清華大学卒業生達が作ったベンチャー支援会社TusStar

TAKASU Masakazu
Aug 22, 2017 · 7 min read

北京で見たベンチャー全体のまとめはこちら
この記事は全4記事の4本目

清華大学OBネットワークフル活用のインキュベータTusStar
TusStarは清華大学の卒業生達が作っているベンチャー支援のインキュベータ。清華大学は中国を代表する工学系大学なので、卒業生も各分野で活躍しています。
-資金調達(ファンドとかアクセラレータとかベンチャーキャピタル)
-ビジネス開発(企業間提携とかコンサルティングとか)
-プロモーション(メディア企業)
などなど、どの分野にもOBがいるのが強みです。一つ一つでは小さいビジネスに見えても、TusStarがまとめて「Fintechベンチャープレゼン大会」「ハードウェアスタートアップ深圳」みたいな企画をすることで、協力者が集まりやすくなります。

TusStarは営利企業で、前のエントリにあったX-Labのように大学+北京市の予算で運営されているわけではなく、出資やビジネス開発などでベンチャーを大きくして収益を上げています。が大学内での「ベンチャーごっこ修行」だとしたら、ここから大学の外側、プロ対プロのステージになります。
TusStarについても、同じく佐野さん (Wechat ID:Sanonas)の案内で清華大学を訪問した馬田さんが詳細なレポートをアップしています。
中国の MIT「清華大学」周辺のスタートアップエコシステムに圧倒されてきました
なので、ここでもシステム以外の話、見学したベンチャー中心に書いていきます。

出身ベンチャー1社目:電動歯ブラシAVORI
超音波電動歯ブラシを作っているスタートアップです。中国製=安物というわけではなく、中国のECサイトでは699人民元=11500円ほどで売られています。
歯ブラシの中に複数のセンサーが内蔵されていて、どういう状態でどこを磨いているかを検知し、スマートホンに送り、アプリできちんと磨けているかを解析してくれる機能が売りです。

Wifiで歯ブラシとつながり、磨き方の状態を解析・レポートしてくれる

同様のスマホ連動歯ブラシとしてはブラウンが12000円ぐらいの製品を出しているので、AVORIとは価格帯が同じで、真っ向勝負と言えます。
欧米の製品でも、Philipsの超音波電動歯ブラシなどはamazonで5000円以下で販売されているので、安さを武器に劣化コピーを売っている会社ではありません。
・歯ブラシとしては高いが、これで歯医者にかからなくなると考えると安い。(中国での歯医者は高い)
・同種の製品は市場にあるが、こちらのほうがよくセンシングできてる(きちんと聞けてなかったけど、センサーの種類が多いとか、かも)
・口の中の形を中国人・モンゴロイドに最適化してある
など、価格勝負でない良さをだしているとか。

通販サイトAlibaba上での表示では、「清華グループから投資されてる」ことを全力でアピールしているAVORI

「スタートアップらしくない大人びた会社だなあ」という印象を受けマシた。製品も、新しいカテゴリを作るイノベーティブなものというより、「SONYをキャッチアップする松下」的な、クオリティに自信ある大企業が取るアプローチに見えました。

出身ベンチャー2社目: 空気洗手システムの北京淋羽科技有限公司
2社目の北京淋羽科技有限公司は、これまでなかった新しい製品を市場に出す、いかにもベンチャーらしい会社でした。
・通常の手洗いだと、手を洗っている水は5%ぐらいで、残りの95%の水は単に流れ去るだけか、汚れた水を流すために使われる。つまりは無駄である
・圧縮空気と水を混合して、圧力がかかったミストシャワーを蛇口からだすことにより、水が90%節約できる
・$200ぐらいで、その蛇口(メカニカルな工夫がしてある)+コンプレッサーのセットを販売することができそう
というビジネスを計画して創業したばかり。CEOの 李啓章は23歳でまだ清華大の機械工学の大学院に在籍中、ほかの6名は浙江大学の卒業生で、そういうマッチングがTusStarで行われたのかもしれません。(本社も杭州にありそう)

浙江大学からのニュース。高圧のミストシャワー

3社目:堂々たる製品開発Tsinova( 北京軽客智能科技有限公司)
Tsinovaは、学外の 東直門外斜街に単独で立派なオフィスを構えるかなり成長した会社です。それでも2014年に創業して3年目。電動アシスト自転車と、電動アシスト自転車のコア部品であるトルクセンサーを商売にしています。

美しくデザインされたTsinovaの自転車。日本でも販売予定

電動「アシスト」自転車は、アシストとついているように、「人間が漕いでいる」という状態を検知してからモーターがパワーを出すようになっています。アクセル踏めば勝手に加速する電動スクーターとはそこが違います。日本を含む多くの国で、電動スクーターはバイクの扱いで免許が必要ですが、電動アシスト自転車は自転車扱いで免許不要です。
その人間が漕いでいることを検知するためにトルクセンサーが必要で、電動アシスト自転車はそのぶん構造が複雑なので値段も高く、電動スクーターは2万円ぐらいからあるところ、電動アシスト自転車は10万円ぐらいの製品が多いです。
中国では以前は電動スクーターも免許不要で街中にあふれていたのですが、今は最高速25kmに規制され、アシスト自転車の需要も高まってきました。

社内はさまざまな仕様の開発中自転車でいっぱい。これは時速40以上軽く出るスポーツバージョン

どういう条件でどのぐらいパワーを出していいかは国ごとにルールが違い、日本の規制がいちばん対応が面倒で、中国の規制は単に最高速だけ(なので、トルクセンサーなしでスピードリミッターだけの免許なし電動スクーターもまだ売られている)です。Tsinovaは日本やヨーロッパに向けて、13.6万円の電動アシスト自転車を売り出す企業で、安かろう悪かろうで商売する会社ではありません。日本でも販売予定で、価格はYAMAHAのパスと同程度。デザインと乗り心地のクオリティで勝負しようとしています。

クオリティで勝負できる清華大出身ベンチャー達
多くのケースでは誰もいなかった市場を大胆なアイデアで攻めるのがベンチャー、できあがった市場をクオリティ高い製品で販売していくのが大企業とされています。品質と利益をきちんとバランスした大量生産や、シェア争いで勝負できるような高品質製品は、ベンチャーの分野ではありません。
でも、AVORIやTsinovaはそうした大手企業と同じ価格帯でクオリティの高い製品を出して勝負しようとしています。訪問時に触れた製品を見る限り、たしかに全体的なクオリティは立ち上げ期のベンチャーと大きく異なるように見えました。人数も、独立したオフィスを構えるTsinovaは数十人規模の会社で、自転車だけの開発部隊であれば充分なボリュームがあるように見えました。
きわめて優秀な工科大である清華大にそのクオリティがあるのか、急速にスケーリングできる支援環境があるのか、有象無象のカオスが生み出す深圳のスタートアップとは違うキャラクターを感じました。

ニコ技深圳コミュニティ Nico-Tech Shenzhen

深圳のメイカー達と交流する「ニコ技深圳コミュニティ」 https://medium.com/ecosystembymakers/about-e306f96168b8

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