不動産トレンドの潮目は変わったー高く売るより、早く売るが高価値?

#RealestateTech 2/5

--

2018年11月に開催された第2回「LivingTech カンファレンス」。『POST2020』をテーマに掲げ、2020年から5年後の社会を考えるトークセッションが展開されました。人口減少、少子高齢化、過剰供給……。社会課題について交わされた13セッションの中から、「不動産テックの現在地と未来」と題して行われたセッション(全5回)の2回目をお届けします。

第1回から読む

登壇者情報

  • 赤木 正幸氏:リマールエステート 代表取締役社長
  • 落合 孝文氏:一般社団法人不動産テック協会理事 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー
  • 川戸 温志氏:NTTデータ経営研究所 ビジネストランスフォーメーションユニットシニアマネージャー
  • 森井 啓充氏:オープンハウス Chief Innovation Officer
  • 池本 洋一氏:リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長 /モデレータ

不動産テックがキテる!カオスマップにみるテクノロジーの浸透具合

池本 ではですね、最初に川戸さんからいきます。今からどんな話するかというのと、ワークショップでこんなテーマを僕と話しましょう、みたいなことを発表お願いします。

川戸温志氏(以下、川戸) ただいまご紹介に預かりました、NTTデータ経営研究所の川戸です。

本日は私から簡単な自己紹介と不動産テックのトレンドと、時間があれば新規ビジネス検討のポイントをお話させていただきたいです。

川戸 温志:NTTデータ経営研究所 ビジネストランスフォーメーションユニット シニアマネージャー。大手システムインテグレータを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされたテック視点と、経営の視点の両面を併せ持つ。金融・通信・不動産・物流・小売・エネルギー・ホテル等幅広い業界が守備範囲。特に近年は、不動産テックや物流等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新の技術分野に関わる事業戦略立案、新規事業開発やアライアンス支援などに取り組む。

最初にこの後のグループディスカッションのテーマでいうと、私、不動産テックのカオスマップに携わらせていただいております。その領域の中でどの領域が今後盛り上がってくるのかと、その領域の中で今後どういうビジネスモデルを作っていけるのかを、ぜひ皆さまとディスカッションさせてください。

初めに私自身の自己紹介になりますが、NTTデータ経営研究所はコンサルティング会社です。私自身がもともとIT業界に身を置いておりまして、10年程前より現職です。基本的には不動産以外にも金融、通信、小売り、エネルギーとか、けっこう幅広くコンサルティングやらせていただいております。

ここ4〜5年ぐらいは不動産テックを中心としたコンサルティングをずっとやってきています。そういう意味でいうと、ここの登壇者の中で不動産とテックと他業界とのあいの子で持ってる人間だと捉えてください。

記事の寄稿やセミナーをやらせていただいたりとか、あとこれですね。先ほどご紹介しましたカオスマップですね。これ来週28日(2018年11月28日)に新しい第4版が出る予定です。

この前もリマールの赤木さんと一生懸命いろいろと、ロゴ集めをしてました。奥さんにコンサルってこんなことやるの?と言われたりもしながら一生懸命やってますので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

テクノロジーで変貌する不動産の本質、ハードからソフトの時代へ突入

今日、私から不動産テックのトレンドで3つのお話をさせてください。

まず初めに、オフィス領域でハードからソフトへと。このハードからソフトという言葉は使い古されている言葉なんですけど、近年、WeWorkとかソフトが改めて注目を浴びてます。

WeWorkでいうとコミュニティマネージャーによる交流イベントをやったりだとか、専用SNSで世界中のWeWorkメンバーとコミュニケーションを取れたりとか。こういったところに魅力を感じて、WeWorkのコワーキングスペースは金額高いんですけども、そういったところに皆さんが入られる特徴があります。

あとオフィス・テナント統合アプリのご紹介です。スマホアプリなんですが、あるビルの中で働いている社員がなんでも便利に使えるサービスが全部作り込まれてるアプリです。

例えばここに書いてありますけども、スペースを予約したいだとか、ビルの中のイベントを予約したいだとか、コンシェルジュ呼んだりとか。

あとは会社をまたがってそのビルの中で働いている人共通のSNSを利用できたりとか、こういったことができると。

あと管理会社向けは、実はこっちの方がポイントで、アプリの利用履歴や会議室のスペースの利用状況だとか、人流のデータですね。こういったデータをそのアプリを介して取ることができて分析できると。

こういったサービスが、これ以外にもいくつか出てきているというトレンドです。

で、こういったトレンドの本質でいうと、従来こういうワーカーは基本的にはテナント経由でアクセス管理してきたが、もうそういうのがとっぱらってですね、直接管理会社からワーカーへアプリを介してアクセスできる。

もっと言うと、その社員同士がアプリを介してコミュニケーションできるトレンドが来ている。あとはSNSだとかポータルサイトですね。今は企業単位で皆が個別に持っているが、もうオフィス全体で共通のポータルやSNSができてきてる。こういったトレンドに今来てると見ています。

あと続きまして2つ目ですね、住宅売買のiBuyer(アルゴリズムを用いて不動産価格を機械的に算出し、物件のSellerからBroker、または不動産ポータルサイト運営会社が、直接買い取る仕組み)。

iBuyerはアメリカだとホットなキーワードなんですけど、皆さんiBuyerご存知の方っていらっしゃいますか、何人ぐらいいらっしゃるかな。そんないらっしゃらないですね、ありがとうございます。4、5人ぐらいって感じでしたね。

iBuyerのわかりやすい例が、こちらのOpendoorという、今年の9月にソフトバンクさんが約450億円以上出資したサービスです。平たく言うと売却専門のウェブのマーケットプレイスです。

アメリカも住宅を売ろうとした時に大体3or4ヶ月時間がかかるんですね。それを最短3日で売れることを売りにしてるサービスです。

これ何で儲けてるかですが、手数料と思い間違うんですが、実はこの手数料を先日Opendoorさんが無料化したので、実際儲けてるのは転売の差益ですね。安く買い取って早く売りぬける、そこの差益を儲けにしているサービスです。

なので、そこも販売価格や買い取り価格をいかに最適な数字を出すのかがポイントなので、Opendoorさんが展開してるエリアは全米じゃなくて、ある程度エリアを絞って展開しています。

で、こうしたiBuyer、買い取り再販のビジネス領域はアメリカで今すごいホットで、ZillowだとかRedfinみたいな不動産情報ポータルも参入してますし、あとは大手の仲介企業ですね。KWだとか、REALOGYだとかも入ってきています。

何がポイントになるかというと、データなんですね。データとあとは価格についてで。こういうZillowだとかRedfinとか持っている膨大なデータと、各推定のアルゴリズムですね。ZillowestimateだとかRedfinestimate、こういったところがすごい効いてきます。

これのトレンドの本質は大きく2つあります。

まずひとつは、今まで「高く売りたい」だったので、いかに高く買ってくれる人にマッチングするかが肝だったのが、今後は「早く売りたい」になるので、いかに正確な価格を推定するのかが肝になって来るのと、あとは仲介プロセスが今まで1本だったのが2本になります。

今まで「高く売却する」というプロセス1本だったのが、まずは最初に金額のオファーを出して、オファーによるんだったらもう「早く売ります」という。早く売るという売却プロセスの選択肢が登場することがもう1つの本質になります。

最後に仲介手数料のディスカウント。手数料のディスカウントは今更感があるんですけど、意味合いが違うディスカウントですね。テックを活用してディスカウントするということで。

池本 若干巻き気味で。

川戸 はい、時間が厳しいので巻き気味で。

手数料を安くするのはRedfinとかREXがあるんですけど、面白いのが真ん中ですね、定額で変動していくという。建物だとか価格やエリアによって手数料が変わっていく、でも定額ですよというものが出てます。

右もまた面白くてですね、現金を即日で払うことによって、価格の交渉をすぐ終わらせると。そうすると価格が安いままで済むんで、安いままになった金額を後でキックバックするサービスも登場しています。

ここもとりあえずの本質は、わかりやすく言うとFintechの潮流と全く同じです。ネット証券が登場して、インターネットやることでコストが安くなる、手数料が安くしますという話だとか、自動車の保険料みたいに走った分だけという話と一緒で、対象の物件によって手数料が変動するみたいな。

こういったトレンドはテックを活用することによってどんどん今後も広がっていきます。今巻き気味でと言われたんで、この後にポイントの話をしようと思ったんですが、これは後で残しておくと。

池本 そういう持っていき方もありますね。

川戸 ちょっとじゃあ話していいですか。

池本 いいですよ、触ってください。客寄せパンダ的な感じで。

川戸 はい。イノベーションはもうコモディティ化してるんですけども、そもそもイノベーションの捉え方はいろいろあるんですよね。イノベーションは、常識を疑ってそれを覆すことという見方があります。

ここに歴代のイノベーションがいろいろあるんですが、ウォークマンはわかりやすい例ですよね、再生機能だけにした。

不動産にも全く同じように当てはまると思ってまして、業界の常識、ここに不動産の関係者がどれほどいるかわからないんですが、どうしても業界の常識にとらわれてしまって明日の転換ができないと。あえてそこの常識を疑ってみると実は新しいサービスが出てくるというのがこの例です。

さっきのOpendoorとかまさにそうです。不動産は流動性が低くてすぐに売買できないと思ってるんだけど、いやいやそうじゃないです。「3日ですぐに売れます」と考えると新しいサービスが生まれてくる。

こういう発想の転換がすごく大事ですという話がひとつと。あと完全にマインドの話なんですが、この業界の方々といろいろコンサルティングでお話させていただくと、皆さん少産少死型の考え方なんですね。

パンダのようにひとつの子どもを大事に育てるみたいにビジネスを育てようとする。1から100にしようとする。でも実はそうじゃないんですよね。

とりあえず多産多死でたくさん打って、そこから生き残った奴を育てていく考え方でぐるぐる早いスパンで回していかないと、中々イノベーションは生まれてこないです。

ぜひ皆さまには多産多死のマインドで不動産テックについて考えていただきたいです。以上です、ご清聴ありがとうございました。

池本 ありがとうございました。

(会場拍手)

池本 もっとゆっくり聞きたい人はまたこの後で川戸さんチームに入ってください。

--

--