再会の旅路⑶

Mayu Kuji
にじだより
Published in
5 min readJul 31, 2019

再会をしてみて

4月からこれまでに(7月31日現在)、14人の人と再会を果たした。

再会をしてみて、相手との当時の関係性や会っていなかった期間の長さによって、再会時の緊張の度合いがまったく異なることがわかった。会っていなかった期間が長ければ長いほど、再会時の緊張度合いは高まるという単純なことではなかった。期間が空いていたとしても、当時の関係性によって再会時の緊張が薄まることもある。

家族連れの日本人観光客、迎えに来ている人、ツアーガイドなど、迎える人と訪れる人とが入り混じる到着ロビーで、自分が出てきたゲートを見つめ、萌が現れるのを今か今かと待ちわびていた。

もうすぐ、会えるんだ。(石丸萌との再会より)

人々が次々と改札を通り抜けていく。この人混みの中に彼もいるんだろう、と気持ちを引き締める。携帯の画面を眺めたり、顔を上げたりしている自分に気がつき「見つけられたいのか、彼を見つけたいのか、どっちなんだ」と自分で自分に突っ込む。(駒澤元気との再会より)

再会の瞬間についても、私から声を掛けにいくことができる人、緊張して何と声を掛けたら良いのか迷う人など、さまざまだった。再会を終えて別れる時も、「またいつでも!」と声を掛けてもらい次に会うことを期待できる人もいれば、果たして次に会うことはあるのだろうかということを考えてしまう人もいた。

これまで12人と再会をして実感していることは、現場は一回かぎりだということ。

次に会う時のことを考えると、それが“再会”と呼べるようになるまでは、これまで会うことがなかった期間と同等、もしくはそれ以上の時間がかかる。そう考えると、再会が叶ってともに時間を過ごしていることが余計に貴重に思えてくる。

連絡先を持っていない人へのアプローチ

これまでは、連絡先を知っている人のうち、再会したいと考えた人と再会を果たすことが中心だった。現在は、連絡先を持っていないけれども再会を果たしたいと考えている人へのアプローチを試みている。

まずは、所在も連絡先もわからない小学校の担任の先生との再会を叶えるべく、動き始めた。

6月下旬、通っていた小学校二校に電話を入れた。その際、「来年大学を卒業する節目で、当時お世話になった先生を探している」と伝えると、取り次いでもらうことに成功した。異動先の小学校を教えてもらい、小学校を順々にたどっていくと当時お世話になった先生は、すでに退職されていたことがわかった。一時、退職されたあとの所在がわからず再会を諦めかけたこともあったが、その後無事に連絡先が判明し、8月中旬にも会う約束を取りつけることができた。

また、唯一定期的に連絡を取り合っている地元神奈川の小学校の友人から、連絡先を知らなかった小学校の同級生たちのLINEのアカウントをもらうことができた。現在、順次連絡を取っており、会うことができるかどうか交渉を重ねているところである。さまざまな人の手をお借りして、このプロジェクトの歩みが進んでいることを忘れてはならないと思う。

小学校の先生やかつての同級生たちと連絡が取れたことに伴い、フローにも進展があった。

自分がたどった道筋に基づくこのフローが、「再会」を求めている他の誰かにとって道しるべとなるかもしれないことは前回のMediumで紹介した。誰と連絡を取りたいかということを基準にこのフローをたどっていくことができるように、「連絡先を知っていますか?」という質問のあとは「小学校の先生」「小学校の友人」などと相手の属性を分類している。これから先、このフローは縦にも横にも広がっていくことが予想される。引き続き、このフローについても進展を図るべく、連絡先を知らない人へのアプローチを試みる。

卒プロという“魔法”

卒業プロジェクトを進めていくなかで、卒プロがもつ「力」を感じることがたびたびある。

「卒業プロジェクト」だと先方に伝えることで、普通であれば取り次いでもらうことができないところを取り次いでもらうことができたり、会うことに若干の抵抗のある人にも会うことができたりしている。そもそも卒プロという名目がなかったら、小学校に電話を入れて会いたい先生をわざわざ探すことすらももしかしたらできていなかったかもしれない。卒プロが私を奮い立たせる力を備えているだけでなく、「卒プロ」ということで通用したり、許されたりすることがたしかに存在している。

しかも、この卒プロという“魔法”が通用する期限は1年間。このプロジェクトを進めている今の私は、期限付きの特別な“魔法”にかけられているのかもしれない。

これから

今後も引き続き、再会したい人と順次連絡を取り、再会を果たしていく。

夏休みは、8月の終わり頃から9月上旬にかけて、アメリカに飛び、アメリカに住んでいた頃(幼稚園〜小学校の頃)の友人と再会する。もし会うことができたら、実に15年ぶりの再会となる。15年という時を経て、彼/彼女らがどのような変化を遂げているのか、はたまた変わっていないのか、どのような会話を紡いでいくのか。今は、再会できることをただただ心待ちにしている。

これは、慶應義塾大学 加藤文俊研究室学部4年生の「卒業プロジェクト」の成果報告です(2019年8月1日時点)。 最終成果は、2020年2月に開かれる「フィールドワーク展XVI」に展示されます。

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