
ダライラマ14世

最近私が聞いたMarty Caganのトークによれば、(少し言い換えていますが)「製造業で日本を成功させたものが今や日本の妨げになっています。」製造業とは予測可能なプロセスで、できるだけ混乱や変更は避けたいものです。したがって注意深くコントロールされた明確な指示に従うことがベストの成果となります。1960年代から80年代まで日本はこれを厳守することで成功をおさめてきました。しかし現在の世界はソフトウェアやサービスを中心として回っており、常に変化が起きています。コントロールし、変化を避けるようにシステムを作ったとして、どうしてそれが絶え間ない変化に対応できると期待できるでしょうか。

コントロールし、変化を避けるようにシステムを作ったとして、どうしてそれが絶え間ない変化に対応できると期待できるでしょうか。

日本企業と仕事をした私の経験では、誰もが古くなったと感じているルールのために、仕事を効率的に進めることができないことがよくあります。企業のミッションを追求するため一番良いことだと思って仕事をしているのに、そのルールを変えたり曲げたりすることができないと思い込んでいるのです。以前の記事でも書いた通り、何もできないという「しょうがない」という考えが蔓延していることが多いです。とても小さな変化でもやってみる、ルールを緩和して注意深く再定義し、それを考え抜いたプリンシプルとすれば、大きなインパクトが出るでしょう。

とても小さな変化でもやってみる、ルールを緩和して注意深く再定義し、それを考え抜いたプリンシプルとすれば、大きなインパクトが出るでしょう。

また、Martyはこの問題の本当の原因も提示しています。それは信頼です。経営陣は自分のチームがビジョンを実行できると信頼していないために、今のアプローチが失敗しているとわかっていても同じやり方を続けようとしがちです。命令と支配のアプローチを取るリーダーシップ、厳格なルール支配が標準的な状態になってしまうのです。

VUCAは冷戦終了後の状況を説明するのにアメリカで軍事用語として生まれました。ファシズム気候変動「フェイクニュース」プライバシー問題といった脅威が新たに登場した現在こそ「変動性、不確実性、複雑性、あいまい性」がこれまでより重要な世界になったのです。

VUCAは全ての業界、社会に影響し、明確なルールを定めることが難しくなりました。

「変化する世界では、プリンシプルはスケールするが、ルールはスケールしない。」
Clynton Taylor, Culture summit

ルールは日本社会が機能するために大事な役割を果たしていますが、同じルールに基づく考え方では変化する環境への対応ができません。選択肢を狭め人々の行動を制限するので現代においてイノベーションすることに向いていないのです。

私は完全にルールを捨てろと言っているわけではありません。むしろできる限りルールを曲げることをお勧めします。そしてそれはルールの元となるプリンシプルがはっきりしている場合にのみ可能です。プリンシプルが明確であれば人々は進んで自分でルールを解釈し、プリンシプルが意図する枠内にとどまることができます。同時に改善したり、視点を変えたり、基準にたいして疑問を唱えたりする柔軟性の余地も必要です。そうすればイノベーティブな組織やカルチャーが作り出されるでしょう。

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