「組織や個をつなげて具体的アクションを生み出したい」小泉氏(渋谷未来デザイン)
#都市経営 3/8
2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「これからの都市デザイン&都市経営」と題して行われたセッション(全8回)の3回目をお届けします。
登壇者情報
- 山口 堪太郎 氏:東急急行電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業統括部
- 小泉 秀樹 氏:渋谷未来デザイン 代表理事, 東京大学 教授
- 石田 遼 氏:MyCity 代表取締役 CEO
- 林 厚見 氏:SPEAC 共同代表, 東京R不動産ディレクター /モデレータ
産官学民をつなぐ渋谷未来デザインはなぜ生まれたか
林 では小泉先生よろしくお願いします。
小泉秀樹氏(以下、小泉) 私は2つの肩書きがあります。
一つは「渋谷未来デザイン」という新しい産官学民連携の表層拠点の代表です。もう一つは、東京大学でまちづくりを教えています。
最初にまず渋谷未来デザインについて説明をさせていただきます。
渋谷で活躍される方々・企業の力・突出した力を持っている個人を結び付けて、新しい社会課題に向き合った新しいサービスを生み出す組織を2018年4月に立ち上げました。
考えるだけ、要は例えば韓国やヨーロッパにも自治体にシンクタンクがありますが、そういうものではなくて、もっと具体的なアクションを生み出すものとして設立しました。
ご存知のように今の渋谷区長の長谷部さんが一番考えているのは「ちがいをちからに変える街」。しかし、ダイバーシティやソーシャルインクルージョン、それをどうやって産官学民連携して……と考えるのは、渋谷のような都市はすごく難しいんです。
なので、どうやったら実現できるのかを今探究しています。都市の未来を考えたり、ブランディングをしたり、シビックプライドを醸成したりということを考えていますね。
事業はこちらです。
そして、いろいろな若手が一緒にやってくれています。事務局長の須藤さんは元・渋谷区の部長でまちづくりをずっと担当していましたし、広告代理店や外資系企業、フリーランス、区からの出向などさまざまなバックグラウンドの若手がいて、連携しながら事業を進めています。
もう1つ「フューチャーデザイナー」という、要はものすごく個性的な個人にプロジェクトにご協力いただこうとしています。
皆さんご存知の方ばかりだと思いますが、この方々に活躍の場をどう用意するのかを今検討していて、かなり重要なテーマになってもいます。
そして、参画パートナーとしてここに名前があるようないろいろな企業さん、もちろん東急電鉄さん、東急不動産さんにも協力いただいて事業をやっています。
企業や地域との連携、商品開発……渋谷未来デザインで進行中のプロジェクト
具体的な事業内容について簡単に説明させていただきますね。
一つは、創造文化都市つまりクリエイティビティの源泉を渋谷はもともと持っていたと思いますが、実は失われる危機の状況にあるのではないかと認識していて。それを保つためにどうするかというトライアルを考えています。
また、企業さんとの協業のプロジェクトとして、ドコモさんの持っているWi-Fiをいろいろな渋谷区の公共施設や民間の協力してくださる商店主さんやライブハウス等の事業主さんに置いて、Wi-Fiが利用できる環境をつくろうと考えています。Wi-Fi利用をした方の情報をこちら管理をして、「どういう方がどういうところでどういう活動をされているのか」をモニターできるインフラにしようと考えています。
もう終わったものですと、SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA。「インクルーシブな都市はどうつくれるのか」と、これも1つの場所ではなく、渋谷のいろいろな場所を体験していただきながら、主にフォーラム的なものですが、企画して実施しました。さまざまな活動プレゼンが行われて、小泉進次郎さんにも来ていただいておりましたね。
あとはシティブランドで今考えているのは、ここには記載していませんが、渋谷未来デザインでおもしろいアイテムを開発することです。
例えばLINEさんと渋谷区が協定を結んでいるので、LINEで使えるおもしろいアイテムをご用意させていただいて、ユーザーが渋谷ならではのアイテムを利用していただくと少しお金を渋谷未来デザインに入る、と。そのお金は渋谷未来基金にして、市民や区民や渋谷民の人がやりたいようなおもしろいユニークなアイデアの原資にしていこう考えています。
また、地域連携、例えば中国・深圳市南山区のピッチ大会とのコラボや広島県との協業等をやっております。
最後に私から発議です。先ほどリビングラボという話が出ましたが、例えば我々の渋谷未来デザインもある種のリビングラボ的なものだと思っています。
リビングラボは市民・区民・事業者・大学・行政、いろいろな人が協力しながら新しい都市のサービスを生み出す装置のこと。そういうものが日本でもっとできてもいいと思っています。例えばヨーロッパやアメリカだと、既にたくさんあります。
日本でも実は「これぜひやろうよ」と東急電鉄さんにお願いして、渋谷ではなくたまプラーザでリビングラボのある種のステップワークとして、次世代郊外まちづくりをやっています。その中でコミュニティ・リビングというコンセプトでまちづくりをやっていただいていて、その一環で今リビングラボに取り組み始めています。
いろいろな企業さんに協力していただきながら、そこで地域の方と一緒に新しいイノベーションを引き起こそう、と。それを東急電鉄さんと横浜市さんがタッグを組んでサポートしているという非常におもしろいプロジェクトが行われようとしています。
こういう社会的な装置をうまくつくらないと、先ほどお話があったようにサプライサイドの理屈でスマートシティはどうしても進めがち。僕もスマートシティの講義を持っているんですが、やはり供給者側の視点になってしまうんですね。新しいスマートシティを、やはりこういう装置がないとできないのではないかということで、私のプレゼンは終了させていただきます。以上です。
林 ありがとうございました。