都市計画とは、ライフデザインそのもの。変わりゆく「ライフ」の意味

#都市経営 6/8

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「これからの都市デザイン&都市経営」と題して行われたセッション(全8回)の6回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 山口 堪太郎 氏:東急急行電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業統括部
  • 小泉 秀樹 氏:渋谷未来デザイン 代表理事, 東京大学 教授
  • 石田 遼 氏:MyCity 代表取締役 CEO
  • 林 厚見 氏:SPEAC 共同代表, 東京R不動産ディレクター /モデレータ

都市開発の成否をどうはかる?

石田さんは容積を取る立場ではないんですが、テックの話はどうしても最適化するじゃないですか。基本的に最適化に利益の源泉があるんだけど、最適化が最適じゃないことって結構ある。その辺を元隈研吾研究室的に自分のあるべき世界観はどんなふうになっているのかと、今のビジネスとの関係も含めて知りたいと思います。

石田 直接答えない話を先にしますと、先ほどの床を積むかどうかの話はストラテジックプランニングと関係あると思います。しかし、お金を得るとか床を積むのは手段だと思うんですね。

例えば渋谷としてダイバーシティを実現するための手段だとすると、そっちをトラックすることは経営として一般的には必要じゃないですか。今の都市計画では、PDCAがなされていなくて一番はかりやすい指標がお金なので、それをはかる。しかし、例えば10年後に渋谷の開発が成功かどうかを何の指標ではかるのかが究極的な課題だと思っています。

そのPDCAも決定因子を探すのが、うちの会社がやっていることに近いんですけれども、今の状態は我々が求めている効率的な最適解とは異なっていて。たとえば「こういう場所がいい」と思ったときにそれを可視化できることや、予想もしないような出会いがある可変性あるレコメンデーションが最適なのか、いくつかためてしているところです。

そもそも都市、あるいは空間の使われ方におけるPDCAってプラスアルファの部分を議論する前にベースとなる部分の議論、測定や検証がなされないところからスタートしていますからね。

小泉 一人ひとりが幸せ、例えば企業で働いている人の幸福度が企業価値を生む発想がようやく本当に最近少し生まれてきた感じ。多分5年前には全くなかった話ですよね。

やっぱりそういうのが価値化され、空間価値として本当に重要であることが分かってくると、容積よりもそちらが企業の持続性をもたらすと徐々にシフトすると期待しているのが一つあります。

ワークとライフを分けるなんてナンセンス

小泉 僕も数年前までは、ライフとワークを近づけなきゃ駄目だと言ってたんですよ。だけど最近考えて、ワークとライフを分けてることがそもそも駄目なんだなと。

それはもう近代都市計画の発想です。つまり用途を分けるのが近代都市計画の発想なんですよね。用途同士のフリクションが起きないようにする発想で、「働く」と「住む」が分断された都市をデザインしてきたのが近代都市計画なんですよね。

だけど、今考えるとそうじゃなくて、ライフなんです全てが。働くことはライフだし、子どもを育てるのもライフだし、余暇を過ごすのもライフだと僕は思い始めていて、都市計画はライフデザインそのものなんだと。

だからワークとライフのバランスと言っているところでもう全然駄目だなという印象です。「ライフの中に『住む』と『働く』がもう全部混ざってるんですよ」というフレーズにしないといけないなと思っています。

20世紀で分業的なものや整理などの合理的なもの、いわゆるハードな意味でのドライな意味での最適化は気持ちよくないことに2000年ちょっと過ぎたぐらいには気づいていましたね。

本質的にはずっとそうなんだろうみたいな感覚はあったんですよ。微生物見てもそうだし森見てもそうだったんで。だからそれをいかに複雑系的にごちゃ混ぜにしていくかが肝なんだと思っていました。

だからテクノロジーも先ほど「ちょっと思いついた」と言ったのは、要はエアコンのスイッチのインターフェースを、今風のインタフェースにまとめるとTinderみたいなUI(編注:ある対象に対して、「好き」か「好きでないか」を次々と選択するUI)があるじゃないですか。「これ、よし、いいね」みたいな。

それがランダムにめっちゃ出てくると。要するにNext Meanみたいな5分後、1日後、3ヶ月後みたいなタグを選んで、5分後だったら「あ、そうかエアコン消すんだった」みたいな、あるいはその次に「うまい焼き鳥屋がここにあるぜ」の次には「おもしろいイベントがもう始まってるぜ」とかがタイムライン的に超ランダムに出てきますみたいな。

それで「あり」って言ったらその処理をして飛んでいく、みたいな。そして「3ヶ月後どこかな」みたいな。

つまり要は(ロジック)ツリーで解かないほうがいいことを突き詰めると実はやってないビジネスがたくさんあるんじゃないかなということです。

石田 それはおもしろいです。いただこうかな。

そうですか。ぜひ採用を。

小泉 まさにライフのデザインだね。

そうなんですよね。

小泉 ライフデザインをサポートするような。

仕事をしている時間にイノベーションって生まれない気もしていて。人によるんですけど、僕はイノベーションはルノワールで生んでる人で。イノベーションを生んでるとは言わないけど(笑)。

小泉 (笑)

山口 (笑)

石田 (笑)名言出ましたね。

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