「インター」な「ネット」

Osamu Ogasahara
5 min readOct 6, 2015

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昨日は「モノづくり」や「メイカーズ」をざっくり僕なりに定義してみましたが、いかがでしたでしょう?

さて、メイカーズ進化論・序章の公開2回目、本日分です。

今日のは古いインターネット屋さんの愚痴と期待ぐらいで読んでいただければ。
なんかどうも、電力屋が電気の使い方に口出したり、水道屋が水道管を愛しすぎたりな偏愛を自分の中に見つけなくもないですが、そんな奴も必要だということで。

「インター」につながる「ネット」

なぜディスプレイを壊したいと思ったのか、という話からしましょう。
そもそも、僕はインターネット業界の人です。「さくらインター ネット」というデータセンターやホスティング事業を行う企業を、 現在も代表取締役を務める田中邦裕さんと出会い起業しました。創業はインターネット草創期の1996年で、データセンターを提供する事業者としては国内でも老舗の一つで す。2005年に東証マザーズに上場しています。(そして、2015年8月に14年ぶりに復帰しました。
僕はインターネットが登場した頃から、インターネットそのものに魅了されてきました。と いうのも、僕自身が小学校二年生の夏休みに父親が買ってきたシャープの「MZ- 80K 」というマイコンに熱中し、自作音響カプラー(電話回線などを利用して音響にてデータ通信を行うための装置)を使った通信で、ここにはいない相手へアルファベット一文字が届くことに興奮しているような子どもでした。 しかしその後は、まさに映画『パッチギ!』(リアルに地元のお話だったりします)に描かれているような京都の片田舎でヤンキーとなり、コンピューターや通信とは縁遠い生活を送っていました。高校卒業後に親戚がやっている建築の設計事務所に拾ってもらい働くようになりましたが、普通であればそのまま埋もれ ていたのだと思います(建築の才能もなかったと思いますが、この経験がなければあんな短期間でDMM.make AKIBAはつくれなかったなと)。
そんな僕の世界を変えてくれたのがインターネットでした。ドメインやDNSに関する メーリングリストを介してつながった田中さん(当時、彼は20歳、僕は27歳でした)か らさまざまなことを学び、黎明期のインターネットビジネスの世界へ飛び込みました。そ こでは、プロトコル(通信手順)さえ合っていれば、あらゆる人や情報がネットワーク上でつながっていきます。
僕は「インターネット」という言葉の「インター」という部分が持つ意味がとても大事だと思っています。国と国とがつながっているという意味のインターナショナルという言葉があるように、「相互」に「ネットワーク」同士がつながっていくのがインターネット でした。いつの日か地理上の距離は意味をなくし、人々が望むタイミングや表現で、より 自然に多くの情報や感情を共有・共感できるような日が来るのではないだろうかと夢を見て、その世界に20年近く没頭してきたわけです。

失われたインターネットを求めて

さて、今はどうでしょうか。こんなことを言うとインターネット業界で活躍するみなさんに怒られますが、あまり楽しくありません。
増えたのは「お節介なソーシャル」をはじめ、課金するためのロジックに絵を載せただけの「ゲームもどき」、そしてGoogle AnalyticsでUU(Unique users)をカウントアップするために他人のネタを集めた「エセキュレーションサイト」などです。もちろんSNSは(かなり)使いますし、「もどき」ではないゲームは面白く、「エセ」ではないキュレーションサイトには唸らせられることも多いです。でも、それで何が変わったでしょうか。 ソーシャルゲームにおいてはすでに課金により収益が上がりやすいユーザーの誘導方法などのロジックがいくつか決まりつつあり、それを表面的に変えてみせるだけの手法が繰り返されてたりしています。テレビのワイドショーで流れる日々の情報やネタの提供元がネットに変わっただけであって、何かを叩き、貶めること自体はかつてのマスメディアと何ら変わりがありません。今ある広告費を奪い合うだけのネットメディアでは新しい価値を生み出すのはむずかしいのです。 ではインターネット登場以降、SNS登場以降の世界はどうでしょうか。発信者は少しだけ増えたかもしれません。でもディスプレイの中で行われていることは本質的には何も変わっていないのではないでしょうか。
それならば、「インター」になることでより良くなる可能性が高いことはなんだろうと 思い、辿り着いたのが「モノづくり」でした。大量生産、大量消費の時代には、本当に人 が求めているモノが作れていないケースがあったのではないかと考えました。また、モノを使ってモノゴトがインターにつながることで新たな価値を生み出す「再発明」が期待できるのではないかとも感じたのです。

煽ってんの?とか言われるかもですが、好きだからこそ「あぁ」ってなってるのはホントなんですよね、でも、だからこそもう一度見つめ直してみて、逆にそろそろ次に行ける準備が出来たってことなのかもとポジティブだったりします。

明日は、飲食のお話を軽く。
(えぇ、いつものawabarのですorz)

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メイカーズ進化論・序章を一部Medium公開用に改変

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Osamu Ogasahara

㈱nomad 代表取締役 / ㈱ABBALab 代表取締役 / ㈱Cerevo 取締役 / awabarオーナー / DMM.make エヴァンジェリスト / さくらインターネット㈱ フェロー