誰でも建築家、誰もが家具職人になれる未来が目の前に―建築物が起点の新しい地域づくり

#BuildingTech 3/7

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「デジタル時代のものづくり」と題して行われたセッション(全7回)の3回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 秋吉 浩気氏:VUILD 代表取締役CEO
  • 藤村 祐爾氏:オートデスク Fusion 360 エヴァンジェリスト
  • 齋藤 精一氏:Rhizomatiks Creative Director / Technical Director
  • 野城 智也氏:東京大学生産技術研究所 教授 /モデレータ

スマホ感覚でものづくりを促進する、VUILDの取り組み

野城 それでは次に、秋吉さんどうしましょう、つなげますか、どうぞ。

秋吉浩気氏(以下、秋吉) はじめまして、秋吉と申します。よろしくお願いします。VUILDというスタートアップをやっております。

秋吉 浩気:VUILD 代表取締役CEO。アーキテクト/メタアーキテクト。芝浦工業大学にて建築設計を専攻、慶應義塾大学SFCにてデジタルファブリケーションを専攻。2017年、デジタルファブリケーション技術を活用した設計施工を行う建築テック系スタートアップVUILD(ヴィルド)を設立。

僕自身も建築とデジタルファブリケーションがバックグラウンドですが、主にこの中ではものづくり側の人間なので最後にプレゼンテーションさせて頂いています。

扱っているのは3Dプリンターではなくて、CNC(編注:生産工程における加工の工程を、コンピュータを利用して数値制御する方法)ミリングマシンのShopBot(編注:木材などをコンピュータ上の設計データの通りに削りだせる機材)で、日本の国産材木を加工してものづくりをしていくことをやっています。

先ほどの話にもありましたが、皆さんがパーソナルコンピューターやiPhoneを使われているように、昔は高価だった家具工場に置いてあったような機械が、今では500万円程度で手に入るので、こういうものをどんどん入れていってユーザーをエンパワーメントしていく活動をしています。

これは地方でやっているワークショップの例ですが、2日間ぐらいのワークショップでそれぞれがそのときに必要なものを一緒に考えながらその場で生成していくことを、いろいろな地方の人たちとやっております。

皆さんスマートフォンを使われているような感覚で、ものづくりのツールを自分たちの身体の延長として高度な技術を使えるようにするにはどうすればいいか、ということを普段やっております。

誰もが建築家や大工になれる社会を作ろう、ということを目指してやっております。先ほど気づいたのですが、創業が今日でちょうど1年だったのです。

(会場拍手)

ありがとうございます。

ビルディングテクノロジーで、地方創生に寄与する

機械自体は全国に、今月で30台入っております。なので、同じデータを共有しておけば、ローカルで出力できるプラットフォームが徐々に拡大しています。今までの成長率を見ると、2020年までに100台入る予定です。

もちろんデータの生成、いわゆる先ほどのジェネレーティブデザインも会社の中で、デザイン事務所として扱っていますが、どちらかと言うとそれをどうやってスケールさせていくのかということに興味があります。

日本は遅れていると先ほどお話がありましたが、インターネット黎明期に基盤を作られた先人達のように、最初にマシンをどんどん置いていくことをやってます。

その中で材料の調達からものづくりを最後できるところまで、各地域で最小限の流通経路で完結するシステムを、それぞれの地域で作っていこうとしています。

なので、ドメインとしては林業や地方創生の話に絡むのですが、今までいろいろなバリューチェーンの中で森林組合・森を持っている人からエンドユーザーまでものすごい距離があったものを、エンドツーエンドで、「生産者と消費者をそのまま結びましょう」ということをやっております。

今のように30台・100台の基盤ができてきたときに、どうやって直接やり取りするデータを作るのかという点はAUTODESKさんから話があったところに興味があります。

ShopBotと木材と、あとはものづくりにおいて必要な接合部をどうやって作るか・強度をどう担保するのかというところを、垂直統合したようなツールをアプリで作っています。

要はオリジナルの家具を、ShopBotの置いてある場所に行くことで、その瞬間に出力できるようなUXを開発しております。

ちょうど11月29日(2018年)にβ版がローンチするウェブアプリ「EMARF」ですが、ある意味0から1をユーザーがCADで引くのではなくて、いろいろな世界中のデザイナーが設計したデザインが接合部までの情報、もしくは強度の情報が全部入ったものでどんどんデザイン統合されていったものが、ユーザーとしては、例えば引っ越したときに『この間取りにちょうど入るような棚』を自分で計測して、それをピッと数値を入れて自分でいじると、その瞬間に工房に持って行くと出力できるサービスを作っております。

11月29日にWeb自体は公開されて、12月13日に弊社の川崎の工房でデモをして、実際に最後の出力できるまでの招待コードを配っているので、もし良かったらいらしてください。

つまりデザインの種がひとつあれば、0→1のフェーズはデザイン事務所がやって、1から100のフェーズはこのプラットフォームを使ってカスタマイズすることを考えて、こういうものを作っています。

一方で0→1をどうやって作るのかというところで、弊社のデザインチームとしては、スキャンの話がありましたが、例えば空き家の改修で200平米の古い民家を3Dスキャンして、それに合った構造補強をどうやって今の機械で加工して取り付けるのかというものなどです。

今までのものづくりのパターンは、規格材があってそれをどうやって加工するかという話だったのですが、非規格なこういう曲がった材でも、ちゃんとセンシングして機械に目を与えてあげればその通りに作ることができます。

今までの材料やものづくりの考え方そのものが変わってくるということで、その0→1の部分をどうやって作るかということをデザイン事務所としてはやっております。

最後になりますが、その中で富山県南砺市で、実際に今のプロセスを使って現地材の製材から建築を建てるところまですべてデジタルプロセスで建築物を建てることを今やっております。

だいたい上棟の試験をやってみて来年の5月末には竣工してオープンするので、こちらもぜひ興味があればいらして頂ければと思います。というわけで簡単に自己紹介でした。

野城 秋吉さん、ありがとうございます。

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