ウイングアーク1st社内講演会「質とスピード」開催レポート
「質」と「スピード」はトレードオフの関係なのか?
アドベントカレンダーブログがはじまります
こんにちは。
ウイングアーク1st株式会社、ソフトウェアプロセス&品質改善部の
あらかーです。
今年もウイングアークの精鋭達がクリスマスまでブログのバトンをつなげていきます。よろしくお願いします。
ついにt_wadaさんの社内講演会が実現
去る2023年11月6日、t_wadaさんこと和田卓人さんをお招きし、ウイングアーク社員全員*を対象としたオンライン社内講演会「質とスピード」を開催しました。
今回のブログは、総勢382名の方が参加いただいたこの講演会の開催レポートです。
*ウイングアークはソフトウェアの開発から販売まで一気通貫で完結する会社なので、この「社員全員を対象する」ということは実はなかなかチャレンジングな試みかと自負しています。
「開発者だけでなく、営業、サポート、マーケット、そして意思決定者でもあるエグゼクティブ層など、ソフトウェアのデリバリーに関わる全ての人に知ってもらいたい」というt_wadaさんの想いもあって実現しました。
t_wadaさんについてはWikipediaの引用をご覧ください。
和田卓人(わだ たくと、1977年7月16日 — )は日本のソフトウェア開発者。
タワーズ・クエスト株式会社取締役社長、Seasar プロジェクトコミッター。テスト駆動開発を雑誌連載記事、動画講座[1]、カンファレンスでの講演や講義[2]などを通して国内に紹介した。また、テスト駆動開発に関連する用語として、デベロッパーテスティングという概念を国内に紹介している。
以前あるイベントに参加した私がこの講演に感銘を受け、いつか社内で開催したいと思っていたのですが、t_wadaさんと同じイベントでの登壇経験があるじゅんぺーさんに予算の確保から打合せ設定、社内番宣まで奔走していただき、ついに実現することができました。
講演開始早々、先述したWikipediaの内容について実況チャットでこんなやりとりが…
すかさず質問チャットに質問が飛びます。
ちなみに今回の実況&質問チャットは、ウイングアークのiPaaSサービス「dejiren」のチャットクライアントを使用して実現しました。
ウイングアーク全社員のテキストコミュニケーションは、主にこのdejirenで行われており、こちらにt_wadaさんが入っていただくことによって講演中も活発な実況チャットを実現することができました。
「質とスピード」in ウイングアーク1st
こうして始まったt_wadaさんの社内講演。
終始盛り上がりましたが、この講演の触りの部分をご紹介します。
オンライン社内講演は実況が大切
冒頭にt_wadaさんからこういった提案がありました。
私の社内講演は映画館でいうと”発声可能上演”だと思ってください。
皆さんの実況チャットも今日の講演の一部です。
皆さんの考えを表出・共有しながら講演を進めていきたい。
講演内容もさることながら、こういった「場作り」「雰囲気作り」がとても素晴らしいなと思いました。
その甲斐あって、終始実況チャットは盛り上がっていくこととなります。
荒ぶる四天王
最初に提示されたのは、みんな大好き荒ぶる四天王クイズ。
皆さんの回答がチャットに集まると同時に、チャットの挙動がやや重たくなる現象が発生し、奇しくもdejirenの負荷検証が行われるという、ある意味お得な?状況となりました。
「今日の講演で”dejiren過去最大流量”を目指しましょう」
t_wadaさんがすかさずアドリブをはさみながら、参加者からチャットにコメントが寄せられます。
上のスクショは一部抜粋してますが、回答の大半は「まあ駄目なんだろうけど、わかっちゃいるけど、d(品質を犠牲にする)かなあ…」といった感じでした。
では犠牲にする品質とは何か
その後、t_wadaさんは「ここで犠牲にする品質とは何か」をSQuaREを使って掘り下げていきます。
丁寧な説明で「品質とは何か」を紐解いていき、t_wadaさんは犠牲にする品質とは「内部品質」であることを特定します。
そしてタイトル改修。
タイトルが「質とスピード」から「内部品質とスピード」に書き換わりました。
私がこの講演ですごいなと思う理由の一つが、たとえば「品質」というふわっとしていて人によって解釈が違う事柄を、t_wadaさんがロジカルに解説していき、講演者と参加者の共通認識を持たせながら進行していくところです。
内部品質の被害者
講演中「内部品質の被害者は開発チームそのもの」というt_wadaさんに言葉に対するチャットの反応。
保守性を犠牲に捧げるとどうなるか
「あとでクリーンにすればいいよ」はその後も「あとでクリーンにすることはない」といったトピックにも共感が集まり、遅かれ早かれチームは疲弊していくという話に一同納得していきます。その後は主にベテランエンジニア達の「現場で寝るスキル」の思い出話が展開されました。
爆弾処理のようなリリース
実際に祈っていた人もいたようで。
スピードを落とせば保守性は上がる?
保守性を犠牲にしたことから起こりうるリスクや昔の辛い経験を認識した上で、t_wadaさんはこう問いかけます。
「経験上、十分時間を与えたから良いコードを書いてくる人は、スピード優先でも良いコードを書いてくる。クソコードを書いてくる人は結局クソコードしか書いてこない。」という身も蓋もないツイートに皆さん様々な反応。
つまりトレードオフではない
(少なくともソフトウェア開発の世界では)時間をかけても良いアウトプットが出てくるとは限らないということが証明されました。
質問タイム
90分の講演後、質問タイムが設けられました。
たくさんの質疑応答が交わされましたが、一番私が印象に残っているのがこちら。
私もとても気になるところです。
t_wadaさんの回答を書き起こします。
私のこの講演が皆さんの苦しみを増やしてしまうんではないかという話ですよね。
「両立出来るようになったとみんなが実感できるにはどれくらいの時間・工数がかかるか」ということでいうと、、
時間に関しては、1ヶ月ですね。
自分たちが「状況をコントロールできている」という自信を回復するまでは1ヶ月もかからないと思います。
だいたい2〜3週間で効果が現れ始めます。
「急がば回れ」という諺は正しくって、急ぐために回っていたら結果的に急ぐことになるので、そういったことが大事です。もちろん新しい技術を習得する、ジュニアメンバーを教育する、などはもっと時間がかかるのでもっと見てあげないといけませんね。例えば2年とか。この期間社内教育を一定割合し続けることによって、全体のベースレベルが上がると。
今自分が持ちうるスキルを駆使し「急がば回れ」で開発に取り組み、その間に自身の研鑽・スキルアップデートや若手の教育に時間をかけていきましょうと。そうすれば強い組織になれますよと言う風に受け取りました。
講演後のアンケート結果を一部紹介
ここでは全てをお伝えすることはできませんでしたが、大盛況で終えたt_wadaさんの「質とスピード」社内講演。
講演後のアンケートの結果を一部公開します。
この講演にどれくらい満足していますか?
忌憚ない感想が欲しかったので匿名でのアンケートを実施したのですが、不満系の回答が一つもなく、とてもほっとしたのと同時に「ウイングアークの未来は明るいぞ!」と個人的にテンションが上がる結果となりました。
どの職種の方ですか?
開催するにあたっての我々運営やt_wadaさんの「開発者以外の方にも聞いてほしい」という想いに応えていただけたようで良かったです。
じゅんぺーさんの社内番宣のおかげかと思います。
印象に残ったトピックを教えてください。
その他フリーテキストでいただいた感想をいくつかご紹介します。
- 崩壊したコードを書く方がクリーンなコードを書くよりも常に遅い
- 技術力が低ければスピードも品質も上げることは出来ない
- 内部品質がスピードを生み、スピードが学びのループを生み、学びのループが外部品質を生み、外部品質が競争力を生み、競争力が売り上げを生み、売上が内部品質をはぐくむという一連の関係性
- 質とスピードはトレードオフではないという事実。これはソフトウェア開発の現場だけでなく、営業現場にも言えることだと思いました。
- 技術力が低ければスピードも品質も上げることは出来ない
- 質 VS スピードという二律背反の関係は局所的なものでしかない。
- 内部品質の被害者は開発自身
皆さんのご意見の方が、私のこのブログよりぜんぜん簡潔にまとめてくれているなあ(汗)と少し焦りを感じつつ、この講演会に一定の手応えを感じると共に、これをキッカケにウイングアークのプロダクトの内部品質がより洗練されていくと嬉しいなと思います。
これからのこと、それからのこと
さて、この講演によってウイングアークの社内ではかなり広い範囲で「質」と「スピード」との関係についての考え方が少しアップデートされた状態になったと思います。
「どうも質とスピードはトレードオフではないらしいぞ…」と。
その「考え方」を実際の「アクション」に落とし込むべく、ふたたびt_wadaさんにご協力いただき、社内講演会の第2弾、
「組織に自動テストを書く文化を根付かせる戦略と戦術」
を12月に開催する予定です。
またレポートを書く予定ですので読んでいただけると嬉しいです。
それではまた。