Architectural Review : Shoei Yoh [Oguni Dome] — Exploring the origins of contemporary timber architecture and computational design in Japan

建築作品小委員会
Jul 31 · 4 min read

目次

  1. ロングインタビュー|葉祥栄-木造とコンピュテーションが出会った時
  2. 論考1|腰原幹雄|製材を用いた大規模木造建築
  3. 論考2|ニコル・ガードナー&ハンク・ホイスラー|《小国ドーム》をコンピュテーショナル・デザインのグローバルな文脈に位置づける ──コンピュテーションの具現化としての建築
  4. ショートレビュー|建築作品小委員会より

特集前言

今日隆盛する「木造建築」と「コンピュテーショナル・デザイン」の源流を探るべく、熊本県小国町に1988年に建てられた葉祥栄設計の《小国ドーム(小国町民体育館)》を特集する。

グレッグ・リンは、2013年にカナダ建築センター(CCA)で開催した展覧会「デジタルの考古学(Archaeology of the Digital)」においてフランク・ゲーリィ、ピーター・アイゼンマン、チャック・ホバーマンとともに葉祥栄をデジタル・デザインの先駆者として紹介した。展覧会に際して行われたインタビューで、葉は1985年に設計に着手した《小国ドーム》がコンピュテーションに関わった最初のプロジェクトであったと述べている★1。コンピュテーショナル・デザインへの関心がますます高まる今日においても、このことはあまり知られていない。むしろ日本では、《小国ドーム》は大規模木造建築のパイオニア的な作品として認識されており★2、1989年には「小国町における一連の木造建築」の主要作品として日本建築学会賞を受賞し、2019年には「地元産の杉の間伐材を用いて開発された先駆的な木造立体トラス」★3 と評されてJIA25周年賞を受賞している。《小国ドーム》は現代的な木造技術とコンピュテーションを組み合わせた先駆例であると同時に、長年に渡ってその魅力を保ち続けた成功例と考えられる。

諸々の木造技術とデジタル技術が高度化した今日、両者を具現化した建築や空間インスタレーションが日々世間をにぎわせている。しかし両者は「技術」である以上、自己目的化し、マニエリスムに陥る危険性をはらんでいる。これらが隆盛を誇る今こそ、原点を見つめる必要があるのではないか。そこで、本特集では《小国ドーム》を日本における現代的な木造建築とコンピュテーショナル・デザインの源流として措定し、そこから今日の状況を逆照射することを試みる。

本特集にあたって、2019年7月5日に葉祥栄氏へのインタビューを行った。聞き手は建築作品小委員会2名(岩元真明・水谷晃啓)とゲストの佐藤利昭氏(九州大学准教授)である。このロングインタビューは《小国ドーム》の社会的背景を確認し、現代的な木造技術とコンピュテーションが先駆的に採用された経緯を明らかにする。

次いで、木質構造を専門とする腰原幹雄氏の論考によって、《小国ドーム》を大規模木造建築の歴史的文脈に接続する。そして、構造の特徴を具体的に把握することを通じて、それが現代の木造建築に与えた影響を示す。

さらに、世界初のコンピュテーショナル・デザイン学士コースを擁する豪ニューサウスウェールズ大学のニコル・ガードナー(Nicole Gardner)氏とハンク・ホイスラー(Hank Haeusler)氏の論考によって、 コンピュテーショナル・デザインのグローバルな文脈において《小国ドーム》がいかに理解されるか検証する。

最後に、2019年6月8日に現地見学を行った建築作品小委員会8名(川井操、和田隆介、伊藤孝仁、岩元真明、川勝真一、辻琢磨、水谷晃啓、吉本憲生)による作品ショートレビューを掲載する。

(岩元真明、水谷晃啓)

《小国ドーム》(撮影:井上一)

★1:Lynn, G (ed). Archaeology of the Digital. Berlin: Sternberg Press, 2013.

★2:浜田英明+法政大学構造計画研究室「日本の近現代建築構造の系譜」. シンポジウム「日本の近代建築を支えた構造家たち」フライヤー(法政大学、2019年5月18日).

★3:松隈洋「JIA25年賞 小国町民体育館「小国ドーム」講評」. 日本建築家協会ウェブサイト, 2019. http://www.jia.or.jp/member/award/25years/2018/oguni.htm

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

建築作品小委員会

Written by

建築作品小委員会では、1980年生まれ以降の建築家・研究者によって、具体的な建築物を対象にして、現在における問題意識から多角的に建築「作品」の意義を問うことを試みる。

建築討論

建築をめぐる幅広い批評的議論のプラットフォームを提供する日本建築学会のウェブマガジンです。

Welcome to a place where words matter. On Medium, smart voices and original ideas take center stage - with no ads in sight. Watch
Follow all the topics you care about, and we’ll deliver the best stories for you to your homepage and inbox. Explore
Get unlimited access to the best stories on Medium — and support writers while you’re at it. Just $5/month. Upgrade