スクラムの初動で心がけたこと

アジャイルにまつわるエトセトラ #12

あらかー
WingArc1st Inc.
Dec 1, 2022

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アドベントカレンダーブログ、スタートです!

今年もWingarcのエンジニアによるアドベントカレンダーブログが始まりました。

もう4回目となるこの催し。
今年もウイングアーク1stの精鋭達がクリスマスまでブログのバトンをつなげていきます。

過去のカレンダーはこちら。

今年も初日は言い出しっぺの私「荒川 a.k.a あらかー」が担当します。

はじめに:
今回の記事は「これからスクラムを始めようとしている」方の参考になればよいなという内容です。「アナタの背景とかはどうでもよい」という方は2つほど章をスキップしていただき「初動が大切」という章あたりから読み始めてしまってください。

あらかースクラムマスターやります

ウチの部門長のじゅんぺーさんは、日頃からイベント登壇やブログ発信などを通して、社外だけでなくウイングアーク内にもアジャイルを中心とした考え方やプラクティスの有効性をアナウンスしてくれています。

そんな背景から今年の4月頃(だったかな?)、これまでウチの部署と絡みがなかった部署の部門長から「いま開発しているサービスにスクラムを適用したいので相談したい」といった嬉しいコンタクトがありました。

私は新人研修やインターンなどでスクラム研修を担当していたり、Scrum Allianceの認定バッジも複数所持しており、実力はともかくスクラム関連の知見について社内では結構ハッタリが効く人間なのでミーティングに同席させてもらいました。

ハッタリの数々(会社に感謝)

案の定スクラムマスターが必要とのお話だったので、後先考えず二つ返事で私が引き受けました。

チャンス到来

私は2012年頃に初めてスクラムに触れ、これまでも何度かスクラムチームのメンバーやスクラムマスター、そのサポート的な業務も経験してきました。

その間うまくいかないスクラムを目撃したこともたくさんありましたし、自分が関わったスクラムが中断された経験もあります。
むしろうまくいっているスクラムチームに関わることの方が少なかったように思います。

不幸な道をたどるスクラムをたびたび目の当たりにし、その都度いわゆるアンチパターンを溜め込んでいくにつれ、自然と私の中にも「こんな風にやってみたらいいんじゃないかな」といったアイデアが蓄積されていきました。

今回のスクラムマスター要請はそれにトライできる千載一遇のチャンスだったのです。

Photo by Parabol | The Agile Meeting Toolbox on Unsplash

初動が大切

「こんな風にやってみたらいいんじゃないかな」の筆頭。
それが「スクラムの初動」です。

スクラムがうまく行かない理由は「スクラム 失敗 理由」などで検索すれば沢山記事が出てくるのでここでの言及は省きますが、その多くはズバリ「全員がスクラムの本質をわかっていない状態でスタートしてしまっている」ことが原因だと私は捉えています。

ここでいうスクラムの本質とは「スクラムはアジャイル開発を実現するためのフレームワークの一つに過ぎない」ということです。

ただ漫然とプランニング、デイリースクラム、レビュー、ふりかえりといったイベントを実施するだけ、すなわち行動だけを変えることがスクラムではありません。

それぞれのイベントには必ず意味があり、守らなければいけないルールがあり、そしてそれらは全て「アジャイルなマインドと行動でプロダクト開発を行うこと」に繋がっています。

ここを押さえずにスタートしたスクラムは九分九厘失敗するといっても過言ではないでしょう。

「これから皆さんとスクラムするにあたって」会の開催

そこで私は、いわゆるスクラムチームのメンバーであるプロダクトオーナー(PO)、開発(Dev)だけでなく、プロダクトマネージャー(PdM)やプロジェクトマネージャー(PM)を一同に集めた「これから皆さんとスクラムするにあたって」会を開催しました。

いわゆる「頑張っていきましょう」的なキックオフイベントではなく、スクラムのネガティブな面を全面に押し出した説明を行いました。

  • スクラムは簡単にはうまくいかないこと
  • スクラムイベントには意味があり、漠然と実施すると無意味で面倒なものになるが、そうならないようにしっかりスクラムマスターがお手伝いすること
  • 「そう決められているから」といって思考停止的にスクラムイベントを実施するつもりはなく、チームにとってもっと都合の良いやり方で同じ目的が実現できるならそちらのやり方を採用すること
  • 急に変化するとストレスがかかるので徐々に適用していくこと
  • 違和感、不安、不満、ジレンマ、疑問はすぐにスクラムマスターに言ってほしいこと

しっかり確認したわけではありませんが、メンバー全員ある程度理解していただいた状態でスクラムがスタートできたと思います。
(非常にネガティブな説明が中心だったので、面食らった人もいたのではないかなとも思ったり)

よいスクラムチーム

こうして6月からスタートしたスクラムチームは、色々な課題に直面しながらもチーム全員で協力して約半年間、30スプリント走り続けています。

ここまで継続できている理由として、メンバーの能力が最大の要因であることは間違いありませんが、私が最初に行った説明会も多少は寄与しているのではないかなと自負しています。

とはいえ、この初動がどんな組織にも有効だとは思っていません。

チーム内に、失敗を嫌がりチャレンジしない、仲間を尊重しないといった「アジャイルの素養がない」人がいれば、”わかりあえないチームの出来上がり”という不幸なシナリオが待っているでしょう。

残念ながらアジャイルの成功は最終的には人に依存するというのが私の持論です。

幸いこのスクラムチームは、PdM、PO、Devの全員がポジティブかつ柔軟に対話をすることができ、お互いをリスペクトできる面々だったので、今日まで壊滅的な問題が起きることなく継続できているのだと思います。

日々細かな課題は発生していますが、その都度スクラムの三原則である「透明性、検査、および適応」を柱としながら課題をクリアにして少しづつ成長していますし、私も含めてこのチームはもっと良くなっていくと確信しています。

こういったメンバーのスクラムチームに関われてとても良かったと思っています。

でも売れなきゃ意味ないよ

しかし安心するのはまだ早い。

スクラムを継続することが我々の目的ではありません。

いくら良いやり方、良いメンバー、良いチームでプロダクト開発ができたとしても、多くの顧客に価値を届け続けることができなければ、それは失敗と同義です。

プロセスはあくまでもプロセス。
良いプロダクトがあって初めてプロセスが評価される。

スクラムマスターはスクラムのプロセスに関与する人間だからこそ、その考えは常に持っておかなければいけません。

このプロダクトが沢山の顧客を幸せにする。
結果、会社に沢山のお金が入ってくる。

そういった状態になって初めて良いスクラムチームだと言えるのであって、そのタイミングでやっとこさ「オレはそのチームのスクラムマスターだ」と少しだけ胸を張れるんじゃないかと思います。

一日も早くそんな日がくることを目標に、これからもスクラムチームと頑張っていきたいなと思っています。

今年も我が家にアドベントカレンダーが届きました Photo by あらかー

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あらかー
WingArc1st Inc.

ウイングアーク1stでプロセス改善とソフトウェアテストの自動化に取り組んでます / Certified ScrumMaster® /Certified ScrumDeveloper®/Certified Scrum Product Owner® / JBA公認E級審判