大学発ベンチャー社長()が見てきた深圳

Yusuke Yamazaki
11 min readMar 24, 2018

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Hapbeat合同会社代表の山崎です。自己紹介はこちらからご覧ください。今回高須さん主催のニコ技深圳観察会に参加させていただいてきました。深圳についてちゃんと知りたい方はこちらのプレゼンを見るのが良いかと。というか見ましょう。

最初、行った場所ごとに逐一感想を書こうと思いましたが、工場や業界の知識が無い私では、へぇ~、とか、凄いな~、とかしか出てこないので止めました。ただ、ツアー三日目のモータ会社&工場見学は私しか行っていないので、そこだけ詳細にお伝えします。こちらからどうぞ。

なお、この記事は特にサーベイもせず不十分な知識のまま感じたことを書いてるので、間違っているところはたくさんあるはずです。ご了承ください。指摘してくださると喜びます。

深圳という先進国

シェアリング傘&自転車
左:地下鉄 右:ショッピングモール

とにかくこの町は進んでいる。街中は電動バス&電動バイクが走り回り、地下鉄やそれなりのモールは日本並みに綺麗でネット回線も日本並みに速い。またWebサービスが圧倒的に便利。AlipayやWechat payが使えない場所は無く(=現金は使わない)、mobike(シェアリング自転車)やDidi(中国版Uber)などのシェアリングサービスも充実、高徳地図やビリビリ動画もGoogle Mapやニコニコ動画より高機能という…それでいて食事や交通機関などの生活必需品は軒並み安い。

水回りの清潔さ(得にトイレ!中国式は辛い…)と野球観戦に行けないこと以外は既に日本より住みやすいと思います。中国語喋れる前提ですが。

とにかく色んな意味で合理的。信号機は目安程度で行けそうなら車来てようがどんどん横切る。歩道も電動バイクがガンガン走ってくる。その分クラクションやベルをガンガン鳴らし、やかましいけれどもそのおかげか事故になることは少ない(…のだろうか)。少なくとも自分が身の危険を感じることは無かったです。街中も自転車が散乱しててもお構いなし。

日本で路上駐輪させないためにコーンやテープで封鎖して、結局道路が狭くなったり、別に邪魔でもなんでもないところにある自転車を躍起になって回収するくらいならそのコストを駐輪代無料に使えとも思う。後、いい加減日本の飲食店はSuicaくらい導入して欲しい。もしくはLine payなどのQRコード決済。とにかく現金を使わせないで欲しい。

なんか東工大で博士とって深圳で働いたら数千万単位でお金貰えるみたいだから、本気で移住しようかと思う今日この頃。

華強北(ファーチャンペイ):ぶっちゃけ外から見るだけではつまらない

よく深圳で言われる(?)のは中国の秋葉原、華強北がすごい、ということだ。ただ初めこそその巨大さや店子の多さに圧倒されるが、数時間見ていたら正直飽きる。どこに行っても同じような電子部品や既製品があるだけで、単にここで部品を買うだけなら日本国内でも事足りる。

ただ、深圳のエコシステムはただ電子部品の種類が豊富で安いというわけでは無い。詳しくは私のにわか知識で語るより次の2冊を読んでもらった方が遥かに良いので割愛する。私もまた読もうと思う。

メイカーズのエコシステム

「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ

音楽プレイヤーやスマートウォッチのモジュール販売。完成品一歩手前から各要素まで様々であり、例えばスマートウォッチのロゴだけ変えて自社ブランドとして出したり、ICの部分だけ使い、スマートスピーカーに組み込むことができる。一から作る必要無。また、左のチラシに今日とある通り、このようなチラシが毎日更新される。

少なくても深圳に行ってすぐに日本の倍速でプロトタイピング~みたいなことにはならなそうだ。何だかんだプロトタイピングの土壌は日本も充実している。一方で、量産試作のために安い部品をAliexpressで買って届くまでの時間を短縮する(国内だと2~3週間→数日で届く)、という目的ならすぐに深圳に行くメリットを享受できるだろう。しかしそれも本質ではなく、深圳のエコシステムを理解しそれを十分に活用できるようになって初めて、深圳ならではの枯れた技術を高速で組み合わせたイノベーションが起越せるのだと思う。今回訪問したCityeasyのような。

南山(ナンシャン):スタートアップにレールが敷かれているという驚き、羨ましさ

そして今回一番自分にとって衝撃的だったのがこれ。スタートアップを始めるというと、高校で勉強して良い大学入って大企業に就職する、といったレール(既定路線)とは程遠いと思うだろう。私も現在進行形でそれを体験中である。勿論、リーンスタートアップといった成功への(失敗しないための)いわゆる定石的な方法論(もしくは概念)は大分固まりつつあるように思えるが、南山地区は起業への就職のように、環境がそうなっていることに驚きだ。

こうしたカフェで日常的にピッチが行われている

良いアイデアを思いついてプロダクトを作りピッチをする。ピッチイベントは毎日のように開催されており、TensentやBaidu(どっちもGoogleやAmazon並みの超大企業)のお偉方(投資家?)の目にとどまればすぐに数千万円規模の投資が入る、そして応援してくれる。例えばハードウェアスタートアップにシャオミのお金が入れば販売は任せろ!、FOXCONNがお金を入れれば量産は任せろ!という...要はお金を入れ、さらにスケールするのに必要なことをガンガン手伝ってくれる。そうしてある程度スケールしたら、最後は事業に応じてTensentやBaiduが買収しておしまい。エンジニアはアントレプレナーになって無事Exitし、はれて投資家へとジョブチェンジしましたとさ。めでたしめでたし。

なにこれ、すごい。

このエンジニア→アントレプレナー→投資家のサイクルが異様に早く、どんどん投資家が生まれて彼らが投資し、またエンジニアがアントレプレナーになる、という正のサイクルがこの地区では回りまくっているとのこと。

実際今回のツアーでそうしたスタートアップのDobot、Insta 360、Honeycomb、Kandaoを見てきた。いずれも創立から2,3年くらいしか経過していないが、立派なオフィスを構え数十人~数百人規模の社員がいる。

正直に言って、羨ましいし、妬ましい。

自分の会社が後数年で彼らのようになれるなんて現状では微塵も思えないし、勿論私が深圳に住んでいたら消えていく可能性の方がよっぽど濃厚だが、それでも良いなぁ、と思ってしまう。

と言っても、日本だって最近はスタートアップに力を入れ始めているし、大学や周りの人も応援してくれるし、シリコンバレーや深圳なんかよりはよっぽど競争が楽だと思うので、初めての起業としては日本で良かったのだと思うけど。要は無いものねだりだし、場所や制度を言い訳にできるほどやり切っているわけでは無いので、深圳のことを羨むこと自体ナンセンスだ。

取りあえず、自分の給料を払えるようにするところから頑張ろう。それだってきっと、絶対大変。

(まとまってない)まとめ

自分があまり詳しくないからかもしれないが、もう日本は抜かれてるし追いつけないなと感じた。これは日本が悪いというよりも、深圳(中国)がすごいのだと思う。その上でどう日本は独自性を出して中国と付き合っていくかを考えた方が建設的だろう。取りあえず、トイレは確実に日本の方が上である(笑)。後ぱっと思いつくのはサービスとご飯と自動車と漫画アニメといった娯楽的な部分かなぁ。なんかまだまだありそうだし、思ったより抜かれてないのかも。

ただ、いくらツアーに参加して色々深圳の凄いところを見聞きしても、実際に自分でそれをやってみないとその凄さは腑に落ちないんだなぁ、と。例えば方案公司(デザインハウス)を活用してみたり、中国人と組んで向こうで起業したり…など。華強北で部品買ってスマホ組み立てることから始めても良いかもしれない。とにかく今回の体験をこのまま、凄かったね、で終わらせるのは非常に勿体無いのでなんかしたいなぁ…一番良いのはHAXに通ることだけど。3度目の正直で通りたい…

正直ツアー直後は、なんで俺は中国人に生まれなかったんだ…と半分本気で思ったくらいですが、まあ比べてもきりが無いので、まずは一歩ずつ会社と自分を成長させていこうと思います。でも、営業とか戦略とか興味ないだろ、それはこっちで全部やるからお前は新しいものや体験を作ってろ、って言われたらCEO譲るのはやぶさかではない...

取りあえず、ハードウェアやる人間は特に、そうでない人も深圳に行くべき…というより、高須さん主催のニコ技深圳観察会に参加させていただくべき。これは間違いない。ただ行くだけだと、ふーん、なんかすごいね、で終わる可能性大。(実際深圳ついてツアー前1日過ごした時の自分がそう)色んな会社や工場やらが見学できることはさることながら、高須さんの深圳にまつわる熱く面白いお話や、わざわざ1週間使ってまで来る尖った人たちと交流するのが一番インスパイアされる。特に学生さんは是非参加申し込みしてみてほしい。

実際ツアー参加者の方は面白かった。訪問した企業ではガンガン買い物する。4万円くらいするInsta 360をその場で11人も買ったり(直近にApple Watch買ってなければ買ってた、というかガチで展示中のログに使えそうなので将来的には買う)、Cityeasyで5万くらいのロボホンもどきを買ったり、高須さんがスイッチサイエンスへの輸入取引を行く先々でするし...これが爆買い日本人か(笑)お金を持ってるのおじさん達の中にいると物欲が湧いて困る。物欲に正直になれるくらいにはお金を稼ぎたいなぁ…Hapbeatで。(勿論それが目的では無いけど)

というわけで、ツアーを主催してくれた高須さん、一日目GENESISや関連工場を紹介してくださった藤岡さん、素晴らしいプレゼンをしてくれた伊藤さん、Shaoさん、ずっとカメラを回して動画をシェアしてくださった戸田さん、そして私とお話してくれた参加者の皆さん、本当にお疲れ様&ありがとうございました。次はMaker Faire Tokyoでお会いしましょう!(多分出展します)

最後に。次回のHAXもメンバーが集まればHapbeatで応募するつもりなので、興味ある方は是非私までご連絡ください。私のビジョンに共感してくださればスキルは二の次です。よろしくお願いします。

全く関係無いけど、1日目夜のミートアップで寝てる犬がかわい過ぎたのでどうしても載せたかった

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Yusuke Yamazaki

Hapbeat LLC. CEO Tokyo Tech doctor student Interested in VR, Haptics, & new technology.