芸術への入門 — 第2章 芸術の構造:形式とデザイン —

Japanese translation of “Introduction to Art: Design, Context, and Meaning”

Better Late Than Never
101 min readOct 25, 2018

ノース・ジョージア大学出版部のサイトで公開されている教科書“Introduction to Art: Design, Context, and Meaning”の翻訳です。こちらのページから各章へ移動できます。

第2章 芸術の構造:形式とデザイン

ジェフェリー・レミュー(Jeffery LeMieux)、パメラ・J・サチャント(Pamela J. Sachant)、リタ・テキッペ(Rita Tekippe)

2.1 学習成果

この章を終えたとき、あなたは次のことができるようになっているでしょう:

•芸術の対象の制作における様々な材料、行程、方法を区別する。
•異なる芸術の形式の特徴を特定し、それぞれを区別する。
•種々の形式や構成を作り上げる際の要素の役割とデザインの原則について説明する。

2.2 はじめに

何世紀にもわたって世界中の人々が作ってきた芸術の対象物を見ると、それらがいくつかの基本的要素を共有していることがわかります。それらは存在し、それらは実体を持ち、それらは平面のものか、あるいは「あらゆる角度」のものであり、それらは遠近法、線、形、質量、体積、色、質感などを使用します(または使用しません)。時間の経過とともに、芸術家と芸術評論家の両方は、芸術の対象物とそのデザインを記述するための一連の用語を開発してきました。この章では、私たちは、さまざまな種類の芸術の形式を特定し、それらを作成するために使用される材料とプロセスを識別し、芸術家がデザインの要素と原則をどのように使用しているかを理解し、視覚芸術の中でそれらがどのようにして意味を伝達するかを認識するために使う、芸術に特有の語彙を発展させます。

視覚芸術における可能な組み合わせは無限にありますが、視覚芸術は伝統的にほんの数個の広い用語が付けられた方法によって実践され分類されています。視覚芸術における主要な区別は、次元です。二次元の芸術は、素描絵画、および版画からなります。三次元の芸術はインスタレーションキネティック・アートを含む彫像からなります。これらの伝統的なタイプの芸術に加えて、芸術についての新しい技術や新しい考え方は、ビデオパフォーマンスなどの四次元または時間ベースの芸術をもたらしました。そのような芸術は、技術の使用とその効果のための時間の経過に依存します。最近では、時間ベースの芸術は、デジタルアート、コンピュータアニメーション、インタラクティブアート、ビデオゲーム、バーチャルリアリティ、ロボティクス、3D印刷などの新しいメディア芸術と呼ばれるカテゴリーにまで拡大しています。

今日では、芸術家が異なるアプローチを単一の包括的かつ豊かな芸術体験に統合する方法を模索するにつれて、空間と時間の分離されたカテゴリーはぼやけてきています。芸術家と鑑賞者の両方にとって、視覚芸術への現代的なアプローチから得られる重要な教訓とは、それぞれの形式的な要素とそれぞれのデザインに対するアプローチとが独特の表現力を持っていることを認識することです。

2.3 芸術に特有の語彙

あらゆる学問分野には「専門用語」があり、それは視覚芸術でも変わりません。視覚芸術の芸術家は、さまざまな材料とプロセスを使用して作品を制作し、芸術評論家は、その作品を記述するための専門用語を使用します。批評および/または記述の目的を果たすために用語を発明しなければならないのは避けられないことです。多くの芸術用語は共通して使用され、広く理解されていますが、あまりそうではないものもいくつかあります。一部の用語は英語以外の言語に由来します。視覚芸術が取るさまざまな形式を説明する過程で、この本では、太字のフォントを使用して用語を導入し、そのあとに説明と定義が続きます。他の学問分野と同様に、ここで特殊な芸術用語を使用することの目的は、物事をより明確かつ直接的にすることです。

2.4 芸術の形式

自然の限界のために、芸術の対象物は空間と時間の次元に限られています。この理由のため、芸術の対象物は、二次元の芸術三次元の芸術四次元の芸術という3つのカテゴリーに分類されます。各カテゴリーには、主に使用される材料とアプローチの違いから派生するいくつかの部門があります。歴史を通じて、芸術の対象物は一般的に、個別の分類に明確に適合しています。しかしながら19世紀には、芸術家たちは、新しい材料の限界と芸術が当てはまるカテゴリーの境界とを探求し始め、それらの限界や境界が現実のものか恣意的なものかを見極めようとしました。

2.4.1 二次元の芸術

二次元の芸術は、紙、キャンバス、または洞窟の壁のような平らな表面で発生します。この芸術は、素描、絵画、および版画という3つの主要カテゴリーにさらに分けることができます。平らな表面で起こるすべての芸術は、これらの3つの活動の1つまたはそれらの組み合わせです。

2.4.1.1 素描

素描(ドローイング)という用語は、視覚的な対象物と行動の両方を記述します。一見すると、素描は平らな表面上に対照的なしるしをつけることからなるように見えます。しかしながら、この言葉は何かそれ以上のことを意味しています。人は、井戸から水を「引き出し(draw)」、またはカリスマ的な人に「引き寄せられる(be drawn)」ことがあります。「ドロー」という言葉には、エッセンスを抽出する、輪郭で描く、つまり「抜き出す」ことに関連した何かがあります。対象物を素描するとは、その外観を観察し、その観察を一連のしるしに移すことです。古代の洞窟の画家たちは、彼らが周囲で見た動物を、その本質的な性質に深く精通していることに基づいて、真に「描き」ました。(図2.1)したがって、この文脈では、素描は観察としるしをつけることの組み合わせです。

図2.1 | ショーヴェ洞窟のライオンの壁の複製(Replication of Chauvet Cave Lion Wall), Author: User “HTO”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

素描は通常、単色の媒体、すなわち、木炭コンテ・クレヨン金属尖筆、黒鉛などの単色の乾いた材料で行われますが、必ずしもそうであるわけではありません。色はパステルを用いて導入することができます。これらの乾いた材料に加えて、自由に流れるインクを使用して素描を作成することもできます。これらの材料は、特定の芸術的な目的を果たすために何世紀にもわたり高度に洗練されてきました。

木炭は、酸素の存在しない状況下で燃焼させた木材または他の有機材料から作られます。このプロセスにより、比較的純粋な黒色の炭素粉末が残ります。芸術家は、この乾燥粉末または顔料を、結合剤、つまり松やにや動物の皮の膠原質から作られた接着剤のような粘着物質とともに圧縮し、手で持てる形のさまざまな濃度と硬度の木炭ブロックを作ります。この圧縮木炭は、通常は紙の上に、非常に暗いしるしを付けるために使用されます。圧縮木炭は消去するのが困難です。

木炭はまた、柳の木炭ブドウの木炭と呼ばれる形でも提供されます。この形の素描用の木炭は、単に小枝を燃やしたものであるため、非常に明るいしるしを残します。これは紙やキャンバスに簡単にはこびり付かず、容易に消せるため、一般に一時的なスケッチに使用されます。圧縮木炭とブドウの木炭のどちらの素描も不鮮明になりやすいため、木炭を描画した表面に付着させて汚れに強いバリアーを作り出すような固定剤で保護する必要があります。

コンテ・クレヨンは、圧縮木炭と同様の手で持つ形の素描の材料です。コンテ・クレヨンは、黒鉛または木炭を、ろうまたは粘土と組み合わせた棒状のもので、白、紅(濃い赤色)から黒までの様々な色と、広い範囲の硬度があります。より硬いコンテは、細部のために使用され、より柔らかい種類のものは広い範囲のために使用されます。ジョルジュ-ピエール・スーラ(Georges-Pierre Seurat、1859–1891年、フランス)によるこの肖像画は、画像を個別のしるしへと分割するために、表面加工された紙の上に黒いコンテ・クレヨンで描画されました。(図2.2)

図2.2 | エドモン・アマン-ジャン(Edmond Aman-Jean), Artist: ジョルジュ-ピエール・スーラ(Georges-Pierre Seurat), Author: User “Pimbrils”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

金属尖筆は、準備された表面に素描のしるしを作成するために、銀、白目、金などの展性のある金属を使用します。(図2.3)その表面にはしるしを保持するための「歯」または粗さがなければなりません。今日、芸術家はこのプロセスのために銀や金のワイヤーを機械的なペンで保持したものを使用していますが、純粋な銀または金の物体であればどのようなものもこれに使用できます。

図2.3 | 少女の頭(Head of a Girl), Artist: レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci), Source: Wikiart, License: Public Domain

黒鉛は、結晶の形をした炭素です。16世紀には、イングランドで純粋な黒鉛の大きな鉱床が発見され、それがこの描画材料の主要な供給源となりました。その銀のような色のために、もともとは鉛の一形態であると考えられていましたが、鉛筆の中には実際の鉛は含まれてはいません。今日の粉末黒鉛は、硬度を制御するために粘土と混合されます。

パステルは圧縮木炭と似ていますが、細かく粉末化された炭素の代わりに、細かく粉砕された着色顔料と結合剤を使用して手で持てる形の着色ブロックを作ります。(図2.4)粉末状の顔料は簡単に不鮮明になるため、作成された画像はガラスの下で掲示するか、固定剤で覆わなければなりません。エドガー・ドガ(Edgar Degas、1834–1917年、フランス)は、彼がパステル画で達成することができた微妙でありながらもはっきりとした色の重ね方で有名です。(図2.5)

図2.4 | パステル(Pastels), Author: User “Tau1012”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.5 | 湯あみの後、体を乾かす女性(Nach dem Bade sich abtrocknende Frau (After the Bath, Woman drying herself)), Artist: エドガー・ドガ(Edgar Degas), Author: User “Crisco”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

オイルパステルは、顔料を多く含む油彩塗料で、クレヨンのように使用される半固体の棒状をしたものです。それらはもともと家畜に印を付けるために考案されましたが、芸術家はすぐにその美的可能性に気づきました。オイルパステルは、従来のブラシを使用することなく、重くざらつきのある油性顔料を任意の表面に塗ったり混ぜたりするのに便利な方法です。色は活気があり、そのしるしは躍動感があり、差し迫ったようでもあるため、オイルパステルの素描は芸術家の「手」を直接的に示すことができます。これは、メアリー・アン・カリアー(Mary Ann Currier、1927年生まれ、米国)による1983年のオイルパステル画である「イースト・パラトカの玉ねぎ(East Palatka Onions)」で見ることができます。(イースト・パラトカの玉ねぎ(East Palatka Onions)、メアリー・アン・カリアー(Mary Ann Currier): https://ketorg.cdn.ket.org/wp-content/uploads/2016/07/currier-ep-onions1100px.jpg)

(インク)は、通常黒色の炭素または黒鉛からなる着色された顔料と結合剤の組み合わせであり、液体中に懸濁し、ペンまたはブラシで塗布するものです。油煙やすす、燃やされた動物の骨、没食子、酸化鉄など、さまざまな物質がいろいろな時代で墨の製造に使用されています。顔料は、細かく粉砕し、結合剤と共に固めなければなりません。水墨画の美術には長い伝統があります。ここでの例は14世紀に作成されたものですが、最古の水墨画は紀元前3世紀の中国のものであり、絹と紙の上に描かれています。(図2.6)

図2.6 | 丹台春暁図 軸(Spring Dawn Over the Elixir Terrace), Artist: 陸廣(Lu Guang), Source: Met Museum, License: OASC

2.4.1.2 絵画

絵画は、ブラシを使用して支持体(通常はキャンバスや紙ですが、時には木製のパネル、金属板、壁など)に着色された液体を塗る、素描の特殊な形式を指します。たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)は「モナ・リザ(Mona Lisa)」を木製パネルに描きました。(図2.7)塗料は、顔料、結合剤、溶剤の3つの主要成分で構成されています。着色顔料は、それらを塗布し、支持体に付着させるための粘着性のある結合剤中に懸濁されます。溶剤はこの結合剤を除去するために溶かしますが、また、塗料をより流動的にするために少量で使用することもできます。

図2.7 | モナ・リザ(Mona Lisa), Artist: レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci), Author: User “Dcoetzee”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

素描と同様に、さまざまな種類の絵画は、主に使用されている材料と関係しています。油彩画、アクリル画、水彩画、ろう画、フレスコ画、テンペラ画は、様々な種類の絵画の一部です。ほとんどの場合、塗料中の顔料または着色剤は同じものです。ある種類の絵画を別の絵画と区別するのは結合剤です。

油彩塗料は15世紀に発見され、植物油、主に亜麻仁油とクルミ油を結合剤として使用しています。亜麻仁油は、その澄んだ色とゆっくりと均等に乾燥する能力のために選ばれました。油彩塗料の溶剤としては、一般にテルペンが使用されます。この媒体は、亀裂または層間剥離(層状に割れること)を回避するため、厳格な塗布の規則を有します。さらに、油彩塗料は、適切に作り上げないと、時間の経過とともに酸化して、暗くなったり黄色になる可能性があります。いくつかの顔料は色あせしやすいことが判明しており、これは特に直射日光にさらされたときに時間の経過とともにその色が失われることを意味しています。これは、レオナルドの「モナ・リザ」の細部で見ることができます。そこでは、この人物の眉毛やまつげが今では「失われて」います。(図2.8)

図2.8 | モナ・リザの目の細部(Detail of the eyes of Mona Lisa), Artist: レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci), Author: User “Cantus”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

アクリル塗料は比較的現代のものであり、結合剤として水溶性アクリルポリマーを使用します。溶剤は水です。アクリルは非常に速く乾燥し、短時間で塗料の厚い層を構築するために使用することができます。アクリルの問題点の1つは、乾燥するにつれて微妙に色が変わることがあるため、この媒体は肖像画や正確な色が重要な他のプロジェクトには適していないことです。それにもかかわらず、今日の多くの芸術家は、油彩塗料よりもアクリル塗料を好んでいます。その理由の一部は、使用と片付けの容易さと、乾燥時間が速いため芸術家がより速いペースで作業できるからです。

水彩塗料は、アカシアの木から抽出した水溶性のアラビア・ゴム結合剤として着色顔料を懸濁します。水彩塗料を水と混ぜ、通常は紙である吸収性の表面にブラシで塗ります。工業化時代の前には、水彩は油彩塗料よりも携帯に便利だったため、屋外のスケッチ用媒体として使用されていました。油彩塗料は、使用の準備が必要であり、長時間保存できないか、容易に運ぶことができなかったためです。(図2.9)しかしながら、今日では、多くの芸術家が主要な媒体として水彩を使用しています。

図2.9 | スポンジ・ダイバー(The Sponge Diver), Artist: ウィンスロー・ホーマー(Winslow Homer), Author: User “Botaurus”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

ろう画は溶融した蜜蝋を結合剤として使用し、加熱されたブラシを備えた木材のような硬い支持体に塗布しなければなりません。ろう画の利点は、何世紀にもわたって鮮やかで活気があることです。ローマ占領期(紀元前1世紀後半~紀元3世紀)の古代エジプトのろう画は、まるで最初に描かれたときと同じくらい鮮明に色づけされています。(図2.10)

図2.10 | エウテュケス少年の肖像画(Portrait of the Boy Eutyches), Source: Met Museum, License: OASC

フレスコとは漆喰に塗装するプロセスです。これは長続きする技術です。フレスコ画には2つの種類があります。1つは、ブオン・フレスコ、または「良い」フレスコで、湿った漆喰の上に塗装します。もう1つは、フレスコ・セッコ、または乾いたフレスコで、漆喰が乾燥した後に行われます。顔料が塗られると湿った漆喰が顔料を吸収するため、ブオン・フレスコの技術を使用して作成された絵画は壁の一部になります。(図2.11)ブオン・フレスコ画の絵を修正する唯一の方法は、それを壁から剥がしてやり直すことです。ブオン・フレスコ画は区分に分けて行う必要があります。それぞれの区分は、「1日の仕事」を表すイタリア語であるジョルネートと呼ばれています。フレスコ・セッコは、乾いた漆喰の上に行われるためより簡便ですが、湿度の変化や壁の損傷が絵を傷つける可能性があるので、あまり長持ちしません。乾燥した空気と安定した天候のため、古代エジプトの墓には古いもので紀元前3000年に作成されたフレスコ・セッコの壁画がほとんどそのままに残っています。(図2.12)

図2.11 | アダムとイブのエデンからの追放(The Expulsion of Adam and Eve from Eden), Artist: マサッチオ(Masaccio), Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.12 | ネバムンの墓の踊り子と音楽家のフレスコ画(Nebamun Tomb Fresco Dancers and Musicians), Author: User “Fordmadoxfraud”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

テンペラ画は何世紀にもわたって存在しています。中世の最も人気のある絵画は卵テンペラで、乾燥した着色顔料を卵黄と混ぜ、細かいブラシストロークで安定した表面に層を作るように素早く塗りました。卵黄の混合物は非常に速く乾燥するので、卵テンペラは習得が困難な媒体であり、絵画の表面を傷つけることなく間違いを訂正することができません。サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli、1445–1510年、イタリア)の「ヴィーナスの誕生(The Birth of Venus)」は、卵テンペラによる絵画です。(図2.13)

図2.13 | ヴィーナスの誕生(The Birth of Venus), Artist: サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli), Author: User “Dcoetzee”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

2.4.1.3 版画

版画とは、顔料を母材から最終表面(しばしば紙であるが、必ずしもそうではない)に転写することによって作られた画像です。版画では、芸術作品の複数の複製を作成できます。個々の芸術作品の複数の複製は(エディション)と呼ばれます。

版画には、凸版、凹版、平版、ステンシルの4種類の主要なタイプがあります。凸版印刷は、母材から材料を除去することによって行われます。母材とは、画像が刻まれた表面であり、木、リノリウム、または金属であることが多いです。(図2.14)残存した表面はインクまたは顔料で覆われ、その後紙がこの表面に押し付けられてインクが引き上げられます。活版印刷は、インクを紙に転写する凸版印刷プロセスですが、紙の表面にくぼみを押し込むことにより、しばしば高品質のしるしと考えられる質感を印刷物に作り出します。

図2.14 | 木の浮き彫り彫刻(Relief Wood Carving), Author: User “Zephyris”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

凹版印刷は、デザインが母材(通常は金属板)に刻み付けられている場合に行われます。インクが表面の全体に乗せられて、刻まれた場所に集まります。余分なインクが拭き取られ、紙が板に押し付けられて、刻まれた場所からインクを引き上げます。凹版印刷にも質感が含まれます。

平版印刷は、水を選択的に受け入れるかまたは排除するために母材を化学的に変化させることによって行われます。もともと、石灰岩がこのプロセスのために使用されました。石灰岩は、自然には水をはじきますが、化学的にそれを吸収するように変えることができるためです。石の母材を用いたリトグラフィーでは、石灰岩の平坦なブロックの上に黒い油性鉛筆で絵を描き、それを硝酸で処理します。(図2.15)硝酸は石灰岩を溶解しませんが、それを化学的に変化させて水を吸収するようにします。油性鉛筆を除去して、石を濡らします。油性鉛筆が石を酸から保護した場所では、石灰岩は水をはじき、乾燥したままになります。次に、油をベースにしたインクを石の上に広げます。石が乾いているところでは、インクは固着しますが、石が濡れているところでは、インクは固まりません。インクで覆われたローラーを通過させることによって、画像は所望の暗さまで「盛り上げられ」、次いで、紙を表面に押しつけてインクを引き上げることによって印刷されます。今日の商業印刷のほとんどは、石灰岩ブロックの代わりにアルミニウム板を使用したリトグラフ印刷か、またはインクが塗られた画像が金属板からゴムシリンダーへと転写され、次いで紙に転写されるオフセット印刷です。(図2.16)

図2.15 | リトグラフィー印刷に使われる石(Stone used for lithography print), Author: User “AndreasPraefcke”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.16 | リトグラフィー印刷機(Lithographic Press), Photographer: クレメンス・ファイファー(Clemens Pfeiffer), Author: User “Panoramafotors”, Source: Wikimedia Commons, License: Copyright — Permissions Granted

ステンシル印刷は、多孔質の細かいメッシュ状の母材にインクを通すことによって行われます。たとえばシルクスクリーン印刷では、シルク生地が剛性フレームにしっかりと取り付けられます。生地の一部の領域が遮られて画像が形成されます。生地で裏打ちされたフレームは、紙、キャンバス、または布の上に置かれます。次に、ゴムへらでフレームを横切るようにインクを伸ばします。生地が塞がれている場合、インクは転写されません。生地が透き通っている場合、インクが受け手の表面上に押し込まれます。

オリジナルの印刷と複製物を区別できることが重要です。オリジナルの印刷とは、手作りの印刷のことです。それぞれの印刷は手作りの特徴のために微妙に異なるので、それぞれの印刷はオリジナルの芸術作品と見なされます。(図2.17)オリジナルの印刷の版(エディション)は、数枚から数十枚、数百枚の範囲の複製です。複製物とは、機械的に作り出されるもののことです。まず、オリジナルの芸術作品が撮影され、次いで、この写真をプレス機械の上の印刷版に転写します。それぞれの印刷はほぼ同じもので、版(エディション)は数千から数万にも及ぶことがあります。(図2.18)

図2.17 | リノリウム印刷を準備する芸術家(Artist Preparing Linoleum Prints), Author: Kyle Van Horn, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY 2.0
図2.18 | オフセット印刷機(Offset Press), Author: User “Rémih”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

個々の印刷の価値は、オリジナルの印刷か複製物か、1つの版(エディション)での印刷枚数などを含む、多くの要因によって決まります。最近、ジークレーという名の新しい種類の印刷が人気を博しています。これは本質的にはデジタルインクジェット印刷です。ジークレー印刷を購入する人は、製造に無酸紙と記録用インクのみが使用されているように注意する必要があります。紙を作る繊維は多くの異なる源から来ることができ、その中には酸を含んでいるものもあり、年月とともに紙を黄色く変色させます。時間が経つにつれて、インクの顔料は色あせることがあり、色の濃さが失われ、色相が変化することさえあります。これらの効果は印刷の価値を低下させます。無酸紙と記録用インクはこれらの欠陥に対抗するものであり、この芸術の対象物のオリジナルの外観を保存し、その価値を維持します。

2.4.2 三次元の芸術

三次元の芸術とは、平らな面を超えて、高さ、幅、奥行を含むものです。3つの次元で芸術を作り出すには、主として4つの方法があります。すべての三次元芸術は、彫刻、モデリング、鋳造、または組み立ての4つの方法のうちの1つまたはその組み合わせを使用します。20世紀に登場した三次元芸術の1つの形式は、インスタレーションであり、これは鑑賞者が空間の中に囲まれているか、または芸術家によって改変されている空間を移動する作品です。

彫像は、自立している(「あらゆる角度」から見られる)こともできますし、または浮き彫り、つまり背景の表面から突き出た彫像であることもできます。浮き彫り彫刻には、浅浮き彫りと高浮き彫りという2つのカテゴリーがあります。浅浮き彫りでは、背景の表面から突き出す量が制限されています。浅浮き彫りの彫刻の良い例はコインであり、これらの古代ローマのコインのタイプは紀元前300年頃から紀元400年頃のものです。(図2.19)また、多くのエジプトの壁面芸術も、浅浮き彫りです。(図2.20)彫刻された形の半分以上が背景の表面から突き出ている場合、高浮き彫りの彫刻となります。この方法は一般にアンダーカットと呼ばれる効果を作り出します。この効果では、突き出た表面の一部が背景の表面から離れています。古代ギリシャの神殿であるパルテノン神殿に描写された神話のシーンや(図2.21)、ロバート・ロンゴ(Robert Longo、1953年生まれ、米国)による企業戦争シリーズ(企業戦争(Corporate Wars)、ロバート・ロンゴ(Robert Longo): http://media.mutualart.com/Images/2009_07/24/0205/582184/49777ffa-d61f-42aa-a3f1-9c47ed564b05_g.Jpeg)の両方とも、アンダーカットを使用した高浮き彫りの例です。

図2.19 | 一般的なローマのコイン(Common Roman Coins), Creator: ラシエル・スアレス(Rasiel Suarez), Author: User “FSII”, Source: Wikimedia Commons, License: GFDL
図2.20 | エジプトの浮き彫り彫刻(Egyptian Relief Carving), Author: User “GDK”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.21 | ケンタウロスと闘うラピテース(Lapith fighting a centaur), Author: User “Jastrow”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

モデリングは、粘土や石膏のような簡単に成形できる材料を最終的な形に作り上げる付加的なプロセスです。いくつかのモデル化された形は、骨組み、すなわちしばしばワイヤで作られた剛性の内側の支持体から始まります。骨組みは、自重で崩壊しかねない湿潤粘土のような柔らかい、または流動性のある材料を構築することを可能にします。この彫刻の方法には、テラ・コッタまたは焼成粘土で作られた最も古典的な肖像彫刻が含まれています。(図2.22)粘土はモデリングに適しており、この種の作品のための一般的な媒体ですが、粘土は彫刻したり、鋳造したりすることもできます。

図2.22 | マクシミリアン・ロベスピエールの胸像(Bust of Maximilien Robespierre), Artist: クロード-アンドレ・ドゥセーヌ(Claude-André Deseine), Author: User “Rama”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 2.0

彫刻とは、芸術の対象物を形成するために素材を除去することです。彫刻は、通常は材料の固まり、最も一般的には石から始まる、差し引いていくプロセスです。最終的な形状が出現するまで石を削り取るために、道具(通常は金属または金属が取り付けられたもの)が使用されます。(図2.23)彫刻の主な問題は、正しい形に到達することを除いて、あまりにも多くの材料を削り取らないように注意することです。一度除去したものは元には戻すことができません。(図2.24)いくつかの彫刻された石の彫像の最終的な形状は、芸術家の意図だけでなく、あまりにも多くの石が取り去られたときに芸術家が「コースを変える」原因となるような、予測不能な変形によって引き起こされる微妙な変更の結果の可能性があります。この可能性は、訓練された彫刻家がその媒体の限界を知らないことを示唆するものではありません。芸術家はしばしば驚きに遭遇し、革新的な人たちはそれらを組み込んだ解決策を生み出すことがあります。

図2.23 | 一揃いののみ、たがね、木槌(A selection of woodcarving gouges, chisels, and a mallet), Author: User “Aerolin55”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0
図2.24 | 石を削る彫刻家(Sculptor Carving Stone), Author: Bain News Service, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

異なる種類の石は、硬度や色や外観が異なります。すべての石が彫刻に適しているわけではありません。石灰岩の一種である大理石は、その柔らかさと均一な色彩のために古代ギリシャ人やローマ人に好まれていました。(図2.25)エジプトとメソポタミアの文化では、硬度と耐久性のために、閃緑岩、片岩(粘板岩の一形状)、硬砂岩(花崗岩の一種)が好まれました。(図2.26)中国人は伝統的に翡翠 — 多くの色合い、もっとも一般的には緑色をしている硬く脆い石 — を知恵、権力、富を示すために使用してきました。(図2.27)

図2.25 | エイレーネー(平和の擬人化)の大理石の彫像(Marble statue of Eirene (the personification of peace)), Artist: Kephisodotos, Source: Met Museum, License: OASC
図2.26 | サイスの統治者プサムテクの神殿に付随するブロック像(Naophorous Block Statue of a Governor of Sais, Psamtik), Source: Met Museum, License: OASC
図2.27 | 葡萄のデザインを持つ花柄の翡翠の装飾品(Jade ornament of flowers with grape design), Author: User “Mountain”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

木材もまた、彫刻材料としてよく使用されます。大きさと質感の差異のために、異なる種類の木材は異なる彫刻のための品質を有しています。一般に、木材は湿度の変化に反応し、耐久性に欠けますが、その柔軟性と成形の容易さから称賛されています。平安時代(紀元794–1185年)に、日本の芸術家である定朝は、寄木造を使って「阿弥陀如来坐像(Seated Buddha)」の彫像を作りました。(図2.28)

図2.28 | 阿弥陀如来坐像(Seated Buddha), Artist: 定朝(Jōchō), Author: User “Kosigrim”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

鋳造とは、ろうや粘土などの最初の彫刻材料を、青銅、つまり銅とスズの混合物である合金などの別の材料、通常はより耐久性のある材料で置き換えたり、代替したりするプロセスです。鋳造は、同じ物体の複数のバージョンを作成することも可能にするプロセスです。

失ろう法のプロセスでは、元の彫刻は、しばしば粘土で形作られ、ろうで表面を覆われ、ついで鋳型を作るために石膏で覆われます。石膏が乾燥すると、ろうを溶融するために加熱されて、溶けたろうは鋳型から流れ出ます。そして、(失われた)ろうの被膜と元の彫刻された形態との間の鋳型内の空間に溶融した金属が注がれます。金属が冷却されて固まると、鋳造された金属物体を取り出すために石膏が壊されます。(図2.29)対象物の複数のバージョンを作成するには、鋳型を破壊することなく取り外すことができるように鋳型を作成する必要があります。(図2.30)この操作は、原型を鋳造している間に鋳型をいくつかの部分に分けることによって一般的に実現されます。また、部分ごとに分ける鋳型は、溶融することができないかまたは鋳型から取り外すことができないような元の物体を鋳造するためにも使用されます。そのような形態を鋳造するには、原型を取り除いた後、分けられた部分を再度固定します。いくつかの場合では、複雑な彫像はいくつかの部品として鋳造され、結果としてできた金属部品が溶接されてつなぎ合わされます。

図2.29 | 失ろう法の鋳造工程(Lost Wax Casting Process), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0
図2.30 | 部分ごとに分けた鋳型(Sectional Mold), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0

組み立て、またはアサンブラージュは、かなり最近の彫像の種類です。現代になるまでは、彫刻、鋳造、モデリングが、美術の彫像を作る唯一の受け入れられた方法でした。近年、彫刻家は自分たちのアプローチを拡大し、物体や材料を手作業で結合する組み立てのプロセスへと向き合いました。組み立ては、しばしばミックス・メディアからなり、これは、所望の効果を達成するために全く異なる物体および物質が使用されるプロセスです。

ルイーズ・ネヴェルソン(Louise Nevelson、1899–1988年、ウクライナ、米国に居住)は、彼女が高級家具工房の近くで時間を過ごしていたために、切断された木材やその他の捨てられた物を回収して彫刻に使用したのでしょう。彼女の芸術の実践は、見つけた物体の使用を伴っていました。ネヴェルソンの「空の大聖堂(Sky Cathedral)」を考えてみましょう。(空の大聖堂(Sky Cathedral)、ルイーズ・ネヴェルソン(Louise Nevelson): http://www.moma.org/collection/works/81006)彼女は見つけた物体で個々の木箱を満たしました。そして彼女は、これらの箱を大規模な組み立て品として配置し、単一の色、通常は黒または白で塗りつぶしました。彫像の副次的な単位であるそれぞれの箱は、別々の視点または別々の世界として読むことができます。全体の効果は、単一性と多様性の両方が1つの芸術作品の中で可能であることを認識することです。

インスタレーション組み立てに関連していますが、内部空間または外部空間を変換して、筋書きのない環境との相互作用の中に鑑賞者を取り囲み、取り込む経験を作り出すことが目的です。そこでは、鑑賞者は距離をとって芸術を体験するのではなく、芸術にひたります。たとえば、カールステン・ホーラー(Carsten Höller、1961年生まれ、ベルギー、スウェーデン在住)は、ロンドンのテート・モダンにある5階建てのオープン・スペースであるタービン・ホールに「テスト・サイト(Test Site)」を設置しました。(図2.31)これは、世界各地の美術館にホーラーが作成した一連の滑り台の一部であり、彼は訪問者に実用的ではあるが慣習的ではない輸送手段を使用するよう促し、その間に瞬間的な制御の喪失や個々人が感じる感情的な反応を経験することを奨励しようとしていました。

図2.31 | テスト・サイト(Test Site), Artist: カールステン・ホーラー(Carsten Höller), Author: User “The Lud”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

特定の場所を対象としたインスタレーションは、場所固有のインスタレーションと呼ばれます。場所固有のインスタレーションの良い例は、リチャード・セラ(Richard Serra、1939年生まれ、米国)による「傾いた弧(Tilted Arc)」(傾いた弧(Tilted Arc)、リチャード・セラ(Richard Serra): https://en.wikipedia.org/wiki/File:Tilted_arc_en.jpg)、ウォルター・デ・マリア(Walter De Maria、1935–2013年、米国)による「稲妻の平原(Lightning Field)」(稲妻の平原(Lightning Field)、ウォルター・デ・マリア(Walter de Maria): http://sculpture1.wikispaces.com/file/view/Walter_de_Maria_Lightning_Field_1977.jpg/310921734/800x686/Walter_de_Maria_Lightning_Field_1977.jpg)、ロバート・スミッソン(Robert Smithson、1938–1973年、米国)による「スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty)」(図2.32)、アント・ファーム(Ant Farm)として知られる芸術団体による「キャデラック・ランチ(Cadillac Ranch)」です。(図2.33)インスタレーションは公共の芸術作品としてますます人気のある形式となっており、それは一部にはこれらの作品の多くが大規模であるためです。

図2.32 | スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty), Artist: ロバート・スミッソン(Robert Smithson), Author: User “Yonidebest”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 2.0
図2.33 | キャデラック・ランチ、アマリロ(Cadillac Ranch, Amarillo), Artist: アント・ファーム(Ant Farm), Author: Richie Diesterheft, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY 2.0

キネティック・アートとは、動いている、または動いているように見える芸術です。一般的にこの芸術は彫刻的です。キネティック・アート作品の良い例は、アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder、1898–1976年、米国)による吊り下げられて自由に動くモビールであり、そのデザインの一部として形を変えることが意図されています。(赤い睡蓮の葉(Nénuphars Rouges)、アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder): http://www.wikiart.org/en/alexander-calder/red-lily-pads-n-nuphars-rouges-1956?utm_source=returned&utm_medium=referral&utm_campaign=referral)「ニューヨーク賛歌(Homage to New York)」はキネティック・アートの作品であり、ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely、1925–1991年、スイス)はこれが自壊することを意図していましたが、地方の消防署が割り込んでそのプロセスを止めたため、目的を達成することはできませんでした。(ニューヨーク賛歌(Homage to New York)、ジャン・ティンゲリー(Jean Tinguely): http://www.wikiart.org/en/jean-tinguely/homage-to-new-york-1960)ルーベン・マーゴリン(Reuben Margolin、米国)は現代芸術家であり、交差する波を使って美しく波打つ彫像を作り出しています。次のリンクをクリックして、マーゴリンの「四角い波(Square Wave)」の動画を見てください。ペーパータオルの管、釣り用の回転台、釣り糸などのシンプルな材料から始まり、その後は木材、金属、ワイヤーなどのより耐久性のある材料を使用して、より大きく複雑な彫像へと移っていくことにより、マーゴリンは、瞑想的に流れる彫像を作り出すというキャリアを築き上げました。

2.4.3 四次元の芸術

四次元の芸術または時間ベースの芸術は、動画、プロジェクション・マッピング、パフォーマンス、および新しいメディア芸術を含む比較的新しい芸術の実践の態様です。

ビデオ・アートは、投影された動画という比較的新しい技術を使用しています。これらの画像は、電子モニター上に表示することも、壁や建物に投影することもできます。彼らは光を媒体として使います。ナム・ジュン・パイク(Nam June Paik、1932–2006年、韓国、米国に居住)の初期のビデオ構造物が良い例です。「TVチェロ(TV Cello)」では、ビデオ・モニターがチェロの形で組み立てられています。(TVチェロ(TV Cello)、ナム・ジュン・パイク(Nam June Paik): http://a141.idata.over-blog.com/356x499/1/96/04/42/s-rie-F/Paik-N.-J.-TV-Cello.jpg)この物体に弓が引かれたとき、チェロを演奏する女性の画像がスクリーンに現れました。

プロジェクション・マッピングは、ビデオ投影の別の用途です。1つまたは複数の二次元または三次元対象物(多くの場合、建物)が、仮想プログラム内に空間的にマッピングされ、これにより画像を投影される対象物の表面に一致させることができます。(図2.34)エバン・ロス(Evan Roth、1978年生まれ、米国、フランス在住)は、ビデオを投影してグラフィティーを作成し、その結果を写真に撮影します。したがって、この作品は一時的なものです。空間的に拡張された現実というこの方法は、恒久的なしるしを残すことなく、公共の空間から人間の顔まですべてを「タグ付け」するために、多数の芸術家(および広告主)によって使用されてきました。

図2.34 | サン・ジャン大聖堂のイルミネーション(Cathédrale St Jean illuminée), Author: User “Gonedelyon”, Source: Wikimedia Commons, License: User “Gonedelyon”

パフォーマンス芸術は、芸術家の媒体が動作であるような芸術です。パフォーマンス芸術作品は、一般的に写真撮影により記録されていますが、芸術作品は動作そのものです。「カット・ピース(Cut Piece)」は、オノ・ヨーコ(Yoko Ono、1933年生まれ、日本、米国在住)によるパフォーマンス作品であり、もともとは1964年に創作されました。その中では、この芸術家が舞台に座っている間に彼女の衣装をきざむためのはさみが観衆に与えられました。(カット・ピース(Cut Piece)、オノ・ヨーコ(Yoko Ono): https://en.wikipedia.org/wiki/File:CutPieceOno.jpeg)この芸術家は彼女の衣服が剥がれ落ちるのを受動的に認めており、参加者と鑑賞者は、彼女が全体から部分へと変化していくことの主導権を握っています。

新しいメディア芸術とは、通常、デジタル・アート、コンピューター・アニメーション、ビデオゲーム、ロボット、3D印刷などのインタラクティブな作品を指し、芸術家はこれらの新しい創造的技術による表現の潜在的な可能性を探求します。インターネットによる国際的なつながりは、芸術を含む情報のやり取りのグローバル化を導きました。芸術での新しいメディアの使用の一例は、マーク・リー(Marc Lee、1969年生まれ、スイス)による「10000の移動都市(10000 Moving Cities)」です。この作品では、鑑賞者は、選択された都市からの画像がデジタル都市の構造物に投影されるビデオを映し出すヘッドセットを着用します。鑑賞者は、頭の動きによって新しい空間内を移動することができます。選択された都市のリアルタイムなソーシャルメディア画像とテキストもキャプチャされ、投影されます。

2.5 形式と構成

芸術を見るとき、今日では多くの人々はそれを理解するために全体論的またはゲシュタルト的なアプローチをとっています。このアプローチでは、芸術作品は単一の統一された全体として経験され、直観的な結論が引き出されます。芸術へのこのアプローチは始めるのに良い場所ですが、芸術作品の個々の部分とそれらの部分が全体に対して持つ関係を調べることもまた有益です。私たちが芸術作品を分解して調べるとき、私たちはそのデザインを見ています。デザインは大きく2つのカテゴリーに分かれています。デザインの要素とデザインの原則です。デザインの要素とは、芸術作品の物理的な部分、つまり形式です。デザインの原則とは、それらの部分を配置または使用する方法、つまり構成です。

2.5.1 デザインの要素

デザインとは、芸術作品のさまざまな部分を作成して組み立てるための統括的な計画またはアプローチです。まったくの偶然であるか、完全に芸術家の無意識の直感から来た芸術作品を見ることはまれです。さらに、芸術作品のさまざまな部分が配置される方法(直感的あるいは偶然の作品であっても)を見ることは、芸術家の目標と信念、芸術家が活動している共同体、そしてその芸術作品が取り組むことを意図した問題に対する手がかりを明らかにします。

デザインには、線、形、質量/体積、遠近法、質感、色の6つの基本要素があります。これらのデザインの要素を考える方法の1つは、次元の「はしごを上がる」ことです。私たちの知覚する世界は、空間の三次元と時間の一次元を持っています。数学的には、点の次元はゼロです。線は1つの次元、長さを持っています。形には長さと高さの2つの次元があります。質量または体積のある形は、長さ、高さ、および幅の3つの次元を持ちます。点から体積への移動では、私たちは0から3まで次元の「はしごを上がりました」。物理空間の三次元に加えて、芸術家が所与の作品に組み込むことができる2つのものがあります。彼らは質感を導入することができ、そして色を導入することができます。

ここでは、デザインの各要素の定義とダイナミクスについて簡単に説明します。

2.5.1.1 線

線はデザインの最初の要素です。は、ある方向に並べられた無限の一連の点です。線の方向は、直線(変化しない)か、あるいは曲線(変化する)です。あらゆる種類の対象物は線形であり、主に線を使用して形成されます。書道、または「美しい筆跡」は、1つの人気のある線の使い方です。筆跡の中の線の特徴には、2つの主な機能があります。まず、書かれた記号の線形の図形あるいは形は、その意味を示します。第2に、図形がどのように作成されるかの態様は、それ自体表現的であると見ることができます。トゥグラ(tughra)、つまりスルタンの書道による署名と、アラビア書道の洗練された文章は、アジアの手跡の多くの作品と同様に、表現力豊かな美しさで知られています。筆跡を評価する多くの文化では、手跡の美しさは手跡に含まれるメッセージと同じくらい重要です。(図2.35)

図2.35 | スルタン・スレイマン壮麗帝のトゥグラ(公式の署名)(Tughra (Official Signature) of Sultan Süleiman the Magnificent), Source: Met Museum, License: OASC

線の質の1つは、ジェスチャーです。ジェスチャーとは、ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)が絵を描いている最中のこの写真に見られるように、芸術家の手、腕、または身体の動き、材料とのある種のダンスの動きにより作り出された線です。(ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock): https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/b/b7/Jackson-Pollock.jpg)たとえば、短く不揃いで、細かく途切れた線は、性急なもの、または自信や優雅さの欠如と読めるかもしれません。均等に描かれた水平線は静けさを表現します。直線は、硬さを表すことができますが、これは良いものでも悪いものでもなく、文脈に依存します。硬い橋は、橋が崩壊しないことに頼っている人にとっては良いものです。嵐の中の硬い木は時には根元から倒れてしまいます。

輪郭とは、異なる領域が遭遇して境界を形成する場所の線です。人間の視覚には、自然界の境界を検出するように強化された機能が含まれています。輪郭線は、背景から突出した対象物の形に従います。地図作成では、輪郭線は等高線となり、垂直の高さの規則的な増分で風景の形を示します。等高線図では、何本もの線が近くに表示されるときは、高さの急激な変化を示します。遠く離れている線は、より緩やかな斜面を示します。(地上検証等高線(GroundTruth Contours): https://wiki.openstreetmap.org/w/images/thumb/b/b5/GroundTruthContours_Detail.png/300px-GroundTruthContours_Detail.png)

クロスハッチングは、均等に間隔を置いて交差する線を使用して、体積または明暗の認識を作り出します。これらのクロスハッチング線は、一般に物体の形状に従います。(図2.4および図2.36)

図2.36 | 剣を持つ裸の男性の姿(Nude Male Figure with a Sword), Artist: アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel), Source: Met Museum, License: OASC

いくつかの線はまったく描画されることがありません。その代わりに、意図的な形の整列によって暗示されたり示唆されたりします。円の内側の正方形の画像は暗示された線の例です。(図2.37)芸術作品の端部を超えて収束する線は別の例であり、遠くで交差することを意味しています。実際には存在しない線の3番目の例は、精神的な線です。芸術作品の中でお互いを見ている2人の人は、彼らの間に精神的な線を作ります。

図2.37 | 円の内側の正方形、暗示された線の実証(Square inside a circle, demonstration of implied lines), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0

線には表現力豊かな内容があります。その性質上、線は鑑賞者にその経路に従うように強制します。線の特徴は、鑑賞者の方向、スピード、および注意を制御することができます。線の動きは、湾曲していても、角度があってもかまいません。線は、スムーズに、あるいは途切れたリズムで進むことができます。線は太くても細くても、薄くても濃くてもかまいません。これらの性質は、合理的かつ感情的に「読まれます」。従って、線は、鑑賞者の内観によってしばしば見いだされる表現力豊かで感情的な内容を有することができます。

線は単なる二次元のデザインの要素ではありません。たとえば、ワイヤーは、三次元に拡張することができる線形の媒体です。アレクサンダー・カルダーのワイヤーによる彫像や肖像は、三次元における線の表現力の素晴らしい例です。(アクロバット(Acrobats)、アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder): http://www.calder.org/system/post_images/images/000/001/082/medium/A00504.jpg?1352222725)もう1つの例は、光で空間の中に絵を描くパブロ・ピカソであり、写真家のジョン・ミリ(Gjon Mili、1904–1984年、アルバニア、米国に居住)が1949年にライフ・マガジンのために撮影したものです。(光の素描(Light Drawings)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso): http://www.designboom.com/art/pablo-picassos-light-drawings-from-1949/)

2.5.1.2 形

形というデザインの要素は、次元のはしごを上がった次の要素です。には、長さと幅の2つの次元があります。形は、規則的または不規則的、単純または複雑でありえます。形は硬いエッジを持つこともあれば、柔らかなエッジを持つこともあります。硬いエッジのある形では境界線が明確に定義され、柔らかいエッジの形ではゆっくりと背景に消えていきます。形には大きく2つのカテゴリーがあります。幾何学的なものと有機的なものです。幾何学的な形とは、直線と曲線を使用する規則的で秩序だった形です。有機的な形とは、一般に不規則で、しばしば混沌としています。ハンス・アルプ(Hans Arp、1886–1966年、フランス、スイスに居住)は、「無題(Untitled)」という作品で、破れた紙と切断された形を使用して、抽象的な構成を作成しました。四角形は幾何学的な物体ですが、アルプの破れた不規則なエッジはそれらを有機的な形に変換します。これらの形の位置づけは、おおよそグリッド構造に近似していますが、やはりそれらの規則的な秩序からのずれは、混沌とした偶発的な配置を意味しています。この作品では、アルプは「秩序のエッジ」で踊っています。(図2.38)

図2.38 | 無題(偶然の法則に従ってアレンジされた四角形のコラージュ)(Untitled (Collage with Squares Arranged according to the Laws of Chance)), Artist: ジャン・ハンス・アルプ(Jean Hans Arp), Source: MoMA, License: Public Domain

二次元の芸術作品では、形は、として知られている二次元の表面に置かれた図です。これは、図/地の関係として知られる、前景と背景との間の関係を生成します。は、地の前にあるように見える対象です。いくつかの作品では、この関係は意図的に不明瞭にされています。この場合、図/地の反転と呼ばれる効果が生じることがあります。図/地の反転では、図の正の形として見られていたものは、地の負の空間として見られることもできます。この効果は、芸術作品内の空間の感覚を乱し、鑑賞者を混乱させます。(エッシャー、ウッドカットII、ストリップ3(Escher Woodcut II Strip 3), マウリッツ・コルネリス・エッシャー(Maurits Cornelis Escher): http://www.tau.ac.il/~tsurxx/FigureGround/Escher2.GIF)

2.5.1.3 質量/体積

次元のはしごの次の段、そして最後の段は、体積あるいは質量です。体積には、長さ、幅、高さの3つの次元があります。体積には、内部または外部の輪郭があり、それらは閉じた形でも開いた形でもかまいません。質量は物質の量であり、しばしばその重量を意味します。閉じた形とは、穿孔されていない、または穴があけられていない体積のことです。古代エジプトの彫像の1つの目標は、永遠に持続することでした。したがって、彼らは、より構造的に堅牢でより摩耗や破損に強い、閉じた彫刻の形態を使用していました。(図2.26および図2.39)閉じた形はからっぽの空間によって取り囲まれていますが、このからっぽの空間は閉じた形の中を通り抜けません。逆に、開いた形はからっぽの空間によって取り囲まれていますが、このからっぽの空間は開いた形の中を通り抜けもします。開いた形の彫像は、それらが表現する図形により近い形であり、したがって、元の参照物に対してよりそっくり、あるいは「忠実」です。

図2.39 | ハトシェプスト女王のスフィンクス(Sphinx of Hatshepsut), Source: Met Museum, License: OASC

ヘンリー・ムーア(Henry Moore、1898–1986年、イングランド)のような現代の彫刻家は、閉じた形と開いた形だけでなく、負の空間と正の空間の抽象的な使い方を模索してきました。(もたれかかる人 1969–70(Reclining Figure 1969–70)、ヘンリー・ムーア(Henry Moore): https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/08/PikiWiki_Israel_12097_reclining_figure_by_henry_moore_in_tel_aviv.jpg)三次元芸術では、正の空間とは、所与の体積が占める空間です。一方、負の空間とは、その体積内のからっぽの空間です。この形状がどのように想像上の境界の周りでねじれているかに注目してください。真ん中にある「鞍」は、目に見えない重量がそこでこの形を押し込んでいることを示唆しています。この彫像は、青銅によって占有されている体積と同じくらい、周囲のからっぽの空間に大きく依存しています。さらに、その質量はその形の開放性によって軽減されていますが、これは特に古代エジプトの彫像の完全に閉じた形と比べると明らかになります。

平面の上に形の三次元性(質量と体積)を伝えるために、芸術家は、イタリア語で「明-暗」を表すキアロスクーロ(chiaroscuro:明暗法)、つまり明暗の変化する色合いを使用します。形は光源に向かうにつれて明るく見え、光源から遠ざかるにつれて暗く見えます。光と影の変化は、空間における体積の錯覚を作り出します。レオナルドのモナ・リザの顔と手は、キアロスクーロの傑作とみなされています。(図2.7)

2.5.1.4 遠近法

芸術における遠近法は、平らな表面上における空間の錯覚です。15世紀のイタリアにおける線遠近法の幾何学的な体系の発見の以前には、空間の錯覚は、空間の後退についての3つの主要な視覚的な手がかりを使用することによって作り上げられていました。これらの3つの手がかりとは、高さ、スケール、重なりです。描画の表面上で高い所にある対象物、スケールの小さい対象物、および他の対象物によって部分的に覆い隠された対象物は、すべて空間内で遠く離れているように見えます(図2.40)

図2.40 | 高さ、スケール、重なり(Height, Scale, and Overlap), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0

線遠近法は、空間の規則的、かつ幾何学的な後退に基づいています。線遠近法では、消失点と水平線を使用します。消失点は、すべての後退していく線が水平線上で収束するように見える場所です。水平線は、すべての可能な目の高さの消失点の集合です。(図2.41)直交線は、消失点で出会うように見える線であり、規則的な空間の後退を意味します。水平線と消失点は、芸術家の意図の手がかりを与えてくれることがあります。たとえば、レオナルドの「最後の晩餐」では、この芸術家はイエスの頭のすぐ後ろに消失点を置いています。(図1.25を参照)消失点とは鑑賞者の視覚が無限に一方向に引き伸ばされるところであるため、レオナルドが消失点をイエスの頭の後ろに置いたことは、イエスとキリスト教の神の無限性とを結びつけることになります。

図2.41 | 一点透視図法(One-Point Perspective), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0

線遠近法が一貫性のある幾何学的な体系として定式化される前は、画家たちは後退する空間を描写するために直感的な遠近法を用いました。直感的な遠近法は、後退していく線が収束することは認めますが、それらが単一の水平線と消失点に収束することは認識しません。それにもかかわらず、線遠近法の厳密な一貫性のある幾何学的な体系が絵画に欠けている場合でも、地平線がどこにあるかを判断することで、芸術家がどのように対象を見ているかを知ることができます。チマブーエ(Cimabue、1240–1302年、イタリア)とジョット(Giotto、1266/7–1337年、イタリア)による、「荘厳の聖母(Madonna Enthroned)」という同じ名前を持つ2つの絵を比較してください。(図2.42と図2.43)どちらの絵も直感的な遠近法を用いています。チマブーエの1285年の絵画では、暗黙の水平線は低く、鑑賞者は玉座の足元に位置しています。一方、ジョットの画像は1310年に描かれ、水平線は高く、したがって鑑賞者は聖母と同じ水準にいます。この視点の違いは、聖母と個人との関係についての考え方の変化を意味します。チマブーエの絵画は、その鑑賞者を従属的な敬意の下に置きますが、ジョットの絵画は、より親しみやすいものとして見ることができるかもしれません。これは、イタリアのルネサンスで花開くことになるヨーロッパの思想の中の小さな、しかし重要な変化を示唆しています。

図2.42 | サンタ・トリニタの聖母(Santa Trinita Madonna), Artist: チマブーエ(Cimabue), Author: User “Eugene”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.43 | 荘厳の聖母(The Ognissanti Madonna), Artist: ジョット(Giotto), Author: User “Shizhao”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

線遠近法には、さまざまなタイプがあります。主なタイプは、一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法です。この区別は、使用される消失点の数によってなされます。一点透視図法は、水平線と1つの主たる消失点を使用し、通常、観客の前からまっすぐ遠方に鉄道の線路が消えるなどの、単純な光景が描かれるときに使用されます。二点透視図法は、水平線と2つの分離した消失点を使用して、2方向に後退する空間の錯覚を表現します。(図2.44)三点透視図法は、二点透視図法の2つの水平方向に加えて、水平線の上または下の第3の垂直方向への空間の後退を組み込んでいます。高層ビルが道の高さから上へと後退するにつれて、鉄道の線路が水平線に向かって遠方で収束するように見えるのと同じように、ビルの見かけの大きさも減少します。(図2.45)

図2.44 | 二点透視図法(Two-Point Perspective), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Original Work, License: CC BY-SA 4.0
図2.45 | ニューヨーク・デイリーニュース・ビルディング(New York Daily News Building), Artist: ヒュー・フェリス(Hugh Ferriss), Author: Dover Publications, Source: Wikimedia Commons, License: OASC

多くの人々は、線遠近法が世界の完全に正確な画像を与えてくれると考える間違いを犯します。それは違います。線遠近法は、世界がどのように見えるかを表現するための限られた道具です。それは、約60度の限定された「知覚の円錐」内でのみ十分に「正確」であるとみなされています。したがって、線遠近法は私たちの空間の体験を表現する優れた道具ですが、それには認識しておくべき限界があります。

空気遠近法は、色と焦点を使用して平面上に距離の錯覚を作り出す方法です。遠くに広がる景観では、介在する空気によるもやが対象物の色や鮮明さを変えます。対象物は、鑑賞者からの距離が遠いほど、空気の色、つまり明るい青-灰色のトーンに近づきます。暗い対象物は、鑑賞者から遠ざかるにつれて、より明るくより青くなります。さらに、明るい色の対象物と暗い色の対象物とのコントラストと、細部の認識は、距離が遠くなるにつれて減少します。アルバート・ビアスタット(Albert Bierstadt、1830–1902年、ドイツ、米国に居住)は、彼の絵画「ロッキー山脈、ランダーズ・ピーク(The Rocky Mountains, Lander’s Peak)」の中でこの効果を使って、非常に大きな空間の感覚を与えました。(図2.46)

図2.46 | ロッキー山脈、ランダーズ・ピーク(The Rocky Mountains, Lander’s Peak), Artist: アルバート・ビアスタット(Albert Bierstadt), Source: Met Museum, License: OASC

2.5.1.5 質感

質感という用語は、芸術作品の表面の質を表します。質感は、触感だけでなく視覚にも関与するため、デザインの重要な要素です。物体は、粗かったり滑らかであったり、湿っていたり乾燥していたり、粘着質であったりつるつるしていたり、硬かったり軟らかかったり、脆かったり柔軟性があったりします。質感への2つの主なアプローチとは、実際の質感と暗黙のまたは模擬的な質感です。実際の質感は主に(絶対にというわけではありません)彫刻に使われますが、暗黙の質感は主に二次元の芸術作品で使用されます。

15世紀から17世紀の北方ルネサンスとオランダ黄金時代の画家たちは、多種多様な質感の模造に非常に興味を持っていました。その時代の芸術家の主な目標の1つは、物質世界についての真実を伝えることに秀でることでした。彼らは触れた感覚を完全な視覚の範囲へととらえるようように力を尽くしました。レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn、1606–1669年、オランダ)は、彼の多くの絵画で実際の質感を加えて現実感を高めるために、インパスト(厚塗り)つまり非常に厚く塗った塗料を使用したことで有名です。これは、彼自身の自画像の一部で肉を扱う際や、「ベルシャザルの酒宴(Belshazzar’s Feast)」の絵の中の金属や宝飾品の表現で見られます。(図2.47)

図2.47 | ベルシャザルの酒宴(Belshazzar’s Feast), Artist: レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn), Source: Wikiart, License: Public Domain

2.5.1.6 色

はデザインの最も顕著な要素であり、芸術で最も強力でありながら主観的な要素の1つです。19世紀のアメリカの超越論者ラルフ・ウォルドー・エマーソン(Ralph Waldo Emerson)は、「自然は常に精神の色を身にまとっている」と書いたとき、この色の主観的な性質に留意していました。[1]色についての考え方は、色の歴史、色の物理学、および色の知覚という3つの広いカテゴリーにまとめることができます。

[1] C. A. Bartol, Ralph Waldo Emerson: A Discourse in West Church (Boston, Mass: A. Williams & Co., 1882), 14.

最も初期の色の使用は、地元の環境でどのような種類の顔料や着色剤が見つかるかに限定されていました。様々な土による黄土色(黄-茶色)、灰や燃やした木、つまり木炭による黒色と灰色、鉱物、植物、および昆虫による赤色や黄色などです。旧石器時代の洞窟の画家たちは、これらの材料を壁画に使用していました。天然顔料に加えて、古代エジプト人は、粉末化したガラスのような合成顔料を配合して、像、壁、記念碑に使用された独特の色相であるエジプシャン・ブルーを作り出しました。ローマ帝国では、特定の種類の巻貝から珍しい風合いの紫色が抽出され、その希少性のために、主に皇帝の衣服に使用されていました。ルネサンス期には、細かい粉にされた宝石ラピスラズリから濃い青色が作られました。

エジプト人は神と色とを関連付けました。アモン神は青い皮膚を持ち、オシリスは緑色でした。古代ギリシャ人は色に対してより科学的なアプローチをとりました。古代ギリシャの哲学者エンペドクレス(Empedocles)は、色が白/明、暗/黒、黄、赤の4つのカテゴリーに分類されると考えました。古代中国では、色と伝統的な物理学で教えられた5つの要素とを関連付けました。すなわち、水(黒)、金(白)、木(緑)、土(黄)、火(赤)です。アジアの多くの伝統では、黒は天の色、白は死や喪の色です。西洋文化ではこれは逆になります。

色についての近代的な考え方は、建築家および芸術理論家レオン・バッティスタ・アルベルティ(Leon Battista Alberti、1404–1472年、イタリア)によって15世紀初頭から大きく洗練されました。1435年に出版された彼の論文「絵画論(Della pittura)」で、アルベルティは次のように述べています。

色の混合を通して、無限の他の色相が生まれるが、このようにしてより多くの他の種類の色が作成されるもととなる真の色は4つだけである。赤は火の色、青は空気の色、緑は水の色、灰は地の色である … 白と黒は真の色ではなく、他の色の変化である。[2]

[2] Leon Battista Alberti, On Painting, trans. John R. Spencer (New Haven, Connecticut: Yale University Press, 1956), 49–50.[「絵画論」三輪福松訳、中央公論美術出版、1992年]

この初期の枠組みから、他の人々はさらなる発見をしました。

「色」という用語は、人間の目と相互作用する光の波長および強度の変化によって引き起こされる感覚を表します。可視光は、人間が見ることができる電磁スペクトルの小さな部分です。太陽の白色光をプリズムに通すと、赤から橙、黄、緑、青から紫という虹の色に屈折します。(図2.48)

図2.48 | プリズム(Prism), Author: User “D-Kuru”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

人間が知覚する色は、色相、彩度、明度の3つの別々の部分に分けることができます。(図2.49)色相は、所与の色の波長です。より長い波長の色はスペクトルの赤色の端部に現れ、より短い波長の色はスペクトルの紫色の端部に現れます。色相は、色の「名前」、たとえば、赤、黄、青、緑などです。色は、減法または加法のいずれかになります。彩度は色の純度であり、明度を一定の値に保持すると無彩色の灰色から純粋な色までの範囲に及びます。明度は、色の明るさまたは暗さであり、完全に明るい(純粋な色相)から完全に暗い(黒色)までの範囲に及びます。それぞれの純粋な色相も相対的な明度を持ちます。たとえば、純粋な黄色は純粋な青色よりも大きな明度を持っています。

図2.49 | HSVカラーモデル(HSV Color Model), Author: User “SharkD”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

減法色または反射色は、白色光が表面で反射し、スペクトルの色のうち鑑賞者に反射して戻る色を除くすべての色がその表面によって吸収されたときに生じます。減法混色は赤、黄、青の原色から始まります。これらの色が混ぜ合わされると、緑色、橙色、紫色の二次色が作成されます。黄色と青色を混ぜると緑色になり、赤色と黄色を混ぜると橙色になり、赤色と青色を混ぜると紫色になります。

イングランドの数学者・物理学者のアイザック・ニュートン卿(Sir Isaac Newton)は、17世紀にプリズムを通して屈折した白色光を可視スペクトルに分離できることを実証しました。19世紀には、作家・政治家のヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)と、化学者のミシェル・ウジェーヌ・シュヴルール(Michel Eugène Chevruel)が、赤、黄、青が原色であり、他のすべての色がそれらを混ぜ合わせて作ることができると結論付けた研究を別々に発表しました。20世紀初め、工業化学者たちは印刷インクの理解をさらに深め、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の減法混色モデルを導き出しました。これは、白で始まり、色を加えると、混合物は黒に向かって移動します。(図2.50)

図2.50 | 減法混色(Subtractive Color Mixing), Author: User “Ntozis”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

テレビ、コンピューター、デジタル画像の出現により、色が加算されるRGB(赤、緑、青)の加法モデルと、人間の知覚に基づくHSB(色相、彩度、明度)の色システムが業界の標準になっています。加法色または透過色は、異なる色の光が投影されるときに生じます。加法色の原色となる色相は赤、緑、青です。これがRGBの色モデルです。(図2.51)赤色と緑色の光が重なると黄色が見えます。赤色と青色の光が重なるとマゼンタが見え、緑色と青色の光が重なるとシアンが現れます。これらは加法色の二次色相です。赤、緑、青の光がすべて重なると、白色の光が見えます。テレビ画面は、実際には、赤、緑、青の輝く光の小さな点またはピクセルからなっています。これらの画面から来た私たちが見る色は、加法的です。

図2.51 | 加法色(Additive Color), Author: User “SharkD”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 3.0

加法色のRGBモデルは、人間の目が機能するやり方に直接依存しています。人間の網膜は、目の内部を覆うニューロンの膜です。このニューロンの膜の中には、桿体(桿体視細胞)と錐体(錐体視細胞)と呼ばれる特別なニューロンがあります。桿体は光の強さの変化に敏感なニューロンであり、錐体は赤、緑、青の光に敏感なニューロンです。私たちがRGBのコンピューターモニターを持っているのは、私たちがRGBの目を持っているからです。

芸術家は時には意図的に人間の視覚の生理を利用することがあります。人間の視覚は独特な生物学によって制限されているため、特定の効果が可能になります。ニューロンは信号を送るための化学的な神経伝達物質を貯蔵しています。もしニューロンが連続的に刺激されているために継続的に「発火」しなければならない場合、ニューロンは神経伝達物質の補給が枯渇する可能性があります。ニューロン内のこの化学物質補給の枯渇と回復との間には若干の遅延があります。その間に、残像が発生します。緑色、橙色、黒色の旗を10秒間見てから、何もない壁やからっぽの白い空間を見てください。(図2.52)しばらくの間、緑色の補色または反対色(赤色)、橙色の補色(青色)、および黒色の補色(白色)がアメリカ国旗の正しい場所に表示されるのが見えるでしょう。このイメージが消えていくことは、網膜の神経伝達物質が補充されたことを示しています。

図2.52 | 逆の色のアメリカ国旗(U.S. Flag with Inverted Color), Author: User “Mike”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

この効果は印象派運動(1870~1886年頃)の中で芸術家たちによって定期的に使用されていました。印象派の最初の絵画の1つであるクロード・モネ(Claude Monet、1840–1926年、フランス)による「印象・日の出(Impression Sunrise)」を考えてみましょう。(図2.53)絵画の青色の部分に注目して少しの間見ていると、青の感覚を「使い果たし」、相補的な橙色の残像反応が生じます。そして、日の出の橙色を見ると、私たちは絵画自体の橙色の顔料を見るだけでなく、網膜の「疲れた青」の追加的な効果も受けます。この理由から、太陽のオレンジ色の塗料は、私たちが単独でその色を見た場合よりも明るく見えます。多くの印象派の作家が意図的にこの効果を使用しています。これが印象派の絵画がとても色鮮やかに見える傾向がある理由の1つです。

図2.53 | 印象・日の出(Impression Sunrise), Artist: クロード・モネ(Claude Monet), Author: User “Paris 16”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

1949年に始まった「正方形賛歌(Homage to the Square)」の絵画シリーズの中で、バウハウスの芸術家ヨゼフ・アルバース(Josef Albers、1888–1967年、ドイツ、米国に居住)は、色の相対的な知覚を実験しました。(正方形賛歌(Homage to the Square)、ヨゼフ・アルバース(Josef Albers): https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/2/20/Josef_Albers's_painting_'Homage_to_the_Square'%2C_1965.jpg)彼の主な関心は、ある色がそれを取り巻く他の色によってどのように影響を受けるかを示すことでした。彼は著書「色の相互作用(Interaction of Color)」(1963年)[「配色の設計 : 色の知覚と相互作用」永原康史監訳、和田美樹訳、ビー・エヌ・エヌ新社、2016年]で、単一の色の認識が文脈に応じて変わる可能性があることを示しました。これを実証するには、添付の画像を見てください。(図2.54)中央の灰色の帯は1つの単一の色ですが、コントラストのある背景に置くと変化して見えます。

図2.54 | 色の階調の錯覚(Gradient Illusion), Author: ジェフェリー・レミュー(Jeffrey LeMieux), Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

現代の芸術家は、色の異なる用途のために特定の用語を使用します。自然色、あるいは固有色は、所与の対象物の本体の色を表します。一方、観察される色とは、光が対象物上で変化するにつれて、その固有色の知覚がどのように変化するかのことです。モネによるルーアン大聖堂の一連の絵画では、さまざまな光の条件での描写が、固有色と観察される色との違いの良い例となっています。大聖堂の石の色は中程度の灰色です。しかし、日没の徐々に弱くなる光のような、1日の中の異なる時間では、それはゆっくりと沈む太陽と伸びていく影による橙と青を反映するでしょう。(図2.55)

図2.55 | ルーアン大聖堂、ファサード(日没)(Rouen Cathedral, Facade (Sunset)), Artist: クロード・モネ(Claude Monet), Author: User “Rlbberlin”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

フォーヴィズム一派は、20世紀初頭に芸術を作るアプローチの基礎として直感的な色を使った芸術家たちのグループでした。彼らは、対象物の固有色または観察された色を機械的に伝えるよりも、色の表現力のほうにより興味を持っていました。アンリ・マティス(Henri Matisse、1869–1954年、フランス)による彼の妻アメリー・マティス(Amélie Matisse)の肖像画を考えてみましょう。(図2.56)明らかに、現実では彼女の顔の中心を流れる緑色の縞模様はありませんでした。芸術家が選んだ色は、単純な視覚的な観察以外のものを表現することを意図していました。

図2.56 | マティス夫人の肖像(緑の線)(Portrait of Madame Matisse (The green line)), Artist: アンリ・マティス(Henri Matisse), Author: User “Sparkit”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

芸術家が使用する色の別の側面は、色温度です。色は暖かくもなるし、冷たくもなります。スペクトルの暖色の端部には、赤、橙、黄が含まれます。可視スペクトルの寒色の端部には、緑、青、紫が含まれています。これは、黄色でさえ冷たくなることもできるし、青でさえ暖かくなることもできるということを言っています。暖色や寒色はさまざまなやり方で相互作用し、芸術家はこの違いに気付き使用するように訓練されています。たとえば暖色は「前進して」見える一方で、寒色は空間の中で「後退して」おり、その結果としてこれらの色で表現された形は異なる深さにあるように見えます。

色についての考え方を整理するにあたり、芸術家や芸術理論家は一連の色彩設計、つまり異なる色の間の秩序だった関係を発展させてきました。単色の色彩設計は単一の色を使用します。ピカソによる「老いたギター弾き(The Old Guitarist)」は、単色の色彩設計の良い例です。(図2.57)人物の姿勢、みすぼらしい衣服と髪の毛の質感、青色の支配的な使い方は、ともに組み合わさって、疲労感と孤独感というこの画像への統一された感情的な反応を作り出します。

図2.57 | 老いたギター弾き(The Old Guitarist), Artist: パブロ・ピカソ(Pablo Picasso), Author: User “Chimino”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

相補的な色彩設計では、色相環上で互いに向き合う色を使用します。前述したように、印象派の画家たちは相補的な色彩設計の効果を利用して色彩パレットの輝きを高めました。印象派ではありませんが、ファン・ゴッホ(Van Gogh、1853–1890年、オランダ、フランスに居住)は、彼の絵画「星月夜(The Starry Night)」の中で、夜空の青を使って三日月の橙を際立たせています。(図2.58)

図2.58 | 星月夜(Starry Night), Artist: フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh), Author: User “Dcoetzee”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

類似の色彩設計は、色相環の1つの領域のみを使用するものです。たとえば、緑色が設計のアンカーとなる色として選択されている場合、芸術家は色相環上の黄と青の点の間にある色を使用することになります。ヤン・ダヴィス・デ・ヘーム(Jan Davidsz. de Heem、1606–1684年、オランダ、ベルギーに居住)による「グラスと牡蠣の静物画(Still Life with a Glass and Oysters)」は、橙/黄色/緑という類似の設計の良い例です。(図2.59)さまざまな用途に使用される他の多くの色彩設計がありますが、その考え方を説明するのにはこれらの3つで十分です。

図2.59 | グラスと牡蠣の静物画(Still Life with a Glass and Oysters), Artist: ヤン・ダヴィス・デ・ヘーム(Jan Davidszoon de Heem), Source: Met Museum, License: OASC

2.5.2 デザインの原則

デザインの要素は、芸術家が作品を制作するために使用する視覚的な構成要素です。デザインの原則とは、それらの要素または構成要素が所望の効果を生み出すように配置される様々な方法です。芸術の要素の配置にアプローチする方法は、芸術家の数と同じだけあります。芸術の作品それぞれは、その概念、デザイン、および出来栄えにおいて唯一無二のものです。最近の視覚芸術の発展は、芸術の作成に対して偶然で非合理的なアプローチをもたらしています。これらのアプローチでは、芸術作品の成果は計画されたものではありません。これらの芸術作品は意識的なデザインが欠けていると言えるかもしれませんが、時には成功していることもあります。非合理的または偶然に作成された芸術作品の成功を、1つあるいは複数の組織化された作用原則に帰属させることがしばしば可能です。芸術作品のデザインの原則を認識することで、鑑賞者はそれらの作品の分析に深みを与えることができます。以下に、デザインの5つの原則を示します。このリストは網羅的ではありませんが、ここから始めるのが適切です。

2.5.2.1 統一性/多様性

統一性は類似点の中で見出され、多様性は相違点の中で見出されます。統一性を示すデザインとは、作品の要素や要素間の関係が似ているか同一であるようなデザインです。レオナルドの「モナ・リザ」(図2.7参照)は、イタリア・ルネサンス芸術の中の飛躍的進歩であると考えられています。その理由は、人物の柔らかな境界線が抑え気味の背景の穏やかな色調と似たアプローチであり、この画像を統一しているからです。多様性を示すデザインとは、作品の要素がサイズ、色、形、または他の属性の点で異なるようなデザインです。デザインにおいて統一性を過度に使用することの懸念の1つは視覚的な単調さです。視覚的な統一性は、概念的なレベルでも物理的なレベルでも起こり得ます。あるテーマに基づいて選択される要素は、概念的な統一性を示すことができますが、形式における多様性を示すこともできます。多様性が欠けている作品は、単調で興味をそそらないかもしれません。多くの芸術家は、どの間隔も1つとして同じものがないようにすることによって、その構成に多様性を導入しています。間隔とは、芸術作品の中における要素、人物、または物体の間の空間です。

2.5.2.2 スケール/比率

スケール比率というデザインの原則は、個々の要素や、ある要素と他の要素との関係におけるサイズの問題です。スケールのさりげない使用の有名な例は、ミケランジェロの「ピエタ(Pietà)」の人物の相対的な大きさです。(図2.60)この彫像は、マリアが十字架にはりつけにされたあとの息子イエスの遺体を抱えている姿を表現したものです。もし私たちがイエスとマリアの体を、踵から膝まで、膝から腰まで、というように測定して比較すると、マリアはイエスよりも大きいことが分かります。さらに、マリアの姿は正しい比率からは外れています。つまり、彼女の体の各部分のサイズは調和がとれていません。このようなスケールと比率の独特な使用は、母親と子供の関係をさりげなく強調するために、イエスを幼児化するのに役立っています。スケールと比率のもう1つの用途は、強制的な遠近法の使用です。(図2.61)強制的な遠近法とは、物体のスケールを変えるような図と地の配置であり、小さな物体と大きな物体を反対に並置することで、小さい物体を大きく見せるか、大きな物体を小さく見せることです。強制的な遠近法は、写真に使われた場合に最も説得力があります。

図2.60 | ピエタ(Pietà), Artist: ミケランジェロ(Michelangelo), Author: User “Juan M Romero”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 4.0
図2.61 | ピサの斜塔:強制的な遠近法(The Leaning Tower of Pisa: Forced Perspective), Author: User “Vin7474”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

2.5.2.3 バランス

バランスというデザインの原則は、視覚的な「重み」の問題です。線や形などのデザインの要素は、さまざまな方法で私たちの注目を集めることができます。たとえば、それらは明るく色付けすることができ、他の同様の形に関連して大きくすることができ、あるいは独特な方法で質感を付加することもできます。これらの競合する視覚的な重みがおおよそ同等である場合、構成のバランスが達成されます。構成のバランスには、対称と非対称の2種類があります。

対称的なバランスの原則を使用するような、ある構成の中の線と形は、通常、つまり中心線の周りに均等に配置されます。サルバドール・ダリ(Salvador Dali、1904–1989年、スペイン)による「最後の晩餐の聖餐式(The Sacrament of the Last Supper)」では、イエスという中心人物の左右の似た形のバランスに気づきます。(最後の晩餐の聖餐式(The Sacrament of the Last Supper)、サルバドール・ダリ(Salvador Dali): https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/f/f1/Dali_-_The_Sacrament_of_the_Last_Supper_-_lowres.jpg)垂直軸と水平軸は、概して非常に安定した構成のためにとっておかれます。この戦略は、不変の真実を暗示するという宗教的な文脈でしばしば用いられます。

視覚的な重みが形、サイズ、または配置において互いに対応しない場合、非対称的なバランスが達成されます。それらは構成の中に均等に分布していません。葛飾北斎(Katsushika Hokusai、1760–1849年、日本)による木版画「神奈川沖浪裏(The Great Wave off Kanagawa)」と、ポール・セザンヌ(Paul Cézanne、1839–1906年、フランス)による「りんごとサクラソウの鉢のある静物(Still Life with Apples and a Pot of Primroses)」が、非対称な構成の良い例です。北斎の大浪の右側にある大きな空間は、構成の左半分にある近づいてくる波を「相殺」します。(図2.62)同様の方法で、セザンヌの「りんごのある静物画」の左側にある大きな灰色の壁は、右側にある視覚的に複雑な植木鉢を相殺する役割を果たします。(図2.63)それぞれの作品では、構成のほぼ3分の1(空と壁)は、言ってみれば占有されていません。これらの領域には物体がありません。しかしながら、作品の二次元空間内では、私たちはそれぞれの空白領域のことを、構成空間の残りの部分の形を釣り合わせる視覚的な重みを有するものとして「読み」ます。

図2.62 | 神奈川沖浪裏(The Great Wave off Kanagawa), Artist: 葛飾北斎(Katsushika Hokusai), Author: User “Durova”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain
図2.63 | りんごとサクラソウの鉢のある静物(Still Life with Apples and a Pot of Primroses), Artist: ポール・セザンヌ(Paul Cézanne), Source: Met Museum, License: OASC

常に芸術作品のバランスをとる必要があるわけではありません。明白な不均衡は、不安定さ、方向を見失う、または苦悩という効果をもたらすことができます。これは、芸術作品の中におけるより大きな考え方の役に立つ部分になることがあります。オッド・ネルドルム(Odd Nerdrum、1944年生まれ、ノルウェー)による絵画の大きなからっぽの空間は、しっかりとした視覚的な重みを持ち、身体的、心理的な孤立を意味します。(人と荒廃した風景(Man and Abandoned Landscape)、オッド・ネルドルム(Odd Nerdrum): https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/27/a3/3b/27a33b6c5d3c9e087d20f7cb3c34296a.jpg)

2.5.2.4 強調/動き

強調または動きというデザインの原則は、芸術作品を通して鑑賞者の注意を動かす方向性の力を意図的に使用することです。ある形の中で色の変化が発生すると、これは動きを意味します。そして、私たちが芸術作品の中に1本の線を見るとき、私たちはそれに従うように強制されます。たとえば、どのような形状の矢印も方向を示すものであり、潜在的な顧客の注意を引いて導くために広告で広く使われています。

芸術作品を通して鑑賞者の注意を動かすより微妙な手段があります。ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(Rogier van der Weyden、1404–1464年、ベルギー)による「十字架降架(Descent from the Cross)」は、この人物の腕、脚、頭の位置を使って無限の記号を描いています。それは数字の8を横にねかせたものに似ています。(図2.64)キリストの永遠の人生をかすかに思い起こさせることは、死と悲しみのこの場面を見つめる信者を安心させ、希望を与えることを意図しています。

図2.64 | 十字架降架(Descent from the Cross (Deposition)), Artist: ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(Rogier van der Weyden), Author: User “Argento”, Source: Wikimedia Commons, License: Public Domain

2.5.2.5 リズム/繰り返し

リズムというデザインの原則は、パターンを確立するための視覚的要素の繰り返しです。そしてこのパターンは、特別な対象物のためのステージを提供するために使用したり、あるいは、変更に対して直接の注意を向けるために中断したりできます。アンディ・ウォーホルの繰り返しの使用は、彼による大衆消費文化に対する注釈の中で、彼の絵画の展示「32個のキャンベルのスープ缶(32 Campbell’s Soup Cans)」の見た目上は同一の要素の間の小さな違いに気付かせてくれます。(図2.65)

図2.65 | キャンベルのスープ缶(Campbell’s Soup Cans), Artist: アンディ・ウォーホル(Andy Warhol), Author: User “Gorup de Besanez”, Source: Wikimedia Commons, License: CC BY-SA 4.0

2.6 先へ進む前に

重要な概念

視覚芸術は、二次元、三次元および四次元の芸術という次元のカテゴリーに分けることができます。それぞれのカテゴリーには、独特で具体的なアプローチと材料があります。二次元の芸術は、素描、絵画、および版画からなります。三次元の芸術は、インスタレーションを含む彫像と、キネティック・アートで構成されています。四次元または時間ベースの芸術は、映像とパフォーマンスを含み、その効果のためのテクノロジーの使用と時間の経過に依存しています。時間ベースの芸術は、今日では、デジタル・アート、コンピューター・アニメーション、インタラクティブ・アート、ビデオゲーム、バーチャル・リアリティ、ロボティクス、および3D印刷を含むように成長しました。

デザインの要素と原則は、視覚芸術内の構成要素とその組織化です。線、形、質量/体積、遠近法、質感、および色がデザインの主な要素です。時間は最近認識された追加のデザインの要素です。デザインの原則には、統一性と多様性、スケールと比率、バランス、強調と動き、リズムと繰り返しが含まれます。

この章では、芸術制作に使用される多くの材料とプロセスについても概説しました。第3章:芸術に使われる材料の意味では、私たちは芸術作品の作成に使用される物質の影響と意味について検討します。第4章:芸術を記述する:芸術の正式な分析、タイプ、様式では、私たちは芸術の意味を記述し探求するために、材料とプロセスの理解や、デザインの要素と原則を活用します。

自分で答えてみよう

1.歴史的には、美術という用語は、絵画、建築、彫刻という意味に限られていました。今日では、芸術の対象物の制作に対する他のアプローチが発見され、利用されています。この進化のプロセスには、欠点と利点の両方がありました。論じてください。

2.「____________次元の芸術は、紙、キャンバス、または洞窟の壁のような平坦な表面に現れます。」

3. 芸術は、形式と_______________に分けることができます。

4.「対象物を__________________するとは、その外観を観察し、その観察を一連のしるしに移すことです。」

5.「ほとんどの場合、塗料中の顔料または着色剤は同じものです。ある種類の絵画を別の絵画と区別するのは____________です。」

6.彫像における開いた形と閉じた形の違いは、閉じた形は____________に囲まれていますが、開いた形はそれにより貫き通されていることです。

7.書道は「_____________筆跡」として定義されています。

8.芸術における遠近法は、平らな表面上における空間の_________________です。

9.平らな表面上における空間の錯覚の3つの主な手がかりは次のとおりです:
a. __________________________
b. __________________________
c. __________________________

10.本文に記載されている5つのデザインの要素は次のとおりです:
a. __________________________
b. __________________________
c. __________________________
d. __________________________
e. __________________________

11.本文にはいくつかのデザインの原則が記載されています。そのうち3つをリストにして記述してください。
デザインの原則: 説明:
a. __________________________ __________________________
b. __________________________ __________________________
c. __________________________ __________________________

12.キネティックな彫像の独特な性質とは:___________________________

13.「フォーヴィズム一派は、20世紀初頭に____________色を使った芸術家たちのグループでした。」

14.単色の色彩設計、相補的な色彩設計、および類似の色彩設計を使用する潜在的な理由を1つ挙げてください。
a.単色_________________________________
b.相補的_________________________________
c.類似_________________________________

2.7 重要語句

二次元の芸術:長さと幅を持ち、平坦な(またはほぼ平坦な)二次元の表面上で創作される芸術。これらには、素描、絵画、版画などが含まれますが、これらに限定されません。

三次元の芸術:長さ、幅、高さの3つの次元で創作される芸術。これらには、彫像、建築、陶器、ガラス、織物、組立物、およびインスタレーションが含まれますが、これらに限定されません。

四次元の芸術:「四次元」とみなされる空間と時間の両方を用いて創作され、それに依存する芸術。パフォーマンス芸術やビデオ・アートなどがこの例ですが、これらに限定されません。

抽象表現主義:またはABEXとも称されます。この芸術史的な用語は、第二次世界大戦後にニューヨークで活動していた画家たちのグループに限定されるものです。このグループには、ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)、ウィレム・デ・クーニング(Willem de Kooning)、リー・クラズナー(Lee Krasner)、ヘレン・フランケンサーラー(Helen Frankenthaler)が含まれます。彼らの絵画に対する主なアプローチは、身振りによるものであり、「全体にわたるもの」、つまり、作品のどの一部分も視覚的に顕著でない状態にすることでした。

アクリル:速乾性で水溶性の石油をもとにした塗装媒体。

実際の質感:質感が表現されるのではなく、作り出される条件。実際の質感は、模擬的な質感または質感の錯覚の逆です。例としては、ブラシ・ストローク、インパスト(厚塗り)、コラージュ、組み込みなどがあります。

加法色:投影された光に基づいた色。

付加:材料が追加される彫刻プロセス。

残像:視覚刺激が除去された後に生じる視覚的な感覚。残像は、​​元の刺激の補完物ですぐに消えてゆきます。

類似色:色相環上の最初の点に隣接する色を使用する色彩設計。たとえば、芸術家が最初の色として赤を選択した場合、類似の色彩設計では橙色、赤色、紫色の間にある色の範囲が使用されます。

骨組み:粘土彫刻を作成している間にそれを支持するために使用されるワイヤーまたは木の基礎構造。

組み立て:異なる材料が結合されて最終的な芸術作品を形成する彫刻プロセス。

非対称:対称性が欠けていること。

空気遠近法:空間の錯覚をまねるための色の使用。

軸:周囲に物体が配置される仮想線。

バランス:視覚的な重さにおける均等な性質。

結合剤:着色顔料を懸濁させて支持体に付着させるために使用される透明な液体。

ブラシ:木製またはプラスチック製の持ち手に取り付けられた、通常は毛髪または繊維からなる、支持体に塗料を塗布するために使用される道具。

ブオン・フレスコ:文字通りには「良いフレスコ」。湿った漆喰に顔料を塗り、吸収させる壁画プロセス。

書道:美しい筆跡。

彫刻:最終的な芸術作品を明らかにするために材料を取り除く彫刻プロセス。

鋳造:材料を置き換えて最終的な芸術作品を形成する彫刻プロセス。

木炭:通常は紙の上に暗い黒色のしるしを付けるために使用される燃やした木材から作られた芸術媒体。

閉じた形:外側の空間によって貫通されることのない彫刻の形。

色彩設計:色の選択に対する体系的または形式的なアプローチ。たとえば、単色(1色)の色彩設計、相補的(反対色)な色彩設計、類似(隣接色)の色彩設計。

色温度:視覚芸術において、所与の色と比較して「暖かい」または「冷たい」という感覚。暖色は赤色/橙色の傾向があり、寒色は青色/白色の傾向があります。すべての色は、他の色と比較すると、より暖かい、またはより冷たいものとして感じられます。

色:異なる光の質によって引き起こされる感覚。

補色:一緒に混ぜ合わせると無彩色の灰色を作り出す色。色相環では、補色は互いに向き合って現れます。補色の対の例は、青と橙、または赤と緑です。

構成:視覚的要素の配置。

コンテ・クレヨン:素描に用いられる、圧縮された木炭、または顔料とろうまたは粘土からなる四角い棒。

コンテ:通常は紙の上に着色されたしるしを付けるために使用される顔料と粘土の混合物。伝統的には、黒、白、紅(赤)色が製造されています。

輪郭:ある形の外側の境界線。

コントラスト:体積、色、質感、または他の基準において、差が大きい領域。

寒色:色相の青/白に近い色。寒色は、他の色と比較して青/白に近いどのような色でも構いません。たとえば、アリザリンクリムゾンは、カドミウムレッドの媒体と比較すると、冷たい赤色です。

クロスハッチング:ある形の上に体積を作り出すような交差線のしるし。

記述:芸術作品のさまざまな要素を列挙するプロセス。

デザイン:視覚的要素を配置するための計画。

素描:支持体にしるしを付けるプロセス。しばしばなんらかの考え方や対象物を表現するものですが、必ずしもそうではありません。

端部:ある形の外側の境界線。

版(エディション):単一の母材から作られた一連の版画。

電磁スペクトル:波長による放射性エネルギーの連続的な範囲。

デザインの要素:視覚芸術の物理的な構成要素。

強調:高コントラストを使用して注意を向ける戦略。

ろう画:結合剤としてろうを使用する絵画プロセス。

図/地の関係:地の前にある図。どの対象物が図として適しているかを特定するために使用されます。

図/地の反転:図が地として見えたり、地が図として見えたりする、あいまいな図と地の関係。

図:背景の前に現れる図形。

強制的な遠近法:歪んだまたは不自然なスケールの関係を作り出すための遠近法の使用。

形式:視覚芸術の物理的な構成要素。

見つけた物体:芸術作品に組み込まれた材料で、通常は芸術的な媒体とはみなされないもの。見つけた物体は、雑誌の切り抜きがコラージュで果たす役割と同じ役割を彫刻で果たします。

自立:すべての角度から見ることができる彫像。

フレスコ・セッコ:乾いた漆喰に塗装するプロセス。

フレスコ画:湿った、または乾いた漆喰の上に塗装するプロセス。

色あせ:時間の経過や風化によって色が変わるか透明になる顔料。

幾何学的:数学的に規則的な輪郭を有する形。

ゲシュタルト:単一な全体としての経験という芸術作品の直感的な認識。

ジェスチャー:動きとして解釈される方向。

ジークレー:通常は無酸紙の上に記録用インクを使ったインクジェット印刷。

黒鉛:様々な硬度の鉛筆の芯を作るために粘土と混合された炭素ベースの鉱物。

地:図が存在する場所。

アラビア・ゴム:水彩の結合剤として使用される、ゴムの木からとれる水溶性樹脂。

硬いエッジ:境界が明確に定義された形。

高さ:垂直な距離または長さ。

高浮き彫り:アンダーカットを使用するが、基体に取り付けられたまま残っている彫像。浅浮き彫りの反対。

水平線:空と陸または水面が出会う空間の視覚的限界。線遠近法では、360度回転した消失点。

色相:色の波長の質。色の名前。

インパスト:塗料の厚塗り。

暗示された線:無関係な形の整列によって知覚される目に見えない線。

印象派:変わりゆく光の変動を主要な主題とする、パリを起源とした19世紀の芸術運動。例としては、クロード・モネ(Claude Monet)、エドガー・ドガ(Edgar Degas)、メアリー・カサット(Mary Cassatt)の作品が挙げられます。

インク:様々なつくりのペンで伝統的に使用される液体顔料。

インスタレーション:ある環境の中に鑑賞者を取り囲む芸術の実践。

凹版:金属板を鉄筆で引っかいて印刷画像を生成する印刷プロセス。

インタラクティブ:鑑賞者が参加することが期待される芸術作品。

間隔:芸術作品における要素の間の空間。

直感的な色:外部条件の観察ではなく、直観や他の内部状態に頼って色を選択するアプローチ。

キネティック・アート:動きをデザインに取り入れる芸術。

線:限られた長さを持つ無限の一連の点。

線遠近法:空間の後退についての幾何学的に構築された錯覚。

線形:線の性質の、または線の性質に関係すること。

リトグラフ:油性インクと水との反発に依存する印刷プロセス。石(またはアルミニウム板)の上に図が描かれ、エッチングされます。石がエッチングされている場所では水を吸収します。石がエッチングされていない場所では(描画や画像によって保護されている場合)、石は乾いたままです。水が石に塗られます。次に、インクが石の上に広げられます。石が濡れているところでは、インクははじかれます。石が乾いているところでは、インクが付着します。次に、紙が石の上のインクに押し付けられ、印刷されます。

固有色:均一照明下の物体の色。

失ろう法:ろうの原型を作った後、ろうを溶かして金属で置き換える鋳造プロセス。

浅浮き彫り:基体に取り付けたままであり、アンダーカットを使用しない彫像。高浮き彫りの反対。

質量:3つの次元を有する性質。

母材:版画において、画像を作り出すために使用されるあらゆる材料。たとえば、凸版印刷では、母材は通常、彫刻されたリノリウムまたは木製ブロックです。

金属尖筆:銀、金、白目などの延性のある金属を顔料として使用した素描。通常、紙またはゲッソーの塗られたパネル上に描かれる。

ミックス・メディア:1つの芸術作品の中に慣習的でないまたは珍しい組み合わせの材料を使用すること。

モビール:彫刻では、風や重力によって動かされるキネティック・アート作品。

モデリング:材料を追加して最終的な芸術作品を形成する彫刻プロセス。

鋳型:流体またはプラスチック物質を成形するために使用される中空形状。

単色:単一の色、または単一の色を使用すること。

動き:時間の経過による位置の移動または変化。

負の空間:空間において質量がないこと。

非客観的芸術:見えている対象物を直接的に描写していない芸術。

観察される色:指向性光源によって照らされた物体上の色の知覚。このような物体の知覚される色は、ハイライトまたは影に向かうにつれて変化します。

オイルパステル:もともとは家畜に印を残すために使用された、固体顔料と油性の結合剤からなる紙で覆われた棒。

油:絵画では、ゆっくりと乾燥する溶剤に溶ける結合剤、通常は亜麻仁油。

一点透視図法:三次元物体と空間を1つの消失点に収束させながら現実的に見せることを意図した数学的描画システム。

開いた形:外側の空間によって貫通される彫刻の形。

有機的:ゆるやかな、または定義されていない形や形状。

オリジナルの印刷:手製の印刷。

直交線:遠近法では、消失点まで後退する線。

重なり:他のものを覆い隠す、または他のものの上に横たわっている形または物体。

絵画:液体顔料を表面に塗布するプロセス、またはこのプロセスから生じる芸術の対象物。

パステル:固体の棒状の顔料。

パフォーマンス芸術:対象物が参加者による行動であるような芸術へのアプローチ。

パフォーマンス:行動で構成された芸術作品で、通常は写真によって記録されます。

遠近法:芸術では、平らな表面上に3つの次元を描写するシステム。

顔料:芸術では、媒体に色を与える物質。

顔料:塗料、パステル、インク、その他の芸術媒体における着色剤。

平版:もともとは石灰岩であった、平らな表面で行われる印刷プロセス。

点:遠近法では、ゼロ次元の物体です。

正の空間:固体の、または満たされた物体によって占有された領域。

原色:芸術では、混合して他のすべての色を作り出すことができる3つの基本色(たとえば、赤、黄、青)。

デザインの原則:所望の視覚効果を作り出すために芸術の要素を配置する戦略。

印刷:母材から支持体、通常は紙に顔料を転写して作った芸術作品。ほとんどの場合、一連の同じ刷で実行されます。「版(エディション)」を参照してください。

版画:単一の印刷母材または母材のセットから複数の同一またはほぼ同一の画像を生成するプロセス。

精神的な線:芸術では、目では見られることなく理解される線。

屈折光:プリズムを通過した後に別個の色に分離された光。

浮き彫り:芸術作品において、支持体または基体から物理的に突き出たもの。

複製:機械的に作成された印刷物。

リズム:芸術では、繰り返された物体によって形成されるパターン。

スケール:対象物のサイズ。

彫像:三次元で存在する芸術作品の制作物。例としては、彫刻、鋳造、モデリング、または組み立てです。

二次色:芸術では、2つの原色を混合することによって形成される3つの色、たとえば、緑色、橙色、紫色です。

形状:二次元空間の領域。

模擬的な質感:触覚体験の視覚的な表現。

場所固有:意図した効果の一部としてその場所を使用するインスタレーション。

軟らかなエッジ:明確な境界が欠けていること。

溶剤:通常は液体の物質で、所与の塗料の結合剤を溶解します。

ステンシル:顔料がマスクを通過して支持体の上に行く印刷プロセス。

代替:彫刻では、ある物質を別の物質に置き換えること。鋳造では、溶融したろうの代わりに熱い液体金属を用いること。

減法色:表面からの光の反射によって生じる色の感覚。

除去:材料を取り除く彫刻プロセス。

支持体:芸術作品が作成される表面。

対称的:軸の周りに等しく反映された形状。

技術的変化:文化の変化に貢献し、新しい芸術媒体の利用可能性を決定するような、利用可能な技術と科学の著しい変化。

質感:表面の触覚的な質。

三点透視図法:水平線の上または下の3番目の点を使用して鑑賞者の上の空間の後退を示す遠近法のシステム。

時間芸術:芸術の要素として変化を使用すること、通常はパフォーマンス芸術、キネティック・アート、またはビデオ。

トゥグラ:高位の個人を指すイスラム書道の図案。

二点透視図法:水平線上の2つの点を使用して、鑑賞者の両側の空間の後退を示す遠近法のシステム。

アンダーカット:彫刻では、基体または支持体から切り離さずに対象物の下から材料を取り除いて作られた突出部。

値:視覚芸術では、色の明るさや暗さの特徴で、ほぼ白から黒までの範囲です。

消失点:直行線が出会う水平線上の点で、鑑賞者の視界を無限に一方向に延長したものを表します。

ベクトル:方向を持つ特性。

映像:記録されて、投影されたりモニターに表示されたりする動画。

可視光:人間の目で見ることができる電磁スペクトルの部分。

体積:境界のある三次元領域。

暖色:色相の赤/橙に近い色。暖色は、他の色と比較して赤/橙に近いどのような色でも構いません。たとえば、ウルトラマリンは、コバルトブルーと比較すると暖かい青色です。

水彩:結合剤としてアラビア・ゴムを使用する水溶性塗装媒体です。

柳の/ブドウの木炭:燃やした柳の小枝から作られた描画媒体で、描画面にうまく接着しないため、主に絵画の初期レイアウトに使用されます。

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