タクシー業界は日本の縮図。日本社会の高齢化・労働力不足をAIは解決できるか?

#POST2020 2/6

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2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「POST2020―2020年以降の社会問題とどう向き合うか」と題して行われたセッション(全6回)の2回目をお届けします。

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登壇者情報

  • 松本 勝氏:VISITS Technologies CEO/Founder
  • Lin Li:DiDiモビリティジャパン 取締役副社長, Didi Chuxing 北アジア担当ジェネラルマネージャー
  • 梅澤 高明氏:A.T.カーニー 日本法人会長
  • 坂根 工博氏:国土交通省 大臣官房審議官(総合政策局担当)/モデレータ

DiDiが挑むタクシー業界のイノベーションは、日本のPOST2020を占う試金石

坂根 次のスライドをお願いします。今度はLinさんですね。

「AIによる生産性の向上」、これはどういったことでしょうか?

Lin Li氏(以下、Lin) まずはこんにちは。みなさん、本日はよろしくお願いします。このような場に登壇させていただく機会をいただけて、非常に光栄です。

私はみなさんに対して少し違った視点を提供できると思っています。私は数ヶ月前に日本に引っ越してきました。皆さんとの対話をとても楽しみにしています。

Lin Li(林 励, リン リ):DiDiモビリティジャパン 取締役副社長, Didi Chuxing 北アジア担当ジェネラルマネージャー。DiDi Chuxing(以下、DiDi)の北アジア担当ジェネラルマネージャー 兼 DiDiモビリティジャパンの取締役副社長。日本、香港、台湾における事業イノベーション、戦略、テクノロジー、サービス全体を統括している。これまで、Uber、Morgan Stanleyにおいて、経営管理、事業開発、マーケティング、金融財務の各分野で十分な経験があり、北アジア地域におけるDiDiの加速度的な事業成長に寄与している。ニューヨーク大学 金融・統計学専攻 卒業。

具体的なトピックに入る前に、私自身と弊社についての紹介をさせてください。私はLin Liです。(登壇者である松本さんと)興味深い共通点に気づきました。私の最初の仕事はモルガン・スタンレー証券のトレーダーでした。松本さん同様、自分がしている業務がいつかAIに置き換えられるだろうということに気づきました。自分がしていたことよりもずっとAIは良い仕事をするだろうということに気づきました。

それで、その後も同様にテクノロジー業界に進出し、現在はアジアでのDiDiの拡大を担当しています。最近では、DiDiとSoftBankの合弁会社である DiDiモビリティジャパン のCOOを務めています。

以上が簡単な自己紹介でした。続いて会社紹介をします。

弊社DiDiはモビリティサービスに特化しているテクノロジーカンパニーです。私たちは世界最大のモビリティインターネット会社です。そしてここ日本では、特にタクシーの配車サービスを始めたばかりです。

9/27より大阪で実証実験を開始し、今は本格的に大阪でのサービスを開始しています。また、より多くの都市に行き、この国でより多くのユーザーとタクシー運転手に役立とうとしています。

話しているトピックに戻ります。私は日本育ちではありませんが、自分の業務と役割から常に観察をしています。市場を研究するためにたくさんのタクシーにたくさん乗り、たくさんのタクシー会社を訪れました。

その中で今回のトピックにどんぴしゃなことを見つけました。それは人口の高齢化と労働力の減少が非常に明確なことです。非常に年配のドライバーが運転するタクシーに乗った時は特に驚きました。これは、中国や他の国々で一般的に見られることではありません。

それから高齢化と労働力不足について考え、これが社会における構造的な問題であることを発見しました。ですから、タクシー業界は人口の高齢化と労働力の減少の好例です。

私たちが念頭に置いているのは私たちがどうやってこの業界が再び成長するのに貢献できるかです。より少ないコストで効率より多くのことを成し遂げられるか。

そしてその手段がテクノロジーです。特にAIという次世代テクノロジーが導入されると私は思います。

左側は、会場にいる誰もが非常によく知っていると思います。右側は私たちが中国大陸で非常に成功したこと例です。タクシー運転手とタクシー会社にAI配送システムを提供することで、彼らの業務効率を10〜15%改善するのを貢献しました。タクシー運転手の生産性向上に効率的に貢献したのです。

そのため、同じ量の移動需要に対して、顧客を満足させるには我々はちょうど同じ人数もしくはもっと少ない人数だけで良いのです。それが一つの観点です。

他の観点で見ると、たくさんの手作業やハードウェアデバイスのメンテナンスがこの国にまだ存在しているということです。デジタル化や自動化の余地がたくさんあると考えています。

全体として、AIは日本におけるこの本質的な課題に対処するための非常に重要なものになると思います。具体例として動画をお見せします。面白い動画だと思いますので、しばらくお待ちください。

詳しく話すと、ドライバーが効率的にお客を乗せるためのテクノロジーツールをたくさん持っていて、いくつかをヒートマップと呼んでいます。

それは運転手とタクシー会社がどこでより効率的に顧客を集めるべきかを予測するのを助ける需要予測システムです。

以上です。ありがとうございました。

AIの技術進展は、あらゆる分野の労働力不足を解消しうるか?

坂根 ありがとうございます。少子高齢化による労働者不足。日本でも、これから他のアジアの国でも、顕著になってくると思います。その解決策としてAIがあるのではないかということですね。

AIの技術進展によって、どの分野でも労働力不足は解決してくるとお考えですか? あるいは、特にこの分野ではというのはありますか?

Lin とても良い質問ですね。AIの技術進展によって労働力不足の問題を完全に解決するとは言いませんが、大部分においては、社会が直前している全体的な課題を確実に軽減すると考えています。

もちろん、業界によっても異なると思います。自分自身を全ての業界における専門家と呼ぶことは到底できませんが、交通業界においては中国での経験があります。日本においても、さまざまな観察をしています。

特にタクシー業界は非常に関係が深い業界と定義しています。(日本の運転手の)平均年齢はおそらく60歳に近く、それは世界のすべてのタクシー業界の中で最も高い年齢です。

もう一方で指摘しておかなければならないことがあります。テクノロジーは非常に役立つのですが、テクノロジーでは代替できないこともあります。

例えば、ここ日本での高いサービス品質は世界最高だと思います。そして、それは労働力によってある程度維持される必要がまだあると思います。

坂根 技術が進展したとしても特に人と人との直接の関係、ヒューマンタッチの部分は人間がやる必要があるのではないかと、そんな感じですね。ありがとうございます。

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