日本企業がViva Technologyに注目すべき4つの理由 (4/4)

Taisuke Alex Odajima
7 min readMar 6, 2019

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毎年の5月頃に開催される世界最大のオープンイノベーションイベントViva Technology。これまで、日本企業が同イベントに注目すべき理由として、フランス政府が全面的にバックアップしているということ、大企業とスタートアップのコラボレーションがメインテーマであるということ、世界第3位の超大手広告代理店が主催しているということ、以上の3つに関して解説をしてきた。今回は、「日本の」企業にとって重要である理由として、アジア勢の存在感がまだ薄いという点に関して、掘り下げてみたい。

注目すべき理由その4:アジアの存在感がまだ薄いから

なぜアジアの存在感が薄いことが、日本企業が注目すべき理由となるのか。その意味を理解するために、まずはViva Technology以外の世界の主要なテック系イベントに関して見てみよう。

世界最大の家電見本市CES

テック、スタートアップ関連のイベントとして真っ先に頭に浮かぶのは、第1回目の記事の冒頭でも触れた、ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市CESだろう。世界中の家電メーカーがその年の目玉となるような商品を発表する場として注目されており、近年は家電だけでなく自動車メーカーやインターネットサービス企業など家電以外の業種からも多くの企業が参加している。スタートアップという点においては、Eureka Parkと呼ばれる特設会場があり、世界中から1,000社以上のスタートアップが集まる。50年以上の歴史を誇るだけあって、こちらのイベントにはアジアからも数多くの企業が参加しており、SamsungやLG、Huaweiといった巨大企業はもちろん、DJIやBytonといったスタートアップも多く出展している。また、韓国、台湾、シンガポールなど、スタートアップエリアにパビリオンを展開する国もあり、アジア勢の存在感が極めて大きいイベントとなっている。

バルセロナで開催されるMobile World Congress

スペインで開催されるモバイルテクノロジーの一大イベントであるMobile World Congressもまた、アジア企業が圧倒的存在感を放つイベントとなっている。大手スポンサーであるHuaweiを始め、ZTEやHTC、SamsungにLGといったお馴染みの企業はもちろん、数多くのアジア企業が出展している他、こちらのイベントでも様々な国がパビリオンを展開しており、中国や韓国、インドにパキスタンなどの政府機関がブースを構える。家電と同じくモバイルの業界においてもアジアは極めて重要なポジションを占めているため、アジアから多くの出展者が集まるのも当然だろう。

スタートアップイベントの急先鋒Web Summit

では、特段アジアが強いわけではない、主にWeb系のスタートアップを中心としたイベントで、世界最高のテック系イベントとの呼び名もあるWeb Summitはどうか。こちらもまた、中国、韓国、台湾、インド、マレーシアなど、アジア各国のスタートアップが数多く出展している。このように、どのイベントもアジアにおける注目度が高く、今から日本がその存在感を出して行くのはなかなかに難しいと言える。

翻ってViva Technologyはどうだろうか。実は、イベントの知名度こそ上がってきてはいるものの、HuaweiとSamsungというほぼどのイベントにでも出展しているような企業を除けば、アジアからの出展者はまだまだ少ないのが現状だ。そしてそれは、オープンイノベーションにおける自社のポジションを確立したい日本企業にとって、大きなチャンスなのである。今から取り組むことができれば、日本国内はもちろんのこと、アジア圏においてもオープンイノベーションの主要なプレイヤーとして認識されることが十分可能な状況なのだ。

第2回目の記事でも説明した通り、Viva Technologyのメインテーマは大企業とスタートアップのコラボレーションである。そしてそれは展示内容という点においてもそうだが、来場者やメディアの着眼点もその部分に置かれているということが重要だ。つまり、Viva Technologyというイベントで注目を浴びるということは、世界中のスタートアップから、「この企業はコラボレーション・パートナーとして魅力的だ」と思われることにつながる。結果的に、自社の事業展開を加速させるような技術や、これまでに無い新製品の開発につながるような技術など、会社の発展を促進させるために必要なイノベーションのSeed(タネ)が多く集まることになる。それこそが、21世紀の企業にとって極めて重要なポジションであり、GoogleやAirbusといった莫大な研究開発予算を持つ企業が、さらなるイノベーションを求めてViva Technologyに出展する利用に他ならない。

残念ながら、日本の大企業の多くはまだ20世紀型のパラダイムから脱することができておらず、スタートアップの技術やアイディアを活用することで自社のイノベーションを飛躍的に進める術を心得ている企業は極めて少ない。それどころか、スタートアップというものを単なる「小さい会社」としてしか捉えておらず、従来型の企業とは全く異なる行動原理を持った集団であることが理解できていない。正しい理解ができていないために、スタートアップと対等な立場でコラボレーションをすることによって大きな成果を得ることができるという可能性に全く気付いていない企業の方が、まだまだ多いというのが日本の現実だ。

だからこそ、他のアジア企業が本格的に進出するよりも前に、世界中の優秀なスタートアップがコラボレーションしたくなる企業としてアピールすることができれば、オープン・イノベーションが中心となるこれからの時代において、ユニークなポジションを取りに行くことができるのである。

4回に分けて解説してきた通り、Viva Technologyというイベントは、フランス政府が国をあげてサポートしている世界最大のオープンイノベーションの祭典であり、これから外部とのコラボレーションを進めようとしている企業にとって非常に参考になる事例に数多く触れることができる場となっている。また、CESなどと比べてアジア勢の存在感がまだ薄く、今なら日本企業が注目を浴びる余地が残っていることも重要なポイントだろう。オープンイノベーションに関わるミッションを与えられた現場のスタッフだけでなく、経営に携わる方々にこそ、ぜひ現地に足を運んで、確実にこれからのトレンドになっていくオープンイノベーションの最前線に触れてみて頂ければと思う。

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