身近な誰かの行動を考察するとき、無意識のうちに、同じ状況に置かれたときに自分がどう振る舞うかを判断の根底においてしまうことがある。
An article to coming Christmas
1年先の私のことも分からないから、1年先のあなたとのことなどなお分からない。
人の心がどこにあるのかなど測れないし、誰の何のどこまでが真実でどこからが嘘なのか、血眼になって追及するほどの気力もない。
少女だったころの「ずっと一緒だよ」の言葉は間もなく、「永遠の半分だけ傍にいて」になり、やがて今の私に確かに言えるのは、「今あなたといたい」だけだ。
誰かのために、という言葉はいついかなる場合でも美しくない。
そう嘯いたのは大島弓子だったか。私の「ああしてあげたいこうしてあげたい」は優しさでも思いやりでもなくただの自己満足か、もしくは「なんでもするからここにいていいって言って」、などという血を吐くような叫びの裏返しでしかない。
寒さが日ごとに厳しくなるから、薫りだけでもしっとりと暖かく柔らかいものを纏いたくなる。
今年の冬を寄り添って過ごすのは、「時の旅人」とも「夢の建築家」とも言われるフランスのアーティスト、セルジュ・ルタンスの、アンボワバニール（Un bois ｖanille/バニラの木）に決めた。
東京の夜空に星はない。
街は華やかで、人々は忙しげに行きかうけれど、ビルの足元から空を見上げてみたって、部屋の明かりを消してみたって、この街から星は見えない。見上げた空に星がないことが、私は寂しい。古代ギリシャの昔、船乗りたちは星を頼りに行く手を定めたというけれど、東京タワーもスカイツリーもただそこにあるばかりで何も教えてくれない。
恋人が過去に愛した相手の話を聞いて無意味な嫉妬に身を焼きたいという愚かな衝動に、もうずっと耐えている。
「煙草のにおい、苦手なの」
「…分かってるよ」
乱雑に脱ぎ捨てられてくしゃりとベッドの横の床に丸まったジーンズのポケットを彼が探りかけたから、重くなりかける瞼を無理にこじ開けてなんとかそう吐き出したのを、おぼろげに覚えている。そのあとベランダへと続く掃き出し窓が開く音を聞いたような気がしたけれど、記憶は曖昧だ。
「桜の花言葉って知ってる？」
ちょうどひとひら散りかかってきた桜の花弁を目で追っていると、左隣の彼女が不意にそう口にした。
わたしのこと。
23歳、水瓶座O型。観察して分析して推量してほしい。
ぎりぎり丸の内OL。
