説得力を上げよう!デザインに役立つ心理学

Sakamoto Kyon
6 min readSep 1, 2016

オライリーから出版されている名著「インタフェースデザインの心理学」の続編が、先日発売になりました。

以前こちらの記事でも紹介しましたが、「インタフェースデザインの心理学」は、デザインに取り組む前に知っておきたい人間の思考・行動パターンについて書かれており、「なぜこのデザインにするのか」というデザインの意思決定に役立つ心理学的側面を知ることができます。

そのデザインを採用した理由を突き詰められれば、おのずと説得力の上がるアウトプットにすることができるのではないでしょうか。

今回はその本の中から、すぐにデザインへ活かせそうなものをピックアップし、実例を交えてご紹介しようと思います。

1. 見つめることが逆効果になることもある

とあるビデオを使った実験で、政治的話題についてディスカッションする人々の映像を、被験者に鑑賞してもらいました。そのときの被験者の行動から、以下のようなことが分かったそうです。

・映像内の発言者の意見に賛成の場合、被験者はその人を見つめる

・逆に、映像内の発言者の意見に反対の場合、被験者はその人を見つめない

・被験者に、映像内の発言者の口を見るよう指示した場合、発言者に同調して意見を変える可能性が高まる。

・被験者に、映像内の発言者の目を見るよう指示した場合、発言者に同調して意見を変えることはなかった

人とコミュニケーションを取るときの基本は「相手の目を見ること」ですが、この実験が示していることは、その基本が「時と場合による」ということです。

みんなが納得するであろう内容の場合は正面から見つめるとより説得力が増しますが、意見が分かれる内容の場合は、見つめると対立的構造が強調され、逆に説得力が削がれてしまう可能性があるのです。

例えば、次のような選挙ポスターを見てましょう。

(出典:http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10124255/www.soumu.go.jp/2016senkyo/gallery/http://a-110.com/photography/1.html

残念ながら、日本の投票率は決して高くはありません。選挙に行くべきか/行かないべきか、意見は人によって様々です。

もし投票へ行く人を増やしたいと考える場合は、心理学的側面から考慮すると、右のような視線を逸らした写真のほうが有効なのかもしれません。

デザインでどの写真を使うか決める場面は良くあります。その際、訴求内容を考慮し、「正面への視線有る・無し」で写真を選択してみるのも良いのではないでしょうか。

2. 読みにくい文章のほうが学習効果が上がる

文字の違いによって、記憶力に差が生まれるかどうかの実験が行われました。被験者は「架空の宇宙人に関する情報」を文章で与えられ、それを読んで覚えるよう指示されました。

宇宙人の名前/身長/食べる物/眼の色が書かれている(参考:Susan Weinschenk『続・インタフェースデザインの心理学』オライリー・ジャパン p.91–92)

その結果、「読みにくい文字」を使った文章のほうが、記憶力が14%高かったそうです。読みやすいCよりも、読みにくいABのほうがより記憶されやすかったということです。

デザインは「読みやすい・理解しやすい」が基本ですが、そればかり考慮すると、引っ掛かりがなくユーザーの記憶に残らないデザインになってしまう可能性があることを、この実験では示しています。

とはいえ、闇雲に読みづらいフォントを使えば良いということではなく、「ちょっとした引っ掛かり」をユーザーに感じさせることが重要なのではないかと思います。

キャッチコピーに「引っ掛かり」が有る[左]・無し[右]の例。(出典:http://neandertal.jp/blogs/1302

「読みやすい・理解しやすい」の基本を押さえた上で、さらにワンステップ上のデザインを目指す際、意識してみると良いかもしれません。

3. 人は数字に影響される

被験者に次の計算式を見せ、答えが大体どれくらいになるか予想してもらう実験を行いました。

1×2×3×4×5×6×7×8

回答の平均は「512」だったそうです。

では、掛け算の順番を変えた次の計算式を見せた場合はどうなったでしょうか?

8×7×6×5×4×3×2×1

驚くべきことに、回答の平均は「2,250」と約4.5倍も大きくなったそうです(ちなみに、計算結果の正解は40,320)。

この実験から分かることは、人は最初に目にした数字によってその後の知覚が左右されるということです。

ある店で缶スープの特売広告を出した際、平均購入数は3缶でした。しかし「スープ特売!ただしお一人様10缶まで」と書いておくと、平均購入数は7缶になったという事例も、行動経済学の名著「ファスト&スロー」で紹介されています。

ユーザーに使ってもらう金額を増やしたいときや、購入を決断してもらいたいときには、最初に大きな数字を見せることが有効だと考えられます。

日本経済新聞の購読申し込み画面(出典:http://www.nikkei.com/r123/?n_cid=DSPRM036

この購読申し込み画面では、最も高いプランが一番目につきやすいようにしているため、心理学的側面から考えると購入価格が高まる効果が期待できます。

また、価格プランがない場合には、「10,000人以上購入」など購入人数を見せることも有効と考えられているようです。

以上、デザインに役立つ心理学のご紹介でした。

VASILYではデザイナー・学生インターンを募集しています。見た目の良さだけでなく、どうしてこのデザインが良いのか?という部分まで考え抜きたいデザイナー大歓迎です。ご応募お待ちしております!

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Sakamoto Kyon

直近はリモートでベンチャーのデザインパートナーをやってます。得意ジャンルは女性向け💃 ファッション👗 社会課題を解決するサービスにも取り組み中です。ざっくりポートフォリオ → https://bit.ly/3UAgBuZ